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  • 2020.09.24

10年計画の『GLOBALLERSプロジェクト』、挑戦の先にあるNBA

将来の“NBA選手”輩出を目標に「10年計画」のプロジェクトが生まれた。発起人が長年取り組むCSR活動や幼少期の原体験をベースに、子どもたちがバスケを通してチャレンジする、一人の人間として成長することを願って。コロナ禍の始動ではあるが、本気で臨む選手、スタッフの目を見れば、期待せずにはいられない。

世界最高峰の舞台を目指す
「目標はぶれずに10年プロジェクトで立ち上げました」――こう語ったのは発起人であるサン・クロレラ代表取締役社長、中山太氏だ。同社は今年、将来のNBAプレイヤーとなり得る若き才能を発掘・育成する『GLOBALLERSプロジェクト』を立ち上げた。彼らもサポートするNBAプレイヤー・渡邊雄太や、日本人で初めてNBAオールルーキー2ndチーム入りを果たした八村塁が奮闘する姿によって、世界最高峰の舞台は夢ではなくなりつつある。日本の次世代からNBA選手を輩出するという目標を掲げ、子どもたちが海外挑戦できる機会を生み出す。そしてチャレンジを通して、彼らが一人の人間として成長することを願ってのことだ。本プロジェクトではトライアウトを経て選抜チームとなるTeam GLOBALLERSに所属した選手の中から1名に対して奨学金制度を用意。「世界(GLOBAL)と勝負できるボーラー(BALLERS)」の海外留学をサポートする。

プロジェクトの背景と共感する者たち
壮大なプロジェクトの根っこは、かねてより同社がCSR活動(社会的貢献活動)に取り組んでいた背景があるという。「これまで貧しい子どもたちへ食料支援や勉学のサポートをCSR活動としてやってきました。2018年からサン・クロレラAパウダーというクロレラでは世界で初めてアメリカNSFのアンチドービング認証を受けたサプリメントを渡邊選手や海外のアスリートを中心に飲用いただけるようになりました。これがきっかけとなり子供たちへのサポートに関してもスポーツを軸にした取り組みの必要性を感じるようになりGLOBALLERSプロジェクトの立ち上げを決意しました」。

その上で中山氏はバスケットボールにフォーカスした理由をこう続けた。「私自身、バスケ好きということもありますが、それ以上にバスケは日本での伸びしろがものすごいあると感じています。子どもたちへ海外に挑戦するチャンスを作り、本気でアメリカに挑戦したい子供たちを応援したいと思いました」。もともと同氏は幼少期を台湾で過ごし、学校はアメリカンスクールへ。スポーツはシーズン制で複数を体験したうえで魅力的だったのが、当時NBAシカゴ・ブルズの全盛期と重なったバスケットボール。しかし日本へ帰国すると若い選手のスキルは大きく劣るわけではないのに、競技として存在感の薄さを感じたという。こういった原体験によって、早い年代から海外を経験、挑戦し視野を広く持つ意識を育てる本プロジェクトへつながっていった。

さらにプロジェクトを中山氏と一緒に推進するプロデューサーでありコーチもアメリカでバスケを経験、本場のリアルを五感で吸収する2人。SpaceBallMagのBANG LEEと、大阪・KAGO BASKETBALL SCHOOLのMARUである。

両名ともにその趣旨に共感。携わることについてBANG LEEは「チャレンジングですね。僕も全国の子どもたちの人生に関われるチャンス。少しでもプラスになりたいです。彼らから“あのときの経験がターニングポイント”という感じの言葉が出れば最高かな。全員がプロジェクトからなにかしらをつかんで持ち帰り、自分のコミュニティーに広げろよ、と会うたびに伝えてます」。そしてMARUも「この話をいただいたときに僕も単発であれば意味がないと思っていましたが、サン・クロレラさんも長い時間をかけてやりたいというお話でした。それであれば僕の経験を含めてできることがたくさんあると思いました」と、10年計画に価値を感じているのだ。

中学3年生をサポートするコロナ禍の取り組み
一方で当初の計画から変更も余儀なくされた。もともとはU15を対象に国内大会・GLOBALLERSトーナメントを実施、その中から優秀な選手と一般応募者によるトライアウトによってTeam GLOBALLERSを結成して、アメリカ挑戦へ向かうプランを立てていた。

