中学3年生たちによる8日間のアメリカ挑戦――『GLOBALLERSプロジェクト』初の海外遠征に迫る【前編】
将来の“NBA選手”輩出を目指して、世界(GLOBAL)と勝負できるバスケットボール選手(BALLER)の発掘・育成をする『GLOBALLERSプロジェクト』は、今秋初めて6人の中学3年生を海外遠征へ送り出した。行き先は、アメリカ西海岸。Team GLOBALLERS JAPANとして海を渡った選手たちは、バスケットボールの本場でどんな経験を積んだのか。帯同したプロジェクトスタッフの視点を通して、到着から帰国までの8日間に迫る。今回はその前編――
DAY1……挑戦の地へ
現地時間、9月17日(土)11時15分。アメリカ・ロサンゼルス国際空港へ、Team GLOBALLERS JAPANが降り立った。若野瑛太(名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15)、北本慶志(Jamaney youth)、吉岡陽(WATCH&C PRIDES)、新郷礼音(横浜市立豊田中学校)、佐々木寧(瑞穂バスケットボールクラブ)、阿部真冴橙(仙台89ersU15)の6人は、日本で特訓した英語を使って、入国審査も無事にパス。挑戦の地へ足を踏み入れて、ちょっと不安も入り混じるようだったが、それ以上に楽しみでワクワクした様子だった。
あすから始まる本格的なトレーニングや合同練習を前に、まず彼らは、ロサンゼルスでバスケットボールを感じられる2つの場所へ向かった。ひとつ目は、ロサンゼルス・レイカーズの本拠地であるクリプトドットコム・アリーナ。もうひとつは、コービー・ ブライアントと娘・ジアナの追悼壁画である。いずれも、SNSなどインターネットを通して見た景色であったが、実際に目の当たりにすると、選手たちは本当にアメリカへ来たと、かみしめているようだった。
夕方には地元のコストコで買物をして、宿舎へ。コンドミニアムでの共同生活も幕を開けた。日々、バスケットボールに向けた準備や食事はもちろん、ここでは洗濯など身の回りのことも彼らのタスクだ。怒涛の1日を終えて、床に就いた。
DAY2……バスケでアメリカを感じる1日に
9月18日(日)朝9時。6人の挑戦が始まった。彼らの大きな目標は、中学卒業後のバスケ留学を目指して、現地校およびサン・クロレラからスカラシップ(奨学金)を獲得すること。その活動の第一歩として、プレップスクールのSouthern California Academy(以下SCA)を訪れ、Sullivan Brownアソシエイトコーチのワークアウトに取り組んだ。これまで経験したことがない、基礎を中心としたメニューに選手たちは日米の違いを肌で感じながらも、自分のものにしようと練習に力を込めていた。
午後からは場所を移動し、U15の選手で活動するAAU(Amateur Athletic Union)チーム・SoCal Fierce Basketballと合同練習を行った。同年代ということもあって、一緒にプレーするうちに、早速打ち解ける様子も。英語でのコミュニケーションは探り探りだったが、バスケットボールを通して、選手たちの表情から緊張が取れ、笑顔が見られるようになった。
さらにこの日は、ストリートボールの聖地であるベニスビーチにも向かった。ここは、本プロジェクトのBANG LEEコーチやMARUコーチも、かつて渡米した際にプレーした経験のある思い出の地でもあった。平日昼間であっても、ローカルのボーラーたちが集まっており、バスケットボールが文化として根付いていると体感するには、うってつけのプレイグラウンドだった。GLOBALLERSは思い切って、現地の青年に声を掛け、ベニスビーチでストリートボールデビューも飾った。知らない人とのスポーツを通じた交流も、アメリカ挑戦の醍醐味なのだ。
DAY3……「ここは仲良しサークルじゃない」
9月19日(月)。今日は、NCAAのDivision1に所属するUniversity of Southern California(以下USC)を昼間に訪問。充実した練習環境や大学のキャンパスなど、日本では感じられないスケールを体感した一方で、アメリカのバスケットボールにかける熱量をひしひしと感じる1日になった。
6人は昨日よりも早い朝8時にSCAの施設に向かい、合同練習に臨んだ。この日の相手は、2mを越える現地の高校生たち。練習中からダンクが連発される光景に、一瞬だけ圧倒された様子もうかがえた。複数のグループで行われた対人メニューでも、自分の番で勝ち負けにこだわる高校生たちの気迫を、まざまざと感じているようだった。
