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  • 2019.11.12

13年ぶりのワールドカップ日本代表の言葉から見る戦いの全記録 vol.2

2006年の自国開催以来、13年ぶりに出場したワールドカップ。アジア予選を突破しての出場は実に21年ぶりとなる世界へのチャレンジだった。現実的な目標としてフリオ・ラマスHCは、まだ日本が成し遂げたことがない「ヨーロッパ勢から1勝をあげること」を掲げていたが、大会前に選手たちは「グループラウンド突破」「世界を驚かせたい」と意気揚々に語っていた。アジア予選で4連敗後に破竹の8連勝を遂げたこと、大会前の強化試合で強豪ドイツを倒したことからも、チームの成長を感じていたのだ。確かに成長はしている。しかし日本は40分を通してタフな戦いをするまでには至らず、目標から遠く及ばずに5戦ともに完敗。ワールドカップを通して「日本のバスケとは何か」「ディフェンスから確立しなければ」「弱い日本のほうが受け身だった」と気づくことになる。日本は何ができて、何ができなかったのか。久しく遠ざかっていた舞台だからこそ、たくさんの気づきがあり、今後の糧へとしていかなければならない。9月1日のトルコ戦から順位決定戦の9月9日のモンテネグロ戦までの9日間。日本代表が感じたこと、学んだこと、得たこと、そして反省。中国の地で選手たちが発した言葉を記録として残しておきたい。必ずや次につなげるために――。

Photo/Yoshio Kato

9月3日 グループラウンド 日本 76-89 チェコ

#7 篠山竜青
「経験の差」と言っていい年齢ではない。試合中のアジャストが必要

チェコとは3年前にも戦っています。僕はその場にはいませんでしたが、何十年ぶりという機会でアジアを突破して、OQT(リオ五輪最終予選)まで行ったのが2016年。そのOQTで久しぶりに世界を感じて、ラトビア戦での大敗(48-88)があり、チェコにも負けました(71-87)。今日のチェコ戦はそこからの3年で、日本がこれだけ成長したんだと結果で示したかったです。

チェコにはいいシューターが2人いることもわかっていたし、それでも彼らに3ポイントを決められました。ただ、チェコのメインのプレーヤーはサトランスキーなので、彼がドライブを仕掛けたときには、しっかり収縮して中を固めるディフェンスをしなければならなかった。ただ、そこからシューターに対するディフェンスができませんでした。

どうにか1桁差でついていく時間帯はあったのですが、それが5点差、3点差まではいかなかった。それは経験がどうのこうのではなくて、日本とチェコの実力差だと感じました。

これが今、僕が24歳であれば「いい経験をしています。次の世界大会までしっかり成長したい」と言えますけど、「経験の差で負けました。これをいい経験として持ち帰ります」と、そんなことを言って帰っていい年齢ではないので、やっぱりそこは試合の中でアジャストしなければいけなかったです。ただこのワールドカップを日本の若手のポイントガードや、学生たちが見て、何かを感じてほしいとは思います。

#12 渡邊雄太
3年前よりは世界に近づいている。でもW杯で勝つことは簡単ではない

3年前にOQTでチェコと戦った時よりはやれたし、世界に近づいている感覚はあります。でもワールドカップで勝利することは簡単ではありません。それはここに来る前からわかっていましたし、それでも当然、勝ちにこだわってきたんですけれど……。チェコは素晴らしいチームで格上なんですけれど、勝てない相手ではなかったと思うので悔しいです。今日はただ負けたわけではなく、相手から学べることがたくさんあったので、ただ負けたということで終わらないようにしないといけない。

ゲームの入り方の重要さはトルコ戦でイヤというほど感じさせられましたし、だから今日はとにかく出足を集中してやったので、出だしに関しては悪くなかったと思います。ただ、試合を通しては向こうのほうがフィジカルにプレーをして、賢いプレーも要所要所で出されて、詰まりそうな部分でしっかり抑えられたという印象です。11番と17番が素晴らしいシューターというのはわかっていたのですが、止めきれませんでした。

まだワールドカップが終わったわけではありません。まだアメリカ戦が控えているし、このあとも試合は続きます。まだまだみんなでやれることはあるので、しっかり今日の敗戦を次につなげていきます。アメリカ戦は一人一人が全力で100%の力を出さないと当然勝てるような相手ではないですし、まともなゲームになるとは思えないので、全員が100%の力を出し切れるようにしたい。自分ももっともっとやれるし、できると思っています。

