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  • 2023.08.31

【FIBA WORLDCUP 2023】2019-2023―世界が近づいた4年間(vsオーストラリア代表)

チームは生き物で、試合はナマモノ。つくづくそう思わされた試合だった。

フィンランド戦で大爆発した比江島慎、富永啓生、河村勇輝はオーストラリアの攻守に阻まれ沈黙。比江島は1対1からの仕掛けをことごとくシャットアウトされ、富永の3ポイントシュートは10分の0。河村は7アシストもフィールドゴールパーセンテージ12.5%と低迷した。

しかし、コンディション不良で大会を迎えたはずの渡邊雄太とジョシュ・ホーキンソンが、それを感じさせないような激しいゴールアタックで得点を重ね、これまで無得点だった富樫勇樹も、得意のプルアップスリーと巧みなゲームコントロールで14得点7アシスト。馬場雄大と吉井裕鷹は主にディフェンス面でそつのないパフォーマンスを見せた。

最終スコアは89-109。後半に限ると54-52。第3クォーターは35-30。これまでの男子日本代表の歩みを知る人であればあるほど、FIBAランキング3位の強豪を相手に、強化試合でなく本戦の舞台でこのようなスコアを残したということに対して、大きな驚きと感慨を抱くはずだ。

馬場は「今までの僕たちは、オールスターみたいなメンバーのオーストラリアに対して、ここまで戦い抜くことすらできなかったと思う」と話し、富樫も以下のように言っている。

「オーストラリアはこの大会の優勝候補の1つだと思ってるので、このチームに前半の内容から切り替えて後半勝てたっていうのは、チームとしてすごくよかったと思います。相手が残り1、2分までメンバーを下げることなく戦ってくれた中でこの点数だったので。そこは自信につなげていいと思います」

記者会見に登壇し、「こういうチームを本気で倒したいなら、38分でも39分でもなく、とにかく40分間、後半のようなバスケットをやりきらないといけない」と説いた渡邊は、「前半から力を出すにはどうすればいいのか」という記者からの問いに「10点以内で前半を終わることができたら、オーストラリア相手にでもドイツ相手にでも十分勝てるチャンスはあったんじゃないかと思います」と言った。

富永と河村の3ポイントシュートに当たりが来れば。前半でもう少し肉薄できていれば。2019年のワールドカップでは、そんな「たられば」が思い浮かばないほどに”世界”は遠かった。

オーストラリア戦の敗戦を受けて、日本は1次ラウンド敗退で17-32位決定戦に回ることが決まった。「敗退」と文字を打ったところで何とも意外な心持ちになった。絶望に打ちひしがれて順位決定戦を迎えた2019年と違い、今の日本代表の眼前には「アジア首位になってパリ五輪の出場権をつかむ」という希望の道が続いているからだ。

馬場は言う。

「4年前は壁に直面して、なんだかだらっと順位決定戦に行ってしまったというイメージなんですけど、今回はやれた部分、やれなかった部分が明確なので、そこを詰めれば絶対あと2試合勝てると思う。3勝でこの大会を終わることを目指してます」

日本代表は31日20時10分よりベネズエラ、2日20時10分よりカーボベルデと対戦。”希望”を”喜び”に変えるプロセスに突入する。

【FIBA WORLDCUP 2023】2019-2023―世界が近づいた4年間(vsオーストラリア代表)

TEXT by miho awokie

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