世界の3×3強豪国はどうやって代表チームを強化しているのか?
東京オリンピックで3×3の出場国枠は、男女各8カ国。そのうち4カ国は去る11月1日に発表された。そして残る4枠は来年の予選大会によって、顔ぶれが決まる。今月2日、3日のFIBA 3×3 World Tour Utsunomiya Final(以下Final)に集まったチームには、母国の代表選手を担うケースが多く、当然のことながらTOKYOを目指す。彼らはどのようにしてナショナルチームのジャージに袖を通しているのか。その声を通して、各国が取り組む編成と強化の状況を探りたい。
代表チームを編成する
前提として各国の代表チームは、それを管轄するバスケットボール協会が編成を担う。その上で、それぞれの考え方があり、チームを選ぶのか、選手を選ぶのかなどの方針がある。男子日本代表を例にとれば、後者と言えよう。6月のW杯では代表合宿を経て、競技経験の豊かな2名と、適性を見込まれた2名によるスペシャルチームが編成されたことは記憶に新しい。
連盟とクラブが一心同体のリトアニア
今季、プロサーキットへ初参戦ながらFinalで6位に食い込んだリトアニアのŠakiaiは、母国の代表チーム(国別ランク11位)も兼務する。4人とも同国5人制リーグで2部に所属するクラブのチームメイト同士。3人制とシーズンが重なる時期もあるが、両立をしている。なぜそれができるのか?Paulius Beliaviciusは、「5対5のチームのボスが、3×3連盟のトップでもある」と明かす。「3×3連盟が立ち上がったばかりで、最初の年になります。発足にあたり、もともと5対5の選手であったボス(3人制の競技経験あり)が選ばれて、協会のメンバーになっています。ですから、ここのトーナメントにも僕たちは快く送り出してくれて、終わったら再び5対5に戻るようなカタチです」。それ故に、彼らのボスが代表チームの責任者である。「国のバスケットボール協会、主にこれまで5対5に注力していた協会の中に、3×3連盟が組み込まれていて、物事の決定権が1評分、3×3に与えられているような感じになります。全体のなかでも大きな位置を占めるようになってきています。協会のほうからいろいろな意見があるのですが、国としては5対5に良い選手がたくさんいるのです。ただ5対5で良い選手だからといって、3対3でも良い選手になれるとは限らない。そこは数年をかけて競技の違いを選手が実際に体験して、そこで3×3の選手としてやっていけるか判断される感じです」と語る。今後もリトアニアでは5人制のチームから3×3のチームを発足させる動きが計画されており、国内で競技力の向上がより一層、推進されていくことは間違いないだろう。
プロサーキットを評価する国々
一方で、協会がプロサーキットの戦績や国内ランキングのTOP4であることを鑑みて、ナショナルチームとして認めているところもある。今季のMastersを3度制覇したラトビアのRiga。Finalでも3位となり、同国代表(国別ランク8位)として出場したW杯でも過去最高の準優勝を成し遂げた。現在、世界No.1のNauris Miezisは、「我々のチームが世界の中でもベストなチームのひとつでのあることを、協会が評価をしてくれています。Rigaにナショナルチームをしょわせる信頼を置いてくれているから、僕たちが選ばれている」と話す。
また2年連続でFinal 4強のオランダ(国別ランク7位)・Amsterdamも同様のケース。Jesper Jobseは次のように答えてくれた。「我々もプロのチームとして協会のプログラムの中に入っているので、毎日練習する環境をもらったり、対戦相手を用意してもらっているなど、協力を得ています。今のところ、ベストな4人がいるチームということで、選んでもらっているのですけど、これからも4人の中から誰かが選ばれるのではなく、チームとして私たちを選ぶことがベストな選択肢と思ってもらえるような結果を残していきたい。最終的には協会が決めることですが、じつは協会のコーチが今回(=宇都宮)も僕たちに帯同してくれているので、そこの協力も得ながらチーム作りをしています」。加えてAmsterdamは、母国のオリンピック委員会からバックアップも受けており、「試合に関わることもそうですし、給与の支払いのことなど、お金のサポートも競技のサポートもしてくれています」と、競技に専念する環境が構築されている。
