3×3世界最高峰へ再び…山本麻衣を迎えてDüsseldorf ZOOSが2シーズン目に挑む
各国代表がしのぎを削っていた「FIBA 3×3 Women’s Series」(以下ウーマンズシリーズ)に、昨シーズン一石を投じたDüsseldorf ZOOS(デュッセルドルフ ズーズ)。桂葵が選手兼クラブオーナーを務めるZOOSと、ドイツの3人制プロチーム・3x3Düsseldorfがタッグを組んだ日独混成チームは、コマーシャルチームという民間チームの出場枠で女子3×3世界最高峰へ挑んだ。結果は、シーズン初戦のツアー30位から、年間優勝決定戦「Final」で世界5位に食い込む大躍進を遂げるものだった。
そのDüsseldorf ZOOSが、2023シーズンもウーマンズシリーズに参戦する。コマーシャルチームは今シーズン4チームを数えるが、2年連続は彼女たちだけ。スタートアップチームにとって高額な参戦費用や、昨今の円安状況を想像すると、かなり覚悟のいるチャレンジである。桂は再びの世界戦へ、個人的な思いとして「あの舞台で戦い続けることが選手としてすごく魅力的」と話した上で、ZOOSとしての思いを語った。
「私たちのミッションは、女性を取り巻くスポーツの環境をリデザインしていくことです。そんな中で、いまの女子3×3は、こうじゃない!と思っています。男子は、参加費3,000円の国内大会がワールドツアーへ続いている。勝てば次のチャンスが巡ってくるし、出場権を主催者から購入できるケースもあるけど、ワールドツアーファイナルは勝たないと立てない舞台です。その世界観がストリートで面白く、3×3の魅力だと思います。女子も少しずつその世界観に近づけていきたい。これが、ZOOSで世界へ挑戦する理由です」
トヨタ自動車の山本が3×3へカムバック
今シーズンのZOOSは、6人のロスターで世界に挑む。継続メンバーは、桂をはじめ、前田有香、Ama Degbeon、Jenny Crowderの4人。新戦力は、3×3 U21ドイツ代表のSarah Pollerosと、トヨタ自動車アンテロープスの山本麻衣である。とりわけ、山本がZOOSで3×3へカムバックする一報に、驚いたファンも多いのではないだろうか。競技シーンにとってもビックニュースである。
山本はいま、5人制女子日本代表の司令塔へ飛躍を遂げているが、その始まりは3×3がきっかけとも言えるだろう。2018年に初めて取り組んで以来、その才能を開花させ、「FIBA 3×3 U23ワールドカップ2019」で金メダル獲得とMVPに輝き、3×3女子日本代表として五輪予選を突破して「東京2020オリンピック」へ出場した。本人も「3×3は私のバスケットボール人生を良い方向に導いてくれて、その楽しさ、自分の強みを再確認できる競技です。いま少しずつ上(のレベル)に行けているのも、3×3のおかげ」と話すほどだ。今回のZOOS入りについても「3×3をやっていくことは、自分にとって良いことです。葵さんにZOOSのお話を聞いて、素直にやってみたいと思いました」と語った。
そして、かねてより彼女たちが3×3に向き合ってきたからこそ、山本のZOOS入りは実現している。そのひとつが、トヨタ自動車の後押しである。ZOOS加入にあたって、まず山本は大神雄子ヘッドコーチへ相談をしたそうだ。3×3代表時代から共闘してきた間柄とあって「私の3×3に対する姿勢を、これまで大神さんも見てくださっていました。今回の件を相談したところ、前向きにとらえて下さいました」と本人は言う。加えて、大神HCも、彼女のZOOS加入について「選手から挑戦したいと言ったことに対して、私はどちらかというと背中を押すタイプ。自分が現役のとき(ヘッドコーチだった)内海知秀さんがそうして下さいました。だから、それを自分が止める理由はないですね」と話している。
もうひとつが、ウーマンズシリーズに挑み続けたZOOSの姿が、山本にも響いた。昨シーズンの世界挑戦の様子は、山本の目にとても楽しそうに映ったほか、強豪カナダに逆転勝ちした一戦(2022年8月27日のオーボンヌ大会)が、「すごかったですよね」と驚きを与えた。山本はこれまで日本代表でプレーする価値を十分に感じてきたが、ZOOSには「また別の価値がある」と感じている。
