• COLUMN
  • 2019.11.22

13年ぶりのワールドカップ日本代表の言葉から見る戦いの全記録 vol.5

2006年の自国開催以来、13年ぶりに出場したワールドカップ。アジア予選を突破しての出場は実に21年ぶりとなる世界へのチャレンジだった。現実的な目標としてフリオ・ラマスHCは、まだ日本が成し遂げたことがない「ヨーロッパ勢から1勝をあげること」を掲げていたが、大会前に選手たちは「グループラウンド突破」「世界を驚かせたい」と意気揚々に語っていた。アジア予選で4連敗後に破竹の8連勝を遂げたこと、大会前の強化試合で強豪ドイツを倒したことからも、チームの成長を感じていたのだ。確かに成長はしている。しかし日本は40分を通してタフな戦いをするまでには至らず、目標から遠く及ばずに5戦ともに完敗。ワールドカップを通して「日本のバスケとは何か」「ディフェンスから確立しなければ」「弱い日本のほうが受け身だった」と気づくことになる。日本は何ができて、何ができなかったのか。久しく遠ざかっていた舞台だからこそ、たくさんの気づきがあり、今後の糧へとしていかなければならない。9月1日のトルコ戦から順位決定戦の9月9日のモンテネグロ戦までの9日間。日本代表が感じたこと、学んだこと、得たこと、そして反省。中国の地で選手たちが発した言葉を記録として残しておきたい。必ずや次につなげるために――。

Photo/Yoshio Kato

9月9日 日本 65-80 モンテネグロ

#18 馬場雄大
この1年、死にもの狂いでやらないといけない

日本のバスケットというのはこうだというのを見せつけたかったけど、でもこれが現実という世界を体験しました。個人でも、チームでも。ここが底辺なので、もう這い上がるだけです。この1年間、死に物狂いでやらないといけないです。マジでやってやるぞという気持ちで、今は次に進む思いでいます。

#3 安藤誓哉
世界のガードから受けた刺激と学びを、Bリーグで覚悟を持って出す

目標であるヨーロッパに1勝というのを本当に獲りに行こうとしたんですけれど、一言で言うと力及ばずでした。今日スタメンになることは朝のミーティングで言われたんですけど、自分としてもそろそろ来ると思っていたし、スタメン、控えに関係なく、勝ちに行きました。

ディフェンスで相手の帰化選手をしっかり抑えたいと思い、フルコートプレスでファウルトラブル以外はプレッシャーをかけ続けていけたと思います。1本ブロックされましたが、向かっていくこともできました。ただ勝つことができずに悔しいです。

世界のガードと対戦して感じたのは、もっとシンプルに判断をしたり、IQの部分で成長していかないと世界クラスのポイントガードにはなれないということ。また、ポイントガードはチームの雰囲気を確立していかないと、本当の意味でオーガナイズはできないと思いました。

世界のガード陣はクイックネスがあるというよりは無駄が少ない。必要じゃないことを極力やらない。ペイントタッチというのはどこの国のガードもやっています。ペリメーダー陣は全員やっていました。ホテルではワールドカップの試合をよく見ましたが、スペインとかセルビアはここまでやるのかというくらい、ペイントタッチをして、タフな状態からエキストラパスを出し、結果的に4回目くらいにはワイドオープンになって、そこにしっかりとパスを出していました。今の日本は雄太、塁、ニックが入ってきてからは決まった人だけ攻めて、ペリメーター陣が攻めなくなってしまったと感じます。ワールドカップのディフェンスは強力なので、チーム全員が攻めないといけないと痛感しました。

このワールドカップは、ベンチで見ている時間も、1つのポゼッションも、自分にとってはすべてが刺激になりました。Bリーグではどんどん自分を出していきます。それはセルフィッシュというのではなく、ポイントガードとして「自分はこうだ」というのを出し、その姿勢を日本代表につなげていく覚悟でシーズンに臨みます。

