• COLUMN
  • 2020.03.02

You can fly higher more ~FUTURE BOUND CLASSIC 2020 Powered by adidas REPORT

FUTURE BOUND CLASSIC(以下FBC)は、今年で5回目の開催を数えた。高校バスケ界を沸かせた高校3年生たちが、住み慣れた街の気の置けない仲間たちとタッグを組み、一日限りの5対5トーナメントを戦うこのイベントは、高校生にとって憧れの存在になりつつあるようだ。

MVPを獲得した菊地広人(Team Shizuoka/藤枝明誠高)は、このイベントのために、北海道の実家から東京にやって来た。「これ、出たかったんです。去年知って、自分も絶対出たいと思っていたら連絡が来たので、すぐに返事しました」。ダンクコンテスト優勝者の須藤タイレル拓(Team Kanagawa/横浜清風高)も、かねてから出場を熱望していたという。

全国大会に出場するエリートたちは、盆も暮れも、ガールフレンドとのデートの時間すらも返上して、3年間をバスケットボールに捧げてきた。FBCは、そんな彼らにとっての”卒業前のご褒美”とも言えるイベントだ。




自分が一番面白いと思うプレーをする

競技としてのバスケットボールは、レベルが上がれば上がるほどプレーの制約が増える。コーチには目指すべきスタイルがあり、それにフィットする選手を起用し、選手は厳格なプレールールに基づいて、与えられた役割を遂行する。コーチの哲学にそぐわない選手は当然プレータイムを与えられないし、ルールと異なるプレーをすれば容赦ない叱咤が飛ぶ。これは高校バスケに限った話ではない。FBCオーガナイザーのBANG LEEの言葉を借りれば、グレッグ・ポポヴィッチにだって選手の好みがあるのが当然なのだ。

一方、別々の高校から集まったメンバーが、ほぼぶっつけ本番に挑むFBCに、細かなプレールールは存在しない。選手たちは、BANG LEEに与えられた「自らの責任で、自分が一番面白いと思うプレーをする」というメッセージのみを頭に入れて、高校の部活とは異なるパフォーマンスを見せた。

例えば、Team Kagoshimaの野口侑真(県立川内高)。U20日本代表の長身オールラウンダーは、公式戦では表情を変えず黙々とプレーする選手だったが、FBCでは別人と見紛うほどに、全身で豊かな感情を表現していた。Team Kagoshimaとしては初戦敗退だったが、オールスターゲームではU20のチームメートの江原信太朗(Team Tokyo/実践学園高)と1対1のアンサー合戦を繰り広げ、オーディエンスを沸かせた。

聞くと、硬派なスタイルを掲げる川内高校では、コート上で本来の自分を表現することが難しかったという。「1対1メインで、表現力で楽しむバスケは、めっちゃ自分に合ってて楽しかったです」。野口は笑顔でそう話した。

ストリートボーラー顔負けのハンドリングを披露した平井敬悟(Team Saitama/中部大第一高)は、高校バスケの引退を応援席で迎えた。動画を見て独学で磨き続けたドリブルは、チームプレーを重んじる競技バスケでは発揮する機会がなく、かわりに求められたパスで自らの持ち味を押し出すには至らなかった。

「高校ではあまり試合に出られなかったんで、プレーできたこと自体が楽しかったです。こういう場所で自分の武器を発揮できてよかった。試合に出られなくても、ずっとドリブルを練習してきてよかったって思いました」。そう話す平井の表情は、話を聞いているこちらが泣けてくるほどの充実感であふれていた。

Team Tokyoの山口浩太郎(実践学園高)は、高校公式戦でほとんど見たことのないような、高度な1対1テクニックを次から次へと繰り出していた。1対1を求められるのはもっぱらエースの江原。山口の仕事はチームで作ったシュートを打つことだった。山口は、「あんなプレーができるとは思ってなかったので、自分でもびっくりです」と興奮した面持ちだった。

チームプレーという鎖から放たれた若者たちは、自分が、周囲どころか自分の想像を超えたところまで飛べることに気づく。FBCはそのきっかけを与える、非常に貴重なイベントとなっている。

それぞれの進路、それぞれの目標

FBCに参加した選手のほとんどが、大学でもバスケットボールを続ける。運転免許をとったり、旅行に行ったり、夜遅くまで友達と遊んだり……引退後のわずかばかりの余暇を謳歌した彼らの視界には、当然次のステップも入っている。

福岡大学附属大濠高校の横地聖真(Team Aichi)と木林優(Team Tokyo)は、2日後から始まるU22日本代表合宿を控えていた。引退後の2か月弱で6キロ太ったという横地は、「そろそろ自分の体に向き合わないと……」とうらめしそうに自分の腹部に目をやり、そこをパンと強く叩いた。

高校3年間、ずっとライバルとして戦ってきた河村勇輝(福岡第一高)が、Bリーグの舞台で大活躍を遂げている。思うことはあるかと尋ねると、「自分も、免許をとるくらいだったらバスケしたかったな…という思いもあります」とポツリ。進学先の筑波大は、河村が進学する東海大とは常に競り合う間柄ということもあり、ライバル関係はこれからも続いていく。「高校では勝てなかったので、大学では絶対にあいつに勝ちたい。まずはこのお腹をなんとかして、あいつに負けないくらいがんばります」と宣言した。

全国大会の出場経験はないが、知る人ぞ知る怪物としてならした須藤は、スラムダンク奨学生として、3月末にはアメリカに渡る。

武器は、規格外のウイングスパン(身長183センチに対し201センチ)と跳躍力。そして、どんなにシュートが入らなくても攻め続けることができるエゴイスティックさ。しかし、この才能がアメリカでは”普通”の範疇に収まってしまうことを、須藤はよく理解した上で、渡米の準備をしている。FBCで見せた、シュートに跳んでからの素早い腕さばきもその一つ。「こういうプレーができないとアメリカでは生き残れないので、よく練習からやるようにしていました」と教えてくれた。

夢はもちろん、NBA。「ドライブと外のシュートをしっかり鍛えて、プレーの幅を広げていきたい」と抱負を語った。

いつもで全力でプレーすることで大きなチャンスをつかめ

冒頭で触れた通り、FBCは高校生にとって憧れのイベントになりつつある。すでに「来年は俺も…」と息巻く選手もいることだろう。BANG LEEはそんな選手たちに向けて、アドバイスを送った。

「FBCは何かのトライアウトでもないし、卒業前の楽しいイベントととらえてもらって全然構わない。ただ、誰が見ているか分からないなかでも全力でプレーできる選手は、転がっている大きなチャンスをつかむことができる。これはぜひ、頭の片隅に置いていてほしいです」

例えば、FBCをサポートするアディダスは、シグネチャープレーヤーであるジェームズ・ハーデンやトレイ・ヤングのような、唯一無二の個性の持ち主を探している。第3回のFBCに出場したキング開(専修大2年)は、当時全国的に無名だったが、FBCでのパフォーマンスがアディダスの関係者に目に留まり、アディダスのサポートを受けるようになった。キングのような例はそうそう起こることではないだろうが、プロクラブのコーチやエージェントがプレー動画を偶然見かけ、それをきっかけに次のキャリアが開けるという想像は容易にできる。



BANG LEEのメッセージにより、第6回の出場者に対するハードルが一段高くなった。ただ、尻込みする必要はない。コートですべてを表現しさえすれば、君たちはそれを軽やかに飛び越えていくはずだ。





TEXT by miho awokie

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