中学3年生たちによる8日間のアメリカ挑戦――『GLOBALLERSプロジェクト』初の海外遠征に迫る【後編】
将来の“NBA選手”輩出を目指して、世界(GLOBAL)と勝負できるバスケットボール選手(BALLER)の発掘・育成をする『GLOBALLERSプロジェクト』は、今秋初めて6人の中学3年生を海外遠征へ送り出した。行き先は、アメリカ西海岸。Team GLOBALLERS JAPANとして海を渡った選手たちは、バスケットボールの本場でどんな経験を積んだのか。帯同したプロジェクトスタッフの視点を通して、到着から帰国までの8日間に迫る。今回はその後編――
DAY5……語学力に成長の跡
現地時間、9月21日(水)。アメリカ遠征も後半戦へ。今日からはバスケットボールの活動に加えて、留学を見据えて複数の学校を視察した。
この日、まず向かった先は、LeBron Jamesの息子・Bronny Jamesが通う高校「Sierra Canyon School」。縁あって訪問できる機会に恵まれた。Bronnyの所属する同校のバスケットボールチームは全米No.1になるほどの強豪校である。実際にチームが使用しているコートや授業の様子などを視察して、GLOBALLERSの6人はアメリカでのハイスクールライフをイメージしていた。
続いて午後からは、プレップスクール「Fairmont Preparatory Academy」を訪問。休憩時間になれば、選手たちがカフェテリアにいる生徒たちとコミュニケーションを取る姿も見られるなど、語学力に成長の跡もうかがえた。つい数か月前、日本での英会話のレッスンで四苦八苦していたのが、噓のようである。
夜からは、同校でコーチを務めるVan Girard氏が主催するクリニックへ参加。6人の選手たちは一緒に練習した同世代の選手たちと、スキルトレーニングから5対5のフルコートゲームまで、全力を出し切ろうと奮闘していた。
そんな光景を見ていると、一昨日、Dashコーチから飛んだ激を各自がしっかりと受け止めていたのだと、改めて感じさせられた。その日の一件を受けて、選手たちから「(現地の)選手の練習を120パーセントでやっていく姿勢を見て、それに負けないぐらいの熱意を持ってやっていかないといけない」(佐々木寧)、「命懸けでバスケをやっていきます」(阿部真冴橙)、「日本で気持ちの緩みがあったと思うので、学んだことを活かして気を引き締めやっていきたい」(北本慶志)などと感想が寄せられていたが、まさにその言葉通りの姿だった。
DAY6……遠征最後の練習試合へ
9月22日(木)。6人の起床時間は朝5時。現地の選手たちとバスケットボールができる最後の日を迎えた。眠い目をこすりながらも、早速向かった先は、プレップスクール「Orangewood Academy」。学校を視察し、先方チームとの合同練習にも臨んだ。積極的にコミュニケーションを取りながら、掛け声やハイファイブで盛り上がる良い雰囲気を、全員で作っていた様子は印象的だった。
午後からはプレップスクール「Cooper International Academy」に移動し、施設や授業の様子を視察。夕方からは同校のバスケットボール部と、練習試合に臨んだ。これがアメリカ人の選手たちとやるラストゲームでもある。これまでの学びをコートへぶつけるように、GLOBALLERSの選手たちは、相手の高さやフィジカル、エナジーに負けまいと、とにかくチャレンジしていた。
もちろん、まだまだ及ばない場面も沢山あった。選手たちに聞けば「勝負に対して本気でやるところが、自分に足りてない」(吉岡陽)、「日本では試合以外の勝ち負けに拘らず、細かいところまでやってこなかったことに、今回の遠征で気づきました」(新郷礼音)、「日本では体験できないような、アメリカ人のフィジカルの強さ、スピードの速さ、技術を1週間通して経験して、新たな自分の課題を見つけられました」(若野瑛太)という感想だった。どれも今後の成長につながる伸びしろ。異国の地で、強烈に感じたからこそ得られたものだ。
DAY7……新しい刺激も入れた活動最終日
9月23日(金)。実質的にきょうが活動の最終日だ。これまでと趣向を変えて新しい刺激も入れてみた。選手たちが訪れた先は、ロサンゼルスのビーチ。ヨガ・ピラティスインストラクターのKaren Sehgai氏によるヨガ・ピラティスのセッションから1日が始まった。選手たちにとって、これも初めての経験。呼吸の仕方、体のバランスを意識してのポーズなど、真剣に取り組んでいた。
そしてランチでは、今回のアメリカ遠征をバックアップしてくれたサン・クロレラUSA(株式会社サン・クロレラのアメリカ法人)がウェルカムパーティーを開いてくれた。カリフォルニアのソウルフード「タコス」や、アメリカ定番のカップケーキでもてなしを受け、選手たちも楽しそうな様子。サン・クロレラUSAのスタッフとのフリースロー対決は、白熱した。
午後からは場所を移動して、現地に在住の日本人コーチたちによるセッションへ臨んだ。ひとつ目は、百井浩平氏によるS&Cセッションだ。百井氏は、レーシングドライバーの佐藤琢磨氏のトレーナーを務めている人物。
ふたつ目は、RISE BASKETBALLの今田悠太氏によるスキルクリニックのセッションだ。今田氏は、カリフォルニアの大学を卒業後、ロサンゼルスを拠点にスキルコーチとして活躍。アメリカで培ったノウハウと、日本人にあったコーチングを組み合わせたスタイルを持つ。選手たちは、アメリカでの学びを日本で再び実践する場面をイメージしながら、取り組んだ。
