アルバルク東京の竹内譲次と安藤誓哉が語ったチャンピオンマインド
1995年にヒューストン・ロケッツが2連覇したときにヘッドコーチのルディ・トムジャノビッチが言った「Don’t ever underestimate the heart of a champion!(チャンピオンのハートを決して見くびるな)」という有名な言葉があります。そんななか、Bリーグで2連覇を達成したアルバルク東京の竹内譲次選手、安藤誓哉選手から、優勝するために必要なメンタリティとは何なのかを語ってもらう貴重な機会を頂きました。彼らのチャンピオンマインドはいかに?
去年2連覇を果たすまでにどのような苦労、困難がありましたか? それをどのように乗り越えましたか?
竹内:前年度優勝したことで、優勝チームだから当然強いんだ。という目で見られて、勝つことが義務付けられます。コーチも厳しい人なので、ひとつのプレーの精度だったり、ひとつのミスの重さだったりが、前にいたチームとは全然違うプレッシャーがありました。スタッツに出るミスだけじゃなくて、スタッツに出ないようなミスも意識するようになって、常に緊張し続けている状態が、シーズンが進むにつれて、ずっとジャブを食らっているような感じがありました。
緊張の糸が張り詰めた状態が続くというのはメンタル的にもなかなかしんどいかと思うのですが、なにか工夫されたことはありますか?
竹内:前年に比べて、千葉ジェッツさんに苦労し、取りこぼしてしまったり、そういう試合が多かったように思いました。単にそれに慣れるしかないと開き直ってやっていました。
安藤:優勝して次のシーズンは他のチームがもっとスカウティングをしてきて、最初オフェンスの部分であまり機能しなかったなというのがあって、そこまで勝ち星も作れなかった。天皇杯では劇的な負け方をしてしまって、個人としては最後のプレーで勝ちきれなかった部分もあって…… チームとして前半戦はタフでした。そこから、普段の練習から積み重ねていって、リーグ後半戦ではプレーオフに向けてしっかりいいカタチで入れたと思います。
代表選手3人が抜けていた間に、いろいろやってきた相手のディフェンスに対して、何度もチームメイトと確認しあってうまく噛み合うことができた。そこで自分たちを見つめ直したことが大きかったと思います。
代表選手がいないときにどう乗り越えていきましたか?
安藤:代表選手がいないときの練習が一番大事だと思ったので、自分たちがやるべきことをしっかりやる。それができたことが、代表選手が帰ってきたときに、グッと結束を固めることができた要因だと思います。
竹内選手は代表チームで学んだものをアルバルクのチームに還元できた、という意識はありますか?
竹内:そうなればいいなぁという願望はあるんですけど、そこは付随してくるものなのかなと。そこを意識してやるというよりは、自分のために、自分がもっといい選手になるために、常に自分ができることを一生懸命やることで、結果的にいい影響を与えられればと思います。とくに還元することにフォーカスしていないですね。
竹内選手が代表チームで成長したキッカケはどういうものがあったのでしょうか?
竹内:ニック(・ファジーカス)が日本国籍を取って、八村(塁)や渡邊(雄太)が入ってきて、オーストラリアに勝ったのが大きかったですね。そこに付随して日本のバスケットも変わってきたと思います。また誓哉(安藤)みたいに、そのときは選ばれていなかったけど、日本代表のユニフォームを着たいと思う選手がさらに増えたと思います。いままではただ漠然と思っていただけの選手が、強く思うようになったのは、やはりオーストラリア戦が大きかったと思います。
逆に安藤選手は、優勝チームであるアルバルクらしさを代表チームで発揮できた、という感覚はありますか?
安藤:最初は若手の合宿からのスタートだったんですけど、そのときに、自分は成長したんだということを実感できました。そこで、アルバルクで2年間学んだポイントガードのマインドやプレーの考え方が出せたので、ワールドカップに合流できたと思っています。
優勝したときはどのような気持ちでしたか?
