3×3 JAPAN TOURに初参戦した選手たちの姿
3×3の見どころとして、プロアマ問わず多様な背景を持つ選手たちがコートにやってくることだ。それぞれ理由やモチベーションは様々であるが、バスケで挑戦することや、楽しさを見出す。コロナ禍での開幕となった2020シーズンも3×3 JAPAN TOURには、新しい顔ぶれがあった。
チャレンジのひとつとして
9月19日に開幕した『3×3 JAPAN TOUR 2020 EXTREME Limited』は早くもRound.4まで終了した。これまで3×3シーンを作ってきた選手たちは、7か月ぶりの真剣勝負ができることに充実感をにじませている。その一方で、今シーズンからJAPAN TOURに初めて参戦する選手たちの姿もあった。彼ら彼女らは多様な背景を持ち、5人制に留まらない、新たなチャレンジのひとつとしてコートに立った。今回、数多くのプレーヤーがいる中で、男子・KAMAKURA RIZE.EXEの山田純也(#9)と、女子・SHOEHURRYの山田愛(#7)にフォーカスしてみたい。
初陣で勝利の立役者、30歳を越えての挑戦
「単純に新鮮な気持ちでした。楽しかったです」――KAMAKURA RIZE.EXEの山田純也は大会を終えてこう振り返った。今夏よりチームへ加入。Round.4が3×3のデビュー戦だった。身長188㎝、ドライブや中長距離のショット、ポストプレーまで多彩にこなす男は、初陣のSENDAI AIR JOKER戦で終盤に18-20と劣勢の局面から、2本の2ポイントシュートを立て続けに決めて逆転勝ちの立役者に。Crayonには敗れたが、体の強さをいかして外国籍選手とのマッチアップでも食い下がった。
彼の名前を見てバスケ通の方なら、一度は名前を耳にしたことがあるかもしれない。高校時代は福岡大学附属大濠高校で活躍。同校を率いる片峯聡太コーチ、3x3日本代表候補の小林大祐(茨城ロボッツ)は同級生であり、インターハイでは準優勝を経験した。早稲田大学を経て、卒業後は横河電機バスケットボール部 WILD BLUEで5人制の選手としてプレーをしている。
現在33歳。彼を3人制に向かわせたのは、周囲の環境だったようだ。「知り合いや元チームメイトが3×3をやっていることは、SNSを通して情報が入っていました。それでちょっと興味を持ち始めまして、自分自身もプレーをしたいと思うようになりました」。どうすればプレーできるのか、彼は自分で調べ、選手登録の方法を知人に確認しながら準備をしたという。そしてRIZEに入った経緯については「中止にはなりましたが、3×3.EXE PREMIERの2020シーズンで選手登録をしたときに、横河電機の先輩で、チームメイトの飯島章仁さんに声を掛けていただきました」と教えてくれた。
今回、試合を見て印象的だったことがある。競技に取り組んで日は間もないが、Round.4で初めての公式戦だったとは思えない、堂々した姿があったからだ。本人は「そう言ってもらえると嬉しいですね。しどろもどろなプレーはしていませんでしたか?」と笑っていたが、勝負強さの光ったシュートはもちろんのこと、外国籍選手に臆せずアタックすることや、タイムアウトやプレーが切れたタイミングで仲間に接する様子は、早くも攻防の中心であるように感じさせてくれた。
今後は5人制と3人制の活動を両方やっていく予定だという。30歳を越えての新たな挑戦。「すごい刺激になります。今日の試合を体感して、改めて3×3に対しての興味が深まってきました」と意欲的なコメントも聞かせてくれた。これからチームとともに成長する彼の姿を注目するとともに、いま日本を引っ張る同級生とマッチアップするシーンも想像してしまった。
彼女の「冒険」に刻まれた3×3参戦
JAPAN TOUR参戦は彼女の「冒険」の過程にあるひとつなのだろう――SHOEHURRYの山田愛(#7)はRound.2に続けて、Round.4に出場した。決勝進出を逃して、「個人的にはシュートが入らないと厳しかったです。チームとしても3x3ならのでは戦い方をもっと練習で磨いて、結果に繋げていきたいですね」と話した。だが身長170㎝で当たり負けしないドライブやディフェンス、たしかなスキルを武器にコートでは存在感を放った。