#12 渡邊雄太
プレッシャーに打ち克つ大切さを学んだワールドカップ

このままではとにかく後悔だけが残ると思ったので、今日は持ってるすべてを出し切ろうと思い、
背中で日本代表を引っ張っていこうと思いながらプレーしていました。

今日34点取ったのは、個人的にスタッツを残そうというよりは、とにかく自分が持っている力というものを最大限に出したかった。ニュージーランド戦のあとは情けなくてしかたなくて、あんな終わり方はもうしたくなかったので、自分の持っている100%の力を出し切ろうと思った結果がスタッツにも残っていたので、チームを勝たせたかったという気持ちは強いです。

グループラウンドが終わったあとに、自分自身は日本代表のユニホームを着る資格がないプレーをしたと感じたし、チームとしても、代表としても、ふさわしくないプレーをやってしまったので、あのようなプレーだけは絶対に許されないと思って、自分自身に対する怒りはすごかった。だから今日は本当に自分の力を出し切ることに専念しました。

日本のチーム力をアップさせるためには、チーム力以前に個人の力が必要です。日本は海外の選手に比べて力が劣っていたし、気持ちの持ち方一つにしても相手のほうがハングリーにプレーしていたと僕自身は思いました。一人一人が悔しい思いをして日本に帰るので、自分たちのチームでもこの悔しさを忘れず、まず個人としてレベルアップすることが必要だと思います。

自分自身、今回はバスケ人生で初めてプレッシャーに負けてしまいました。グループラウンドを突破しなければならないと、自分自身にプレッシャーをかけてこの大会に臨みました。チェコに負けて上のラウンドに行けなくなったあと、プレッシャーにやられて自分を見失っていたというか、自分を出すことができず、精神的に自分の弱さを感じました。今後、NBAでプレーすれば今回のようにプレッシャーに感じる状況が絶対にある中で、プレッシャーに打ち克つことが大切なのだと、今回の代表期間を通して学べました。

#24 田中大貴
世界は普通に戦って勝てる相手ではない。日本としての戦い方を考えるべき

いろいろな方に注目され、ワールドカップで戦えるんじゃないかとか、今まで以上の期待を受けながら世界の舞台に来ましたが、この結果が現状で、終わってみればコテンパンにやられて現実を見せられた感じです。

言葉では簡単に敗因を言えると思うんですけど、やっぱり40分間フィジカルにコンタクトをし続け、オフェンスでも足を動かすことを徹底できませんでした。フィジカルの強さをどんどんボディーブローのように食らって足が止まり、その差が終盤にきました。塁や雄太、ニックがチームに来る前に自分たちがアジアで戦っている時のようで、最後に脆さが出てしまう試合になってしまいました。

個人としては上手くこなそう、こなそうとしていた自分がいるのかなと思います。ガードはミスをしたらいけないポジションなので、そこで少し守りに入ってしまったところはあったのかもしれないです。

世界との戦い方について自分が思うのは、一人の選手がずっと出ているよりは、交代することでインテンシティを切らさずにやるしかないと思います。ディフェンスで引いてしまったわけではないですけど、自分たちから仕掛けないディフェンスというのは、個の力で勝っているような、みんなのレベルが高いチームがやることだと思う。日本のようなチームはみんながカバーしたり、ローテーションをして動いたり、そこをもっと突き詰めていかないと。普通に戦って勝てるほど甘い相手ではないので、もっと戦い方を考えないといけないです。

TEXT by Yoko Konagayashi

[ 13年ぶりのワールドカップ日本代表の言葉から見る戦いの全記録 vol.1 ]
[ 13年ぶりのワールドカップ日本代表の言葉から見る戦いの全記録 vol.2 ]
[ 13年ぶりのワールドカップ日本代表の言葉から見る戦いの全記録 vol.3 ]
[ 13年ぶりのワールドカップ日本代表の言葉から見る戦いの全記録 vol.4 ]

FIBA World Cup 2019

RELATED COLUMN

MOST POPULAR