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  • 2022.05.17

3年目の『GLOBALLERSプロジェクト』――初の海外遠征へ始動

 2020年に10年計画でスタートした『GLOBALLERSプロジェクト』が3年目を迎えた。将来の“NBA選手”輩出を目指して、世界 ( GLOBAL ) と勝負できるBALLER (ボーラー)の留学を支援する取り組みは、今年ついに当初から掲げていた海外遠征へ向けて動き出した。3期生による始動初日をレポートする。

3期生の本気度
 2020年にはじまった『GLOBALLERSプロジェクト』は今年で3年目を迎えた。将来の“NBA選手”となり得る若き才能を発掘・育成するプロジェクトは、サン・クロレラで代表取締役社長を務める中山太氏を発起人として、プロデューサー兼コーチとしてSpaceBall MagのBANG LEEと、KAGO BASKETBALL SCHOOLのMARUが参画して、現場を取り仕切る。

 3期生は今年4月に中学1年生から3年生になる世代を対象に全国5都市で開催されたトライアウトの中から18名が選抜されて、Team GLOBALLERSとして活動する。3年目にして初めて中学1年生と2年生にも門戸が開かれ、18名中2名がメンバーに食い込んだことも、トピックスの一つである。

 そして1期生と2期生がコロナ禍の影響でプロジェクトの柱である海外遠征を断念せざるを得なかった中、3期生はようやく海を渡る動きができるようになってきた。世界的なコロナ禍の感染状況を注視しながらにはなるが、18名の選手たちはGLOBALLERS CAMPと呼ばれる国内合宿及び国内遠征でさらに絞り込まれ、勝ち抜いた数名が海外遠征チームとなるTeam GLOBALLERS JAPANとして渡米予定だ。順調に行けば、今秋にもアメリカ西海岸にある複数の高校やアカデミーを訪問し、練習参加や試合を重ねていく運びになっている。最終的に現地の学校よりスカウトを受けた選手に対しては、本プロジェクトより留学にかかる奨学金が支給される。※諸条件あり

 BANG LEEによると、今年は海外志向の選手たちが過去2年に比べて多く、これまで以上に楽しみだと言う。彼らから受ける印象をこう語った。

 「今年は奨学金を積極的に取りに来ている選手が多いです。能力や身長がずば抜けて高い選手はいませんが、ハートが強い魅力的な子が多いですね。渡米して現地校よりスカウトを受ければ、高校から海外挑戦に全てをつぎ込みたいという意志の固さを感じます。親御さんを含めて留学ができるのか説明会などで話もさせていただきました。トライアウトで目に留まった選手でも“アメリカは考えられない”という理由で、辞退した選手もいました。だから、本当に海外志向の選手が残っていますね」

過去2年と変えた初日のアプローチ
 去る4月29日から3日間に渡ってTeam GLOBALLERSは東京と神奈川でGLOBALLERS CAMPを行った。18名中17名(1人はケガで不参加)が全国から集まって初めて顔を合わせ、海外遠征に向けて第一歩を踏み出したのである。

 3日間の合宿では渡米を見据えたプログラムが随所に組まれた。チーム練習はもちろん、昨年に続き在日アメリカ人などインターナショナルな選手たちがいるTokyo SamuraiやHoudini’s Problems Basketballとの練習試合を行うことに加えて、初日から2日間、英会話のレッスンと外国籍コーチによるワークアウトを新たに導入。英語による課題も与えられた。GLOBALLERS事務局によると、ケガで参加できなかった選手も合宿メンバーが練習する間に、課題をすぐに提出して、現場に来られずとも意欲を見せたと言う。

 日本人が海外に出れば苦労が多いと言われる言葉の壁。アメリカでは競技面が優秀でも学業面が疎かになると試合に出られないことがある。BANG LEEはその必要性とともに「渡邊雄太選手のように、文武両道でやれば将来的に素晴らしい人材にもなれます。このプロジェクトは、ただバスケットボール選手を育成するというより、世界に通用する良い人材を育てる取り組みでもあります」と語った。

 またBANG LEEは合宿初日、これまでとアプローチを変えてコーチングに入ったと言う。これまでは選手たちにまずスペーシングの考え方などチームのコンセプトを落とし込んでいたが、今年はそれを先送り。29日は午後から早速、ゲーム形式の練習に時間の大半を割いた。Team GLOBALLERSは日ごろ別々のチームにいる選手たちによって構成された期間限定のチームであるため、過去2年を踏まえて選手たちの仲を深めることを優先したのだ。3対3のゲームでは17人の選手に、GLOBALLERS2期生の長尾天選手を加えた18人を6チームに振り分けて、総当たり戦を実施。その後、場所を変えた夜の練習でも5対5のゲームを行った。