彼女は桜花学園高校を卒業後、2014-2015シーズンに WリーグのJX-ENEOS(現ENEOS)へ入社。2018-2019シーズンで退社すると、活動の場をオーストラリアへ移す。5人制リーグ・NBL1に所属するAlbury Wodonga Banditsと契約。さらに3人制リーグ『3×3 hustle』にも出場して、同国の3人制代表選手と戦った経験を持つ。「彼女たちとマッチアップもしていて、1対1やチームとしても戦えました。それがすごい面白くて、エナジーにもなりました。私は他の国で、いろいろな選手とバスケをすることが、モチベーションになります」と異国で過ごした充実感を語ってくれた。いまの日本人女子選手では稀有なキャリアを歩んでいる。
現在25歳。英語は「ぺらぺらはしゃべれません」と言うが、「それを含めて“冒険”ですね」と山田は話す。バスケットボールで自分を表現することで、相手とつながり、視野も機会も広がっていくことが醍醐味だ。「W(リーグ)は良い経験だったし、違う国を見て知ることで、日本の良さもわかります。そういった経験をした上で、自分が選択してプレーできるので、いまはすごく楽しいですよ」と、インタビュー中の表情はイキイキしてきた。コロナ禍で帰国したのち、SHOEHURRYでの活動にも得るものが多い様子。「オープンランでワークアウトをさせてもらっています。いろいろと試すことができるし、新たな人と関われるチャンスでもあります。とてもいい舞台です」と明かしてくれた。
今後はオーストラリアに戻ることを選択肢に残しつつ、コロナ禍の情勢を見極めながら、ヨーロッパへ行くことも検討しているという。「目の前の大会で結果を残すこと、世界に挑戦することを大事にしていきたい」と、アドベンチャーな人生を彼女は突き進む。「トータルで見て、最終的にW(リーグ)だけじゃなくても、バスケットボールがしっかりできることを示したいです。実力が伴っていれば、もっと世界は広がっていく。私は実験台みたいに楽しんでいきます。それが良いカタチで未来に繋がってくれるといいですね」。彼女の生き方は今後、どのような展開を迎えるのか。冒険の1ページに刻まれた“JAPAN TOUR参戦”のその先もきっとワクワクすることが待っている。
FINALへ向けてツアーは終盤戦
このようなJAPAN TOURには3×3シーンに新しい風を吹かせてくれる選手たちがやってくる。しかしそれも残りわずか。FINAL(10/17-18)に向けて残るラウンドはあと2大会。終盤戦だ。Round.4までのツアーランキングをおさらいすると、男子はKOTO PHOENIXが首位をキープ。ただRound.3でTOKYO DIMEが3人で大会制覇。Round.4ではCrayonが圧倒的な強さを見せて優勝を飾った。Ryan Tana(#1)は「いつも勝っても負けてもチームプレイを忘れないようにしています。先週はF1 Tournamentで負けてしまって残念だったし、今日も3人しかいなかったので、思ったよりキツかった。でも優勝できて嬉しいです。ただまだまだ終わっていないよ。FINAL優勝を目指して頑張っていきたいです」と頂点を見据える。
女子はBEEFMANがRound.3で3連覇を飾ったが、TOKYO DIMEがRound.4でシーズン初Vを決めて、出場大会が1大会多いことでランキング1位へ浮上。ライバル・BEEFMAN不在の大会とあって、チームをまとめる森本由樹(#11)は「ある意味チャンス。でも勝たないといけないという気持ちがあったので、結果が出てホッとしています」と振り返る。もちろんライバルに白星を挙げられていない状況に悔しさは残るが、「ラウンドを通して、私たちはいま経験をさせてもらっています。負けても意味があると、みんなでプラスにとらえてますね。だから最後にぎゃふんと言わせたいです。FINALで優勝します」と宣言した。
今週末にはアキバスクエア でRound.5(10/3)とRound.6(10/4)を迎える。国立代々木競技場 第二体育館の最終決戦地へ向かう上位9チームはどこになるのか。注目したい。
- JBAが取り組む2020シーズンの3x3、Withコロナと将来を見据えて
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TEXT by Hiroyuki Ohashi