レッドブルが主催する3×3世界一決定戦が10月に開催へ…日本代表チームを決めた「Red Bull Half Court 2024 Japan Final」に迫る
FIBA3x3に独自ルールを採用したトーナメント
レッドブルが主催する「Red Bull Half Court」(以下RBHC)は、3x3のグローバルトーナメントである。2017年にはじまり、2021年に日本へ上陸。毎年各国の予選を勝ち抜いたチームが一堂に会して、世界No.1の座を争う。国際バスケットボール連盟(FIBA)の3x3ルールを採用しながら、RBHC独自のルールを設けて、よりオフェンスが有利になるよう競技をデザインしている。
その独自ルールのひとつは、「3ポイントスポット」の設置である。3x3の得点はアークの内側が1点、外側が2点であるが、RBHCではアークの後方に3点を稼げるスポットを導入。左右のウイングから長距離砲を射抜けるシュート力があると、接戦での駆け引きに面白味が増す。
また、大会は予選グループと決勝トーナメントで構成される中、予選グループでは勝ち点制を導入しているのも、見どころのひとつ。勝利チームへ「5点」が付与されるとともに、予選全試合の合計得点が最も高いチームには「オウン・ザ・コート・ボーナス」という追加点が「6点」も与えられる。この仕組みによって全勝でも予選を首位通過できないケースがあるだけに、試合終了まで攻め続ける意識が求められるのだ。
そんなRBHCは、4月より国内4都市で予選会が行われ、7月20日の敗者復活戦を経て、同21日には日本代表チームを決める「Red Bull Half Court 2024 Japan Final」がアイルしながわで開催された。倉庫をリノベーションした会場には男子8チーム、女子4チームが集結したほか、ダンクパフォーマンスのために169センチのプロバスケットボールプレーヤー・高橋幸や、ライブペイントのためグラフィックデザイナーのMQさんも登場。スポーツとアートが融合する中で熱戦が繰り広げられ、男子はHIU ZEROCKETS.EXEが、女子はTOKYOVERDY.EXEがチャンピオンに輝いた。
セルビアの新鋭が、HIU ZEROCKETS.EXEの優勝に貢献
そのチャンピオンの戦いぶりを振り返ると、男子のHIU ZEROCKETS.EXEは4チームよる予選グループを3連勝で突破。残り1分までクロックが止まらないRBHC独自ルールの中で、3試合とも15点以上を挙げたのは、8チームの中で彼らだけだった。
そして準決勝では接戦の末にNINJAAIRSを12-10で撃破。3×3 U18セルビア代表経験のあるDušan Simjanovski(190㎝)が延長戦に持ち込む2ポイントシュートを射抜くなど、チームの逆転勝ちに大きく貢献した。
決勝でも、HIU ZEROCKETS.EXEはSimjanovskが試合中盤に拮抗した展開から抜け出す連続得点をマークして、チームに流れをもたらす。一時、井後健矢(195㎝)がベンチに下がるアクシデントもあったが、松澤大晃(200cm)が2ポイントシュートを決めるなど何度も迫るSaitama Liplaを振り返り、草野佑太(185㎝)がフリースローを決めて16-14で逃げ切った。
彼らは本来SAGAMIHARAというチームで国内外を転戦しているが、RBHCには活動提携先のHIU ZEROCKETS.EXEとして出場。試合後、チームの中心である草野は優勝について「ニューヨークという憧れであり、バスケットボールのメッカでもある土地に行けるのが本当に嬉しい」とコメント。今季は春先からSimjanovskiをはじめ、多数の外国籍選手らを迎えた中で4カ月が経ち、チームの成長を感じている様子だった。この日の優勝は、また一つ彼らの力になりそうだ。
「シーズン最初はシステムがかみ合わなかったり、お互いにパーソナリティが分からずに苦戦しましたが、最近ようやく国内外のトーナメントで結果が出るようになってきました。次は世界で結果を出すという目的に対して、どこまでやっていけるかチャレンジしたいです。この大会でチャンピオンになれたことは自信になりますし、もっと成長できる糧になると思います」
また、優勝の立役者になったSimjanovskiは「トーナメントはとても難しいものでした」と明かし、準決勝がポイントだったと言う。「NINJAはとても良いチームでした。私が延長戦につながるラッキーショットを打って、勝つことができましたし、決勝もとてもタフでした。でも、ゲームに集中できて勝てましたね」と語った。
