アディダスアスリートの2人が持つ、バスケットボールへのマインド
いずれも日本を代表する選手である、安藤誓哉と安間志織。この2人は長くアディダスとともに歩んできたが、面白いことに他にも様々な共通点があり、そこからアディダスのブランド戦略も窺い知ることができるのかもしれない。アディダスが早くから何故この2人に目をつけたのか、そして2人がアディダスを選んだ理由は何か。安藤は島根、安間はドイツという新天地でのシーズンを終えて間もない2人が、チャレンジの重要性とそれに必要なマインドを語ってくれた。
まずはそれぞれ、昨シーズンを振り返っていただけますか。
安藤:すごく充実したなというのが率直な感想です。アルバルク東京での経験を還元するのではなく、みんなと一緒にチャンピオンシップに臨みたいという一からのスタートでした。相当な気持ちを持って移籍したので、証明したいという気持ちはありましたし、すべてを注ぎ込んだ1年でした。
安間:レベルがあまり高くなくても、最初は自分の可能性を広げるためにも声がかかればそこで頑張りたいと思っていて、結果的にイタリアから声をかけてもらえたので、ドイツに行って良かったです。日本人選手の良さを自分も出せると思っていましたし、日本の女子選手が外に出ていくことがなかなかないので、下の世代の子たちに何かつながっていけばという思いもありましたね。
海外でプレーしたいと思ったきっかけは何かあったんですか?
安間:もともと海外挑戦したいとは思っていて、きっかけというきっかけはないんです。トヨタにいたら確実に上手くなれるんですよ。施設も良いですし、コーチ陣もスキル面とかいろいろしっかりやってくれる。でも、その環境に慣れすぎて、何かを変えたいと思って。私は好奇心というか、あれやりたい、これやりたいというのがいつもあるんですよね。髪の毛もいろいろ変えますし(笑)。行動しないと良い話も降ってこないので、自分の行動から何か変えていけるようにとは思っています。
安藤:僕はアントニオ・ラングとのつながりで大学3年の時にラスベガスのトレーニング施設に行かせてもらったことがあって、そこで「海外っていいな」ってインスパイアされちゃいましたね。そういう機会にもっと触れたくて行ったのかもしれないです。
安間:そんなに早く海外に行ったのはすごい。私も早く行けば良かったです。
安藤:安間選手みたいに地位を確立してから行くほうがすごいと思いますよ。僕は当時のNBLには確実に入れたとは思うんですが、このままじゃトップを取るのは無理だと思ったし、NBLの時でさえ環境は良いと思ったので、一度入ったら海外には出られないと思ったんです。もちろん、ものすごい強い好奇心もそこにはありましたけど。
なるほど。いま、将来的にはどう考えているんですか?
安藤:具体的にどうなりたいというのはあまりなく、とにかくいまいる環境で、優勝したい、トップになりたい。島根に移籍して、会見とかで他のみんなが「CSに出たい」と言っていて「いや、出られるから。優勝したいって言ってよ」と思っていましたね。これはやっぱりルカ(パヴィチェヴィッチ)の影響です。ルカが帰国する前に(竹内)譲次さんと3人で食事に行ったんですが、「相当な労力を使っておまえを秋田から呼び寄せて、最後はそのおまえにやられたな。良いストーリーだ」って話をしてくれましたよ。僕も、アルバルクは絶対にねじ伏せてやると思っていましたしね。みんなそれぞれストーリーがあって、どれだけ良いストーリーを描けるかが重要だなと思います。
お二人とも東京オリンピックの直前まで代表候補に入っていたので、その話も伺いたいんですが、安間選手は最終メンバーに選ばれると思っていましたか?
安間:横浜武道館の強化試合の時点で「落ちたな」と思いました。自分のプレーができなくなってしまっていたので。実際に落ちた時は相当悔しくて一週間何もできなかったんですけど、ちょうど引っ越しで忙しくしていた時期でもあったので気が紛れて助かりました(笑)。今はワールドカップが目の前にありますし、オリンピック予選もあるので、今回は絶対に出たいし、そろそろ出なきゃという気持ちももありますね。
安藤選手は女子の試合を見る機会もなかなかないと思いますが……。
安藤:そうですね。でも、オリンピックは見ました。チームが1つになっていたし、1人ひとりが楽しんでプレーしていた印象です。決勝で負けても清々しいというか出しきった表情で、男子もこうならなきゃいけないと思いました。こういう話をしていると「また代表に入ってやろう」と思いますね。
安間:私はオリンピック見ていないんですよ。スポーツを見るのは好きなので、他の競技はずっと見ていたし、3x3も見たんですけど、5人制は見る気にならなくて、男子も見なかったです。
安藤:それ、良いメンタリティーですね。オリンピックって、みんなそこがゴールになっちゃうんです。終わった時に燃え尽きちゃう。僕はそれは絶対にしない。
さて、アディダスアスリートとしては日本バスケット界ではパイオニアと言える2人だと思いますが、アディダスとはどんなブランドなんでしょうか?
安藤:バスケットでいうと、ジェームズ・ハーデンやダミアン・リラードのように野心を持って何かをつかみ取った人たちがアディダスを履いているイメージです。どちらかというと、僕は彼らに近いマインドセットができているんじゃないかと思うので、これからも常につかみ取っていって、いつかは頂点を取れる選手になりたいですね。
安間:いやもう、安藤選手のコメントが素晴らしすぎて、私は何を言えば良いんですかね(笑)。でも、私がアディダスと一緒に頑張りたいなと素直に思えたのが、選手を大事にしてくれるところ。ただ契約して終わりではなく、目標に向かって一緒にやっていこうというところですね。みんな履いていないからというのもあったし、他にいない分しっかり向き合ってもらえているので、担当の方には「SNSで何かできないか」とか、いろいろ新しいことをしていきたいいう話は何度かしています。
では最後に、次の世代に向けてメッセージをお願いします。
安藤:今の環境が全てだと思うと、敷かれたレールに乗ってしまうと思うんです。周りも大きな期待をして、その期待に沿うような“良い子”に育てようとしてしまう。だから、僕はそれをしなかった親を尊敬しています。物事を広く見るとおのずと次のステップが見えてくるので、自分の気持ちを強く持って、思いきって外の世界を見てほしいです。
安間:これだけって決めることはしないで、いろいろやってみた中から自分に合うもの、得意なことを見つけることができたら、楽しみも出てくると思います。「楽しくなくてもやらなきゃいけない」というメンタルでは絶対に伸びないと思うんです。合うか合わないかはやってみないとわからないし、できないと思っていたこともやってみたら意外とできるかもしれないですからね。