期待される前例無き取り組みの先にあるもの
一方で、桂は彼女の決断を「山本選手のバスケキャリアの中でZOOSが新しい選択肢になったのだと思います。本当にありがたい。チームを立ち上げて良かったです」と受け止めている。5人制代表選手かつ、Wリーグでプレーする選手がコマーシャルチームで3×3に出場するケースは、もちろん日本の女子バスケットボール選手として初めて。前例無き取り組みは、女子選手の新たなあり方を示す機会になるだろう。
そんなDüsseldorf ZOOSは今シーズン初戦を7月14日、15日にコソボで開催されたウーマンズシリーズのプリシュティナ大会で迎え、14チーム中5位でフィニッシュ。桂、Degbeon、山本、Pollerosの新たな顔ぶれで臨み、準々決勝でイスラエルに10-15で敗れたが、予選プールではリトアニアとトルコに2連勝するなど、幸先の良いスタートをきった。パリオリンピックに向けてウーマンズシリーズの競争が激しさを増す中、プリシュティナの結果を弾みに、7月19日よりフランスで開かれるボルドー大会へ挑みたい。目の前の試合で結果にこだわってプレーを続けた先に、第2、第3のZOOSが生れたり、3×3をプレーすることが選手にとって当たり前の選択肢になったりするなど、国内外で競技シーンの変化につながるはずだ。
2シーズン目の世界最高峰へ。日本からもYouTube越しに、夜更かしする夏がはじまっていく。
「Wリーグの選手から、今後も3×3をやる選手が出てくると思いますが、ひとつの競技として向き合うことを意識して欲しいです。1対1の能力でやるのではなく、チームで戦っていく3×3という競技の本質をより知って欲しい。私がZOOSに参加することで、みんなに良い影響を与えられるのではないかと思っています」
そして、山本の存在がZOOSを今シーズン、一段上のレベルに引き上げる力になることを、桂は期待をしている。チーム作りの面では「アスリートとして山本選手は世界レベルの選手です。チームビルディングのプロセスで彼女のリーダーシップなど、ZOOSにもたらすものに注目して欲しい」と話し、シュート力のあるポイントガードの加入によって、戦術面の変化も予見している。
「3×3は、2ポイントシュートが勝敗のカギを握る競技です。山本選手には、バンバン外から打って欲しいし、そうなればスペースも生まれて、他の選手も生きてくる。去年はオンボールのプレーがあまり上手く行かなかったので、ボールを持った山本選手が起点となって戦い方のバリエーションが増えると思います」
そんなDüsseldorf ZOOSは今シーズン初戦を7月14日、15日にコソボで開催されたウーマンズシリーズのプリシュティナ大会で迎え、14チーム中5位でフィニッシュ。桂、Degbeon、山本、Pollerosの新たな顔ぶれで臨み、準々決勝でイスラエルに10-15で敗れたが、予選プールではリトアニアとトルコに2連勝するなど、幸先の良いスタートをきった。パリオリンピックに向けてウーマンズシリーズの競争が激しさを増す中、プリシュティナの結果を弾みに、7月19日よりフランスで開かれるボルドー大会へ挑みたい。目の前の試合で結果にこだわってプレーを続けた先に、第2、第3のZOOSが生れたり、3×3をプレーすることが選手にとって当たり前の選択肢になったりするなど、国内外で競技シーンの変化につながるはずだ。
2シーズン目の世界最高峰へ。日本からもYouTube越しに、夜更かしする夏がはじまっていく。
【Instagram】@zoos.official(リンクは外部サイト)
【大会公式】FIBA 3×3 Women’s Series(リンクは外部サイト)
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TEXT by Hiroyuki Ohashi