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  • 2020.11.03

3×3世界大会へ出場するKamakura、発展途上のチームが抱えた難しさと変化の兆し

優勝して世界へ弾みをつける大会にはならず……Solviento Kamakuraにとって『F1 Tournament FINAL』は難しさを抱えて、課題の残る1日だった。しかし、新たなスタイルを求める発展途上のチームは、少しずつ手ごたえも感じている。コロナ禍で半年以上も待ったが、いよいよ今月下旬には3×3最高峰の舞台へ。選手兼GMの清水隆亮(#24)に話を訊いた。

難しさを抱えたFINAL
「TOKYO DIMEとUTSUNOMIYA BREX.EXEに続くような世界と戦うチームとしての役割を担いたい」――Solviento Kamakuraの清水隆亮は3×3の新大会『F1 Tournament』のTOKYO ROUND(9/20)を制したあと、このように目標を語った。その後、国内を転戦したのち、3×3 JAPAN TOUR 2020 Extreme Limited FINALの決勝でTOKYO DIMEに敗れたものの準優勝。2月の日本選手権に続く国内主要大会で再びファイナリストになった。

しかし『F1 Tournament』のツアー優勝決定戦、FINAL(10/24)では準決勝で敗退。SIMONに土壇場で同点に追いつかれて、延長戦で力尽きた。Team Tsukubaを受け継いで進化を目指しているが、今大会は“メンタル”と“バスケットボール”で難しさを抱えていた。

気持ちの作り方と、ごまかせない疲労
まず、一番大事なトーナメントを戦い抜く気持ちの作り方に失敗した。清水曰く「(予選POOL)の1試合目にフワフワした入りをしてしまいました。2試合目で修正できましたけど、失礼な言い方かもしれませんが、両方とも実力差がある相手でした。激しくプレッシャーをかけたり、ボール際でガツガツ競り合うような高いインテンシティーで戦うことができなかったです。準決勝に向けて、気持ちを高めていくことが難しかったですね。もちろん経験してこなかったことではありません。相手に合わせてしまったことは、反省する必要があります」。少しずつ地力をつけてきたように見えたが、まだまだ未熟な部分があった。

また、そうなった一因としては「疲労」もあるだろう。清水は「正直言って、SIMON戦は疲労がごまかせなかった」と言葉を振り絞った。ここまでの転戦を考えれば、言い訳には聞こえない。彼らは今季初の公式戦『F1 Tournament』のツアー開幕となるKANAGAWA ROUND(9/12)から、この日までの約1カ月半、週末に6大会を転戦。清水、梅林聡貴(#11)、菊池亨(#35)の3人はフル出場して、先週のJAPAN TOUR FINAL(10/17-18)は3人でやりきった。本来であれば今大会は4人目をセットしていたが、前日になって急きょ、合流ができないことになったという。清水はチームを預かる立場でもある。「2人(=菊池、梅林)には迷惑をかけました。どうしても『4人いれば』と思ってしまうので、そういう思いをしないためにも、今日は優勝するかしないと決めて臨みましたが……」と、難しい1日を振り返った。

世界を見すえた戦い方を作りながらも
一方で、バスケットボールにおいては、新たなスタイルを構築している途上にあった。その理由は正式に今月20日、21日に開催されるFIBA 3×3 World Tour Doha Mastersへの出場が決まったから。2月の日本選手権優勝で切符を獲得してから、コロナ禍でじつに半年以上も待たされたが、彼らに吉報がやってきた。結果を出すべく、準備を進めている。

「日本のためにと言ったら大袈裟かもしれませんが、僕らが1勝でも挙げれば、日本のランキングが上がることにつながると思います。だから世界で勝つには、どうすればいいのかと考えたときに、3人でボールをシェアして、全員が外から2ポイントシュートを決めることを長所としてやっていくしかない、という結論になりました。普段の練習からBEEFMANやTOKYO DIMEにはお世話になっています。毎週のように練習試合を組んでもらっていて、そこで試しながら良い感触を得られていました」

ただ、FINALではそれが発揮できなかった。気持ちの作り方やスタイルが確立できていない未熟さによるところが大きい。ただ彼の言葉からは、日本にいながら世界を意識することの難しさも垣間見えた。