加えて、昨年の世界王者がセルビアだった結果を踏まえて、同国が3×3で強い理由を尋ねると、22歳の新鋭は自身の考えを話した。World Finalでの対戦も期待したい。
「セルビアは、練習にとても力を入れています。ここで大事なのは、練習はトーナメントよりもハードでなければなりません。セルビアには経験豊富な素晴らしい選手とチームがいて、毎週3×3のトーナメントがあります。日本もセルビアのようなに大会がたくさんあるので、(これから)日本のプレイヤーがレベルアップすることを願っています」
優勝のTOKYOVERDY.EXEに、涙した選手あり
一方で、女王になったTOKYOVERDY.EXEは、4チームによる総当たり戦を3連勝して予選グループを首位で突破。決勝では、ライバルのFLOWLISH GUNMAと大接戦になったが、終盤にかけてディフェンスで12秒バイオレーションを誘い、八木希沙(165㎝)が的確にショットを沈めるなどリードを奪い、12-10で逃げ切った。
チームとしては初のRBHCのタイトルを獲得。選手たちにとっては、2年前にG FLOWとしてJapan Finalを制して以来、2年ぶりのチャンピオンになった。
試合を終えて、矢上若菜(168㎝)は「久しぶりに国際大会へ行ける切符を獲れました。最近、海外の出場権を懸けた試合で群馬に負けていたので、勝てたのはすごく嬉しいです」と、笑顔でコメント。吉武忍(171㎝)もチームで勝ち切った結果に胸を張った。
「群馬が先日世界大会(=FIBA 3×3 Women’s Series Langfang stop)で準優勝されて、なおかつスピードの速いガードの(高橋)芙由子ちゃんもいるし、シュートの正確なジャンさん(=横井美沙)もいる。うちらでは絶対に止められないような大きな選手(=Amanda Tivenius)もいる中でどうやって守ろうかと、たくさん喋ってみんなでやろうと決めたことができました」
また、大会へ懸ける思いも強かったようだ。矢上はWorld Finalに向けて「2年前のエジプトでうちらが優勝して、わたしも吉武も八木も行きましたが、井齊(沙耶/178㎝)が行けなくて。それこそ井齊は決勝後に泣いていましたし、それくらい彼女は思い入れのある大会でした。今度は彼女も連れて世界大会で頑張ります」と意気込んだ。
その井齊は、表彰式が終わって少し経ったあとに「ホっとしています。また涙が出てきそうな感じです(笑)」と切り出して、こう続けた。
「自分が出場した大会で久しく優勝していなかったので、負け続けていた群馬に勝てて本当に良かったです。G FLOWとして出場した2年前は、チーム結成1年目でビックセンターがいましたが、2年目以降は機動力を武器にみんなで走って動くバスケへ変えました。私たち4人にとっての3年目はTOKYOVERDYとしての活動になり、チームがかみ合った良い形が今日出たと思います」
そしてニューヨークに向けて、彼女は仕事をしているだけに有給の残数を聞くと、意外な発言まで飛び出した。2年前に会社を休む調整が難しく、エジプト行き断念した経験は、人生の転機になったようだ。
「有給は大丈夫です!実は転職したんですよ。ずっとエジプトに行けなくて悔しかったんです。社会人としては仕事を優先するのが当たり前ですが、バスケは体が動く今しかできないと思って。転職して、柔軟に休みの相談ができそうな会社で働いています。上司への相談は、これからですね。2年前みんなはエジプトで優勝しているので、今回はニューヨークで優勝したいと思います」
ライブペイントをしたMQさん…その面白さを明かす
そんな男女ともに熱い戦いが繰り広げられた中、コート外でも来場者の注目を集めた場所があった。グラフィックデザイナー・MQさんによるライブペイントだ。6月に渋谷で行われた「NBAフェス」でのライブペイントに続き、今回が2回目。SpaceBall Magのトラックの荷台に表現の場を移した。オファーの主はSpaceBall Mag主宰のBANG LEE氏だという。
MQさんは前回のポスカから絵の具へ道具を持ち替えて、大きな壁面に対峙。ライブペインならではの面白さを明かしてくれた。
「(見に来てくださる方の)視線を感じながら描くのは、自分の思考を探られているような感覚です(笑)。今回はフィーリングで壁面の余白を埋めながら、色のバランスも考えつつやりました。見ている方たちが、私の頭の中を見ながら完成形以上に、そのプロセスを見られるのは、ライブペイントの面白さですよね」
