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  • 2020.09.25

ついに開幕『3×3 JAPAN TOUR 2020』7カ月ぶりの現場でそれぞれが抱いた気持ち

3×3 JAPAN TOURの2020シーズンがついにはじまった。コロナ対策に万全を期して、日本バスケットボール協会(JBA)がセットした環境で選手たちは躍動。勝利を追及したことはもちろん、プレーできる楽しさも改めて実感した。そして選手だけでなく、現場を作る方々の安堵感や高揚感も入り混じった。

JBAの使命「選手に試合ができる環境を」
9月19日にJBA主催の3×3国内ツアー大会となる、『3×3 JAPAN TOUR 2020 Extreme Limited』が開幕した。新型コロナウイルス感染症の影響で、2月の3×3日本選手権以来のJBAによる公式戦。同協会および開催地が定めるコロナ対策のガイドラインに基づいて競技会場は整備され、選手およびスタッフ、レフリーなど関係者は大会2週間からの検温や健康状態の確認をしながら、万全を期して臨んだ。

JBA競技運営3×3担当の石井昭大氏はこの日を迎えて「ホっとしています」と、マスク越しで安堵の表情を浮かべた。「我々の使命は、選手に試合ができる環境を用意することです。例年であれば4月からスタートしているのですが、コロナ禍によって状況が状況でした。開催をスライドさせてきましたが、ようやく今日、2020シーズンを開くことができました」。約7カ月ぶりに国内3×3シーンが完全に戻ってきた。

BEEFMANとKOTO PHOENIXが優勝
今季初戦となるRound.1のドーム立川立飛には、男女各6チームが集結した。女子選手にとっては初のEXTREMEカテゴリーであり、男子選手にとっては同カテゴリーで初出場のメンツも。出場枠は先着応募順(Round.2も同様)という規定も手伝って、これまでにないフレッシュな顔ぶれが並んだ。6チームが3チームずつの予選POOLを戦って、各1位同士が優勝をかけて決勝に臨んだ。


女子では、矢上若菜(#14)と桂葵(#25)を新たに迎えたBEEFMANがTOKYO DIMEとのオープンニングゲームを16-14で競り勝つなど、2連勝で予選POOLを突破。もう一方では昨季のJAPAN TOUR FINALや3×3日本選手権でSIMON準Vの原動力となった、齊藤桃子を擁するXD(クロスディー)が予選POOLを首位通過する。SHONAN SUNSとの対戦では、追い上げを許したが14-13で逃げ切った。


そして注目のBEEFMANとXDによる決勝は、BEEFMANが21-8で快勝した。スピーディーなドライブと2ポイントシュートが武器の相手に対して、新戦力と前田有香(#11)、名木洋子(#45)の新旧メンバーが融合した彼女たちは、人もボールもよく動くアグレッシブな攻防で圧倒した。試合後、3人制で競技復帰してから2季を過ごしたSHONA SUNSから移籍してきた桂は「SHONA SUNSは大好きです。ただこのタイミングで熱量の高いメンバーがBEEFMANにはそろいました。ほぼ毎日のようにコートへ集まって、練習を重ねることができました。新しい環境で取り組めたことが良かったですし、楽しかった。でも、ココからですけどね」と、新天地での優勝を実感しつつ、次もしっかりと見据えた。

男子はTOKYO DIMEとUTSUNOMIYA BREX.EXEという本命不在の大会となった。そんな中、KOTO PHOENIXが今月12日のF1 Tournamentに出場したメンバーを軸に、中村友也(#19)を加えて、予選POOLを危なげなく突破。もう一方ではユース年代から3×3に取り組む選手たちが中心となる、平均年齢22歳のALBORADAが勝ち上がってきた。サイズは無いがドライブとシュート力を最大限に活かすべく、頭を使った粘り強い攻防でTOKYO LEDONIARSに21-18、SHINAGAWA CCに21-20という接戦をモノにした末のことだった。

しかし決勝では若きALBORADAの勢いをKOTO PHOENIXが上回って終始リードを奪う。終盤に点差を詰められる時間帯もあったが、最後は伊藤尚人(#1)のドライブに柴田政勝(#0)が合わせてバスケットカウントを獲得。彼は先のF1 Tournamentで2本のフリースローを決め切れずに試合のクロージングに失敗していたが、この日はその大事なフリースローをきっちりと沈めて名誉挽回。21-17で優勝を引き寄せた。試合後には「(F1の失投があったけど)最後のフリースローは全然ドキドキしていないですよ。基本、僕は全部決めます。F1では人生で本当に1回あるか、ないかのシーンが来ちゃいました。勝負所はシュートを決めると公言して決めてきたので、今日はいつも通りに戻せたので良かったです」とコメント。そして結びには「普通です!」と頼もしく言い切った。

