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  • 2020.03.04

オリンピックイヤーの3×3日本選手権、初制覇のチャンピオンたち

2月22日、23日の2日間に渡って、『Yahoo! JAPAN 第5回 3×3 日本選手権大会』が、大森ベルボート(東京都品川区)で開かれた。同大会の開催は2年ぶり。全国各地の予選を勝ち上がった男女各16チームが、頂点を目指して激突。“日本一”の称号、さらに男子チームにとっては、2020シーズンのプロサーキットへ繋がる大一番となった。

好対照な新チャンピオンの誕生

 男女そろって新チャンピオンが誕生した。その顔ぶれは好対照だが、両者とも優勝をかみしめた姿が印象的だった。男子はこれまでビックトーナメントで勝ち切れなかったTEAM TSUKUBA(茨城県)が、決勝でDIME BLACK(長崎県)を21-15で撃破。ついに大きな壁をぶち破って、初めてのタイトルを手中に収めるとともに、プロサーキットの今季初戦、『FIBA 3×3 World Tour Doha Masters』の出場権を獲得した。

そして女子は国内シーンをけん引するREXAKT(山梨県)が決勝でSIMON(神奈川県)に20-11で快勝。これまで『3W(TRIPLE DOUBLE)』や『3×3.EXE TOURNAMENT』などを制してきた強豪が、日本選手権で初Vを決めた。

REXAKTここに在り

 チーム結成から2年。女王に新たな勲章が加わった。過去、国内大会の頂上決戦で彼女たちを見ないことのほうが少なかったが、先月のJAPAN TOUR FINALでは4位に沈んだ。それだけにカムバックした姿を見ると、改めて3×3で“REXAKTここに在り”と、感じさせてくれる。大会MVPに選ばれた矢野良子(#12)も 「狙いに行って獲れました。本当にこの結果を試合で出せたことは良かったと思います」と振り返る。

 準決勝で前回大会の覇者・QUEEN BEE(千葉県)を退け、決勝では先月のJAPAN TOURで2位のSIMON(神流川県)に完勝。運動量豊富な選手たちがドライブと2ポイントシュートで攻勢を仕掛ける相手だけに、苦戦をするチームも多いが、「ディフェンスはドライブでやられてもいいから、2ポイントだけは1本も打たせないようにしよう(矢野)」と、的を絞った守備を徹底。オフェンスでは高さをいかしてインサイドを軸に主導権を握り、要所で前田有香(#11)らが外角から射貫いた。

 矢野、前田、石川麻衣(#3)、名木洋子(#45)は、競技の黎明期より3人制をプレーする先駆者たち。かつてはWリーグで活躍し、3x3で日の丸も背負った。4人ともベテランの域に入っており、矢野は「(決勝はこの日)2試合目だったので、動けるか不安でした」と体力的な心配を隠さなかったが、「選手たちが集中して試合の最初に話し合ったディフェンスができていたので、それが最後に優勝へ繋がったのかな」とコメント。勝負所で自分たちのプレーをやり切る力は健在だった。3x3の歴史を紡ぐ主役であることにまだまだ揺るぎはない。

世界を目指すTSUKUBAが待望の初V

 一方で、男子のTEAM TSUKUBAは主要大会で待望の初優勝だ。過去、何度も立ちはだかったDIMEを破っての頂点に、大会MVPに選出された大友隆太郎(#12)は、「やっとですね・・・ やっと優勝できました。本当に嬉しいです。まだ実感ないですけど(笑)」と、喜びに浸った。

 チームは2018年に始動。その顔ぶれは少しずつ変化をしながら、日本選手権の戴冠へ至ったが、「あまりにも勝てない時間が長かった」と大友が言うように世界大会に直結するゲームをモノにすることができなかった。あと一歩、立ち上がりさえ良ければ、ここで我慢ができれば、というような悔しい場面も思い起こされるが、今大会は違った。準々決勝でHACHINOHE DIMEに21-20で競り勝ち、準決勝ではSENDAI AIR JOKERに先行されたが、Bリーグ・サンロッカーズ渋谷に所属するコナー・クリフォード(#42/213cm)のインサイド勝負に徹して22-17の逆転勝ちを引き寄せた。

決勝では大友がチームトップの10得点を挙げ、クリフォードはゴール下で大きなアドバンテージとなった。清水隆亮(#24)も終盤にリードを広げる2連続2ポイントシュート、梅林聡貴(#1)もゲームをしっかりと繋いで見せた。「3試合とも気が抜けない試合で本当に苦しかったですけど、本当にチームのみんなで勝ち抜けて良かった(大友)」と、4人が一丸となった末の優勝劇だった。

 ただ、彼らにとって、ここは通過点でもある。大友は「全然まだまだ満足していない」と話して、こう続けた。「(UTSUNOMIYA)BREXは出場してないし、DIMEには落合(知也)さんがいなかった。完璧な状態のこの2チームを倒さないと意味が無いです。僕らは今回、世界への挑戦権を得られたので、スタートダッシュをかまして、BREXやDIMEのような(プロサーキットを転戦する)流れに今シーズンこそ乗りたいと思っています」。世界で戦う国内2強と肩を並べるため、ここから真の勝負がはじまる。

オリンピックイヤーを国内外で盛り上げたい

 新型コロナウイルスの影響で延期や中止がなされた大会も出てきており、その影響が心配されるところだが、感染の拡大防止に努めつつ、事態の収束を願うばかり
だ。

 男子は、まず4月のDoha Mastersに出場するTEAM TSUKUBAに大きな期待が集まる。DIMEの小松昌弘が「内容がどうであれ、ベスト8に入って2日目の決勝トーナメントに残って欲しいですね。見える世界が変わりますし、国内のバスケも盛り上がる」と言えば、鈴木慶太も「プロサーキットの常連が3チームになれば嬉しいことです。日本のチームとしては稀なサイズのあるチームなので、どういう戦い方をするのか楽しみです。行くからには結果を出して欲しい」とエールを送る。良い「結果」であれば、あるほど、日本の3×3にとって追い風になる。

 そして女子は今月18日から日本代表が五輪への切符をかけた『FIBA 3×3 Olympic Qualifying Tournament』をインドで迎える。REXAKTの矢野は「オリンピックイヤーなので、私たちがどういうふうに盛り上げられるか分からないですけど」と前置きしたうえで、「男子は決まっているので、女子には頑張って是非、オリンピックに出てもらいたいです。私たちも3×3が人気になるように何か力になれればと思っています。是非、注目して頂いて、皆さんにも会場に起こし頂けたらと思っています」と語った。

 地元開催のオリンピックで初の正式種目になった競技であるが、その人気はまだまだ道半ばだ。今後、さらに3×3が広がるためは、REXAKTのような最前線でプレーする選手たちの存在があってこそ。見る者は間違いなく魅了されていくことだろう。




TEXT by Hiroyuki Ohashi

Yahoo! JAPAN 第 5 回 3x3 日本選手権大会

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