9月4日 2連敗して浮き彫りになった日本の課題

#7 篠山竜青
3ポイントが打てなくて、打たれすぎている

トルコとチェコに負けてグループリーグ突破はなくなったけど、ワールドカップは一試合も、ワンプレーも無駄にできない大会です。来年には日本でオリンピックがあり、日本のバスケが未来に続いていく中で、明日のアメリカ戦は少しでもこれからの日本のバスケが楽しみだと思ってもらえるようなゲームをしなければならない。そういうゲームができるかどうかで、日本のバスケットの位置が変わってくる試合になります。

ここまで3ポイントを打たれすぎています。逆に日本はあまり打てていません。その理由の一つはBリーグがそこまで世界のトレンドに乗っかって3ポイント中心の試合をしていないことが大きいです。Bリーグでは、まだまだローポストで面を取って得点を量産している外国人が揃っていますし、ピック&ロールゲームから3ポイントを打っていくことがBリーグには少ないというのが理由のひとつ。

また、ディフェンスにも問題があります。ラマス監督の指示はドライブされたらレイアップをイージーに決めさせたくないし、リバウンドをしっかり1本取りたいバスケなので、みんなで守ってディフェンスを収縮することを求めます。それプラス、ドライブからパスをキックアウトされたら追いかけて行ってほしいと。

単純に聞くと矛盾していることなのですが、収縮からのクローズアウトというシンプルなアクションの精度をどれほど神経質に高めていかなければならないか。ちょっとでもそこの反応が遅れてしまうと、相手の身長や打点を図れずに収縮しすぎてしまったり、寄らな過ぎてしまったりして、すぐにズレができて3ポイントを打たれてしまいます。その精度を高めることが僕らの課題です。

相手の3ポイントを止めなきゃいけないのは、僕らも強化試合のときから気づいていたことだし、わかっていたことです。でも1回の練習ですべてを修正することはできない。試合や練習の中でちょっとずつでしか良くしていけないんです。このことは僕らだけではなく、見ている人にも感じてほしい。次の代表と意気込んでいる若い選手たちには、こういう部分で差が出ることを知ってほしい。ワールドカップという舞台は、ちょっとくらいミスしてもカバーができちゃうとか、点が取れてしまう世界ではないということを、僕らの試合から感じ取ってもらえれば、この負けも収穫になるんじゃないかと思う。

#24 田中大貴
世界と日本ではコンタクトの差と数字に現れないところでレベルが違う

ここまで2試合負けてしまったのですが、オフェンスに関しては、自分のチームでやっていることが日本代表でも発揮できていることは多いと思います。ただ、細かいことなんですけど、スクリーンを壊してディナイすることとか、ピック&ロールでスクリーンをかけられた時にどれだけそれを抜けられるとか、あまり数字に現れないところや、見えない部分のレベルが違うと感じています。国際試合だとコンタクトのところで削られてしまうことがあるので、ヘッドコーチが言っているように、自分たちが上にいくために必要なのはやっぱりコンタクトの部分だと自分も思っています。

日本は今までずっと世界大会に出られないことが続いていて、その分、やっと出ることができたワールドカップで結果を残したい思いの中でやっています。自分はチェコ戦の最後に出られなかったことは少し残念でしたけど、もっともっと存在感を出したいです。明日は世界ナンバーワンの相手ですが、いい意味で開き直って、チームとしても個人としても、どれくらい通用するのか試したいし、ただ単に試合をこなして終わるのではなく、どんどんチャレンジする試合にしたい。

#8 八村塁
世界で一番強いチームと戦うことは、今までの日本のバスケにはなかったこと

僕らには、まだもう一戦、大切な試合がある。日本人としてNBA選手として戦うことはなかなかないものなので、とても楽しみたいし、僕がU17の時にアメリカと試合をした時はふがいない試合だったので、もう一回戦えることを楽しみにしたい。アメリカには僕がこれからNBAで戦う選手がいるわけだけど、日本は今までアメリカと対戦したことがないので、そういう意味ではどれだけできるか明日わかるので、それを楽しみにしている。

ジェイソン・テイタム(ボストン・セルティックス)とはU17で対戦し、今回も対戦を楽しみにしていた相手。こういう高いレベルでまた戦えるのは大きなチャンスだったんですけど、(ケガをしたために)出られないはしかたないです。

世界でいちばん強いチームと戦うことは、今までの日本バスケではなかったこと。明日どれだけできるかわからないけれど、僕ら日本のバスケを100%出したい。相手はどう考えても格上で能力が高いので、ディフェンス、フィジカル、リバウンドといった部分で僕らが徹底してできるかがキーになる。

TEXT by Yoko Konagayashi

[ 13年ぶりのワールドカップ日本代表の言葉から見る戦いの全記録 vol.1 ]

FIBA World Cup 2019

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