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  • 2020.02.03

ここに書き残す、2006年9月4日の代々木

私がこれまでNBA選手の来日イベントでDJをしてきて、観衆前に姿を現す際の“登場曲”に指定があった選手が4人いました。

2005年の横浜アリーナ、Terror Squad「Lean Back」を指定したのはLeBron James。

2017年の大田区総合体育館、J. Cole「False Prophets」を指定したのはのKyrie Irving。

2018年の代々木公園バスケットボールコート、Lil Uzi Vert「Do What I Want」を指定したのはRussell Westbrook。

そして、2006年に同じく代々木コートにて、Yung Joc「It’s Goin Down」を指定した選手がいました。

2006年9月4日。よく晴れた月曜日。

我々FAR EAST BALLERSは11:00に会場到着。私はDJ機材のセッティングへ。選手たちは無意識に、コートサイドに置かれたスタンド席に座って、いつも通りくだらない話をしながら小突き合っていました。

企画制作運営はもちろんNIKE JAPAN、そして我らがALLDAYクルー。スーパースターの到着が迫り、徐々に緊張感の増すスタッフの方達をしり目に、選手たちはようやくノソノソとユニフォームに着替え始めました。

スーパースター来たる。
平日ながらその姿を一目見ようと昼過ぎには観客が集まり出していました。

高揚感が充満した無人のコート。そこへどんな表情で入っていいか分からず、おかしなテンションでアップをし、会場の間を持たすFAR EAST BALLERS。

コートサイドには貴重な経験をする為に大集合したキッズ達。そして代々木コートの歴史で最も多かったメディア陣。

ついにイベント開始時間。今一度コートは空になり、満を持してMCの佐々木クリスが登場。

まず語るべき言葉。

今回のイベントの主役は、他の誰でもなく「子供達」だということ。
そして、日本のバスケットボールの未来、それを応援するために、海の向こうからスペシャルなゲストが来てくれたということ。

主役達のアップも完了し、その時がやって来ました。

クリスの呼び込みに合わせ、緊張で汗ばんだ右手から「It’s Goin Down」のレコードを離すと、あの特徴的なビートが鳴り始めました。観衆の視線は私の隣の黒いテントへ集中。スマホのない時代、向けられるのはデジカメや使い捨てカメラです。

十分な間を置いて、スペシャルゲストがゆっくりとテントの外、太陽の下へ。

我々のホームであり聖地、代々木コートへ足を踏み入れたのでした。

登場後、中央にセットされた席にてトークセッション。クリスが日本における代々木コートの重要性を伝えました。

そして改めて、このイベントの主役は子供達と宣言。キッズたちによるピックアップゲームがスタート。
台本上では席に座ったままのはずが、すぐに立ち上がり、嬉しそうに、かつ真剣に見つめ、ナイスプレーには拍手やガッツポーズを送ってくれました。

ラストゲームは、キッズチーム vs FAR EAST BALLERSのエキシビションマッチ。
眼差しはよりシリアスに。キッズチームのコーチとしてゲーム前もゲーム中も熱のこもった指導をしてくれました。

あっという間に来てしまったエンディング。
ここで初めて告げられたのは、我々が朝から座っていたスタンド席、それは本人から贈られたものであったことでした。

このスタンド席は、十数年経った現在も、「ALLDAY 5ON5 BASKETBALL TOURNAMENT」でバスケットボール選手達の手によって運ばれ、大事に設置されています。

そして数え切れない人達が、その席からバスケットボールを楽しんできました。それはこれからも変わりません。

コートを去る直前、NHK側のボードにしてくれたサイン。

その後は代々木コートの名物として、訪れた人達が見上げ、写真を撮り、ここで起きた出来事に思いを馳せていました。

雨と風とボールでだんだんと薄くなって、いつしかそれは消えてしまいました。

でも変わらずピックアップゲームは日夜行われ、ALLDAYはこれからも続き、バスケットボールへの愛と敬意があのコートに蓄積されていきます。

何が起ころうと、前を向いて、上を目指し、今日もプレイグラウンドへ。

代々木コートの頼もしい若者達はそれをわかっています。

そんな彼ら彼女らに向けて。
2006年9月4日、我々のためにあの人は来てくれたんだと、ここに書き残します。

TEXT by DJ MIKO

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