方針転換のあったスロベニア
他方では、国内でナショナルチームを決める大会を設けて、その優勝チームが務めるケースもあった。スロベニア(国別ランク6位)である。Finalの常連であるPiranのGašper Ovnik曰く、「前年度、国のトーナメントで一番ポイントを稼いだチームがナショナルチームとして選出されます。FIBA(のツアー大会)と同じように一位であったら100ポイント、二位であったら80ポイントといったように、試合ごとにポイントを重ねていって、(5大会で)最もポイントが高かったチームがナショナルチームとして選出される仕組みになっています」。
ただし、オリンピックを控えた今年、強化方針が変わることも合わせて言及している。「じつは協会から今年になって、正直言うと1、2カ月前の話ですが、Piranの4選手に、もう4選手を加えて練習やコンディショニング、試合に臨んで、合計8人の中から4人をナショナルチームとして選出することを決めるという話がきています」。同国にはプロサーキット経験のあるMilan KovačevićらU-23世代の若手有望株がおり、彼らが新たな代表候補として見込まれる。とは言え、Ovnikは「Piranとしては今の4人が(代表メンバーに)残って、みんなそろって2020年の東京オリンピックにいけることが目標になります」と、2014年のチーム結成から結果を出し続けてきたメンツで檜舞台に立つことも改めて誓った。
OQT突破を目指して
2020 TOKYOの切符獲得の戦いまであと約5カ月。3月のFIBA 3×3 Olympic Qualifying Tournament (OQT)でまず3つ、残り1つを5月のFIBA 3×3 Universality Olympic Qualifying Tournament (UOQT)で争う。プロサーキットはオフシーズンに入ったが、OQTへ出場する各国は強化に余念がないだろう。Finalに出場したカナダ(国別ランク18位)のEdmontonは、同国の個人ランキングTOP4で構成されたチーム。中心選手のSteve Sirは、「オリンピアンのような気持ちになって(OQTへ向けて)スケジュールを組んでいこうと思っています。いまプランとして挙がっていることは特定のヨーロッパのチームと一緒にトレーニングすることを考えている」と、大一番に向けて計画を練っていた。
またアメリカもOQT突破が必要な立場である。PrincetonのRobbie HummelはW杯で初優勝を飾るまでを振り返り、次のように話す。「ラスベガスで大きな大会があり、全てのチームが集まったということがありました。その後、僕たちはニューヨーク市内に集まって、フランスに1週間行って、アムステルダムに行きました。練習時間としては全然取れなかったのですけど、チームとしていつもバラバラ(=選手の居住地が離れているため、日ごろは一緒に練習する時間がなかなか取れないという意味)なので、ツアーを組んでもらったことで、チームとしての試合ができた。チームワークをとしては長い期間いれたことで非常に有効だったと思います。OQTに向けてもそのようなチームで集まってやる機会を増やしてもらえるのではないかと期待しています」。さらにHummelによると、NBAのデンバーナゲッツがPrincetonの練習相手を務めたこともあると明かし、「(ニコラ)ヨキッチ、ジャマール・マレーはいなかったのですけど、(現役の)有名どころが僕たちと対戦してくれた」とのこと。なんともアメリカらしいエピソードでもある。来るオリンピックでバスケットボールの母国がそのコートに立てない姿など、USAのプライドが許さないはずであり、強化へさらにエネルギーを注ぐことは想像に難くない。
五輪の本番以上に過酷なOQTを突破する4か国の精鋭は、どこになるのか楽しみだ。もちろん女子日本代表がTOKYOへの切符獲得を目指す姿を応援するとともに、男子日本代表も史上最強のチームが生まれることも期待したい。本大会を目前とした戦いが熱を帯びる。
- TEXT by Hiroyuki Ohashi
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取材協力:クロススポーツマーケティング株式会社/FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Final 2019実行委員会