久しぶりの真剣勝負だから感じたこと
男子にとっては2週連続の公式戦。女子にとっては待望のシーズン初戦。真剣勝負の場がセットされたことは、選手たちにとって感慨深いものだ。KOTO PHOENIXの柴田が「素直に嬉しいですよね。お客さんはいませんがLIVE配信もあって、会場にいる選手やスタッフなど何人かに見ていただいている中で、このように整えてもらった環境でプレーできたことは、とても幸せに感じました」と言えば、BEEFMANの桂も次のように話した。「シンプルにめちゃくちゃ楽しかったです!やっぱり試合になると、入るスイッチが違いますね。1試合目は硬さがあったものの、そういった試合の緊張感も逆に懐かしくて嬉しかったです。それを含めて楽しめました」

またコロナウイルスの感染拡大防止のため、無観客試合となったが、彼ら彼女たちにとっては、これはプレーをする上で難しい環境にはならなかった。「やっている感覚は配信されていることが頭にあるので、観客がいるかのような感じで僕はプレーすることができました。午前中は女子の試合を見ていましたけど、ゲームの見せ方も考えてくださったので、見やすかったです。ファンの皆さんも臨場感を持って楽しめたのかなと、思いながらやっていました」と柴田は話す。

もちろんコートサイドからお客さんの熱い声援が飛んでくれば最高である。ただオンライン配信でもファンの存在は認識されており、また一方で画面越しに選手の熱量が伝われば、Withコロナでも3×3は見る者をひきつけるだろう。桂の言葉からは、それがにじみ出ていた。「たぶん試合があったところから急に無観客試合になったら、物足りなさもあったと思います。でもコロナ禍でまったく試合がありませんでした。だから本当に試合ができるだけで“ワクワク”していました。たしかにお客さんがいたら会場は盛り上がりますが、今日は本当に夢中でバスケができたので楽しかった。画面越しにいるファンの皆さんにそれが伝わったら、無観客試合でもお客さんがいても、バスケの本質的な楽しさは変わらないと思います」

選手だけにあらず、待望のシーズン初戦
最後にJAPAN TOUR の始動は、選手の気持ちを明るくさせただけではなかった。MC MAMUSHIとDJ MIKOのことも触れておきたい。待ちに待った3×3のオフィシャルゲームは、彼らの気持ちも高揚させた。MC MAMUSHIにとっては半年以上ぶりの現場。「やっぱり生はいいですね!久々にJAPAN TOURでしゃべったすけど、女子も男子もメンツがガラっと変わって、生まれ変わったチームもあって、フッレッシュで良かったです。選手たちがみんなノリノリでやるものだから、こっちも力がみなぎっちゃいました。体力が持つのか心配だったけど(笑)、僕もノリノリで楽しくやらせてもらいました」と1日を振り返る。

そしてDJ MIKOも先月のBASKETBALL ACTION 2020を経ての現場とあって、「試合に向けて選手がコートへ集まってくる感じが感動的でしたね。これが昔までの日常だったなと」としみじみ。久しぶりに広がった真剣勝負の景色については、MC MAMUSHI同様、「女子も男子も半年たって時代が変わったのかなと思いました。顔ぶれがいつもと違うから思わず別の大会に来てしまったと感じるほどです。ゲームも面白かったですし、僕の知らないところで、こんなにもたくさんのプレーヤーがいたなんて、頼もしかったですね」と語った。2人のセットが会場で見られたことも、国内3×3シーンが戻ってきたことを強く印象づけた光景だった。

『3×3 JAPAN TOUR 2020 Extreme Limited』は、翌20日に行われたRound.2で、BEEFMANが男女そろって優勝を飾っている。気になるツアーランキングでは女子のBEEFMANが1位を走り、男子はKOTO PHOENIXがRound.2の決勝で破れたものの、首位に立つ。今週26日にはRound.3、27日にはRound.4が開催される。10月16日、17日のFINALへ向けて、怒涛の勢いで大会は続く。

ついに開幕『3x3 JAPAN TOUR 2020』、7カ月ぶりの現場で各々が抱いた気持ち

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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