3×3クラブ世界No.1決定戦で、MVPが見せた貫録、そしてオリンピックへの夢
やっぱり彼らが3×3世界最強チーム。今年のクラブ世界一決定戦で、改めて見る者にそのことを強く感じさせてくれた。2日間にわたる大会で、初日の予選プールは明らかに精細を欠いていたが、終わってみれば、それが無かったかのような優勝劇だった。
聖地に3×3のTOP 12が集結
3×3クラブ世界一を決めるFIBA 3×3 World Tour Utsunomiya Final 2019が、栃木県宇都宮市で11月2日、3日に開催された。日本でFinalが行われることは、2014年の仙台大会以来、2度目。今シーズンは11大会あったMastersの優勝チームを含む、レギュラーシーズンの上位12チームが、二荒山神社参道のばんば広場にセットされた特設コートに集結。2016年から毎年のようにMastersを迎えた日本の3×3における言わば“聖地”で、頂点を争った。
4度目の王者が漂わせた貫禄
今シーズンは12チーム中、じつに8チームがMastersの優勝を経験。どのチームにもワールドチャンピオンを勝ち取る可能性があった。そんな混戦模様の中、大一番のFinalを、セルビアのNovi Sadが制して、通算4度目となる3×3世界No.1の称号を手に入れた。彼らは予選プールでミスを連発して、アメリカのPrincetonに敗れ、もう一試合も延長にもつれての辛勝。1勝1敗での決勝トーナメントへ進出は危うさをはらんでいたかに見えたが、準々決勝でリトアニアのŠakiaiを21-14で一蹴して、明らかにギアを数段上げたことを見せつける。続く準決勝でMastersのシーズンランク2位のラトビアのRigaを21-18でねじ伏せ、決勝では前日に敗れたPrincetonを21-17で退けて、高らかに凱歌を上げた。
そしてFinal MVPにはペイントエリアを支配したTamás Ivosevが選出された。チームのエースは世界最高のプレイヤーであるDusan Bulutであるが本調子ではない彼に代わって、特にゲームが膠着した苦しい時間帯で、201㎝・110kgの体躯をいかして着実に1点を取り切り、相手に流れを渡さなかった。「チームで勝ち取ったMVPだと思う。チームに感謝したい。」と、ボールを託してくれた仲間たちがいて得られた勲章であることを語った。そして予選とは見違えるようなチームであったことについても、「どのワールドトーナメントにおいても2日目のほうが良い試合ができていることが、いつものことなのです。今日の試合はまさに僕たちの力を見せられた試合だったと思います」とコメント。絶えず結果を出し続けた最強チームに所属する一員として、勝者の貫録を漂わせていたことが、なんとも印象的だった。
ストリートから世界へ、体現するHarlem
一方で、PrincetonとのUSA対決に敗れて決勝進出こそ逃したが、今シーズンを席捲したチームのひとつ、NY Harlemは宇都宮でも多くの注目を浴びた。とりわけ、MastersのレギュラーシーズンMVPに輝いたDominique Jonesは178㎝と小柄ではあったが、卓越したボールハンドリングや1対1のスキル、フィジカルの強さでミスマッチを作らせないプレーで、存在感を発揮。その栄誉について、「僕自身の頑張りだけでなく、ファンが支えてくれた。僕に票を入れてくれた結果で取れたMVPだと思う。非常に長いシーズンでしたが、MVPをもらえたことは光栄なことですし、これからも努力を続けたい」と、喜びを語った。躍進の大きな原動力となった彼に、そのルーツを聞けば、「まさにHarlem出身なので、そこのストリートコートでプレーをしていました」と明かす。チームメイトは「友だちという関係性が多くて、同じチームでプレーしていたり、対戦相手」だと言い、「来日していないですけど、David(Seagers/USAランク10位)は最初からのメンバーです。多くの選手を巻き込んでいろんなコンビネーションでトライをして、毎年違うメンバーで参戦するようにしているのですけど、今年は非常に良いチーム作りができたと思います」と、充実のシーズンを振り返った。
そして夢はもちろん東京オリンピックで3×3アメリカ代表に入ることだという。この競技のコンセプトは「from the streets to the olympics」。Jonesはまさにそれを象徴しうる選手である。本人も「ルールこそ3×3とストリートは違えこそ、まさにその体現をすることは夢のひとつです。Harlemという地域はすべての街角にバスケットコートが設置してあるような街なので、まさにストリートから出てきて、世界レベルに挑戦することはみんなが夢見ていること。自分としてはその舞台で戦えることは、神のほどこしであり、そこは自分としても感じているところです」と語ってくれた。JonesたちNY Harlemはバスケットボールで、TOKYOへ道を切り拓く。
Finalの熱狂はオリンピックへ続く
既報の通り、11月1日にオリンピック出場国がまず男女8か国中のうち、4か国が決まった(男子:セルビア/中国/ロシア/日本、女子:ロシア/中国/モンゴル/ルーマニア)。日本も開催国枠で男子の出場が決まり、女子は来年3月にあるFIBA 3×3 Olympic Qualifying Tournament (OQT)で切符獲得を目指す。
もちろんFinalに出場した多くのチームは各国代表としてプレーする選手ばかりで、異口同音に2020年へ向けた意気込みは熱かった。Novi SadのDejan Majstorovicは出場決定について「セルビアの夢でもあった。オリンピックに向けてしっかりと準備をして、確実に金メダルを獲りたい」と、国別ランクキング1位でもある同国は、初のオリンピック種目でその名を歴史に刻む並々ならぬ想いがある。クラブ世界一決定戦で宇都宮を熱狂させた3×3は、2020年のTOKYOへより大きなものとなって押し寄せることは間違いないだろう。
- TEXT by Hiroyuki Ohashi
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取材協力:クロススポーツマーケティング株式会社/FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Final 2019実行委員会