竹内:(初優勝のときは)プレッシャーがありましたし、コーチも2位以下は一緒だという考えの方なので、チャンピオンシップに入ってからはずっと気が張っていました。それはとでもしんどかったので、正直それから解放された嬉しさもありました。2連覇のときは、千葉ジェッツは本当にいいチームだったので、解放されたというよりは勝った喜びの方が大きかったです。
安藤:初優勝のときは、自分もがむしゃらにやってきたシーズンだったので、勢いって言葉では片付けられないのですが、チャンピオンシップに入ってから優勝まで一気にいって、嬉しいっていうのが正直な気持ちでした。2連覇のときは本当にプレッシャーもあって、シーズンもアップダウンが激しくて。プレッシャーから解き放たれた気持ちでした。
優勝チームに一番必要なことは何だと思いますか?
竹内:信じぬける力。自分たちがやってきたことを信じることですね。このやり方で優勝できるんかなぁとか、そういうことを考える余地を与えないくらい、自分たちのやってきたことを信じることが大事ですね。
安藤:タフさ。ブレないで自分たちのやってきたことを信じてやり続けることができたのが2連覇できた要因だったと思います。
現在履いているシューズと、どんなところが気に入っているかを教えてください。
竹内:TMACミレニアムです。バッシュで一番重要視しているのがクッション性で、僕の足は甲高なので少し厄介というか、クッションが弱いと母指球へのダメージが大きくなってしまうので、T-Macはブーストが厚めでクッション性は申し分ないですし、あとT-Macがすごく好きな選手なので、その選手のモデルを履けるという嬉しさがあります。
安藤:僕はずっとHarden Vol. 3を履いているんですが、クッションも良くて、履いたときに柔らかい感じでフィット感があって。ローカットが動きやすいので好きですね。Harden Vol. 4にチェンジするのも楽しみにしています。
竹内選手がアディダスと契約した理由を教えてください。
竹内:チームがアディダスなので担当の方と毎週顔を合わせているなかで、もっと蜜に関係を築きたいと思ったのと、アディダスの担当者の方や、アルバルクに関わっているいろんな方ともっといい形で一緒にひとつ目標に向かってやっていきたいな、と思ったので、それが決め手になりました。
安藤選手にとってアディダスというブランドはどういう存在でしょうか?
安藤:アルバルクに来たときにアディダスさんと契約させてもらって、2連覇して、日本代表もそうなのですが、いままさに一緒に歩みながらサポートしてもらっているサプライヤーで、これからも一緒に歩み続けていきたいと思う存在です。
アディダスの選手に共通することは何だと思いますか?
竹内:「なにか持ってる人」じゃないですか。ハーデンが得点王を取ると契約時点で予想できた人はあまりいなかったと思うし。誓哉も今までも選ばれる素材だったにも関わらず、やっと代表に選ばれたこともそう。もちろん誓哉の実力もさることながら、やっぱりアルバルクにいることも大きかったんじゃないですかね。ルカコーチの指導もそうですけど、素晴らしいクラブにいるのは持っている人だと。ラウリーもウォリアーズに勝って優勝しましたし、リラードのサンダー戦での3ポイントもそう。先見の明があるというか、なにかしらあると思います。
安藤:なにか掴み取ってやろう、っていうハングリー精神ですね。今挙げた選手もそうですし、これからスーパースターになろうとしている選手が多いと思います。
最後に自分自身を象徴するものを一言で表すとしたら何ですか?
竹内:“Ambition”ですね。僕は初めて日本代表に入ったときの監督が外国の方だったんですけど(※ジェリコ・パブリセヴィッチ)、その人に言われたのが「スポーツ選手はAmbitionを持たないと成長がない」と。
安藤:僕は今のヘッドコーチから言われるんですが“Be Ready”です。毎日のように言われてます(笑)。バスケットだけじゃないんじゃなく何事においても本当にこの言葉は大事だと思っています。
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TEXT by Jiro Ikeda
取材協力:アディダスジャパン