ちなみに、まだ予定はないものの、3回目のライブペイントに向けては「どこかで修行を積んで」スタイルを確立していきたいとのこと。それでも「新しく自分ってこんな表現ができるんだという発見ができる機会だと思っています。また挑戦していきたいですね」と、MQさんは話してくれた。
20カ国より集結する世界一決定戦で躍進できるか
そんなJapan Finalを制した2チームが挑むのが、10月19日、20日にニューヨークにあるブルックリン ブリッジ パークで開催される「Red Bull Half Court World Final」である。世界20カ国で開催された予選を勝ち抜いた男子20チーム、女子13チームがマンハッタン島を望むリバーサイドにセットされた特設コートで頂点を目指す。
ディフェンディングチャンピオンのセルビアや開催国のアメリカのほか、ウクライナやカザフスタン、インドなどからも精鋭たちがやってくる。FIBA主催の3×3ワールドカップで目にすることないチームが登場するあたりに、バスケットボールのすそ野の広さが感じられる。
出場チームは10月17日に現地入りして、18日の組み合わせ抽選会を経て、19日のグループステージに臨む。20日のファイナルズには男女8チームが駒を進め、準々決勝からワールドチャンピオンの座を懸けて最後のバトルが繰り広げられる。
日本勢の戦績を振り返ると、女子の活躍が目覚ましく、過去2大会連続で決勝へ進出。2022年はG FLOWが優勝を遂げ、2023年もFLOWLISH GUNMAが準優勝。男子も2021年こそHIU ZEROCKETSがグループリーグ敗退だったが、BEEFMANが2022年に準優勝し、2023年もベスト8に食い込んでいる。
今夏のパリオリンピックを機に、一段と世界中で注目されている3×3シーンで日本勢がどんな結果を残せるのか。ニューヨークでトロフィーを掲げる姿に期待したい。
【World Final大会情報】
●公式サイト(リンクは外部サイト)
【Japan Final試合結果】
●男子
予選A——————–
・NINJAAIRS 11-10 ALEST AGEO
・South Central Saitama 8-21 Team Q4 湘南
・NINJAAIRS 15-11 Team Q4 湘南
・ALEST AGEO 17-15 South Central Saitama
・NINJAAIRS 17-13 South Central Saitama
・ALEST AGEO 18-11 Team Q4 湘南
予選B——————–
・HIU ZEROCKETS.EXE 16-8 KAGOSHIMA EXPLORERS
・Saitama Lipla 10-6 BEEFMAN
・HIU ZEROCKETS.EXE 16-12 BEEFMAN
・KAGOSHIMA EXPLORERS 16-19 Saitama Lipla
・HIU ZEROCKETS.EXE 15-13 Saitama Lipla
・KAGOSHIMA EXPLORERS 9-20 BEEFMAN
Semi Final—————–
・ALEST AGEO 11-15 Saitama Lipla
・HIU ZEROCKETS.EXE 10-12 NINJAAIRS
Final———————-
・Saitama Lipla 14-16 HIU ZEROCKETS.EXE
●女子
予選———————-
・TOKYOVERDY.EXE 13-11 FLOWLISH GUNMA
・JOAHN 6-21 XliV
・TOKYOVERDY.EXE 12-4 XliV
・FLOWLISH GUNMA 19-7 JOAHN
・TOKYOVERDY.EXE 13-11 JOAHN
・FLOWLISH GUNMA 12-8 XliV
Final———————-
・FLOWLISH GUNMA 10-12 TOKYOVERDY.EXE
- レッドブルが主催する3x3世界一決定戦が10月に開催へ…日本代表チームを決めた「Red Bull Half Court 2024 Japan Final」に迫る
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TEXT by Hiroyuki Ohashi