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  • 2023.07.06

スポーツの力で社会問題に向き合うArch to Hoop始動!

ここ最近、ボールスポーツ(球技)が世間を賑わせています。昨年11月、FIFAワールドカップカタール2022では、三笘薫選手の“1mmアシスト”によって強豪スペインに競り勝ち決勝トーナメントに進出。ドーハの悲劇から29年後、日本中が“ドーハの歓喜“に包まれました。

そして今年3月、2023ワールド・ベースボール・クラシックにおいても、大谷翔平選手を中心に日本はまるで映画やドラマのような劇的な勝利を重ね、決勝戦でも見事アメリカに逆転勝利。14年ぶり3度目の世界一となった優勝劇は、最後の最後まで最高の盛り上がりを見せました。

この後サッカーと野球に続かなくてはいけないのがバスケットボールです。FIBAバスケットボールワールドカップ2023が今夏日本で行われます。8月25日から9月4日までフィリピン・インドネシア・日本の3カ国でセカンド・ラウンドが行われ、世界の強豪32チームから勝ち上がった8カ国が、9月5日から10日まで開催されるフィリピン・マニラのファイナル・フェーズに進出します。

日本ではBリーグ琉球ゴールデンキングスの本拠地、沖縄アリーナで2グループ8カ国の20試合が行われます。前回大会13年ぶりに本大会出場を果たした日本ですが、ドイツ(11位)、フィンランド(24位)、オーストラリア(3位)と全てランキング上位国(※日本は36位 2023年2月27日)という厳しいグループEを戦い抜かなければなりません。日本中が熱狂したサッカーや野球に続くためにまずは、ワールドカップでの勝利が渇望されているのは言うまでもありません。

日本代表の注目選手と言えば、NBAでキャリアハイのシーズンを送り移籍情報で話題の渡邊雄太ですが、日本ラウンドには東京オリンピック4位の強豪国ルカ・ドンチッチ率いるスロベニアも出場するので、今季NBAファーストチームに選出された稀代のスタースターのプレイが間近で観られるまたとないチャンスなのです。

しかし、沖縄アリーナのキャパは1万人。チケット販売はスタートしていますが主要なチケットはすでに完売となっていて、入手困難なプラチナチケットです。コロナ禍で無観客での実施となった東京オリンピックで残せなかった体験というレガシーが、また沖縄の子どもたちに残せないんじゃなかと危惧したのが、FIBA(国際バスケットボール連盟)グローバルパートナーであるモルテンでした。

「自分たちは沖縄のワールドカップで何が残せるのか?」

この思いからたどり着いたのが、沖縄の社会問題のひとつ若者の貧困への取り組み「Arch to Hoop (アーチトゥフープ)」 という活動でした。

「すべての子ども・若者たちが自分らしく生きられる社会」を目指し、社会孤立する子どもや若者の自立支援活動を行うNPO法人沖縄青少年自立援助センター ちゅらゆいや輸出業をメインに日本の地域創生に貢献する株式会社萌(きざ)す、といった沖縄の地元企業との出会い。そして、彼らと一緒に歩みを進めていくなかで一般社団法人Arch to Hoop 沖縄が誕生し、この夏活動が始まりました。

「沖縄県で子どもの問題をずっとやってきていますけど、やっぱり沖縄県では子どもの貧困率が高いと言われていて、貧困率が高いと何が困るかっていうと一番はやっぱ体験が奪われるんですね」

ちゅらゆい代表理事の金城隆一氏が言う通り、沖縄県の子どもの貧困率は29.9%(沖縄県調査)。この数字はOECD加盟国で相対的貧困率が高いコスタリカの20.5%を大きく超えて、子どもの3人に1人は実は経済的理由を背景にいろんな課題を抱えているというが分かりました。

困窮家庭の子どもは、アルバイト代で携帯代や昼食代、交通費をまかない、高校卒業後もフリーターや肉体労働や夜の仕事に就く場合が多く、働いても低賃金でキャリアアップしにくい就労形態になりやすいため、負の連鎖からなかなか抜け出せない現実があり、子どもの機会が奪われているのです。

「スポーツを通じながらいろんな人たちがフラットに繋がれる。何か作ったり、場を提供したり、そういう体験を子どもたちと一緒にできたらいいなと思っています」

金城氏の思いがモルテンとつながったことで、手探り状態ではありつつも自分たちで敷いたバスケットボールコートでプレイするArch to Hoopの活動のフレームが出来上がりました。

今回のプレイベントに参加してくれたのは、小学生を対象に体験格差の問題に取り組む「b&gからふる田場」と、中高生を対象に不登校の子どもなどの自立支援や様々な体験・経験を提供する居場所「Kukulu」の子どもたち。2日間のプログラムでは、一緒に遊びBBQをして親睦を深めるオリエンテーションを初日に行い、2日目には移動式バスケットボールコート モルテンB+ゲームユニットの設営撤去と3×3を楽しむイベント制作体験が実施されました。



「本当にこのイベントが単純にすごく面白かったし、何より子どもが楽しかったって言ってくれました。スポーツを通じて人と人が出会う。そこに価値を感じました。8月もすごく楽しみです」

最初は警戒して対応もぎこちなかった子どももいましたがイベント最後にはみんな笑顔で、体験の価値を改めて考えるきっかけになった大人も多かったはずです。改めてスポーツが子どもたちに与える力を実感しました。と、b&gからふる田場 事業統括の平林勇太氏も振り返りました。

こうしてプレイベントは実りある内容になりましたが、大事なのは8月のワールドカップ時期でのイベント、その先の中長期的な取り組みにありますとモルテン勝田駿平氏は言います。

「短期的には、関わる子どもや若者たちがまたみんなでバスケがしたい!と感じてもらい、その体験をきっかけに自分のやりたいこと・好きなことを発信できるように変わっていって欲しいです。
また、中長期的には、そういった子たちがためらうことなくチャレンジできる環境にしていくために、民間企業や自治体が共創して活動が循環するような形つくりが必要です。その足掛かりとなりたいです」

Arch to Hoopが目指すのはスポーツを通じた継続可能な社会課題へのアプローチ。バスケットボールというスポーツが社会課題の解決のために何ができるのか。簡単に答えは出ませんが、見守って行きたいと思います。

一般社団法人 Arch to Hoop 沖縄について

スポーツで社会問題に向き合うArch to Hoop始動!

TEXT by Rintaro Akimoto

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