夕方には宿舎へ戻り、最後のディナーはバーベキュー。お肉をほおばりながら、楽しく語りあった。この日の締めは、1週間過ごしたコンドミニアムの掃除と、スーツケースのパッキング。あす帰国を迎える。
DAY8……無事に帰国。選手たちが語るアメリカ挑戦
9月24日(土)。長かったようで短かった海外挑戦もいよいよ終わり。6人はロサンゼルス国際空港から、アメリカへ別れを告げた。帰国のフライト中、彼らを見ると、1週間を振り返りながら、さまざまな思いを巡らせているようだった。
約11時間30分後には、日本へ無事に到着。最後に彼らはハドルを組み、また会うことを約束しながら手を挙げて、声を合わせた。
「one two three Family!!」
選手たちの表情からは名残惜しさが伝わってきたが、それも記憶に深く残る経験ができたからこそ。それぞれ帰途へ着いた。
そして今後プロジェクトとしては、来年アメリカへ留学する選手を選考するフェーズに入る。現地校とサン・クロレラからのスカラシップ(奨学金)を獲得し、渡米するのは誰になるのか。また、スカラシップ獲得ならずも、アメリカ遠征の経験は、選手たちの成長を後押しする機会にもなったことは確かだ。
帰国後に寄せられた「Team GLOBALLERS JAPAN」6名の感想を結びに、新たな舞台で活躍する姿を楽しみにしたい。
「アメリカに行って感じたことは、身体のデカさ、身体能力の違いです。アメリカ人は背がデカいのに素早く動いたり、ジャンプ力が凄く、しかもハンドリングも良かったので、びっくりしました。この経験をいかして、アメリカ人にどう対応していけば良いかを考えたり、自分もそれに近づけるように頑張りたいと思います。また、アメリカの経験をチームのみんなに伝えて、レベルアップしていきたいです」
(阿部真冴橙)
「アメリカで感じたことは、基礎がしっかりとしていて、とても熱心に練習しているところです。アメリカの人たちは、特別な練習をしているから上手だと思っていましたが、実際は基礎を徹底的に練習していました。練習では声を出していなかったら、怒られる。チームメイトにもキレられる。日本にはない光景でした。これからは基礎を徹底的にやり、練習では常に声を出し、声を出していないチームメイトがいたら注意する。アメリカのような練習の雰囲気を作って行けるように頑張ります」
(若野瑛太)
「アメリカで感じたことは、時間の使い方が日本とは違うことです。練習中、チーム対抗戦になった時、闘争心がめちゃくちゃ高くなるところを感じました。特に、時間の使い方は意識して変えていったほうがいいなと思いました。1秒でも長く練習をして、もっと上のレベルを目標にして行こうと思いました。アメリカで感じとったことを自分のチームに持ち帰って、自分もチームも強くなるように頑張っていきます!」
(佐々木寧)
「バスケへの心構えやエナジーを、アメリカ遠征ではすごく感じました。アメリカ人のバスケは身体能力が高いだけだと思っていましたが、遠征を通して身体能力だけではなく、練習に対する負けず嫌いなところや、努力家であることに気づきました。今の自分がやってることでは、到底目標にたどり着けない。アメリカで学んだこと、夢にどうやって近づくのかを振り返り、今やってることを当たり前だとは思わず、上のレベルを目指していけるよう努力していきたいです」
(新郷礼音)
「アメリカで学んだことは、2つあります。ひとつ目は、練習への熱意です。どんな手を使っても勝とうとしてくると思いましたし、それぐらい練習に全力を注いでいると感じました。ふたつ目は、ドリブルの音、パスの速さ、シュートの精度など基礎のレベルが高いことが分かりました。今まで見てきた人と全然違って、大切になってくるポイントも分かりました。遠征で学んだことをチームに伝えて、アメリカのような練習を日本でもできるようにしていきたい。毎日の練習に全力を出し、成長できるように頑張っていきます!」
(北本慶志)
「1番の学びは、練習に対する意識の違いです。アメリカ人は、勝ちにこだわっていました。また、練習の質が高く、常に自分の限界を出しているように感じましたし、自分を追い込んでいるからこそ、バスケットボールのレベルが高くなると分かりました。アメリカで感じたことをいかして自分のチームに帰ったら、強度を上げ、日々レベルアップできるような練習内容にしていきたいと思います。この1週間でバスケへの意欲がさらに湧いてきました。成長していきたいです」
(吉岡 陽)
【アメリカ遠征メンバー】2022年 Team GLOBALLERS JAPAN
#3 阿部 真冴橙(175cm/仙台89ersU15)
#32 若野 瑛太(184c/名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15)
#33 佐々木 寧(184cm/瑞穂バスケットボールクラブ)
#35 新郷 礼音(185cm/横浜市立豊田中学校)
#43 北本 慶志(177cm/Jamaney youth)
#53 吉岡 陽(181cm/WATCH&C PRIDES)
・・・・・・詳しくは <<こちら>>
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TEXT by Hiroyuki Ohashi
GLOBALLERSプロジェクト
サン・クロレラ