 BANG LEEは「対人練習をすることで誰がどんなプレーするのか知ることができますし、勝つためにお互いが協力しますよね。みんな、初めましてなので誰がコミュニケーション能力が高く、リーダーシップを取れるのか。オンコートもオフコートも違う選手が台頭してきて欲しいと思いました」と、その意図を語った。

 そして当初は黙々とゲームがはじまった中、次第に練習の雰囲気が活気づくようになった。コート内外から声が飛ぶようになり、少しずつチームメイトをリードするような選手たちが現れた。BANG LEEから何度も「喋りなさい」とコミュニケーションを促される指示もあったが、これは毎年口酸っぱく伝え、海外遠征を見据えてのこと。「アメリカでコートに立てば、自分より上手い選手ばかりでしょう。自分の良さを出したいなら、自分から喋ってどうしたいのか言わないといけません」と強調した理由を話した。

初日から印象的な選手たちの声
 一方で、選手たちは英語とバスケ一色だった合宿初日をどう過ごしたのか。プレーはもちろん、コート内外で仲間を盛り立て、コミュニケーションを積極的に取っていた姿が印象的だった2人に聞いた。

 一人は名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15所属の若野瑛太(#32)である。初日を終えて「英語はアメリカに行ったり、留学となれば必ず必要になります。英会話(のレッスン)は本当に受けられて勉強になりました。3対3と5対5は(所属)チームでは味わえないようなレベルの高さでやることができました。みんな、違うチームにいるので、それぞれ違う考え方をもった人がたくさんいて、それを共有しあうことで良いチームになっていく。色々な選手の考え方を知ることができて良かったです」と語った。

 若野は落ちついた雰囲気ではあるが、仲間をよく見てしっかりと声をかけるタイプ。リーダーシップを取ろうとする印象が強かった。本人によれば名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15のコーチから「技術が上手くても声が出せない選手は良い選手とは言えない」という教えを受けているそうだ。所属先で日ごろから意識しているだけあって、初めての環境でも自然とそういった振る舞いができていると感じさせられた。

 もう一人は、横浜ビー・コルセアーズU15所属の新郷礼音(#35)だ。彼の場合はムードメーカーとしてチームメイトを盛り立てる姿が光っていた。取材で質問を投げかけると「僕、こういうの本当、苦手なんですよ……!」と苦笑いされてしまったが「やはり練習を盛り上げることで、チームの雰囲気も良くなりますし、練習の質も上がって、みんなが一緒にレベルアップできることを中学校で学んできました。GLOBALLERSでもいかしたいと思います」と話してくれた。

 そして、初日の感想については「最初から最後まですごく大変でした。これまで練習も試合も半日で終わることが多かったんですけど今日は一日びっしりとあって」と言いつつも、充実感もあったようだ。「自分のベストを尽くしてプレーすることができましたし、声も出すことができました」とし「3日間、頑張りたいです」と意気込みを見せた。

海外遠征に向かう選手に必要な力
 Team GLOBALLERSは今合宿の終了後、福岡第一高校や福岡大学附属大濠高校への国内遠征や国内合宿に向かい、競争を勝ち抜いたメンバーが「Team GLOBALLERS JAPAN」として渡米する予定だ。

 気になる海外遠征に向けたメンバー選考の観点ついて、BANG LEEは“対応力”を挙げる。「ハンドチェックやドリブルの突き出しなど、日本では許されたり、見逃されたりするプレーも海外ではファウルやトラベリングになります。僕らがそれに対して修正点をアドバイスして、選手たちが反応できるか。癖が直らなければアメリカに連れていけないですね。柔軟に反応できるということは、例えば海外で日本と違う高さでブロックショットをされても、毎回それを食らうことはないでしょう。工夫したり、アジャストできるのか。そんな観点で見ます」という。

 さらに選手たちを預かる立場として、成長が楽しみな3期生との活動に次のような思いを込めた。

「活動期間が短いので、1回1回の活動を充実させる必要がありますし、そのためにはお互いをよく知って、チームになること、もっと言えばファミリーになることです。これはチームメイトのためにルーズボールで体を張ることにつながるでしょう。また、誰かの難しいシュートへリバウンドに飛び込むにせよ、誰がどんなプレーするのか分からなかったら、それも行けないわけです。お互い仲良くなること。これが遠回りだけどチームが成長する近道だと思います。3期生の成長は楽しみですね」

 今年こそ、無事に海外遠征が実現することを願うとともに、今年も『GLOBALLERSプロジェクト』で選手たちが、一回りも二回りも成長する姿を期待したい。

3年目の『GLOBALLERSプロジェクト』――初の海外遠征へ始動

TEXT by Hiroyuki Ohashi


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