さらに、USC訪問を挟んで午後に、SCAで臨んだU15の選手たちとの合同練習では、GLOBALLERSに強烈な激が飛んだ。担当したJamal “Dash” Lovell(以下Dash)コーチは、徹底的な基礎練習のメニューを、参加選手たちすべてに課した。今までは、6人の日本人がゲスト扱いされている場面もあったが、Dashコーチはそんな接し方をしなかった。
当然、メニューができていないGLOBALLERSの選手がいると、Dashコーチはすぐに練習を止めて正確にできるまで細部まで指導。少しでも気の緩みを見せ、私語や馴れ合いが見られると、コーチから強い口調で、その練習に取り組む姿勢を正された。
「お前たちは何のためにここにいるんだ?ここは仲良しサークルじゃない。バスケで上手くなりたい、強くなりたいから、ここにいるんだろ?それなら、周りの奴は全員ライバルだ。そのことが理解できずに手を抜いたり、慣れ合ったりする奴は帰れ。俺はお前たちの行動を全部見ているぞ」
基礎練習から妥協なく取り組む姿勢と、日々の練習から求められるハングリーな気持ち。アメリカでは、バスケットボールへ半端ない熱量が注がれ、それがバスケットボールの強さにつながっている。6人にとって3日目は、こういったことを、強く受け止める1日になった。
DAY4……コーチが語る成功の秘訣
9月20日(火)。今日も集合は朝8時だ。SCAで行う最後の練習が始まった。課せられたメニューは、やはり基礎練習だったが、昨日Dashコーチから学んだことを胸に、GLOBALLERSはコートで実践。明らかに、選手たちの顔つきは変わっていた。
そんな様子に対して、我々を迎え入れてくれたSCAの関係者も目を細めているようだった。同CEOを務めるTravis Nichols氏は「GLOBALLERSの選手たちが想像以上のレベルで驚いています。環境にもいち早く慣れ、溶け込もうとする姿は素晴らしいし、今後も継続して選手たちを受け入れたい」と話してくれた。また、ヘッドコーチのChris Chaney氏も「彼らのバスケットボールへの熱意はもちろん、ボールへの執着心、基礎スキルの高さにとても感心したよ」と、語った。
そして、3日間を通してGLOBALLERSを指導したアソシエイトコーチのSullivan氏は、6人へのエールを込めて、アメリカで成功する秘訣を説いてくれた。
「アメリカで成功するための秘訣は“Work”。これに尽きるね。それは、ただ練習するだけではなく、生活の全てをバスケに費やす、という意味の”Work”だ。まずはバスケを愛すること。それは簡単だが、たとえ気分が乗らない時だって、その愛は決して忘れてはいけない」
さらに、SCAの練習後にアーバインで受けたスキルクリニックでも、NBA選手や世界のプロ選手のスキルコーチを務めるJordan Lawley氏より、アメリカで成功する考え方を授けられた。
「アメリカで成功するためには、お互いにチャレンジしあう環境に身を置くことだ。僕の中で一番重視しているのは1-on-1(or 2-on2)ゲームを意識してやらせているが、日本に帰ってもそれを続けてもらいたい。“ドッグ・メンタリティ”を鍛えるのはそれが一番良いと信じている」
ちょうど、この日がアメリカ遠征の折り返し。オンコートでの厳しい指導、日米の違いを感じながらも、選手たちはここでしか得られない経験を積もうと、食らいついた。
そんなGLOBALLERSの姿を見てだろうか。アーバインから宿舎に帰ってくるとサプライズがあった。SCAのSullivanアソシエイトコーチらが訪れ、アメリカでは定番のホームパーティーを開いてくれたのだ。選手たちも、思わずテンションが上がり、目を輝かせる。4日目ともなれば、英語が得意でなくとも、まず喋ることが大事だと分かってきた。皆、積極的にコーチたちへ話しかけて、楽しい夜を過ごした。
【アメリカ遠征メンバー】2022年 Team GLOBALLERS JAPAN
#3 阿部 真冴橙(175cm/仙台89ersU15)
#32 若野 瑛太(184c/名古屋ダイヤモンドドルフィンズU15)
#33 佐々木 寧(184cm/瑞穂バスケットボールクラブ)
#35 新郷 礼音(185cm/横浜市立豊田中学校)
#43 北本 慶志(177cm/Jamaney youth)
#53 吉岡 陽(181cm/WATCH&C PRIDES)
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- 中学3年生たちによる8日間のアメリカ挑戦――『GLOBALLERSプロジェクト』初の海外遠征に迫る【前編】
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TEXT by Hiroyuki Ohashi
GLOBALLERSプロジェクト
サン・クロレラ