「(予選POOL)の2試合目は良かったです。だけど、また申し訳ない言い方かもしれませんが、1試合目は(世界を見すえた戦い方を)やらなくても、勝ててしまいます。頭では練習で培ったことを覚えていますが、ついつい体に染みつく古い動きをやってしまった。次に向けては、3人がボールをシェアして理想的な動きができるよう、成長していかなければいけません」

理想を持って取り組んだこその変化
そんなSolviento Kamakuraの理想像は、3×3の世界的な強豪、ラトビアのRIGAだ。「人もボールも動かし続けるプレースタイルです。フリーで2ポイントシュートが打てれば、確率も上がっていくでしょうし、1点も取りやすくなります。自分たちのバスケットボールを作ることができれば、相手を問わず強みを発揮できるようになると思います」。2月に優勝したときは213㎝のコナー・クリフォードがアドバンテージだったが、彼がいない以上、世界で戦うには、動きの質と量、そして外角からのシュートが生命線になってくる。

新たなスタイルを模索していることもあってか、大会を追うごとに梅林がシュートを打つ場面も増えた印象だ。清水によると「チームとして彼の良いところを引き出そうという流れになってきました」と言って、こう続けた。「アイツの良さは2m近いサイズがあって、柔らかいタッチでシュートが打てることです。ただ体の線が細いので、ゴール下の競り合いに弱く、当初は悪いところばかりが目立っていました。だからチームとして、もっと長所に目を向けるようになったんですよね。そこで彼が力を発揮できれば、悪いところもカバーできるようになると考えています」。互いの強みと弱みを認識して、全員が同じ考え方、同じ方向を見て3×3をやり込んでいくプロセスは、上達への必要不可欠な要素だ。仲間の至らないところを指摘するのではなく、ポジディブな要素をコートで表現できるようチームで試行錯誤していくことは、成長に向けた良い兆しと言えるだろう。

彼らはまだ未完成。だが、いまの取り組みをしたからこその変化もあった。「もうTOKYO DIMEに落合(知也)さんがいても、負けはしましたがSIMONにNikola(Pavlovic)がいても、ビビらなくなりました」と清水は明かす。「これまでは相手が上手いと『ヤバイ』と気おくれしましたが、自分たちはこうやるぞ!と決めてからは、相手が格上でも『なにかできることがあるよね』という思考でゲームに臨めています。だから、梅林のようなプレーに現れているのだと思います」。今後はDohaまでに練習を重ねることで、さらに自信を深めて欲しいところだ。

最高峰へ日本を代表して挑む、責任とプライド
世界大会まであと約2週間と少し。Solviento KamakuraはKamakura NatureMadeとして出場する。清水は常々、日本の3×3チームを代表して挑む、責任とプライドを感じており「国内ではみんな敵同士ですけど、仲間でもあります。現場でお互いが高め合った結果、僕らがDohaに行けることになりました。日本代表候補にはBリーガーたちが数多く選考されていますが、3×3の選手でも世界で戦える姿を見せたいです」と、決意を語ってくれた。

そしてKamakuraの頑張りを近くで見ていた『F1 Tournament』のオーガナイザーであるちゃん岡こと、岡田慧氏からエールも。「僕のF1 STUDIOのコートはMastersで使用されたコートを使っていますので、彼らはよく練習に来ています。大会が開催されることを信じて、気持ちを切らさずに、準備をする姿を見てきました。出場することは僕にとっても嬉しいです。これを機にチームがひと皮むける大チャンスですね。スマホで配信を見ながら応援しています」と、活躍を願った。

Kamakuraとして、初の国際大会でどういった戦いぶりを見せてくれるのか。清水は昨季、1度であるがFIBA 3×3 Challengerに出場。大敗も土壇場の逆転負けも経験しているだけに、厳しい一戦になることを知っている。だが、仲間たちと日本、そして新しくチームを受け入れてくれた町を代表して、コートに立つ。「世界大会に『Kamakura』というチームが出場するので、鎌倉の皆さんには喜んでいただけると思います。町への愛着や誇りを強く持っている方が多くいると感じていますので、僕たちも同じ気持ちで臨みたいです」

世界最高峰の舞台で奮闘したDIMEやBREXに続く勇姿を、Kamakuraには期待しよう。いままで出場した誰もが口にする「まず1勝」を彼らもつかみとり、その先も狙う姿を楽しみにしたい。

3x3世界大会へ出場するKamakura、発展途上のチームが抱えた難しさと良い変化

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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