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  • 2021.07.24

3×3日本代表の歴史。先駆者たちがTOKYOへ切り開いてきた道

先駆者たちが道を切り開き、ついに本日、3×3日本代表が東京オリンピック初戦を迎える。歴代の日本代表を振り返ると、2013年に男子代表が始動し、2016年には女子代表もスタート。これまで多数の選手やスタッフが日の丸を背負ってきた。その歩みを知り、東京・青海のコートで表彰台を目指す選手たちへエールを送りたい。

元5人制五輪経験者が3×3へ
 まず女子代表の歩みを紹介したい。初代代表チームは2016年の世界選手権へ大学生を派遣したことにはじまる。日向野由紀、川原明香里、森海生香、吉武忍の4人で挑んだが、経験不足とあって結果は全敗……ただ、この名前を見て、お気づきの方もいるだろうが、現在TOKYO DIMEでプレーする吉武は、このメンバーの一人だった。
 そして2017年には3人制代表に5人制でトップキャリアを築いた選手たちが参入し、顔ぶれが一気に変わる。アテネ五輪5人制代表でトヨタ自動車の矢野良子が3×3へ転向し代表入り。同じくアテネ五輪を経験した立川真紗美(現3×3所属YAIZU GR UNITED)や、Wリーグ経験者で静岡ジムラッツの花田有衣(現姓:鈴木/現3×3所属YAIZU GR UNITED)、飯塚めぐみによるチームでW杯に出場し、予選敗退に終わったが女子A代表として初勝利を挙げた。

 続く2018年にはアジア杯へ立川が再び選ばれ、石川麻衣(現3×3所属YAIZU GR UNITED)、名木洋子(現3×3所属同)、前田有香(現3×3所属BEEFMAN.EXE)が初の代表へ。3×3を積み始めた元Wリーグ経験者という布陣で、1大会2勝を挙げてベスト4まで駒を進めた。

ストリートから日本代表へ
 続いて男子代表の歩みは、さらに年月をさかのぼる。初代代表チームの結成は2013年だ。第1回アジア選手権(現アジア杯)に向けて、当時bjリーグの東京サンレーヴスで活躍した青木康平に、大塚商会アルファーズの長谷川聖(現3×3所属TRYHOOP OKAYAMA)と長谷川武、平塚Connectionsの池田千尋(現3×3所属TACHIKAWA DICE)を選出した。とりわけ池田は、代表メンバーの公募セレクションを突破し、ストリートから日の丸を勝ち取った先駆け。結果は1勝2敗の予選敗退だった。

 翌2014年の世界選手権(現W杯)には前年度に落選した大塚商会アルファーズの落合知也(東京オリンピック代表/現3×3所属TOKYO DIME)、F’SQUADの鈴木慶太(現3×3所属TOKYO DIME)、UNDERDOGの高久順(現3×3所属TOKYO LEDONIARS)と野元勇志が最終メンバー入り。予選敗退だったが世界で1勝をもぎ取った。
 そして2016年の世界選手権にはRBC東京の小松昌弘(現3×3所属TOKYO DIME)と学生の川内滉大(現3×3所属YAIZU GR UNITED)が初代表へ。落合、鈴木との4人で初日に2勝を挙げたが、2戦目に落合が負傷。その後、3人で戦った日本は2連敗し初の決勝トーナメント進出を逃した。さらに2017年のアジア杯では落合、小松、川内に、三遠ネオフェニックスの比留木謙司(現トライフープ岡山GM兼HC)が初めて日の丸を背負ったが、ベスト8敗退の苦渋をなめた。
 それでも2018年は歴代の男子代表におけるハイライトを作る。落合、小松、鈴木の3人に、野呂竜比人(現3×3所属BEEFMAN.EXE)が初の最終メンバー入りを遂げ、4人が代表活動と並行して世界を見すえたTEAM TOKYOを結成。春先から国内外の試合を転戦することで、チームケミストリーを構築し、5月のアジア杯では3位決定戦を制して銅メダルを獲得した。男子のA代表が国際大会の舞台で表彰台に登った実績はこれまで、この1度のみ。小松は結果を出せた要因について「Bリーガーを入れるべきとプレッシャーがあった中、当時のスタッフと選手が一丸となった結果、3位になることができました。特に選手の個性を活かせた大会だと思います」と振り返った。また大会ベスト3に選ばれた鈴木も2016年の世界選手権で悔いの残る結果だったことを胸に「なんとしてもまた(代表の)コアメンバーで結果を残したいという気持ちが強かった」と当時を回顧したうえで「ここでメダルを取らなければ、自分のようなストリートの選手は終わりだと覚悟していました。大会にかける気持ちや想いが、運も重なって結果に現れた大会だったように思います」と振り返った。同年はW杯にも同メンバーで挑み、予選突破はならずも、強豪・ポーランドに肉薄する粘りを見せるなど、2018年の4人は、今も代表史に深く刻まれるている。

