誰もがプレーヤーになれる春── PICK UP PLAYGROUND SPRING CAMPレポート
2025年春、東京都府中市・ボートレース多摩川場内のリップルコートで開催された「PICK UP PLAYGROUND SPRING CAMP」。ストリートボールの精神を軸に、誰もがプレーヤーになれる空間を創出する本イベントには、多くの子供達が集まった。
PICK UP PLAYGROUND(以下PUP)は、これまで沖縄や北陸でSUMMER CAMPを開催してきたが、今回のSPRING CAMPは、より都市型で“誰でも参加できるバスケの普及活動”として位置づけられた。特定の選抜選手が集う大会ではなく、「ここに来れば誰でもプレーできる」という包摂性と、プレーヤー同士が自然につながる“場の力”が際立つイベントとなった。
会場となったボートレース多摩川の「リップルコート」は、全国的にも珍しい“有料入場施設内”に設置されたバスケットボールコートだ。ボートレース業界が進める“パーク化”の一環として設置されたが、コートがあるだけでは文化は根付かない。施設担当者は「ふらっとボーラーが立ち寄る場所ではないからこそ、PUPのようなイベントが“訪れる理由”になってほしい」と語る。
当日は、元プロや現役の3×3プレーヤー、YouTuberやフリースタイラーを交えた豪華なラインナップでのクリニックやワークショップも展開。日本を代表するフリースタイルボーラーBUG!?は「これだけいいコートがあること自体が驚きだった」と語り、参加者とともに創り上げたショーケースについては、「みんなでひとつのショーをつくる達成感は、ただのワークショップとはまた違う喜びがある」と振り返った。
フリースタイルバスケをより多くの子どもたちに伝えるために、BUG!?が重視するのは“楽しむ力”だ。「うまくなる秘訣は、楽しむことと、コミュニケーションを取ること。今日教えたスキルがひとつでもできれば、それを誰かに見せて、また広がっていく。バスケをきっかけに人とつながっていく喜びを感じてほしい」
ゲストには、3×3プレーヤーの齊藤洋介や、元Wリーグ選手の岡田麻央、YouTuberのともやん【レイクレ】といった多彩なメンバーが登場。それぞれの目線でバスケの“自由さ”と“誰でも楽しめる”パークならではの魅力を体現した。
ともやん【レイクレ】は「僕がやっているPICK UPゲームの楽しさって、うまい下手じゃないんです。まずはバスケを楽しんで、バスケを好きになってもらって、どんな形でもいいから、将来バスケに携わる人になってほしいです。そういう人を引き上げられる存在として頑張っていきたい」と語る。
3×3のトップレベルで活躍する齊藤洋介は、「こういう時間が改めて、バスケが好きなんだなって思える瞬間だし、こういう空間があるから自分のパフォーマンスや練習に生きてくると感じます。いまの子どもたちは昔より天と地くらいレベルアップしているし、Bリーグとか明確な目標もある。これからもバスケを楽しむことを伝えていきたい」と、PUPのコンセプトに共感を寄せた。
また、岡田麻央は「前回伺ったボートレース場のコートは大きな公園の中の一部でしたが、ここはバスケコートがボートレース場内にあることに驚きました。都内ではバスケをやる場所を探すのも大変だから、ここにはたくさん人が集まってくると思います」とリップルコートの魅力を語った。
全コンテンツにゲスト参加してくれたボートレーサーの宮崎安奈は「Wリーグを引退して、ボートレーサーとしての生活が始まった今も、こうしてバスケの現場に戻ってこられるのが嬉しい。子どもたちと一緒にコートで汗をかけるって、本当に貴重な体験でした」と一日を振り返った。
PUPを主催する秋葉代表理事は、今回のようなイベントが果たす役割をこう語る。
「バスケコートを作るだけでは文化は育ちません。特に駅前でもない立地では、“そこに行く理由”がなければ人は集まらない。だからこそ、我々が“コンテンツ”や“コミュニティ”を提供することが必要だと考えています」
今後は、これまでのSUMMER CAMPのような大規模なイベントに加え、もっと日常的に、地域に根ざした“小さなPUP”を全国に増やしていく展開を予定している。
「24あるボートレース場にバスケコートが整備されていく未来を描き、我々がその場でプレーが生まれる仕掛けをつくれたら理想的ですね。バスケットボールとアーバンスポーツの親和性は高いし、それを社会とつなぐハブのような役割を担っていきたいと思っています」
コートを単なる“場所”からコミュニティが集う“場”へと育てていく。そこでは誰もが、プレーヤーとして尊重され、関われる空間ができる。PICK UP PLAYGROUNDが描くバスケの未来は、その輪郭をさらにくっきりとさせながら広がり続けている。
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TEXT by Rintaro Akimoto
PHOTO by Nobuhiro Fukami