しかし国内外で広がった新型コロナウイルス感染症によって、状況が変化。「コロナ禍の影響で全国規模でのトライアウトができない中で、何ができるかと考えたときに中学3年生の進路を少しでもサポートをできたらいいのではないか、という話になりました」と、中山氏ら運営メンバーは最善の方針へ切り替える。

関東、関西、九州の3か所に場所を絞って中学3年生を対象にトライアウトを実施して、Team GLOBALLERSを編成。国内の強豪高校に挑戦を行い、リクルーティング(推薦)の獲得を目指すことにした。また最優秀選手(1名)は将来の海外挑戦を行えるよう奨学金の対象にすることを決めている。トライアウトや強豪校への挑戦にあたっては、各地で定められたコロナ対策のガイドラインに基づいて環境を整え、選手とスタッフの健康チェックを行い、相手先と連携しながら慎重に進行。今後の展望について「いま選手と保護者の方へヒアリングをしています。この状況なので安全・安心に渡航できる状況が整備されるまではアメリカ挑戦は難しいです。それでも海外挑戦という軸はぶらさずに、複数の選択肢を提示をして面談を通してどういう最終選択が良いのか、判断をしようと考えています(中山氏)」と、柔軟に描いている。

現在、6校の強豪校と対戦がセットされている。すでに9月12日には今年2月の関東新人大会の覇者・桐光学園、翌13日には同ベスト4で東京No.1チームの成立学園と戦った。いずれも勝利をつかむことはできなかったが、山口瑛司(#14、西福岡中)や秋穂将斗(#15、Eagle Nest Stage)らTeam GLOBALLERSは高校生を本気にさせた。リードを奪う展開や体格で勝る相手のディフェンスにひるまず、果敢なアタックを終始披露。点差が離れても最後までチャレンジする姿勢を貫いた。

成立学園の永田雅嗣郎コーチも「高校生にも負けないですね。1日で上手くなっていると感じます。ディフェンスはうちもしぶとく練習をしているけど、それに対してあれだけ(アグレッシブに)戦ってきました」と語るほどだった。また最初の2校を終えて、BANG LEEは「やっぱり14歳、15歳なので、培ったものはあるけど、凝り固まったものがない。大人たちよりも柔らかいですね。僕らが要求することへ反応も速いです。練習時間は短いけど、濃厚な2日間というイメージです」と、手ごたえを感じている様子だった。

今後、Team GLOBALLERSは近畿新人大会でベスト4の報徳学園、同ベスト8の育英との試合へ向かい、ラストは福岡第一と福岡大学大濠の胸を借りる。挑戦先としてはこれ以上ない相手ばかりだ。中学校やU-15クラブチームの全国レベルの選手たちが集うだけに、試合を通してどこまでステップアップしていくのか楽しみなところ。即席チームであるがゆえに「コミュニケーション」は課題だとMARUは話すが、「それぞれの特徴を理解して我慢するところは我慢をする。そうすれば、たぶんお互いがストレスなくバスケットボールができると思います。僕とBANG LEEでそれをうまく引き出していきたい」と、選手たちの成長を促していく。

挑戦することがもたらすもの
10年計画という前例なきプロジェクト。これは日本のバスケットボールシーンへ一石を投じるものだ。中山氏によると対戦した高校のコーチからは中学生のリクルーティングについて前向きな声が寄せられているという。「あと4試合ありますけど、そういったお声をいただけたことは、すごく可能性を感じています」と明かす。

現場からこういった声が発せられるのも、プロジェクトのテーマである「挑戦(チャレンジ)」することが、コートで体現されている証と言えるだろう。これには失敗もつきものではあるが、「行動を起こすことがチャンスにつながっているという認識を持ってくれれば嬉しいですね(MARU)」と、一歩を踏み出すことは本人の可能性、未来を切り開く。『GLOBALLERSプロジェクト』が子どもたちの成長に結び付き、スキルと経験、ハートの強さが磨かれた先に、NBA選手の輩出という目標が現実味を帯びてくる。高すぎるハードルかもしれないが、本気で臨む選手、スタッフの目を見れば、期待せずにはいられない。

10年計画の『GLOBALLERSプロジェクト』、挑戦の先にあるNBA

TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by Nowri and Jeremy

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サン・クロレラ

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