Wリーグ所属選手が3×3を積んだ先に
 しかし、ストリート生まれの選手や3×3をメインに活動する選手たちによって日本代表が構築されていった中で、2019年に転機が訪れる。東京オリンピックに向け、男女の強化責任者にトーステン・ロイブル氏が就任して、強化体制が大きく変化した。現役のWリーグやBリーグで活躍する有力選手や若手、学生年代の有望株が代表合宿へ招集。これまで3×3を積んできたメンツたちと競い合うフェーズに移った。
 これにより女子代表はメンバーが一新され、同年のアジア杯には富士通の篠崎澪(東京オリンピック代表)、三菱電機の西岡里紗(同)、アイシンAWの宮下希保(現トヨタ自動車)、デンソーの伊集南(2020年4月に現役引退)が選出。W杯には伊集、宮下に、前年のU23 W杯で世界2位になったトヨタ自動車の馬瓜ステファニー(東京オリンピック代表)と、富士通の栗林未和で挑んだ。ただ、Wリーグで活躍する選手たちであったが、3×3の経験不足を克服できず、アジア杯こそ3位に食い込んだが、W杯では1勝3敗の予選敗退。接戦を勝ち切ることができなかった。

 それでも女子代表は候補選手が5人制のオフシーズン中に、23歳以下の国際大会や、女子の国別対抗戦を転戦し、どんどん競技経験を積んでいったことが功を奏して、同年10月のU23W杯で世界一を成し遂げる。トヨタ自動車の山本麻衣(東京オリンピック代表)、馬瓜、西岡に、大学バスケ界のトップ選手だった永田萌絵(現トヨタ自動車)が、日本を世界から注目されるチームに押し上げた。
 さらに同年11月、東京オリンピックの開催国枠が取れず、五輪予選に回る憂き目にあったが、コロナ禍を乗り越えて、今年5月の予選で出場権を獲得。山本、馬瓜、西岡、篠崎という継続的に3×3を経験してきた4人が、プレッシャーと国際大会を経験できなかった1年のブランクをはね返して、見事にTOKYO行きを決めた。本番でも予選を戦ったメンバーで臨むだけに、チームケミストリーを高めることができれば、目標である「金メダル獲得」も現実味を帯びてくるはずだ。

Bリーガーらが本格参戦し代表入り
 また男子に目を向けても、代表メンバーにBリーガーの選出が加速。2019年のアジア杯には小林大祐(現3×3所属UTSUNOMIYA BREX)、藤髙宗一郎(現3×3所属OSAKA DIME)、保岡龍斗(東京オリンピック代表/現3×3所属BEEFMAN)、杉浦佑成(現3×3所属TOKYO DIME)のBリーガーで参戦。W杯には落合、小松の経験者に、小林と保岡の融合チームで世界に挑んだ。
 しかし、女子同様に結果は振るわず、アジア杯ではベスト8止まり。W杯では落合の怪我も響いて、決勝トーナメントへ進むことはできなかった。それでも、世界の高い壁を経験したことで、その後はとりわけ小林が5人制と両立してUTSUNOMIYA BREXで勢力的に国際大会を転戦し、落合や小松とともに代表を引っ張る中心選手の一人へ成長。予備登録を含めたオリンピックメンバーの6人には残れなかったが、Bリーグと3×3を行き来する選手として、競技シーンを引き上げてくれた貢献は間違いなく大きい。
 いよいよ迎える本番の五輪ロスターは落合、保岡と、2019年に23歳以下の3×3国際大会を経験したネブラスカ大学の富永啓生、元5人制代表の帰化選手である大阪エヴェッサのアイラ・ブラウンである。4人で組んだチームによる実践経験は不足しているが、6月の第3次、4次合宿はクオリティーの高い内容で取り組めたことで、チーム作りは進んだようだ。7月3日の内定選手会見でロイブル氏、落合ともに合宿の手ごたえを明かしていることに加え、オリンピックメンバーに残れなかった選手からも4次合宿に入る前であるが、その内容にポジティブな声が寄せられる。強化合宿を経て選ばれた男子代表には、その成果を檜舞台で見せつけて欲しい。7月中旬にセルビア代表と行われた4度の練習試合で1勝を挙げたという結果も目にするだけに、その真価を我々はおおいに期待する。

先駆者たちからのエール
 最後に話をうかがうことができた過去の日本代表メンバーから、オリンピック代表へエールをいただいた。本日からはじまる戦いで、誰もが活躍を願っている。3x3日本代表から吉報を待ち望みたい。

「国際試合などを色々と見ていますが(メダルの)可能性は無くはないと思います。ただ、オリンピックの舞台であったり、何かが懸かったりした時の重圧はあるので、そこは乗り越えて頑張って欲しいです」(矢野良子)

「彼女たちには本当に(オリンピックを)楽しんで欲しいと思います。私は楽しむ余裕がありませんでした。本当に選手たちの活躍が日本のバスケットボール界が変わるきっかけになれば良いなと思います」(立川真紗美)

「メダル取って欲しいですね。僕は誰が日本代表になろうと、応援したいと思っています。ただ、特に落合とはストリートからマッチアップもたくさんしてきましたし、昔からお互いよく知っているので、彼らしい姿をオリンピックで見たいです」(長谷川聖)

「応援しかないです。Bリーガーの方々が3×3に来て、代表になったことで(いろいろと)声が上がっているようですが、僕はそう思っておらず、むしろ彼らがこちらのシーンに来てくれて、同じ土俵で戦って勝ち取ったと思っています。そこはリスペクトしかないですね」(池田千尋)

「みんなの日本代表であることに間違い無いので、選手たちはとにかく怪我なく戦いきって欲しいです。(特に)WORM(ワーム/落合の愛称)に期待しています」(鈴木慶太)

「日本一強いチームだと思うので、全力で頑張って欲しいです。頑張れニッポン!」(小松昌弘)

『3x3日本代表の歴史。先駆者たちがTOKYOへ切り開いてきた道』

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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