• COLUMN
  • 2023.06.25

TOKYO DIMEとトヨタ自動車の公開練習から思う、3×3の魅力と可能性

「3人制と5人制が一緒の時間を過ごすという、ひとつ良い光景を皆さんにお見せできたと思います」――TOKYO DIMEのオーナーを務める岡田優介氏は6月20日、トヨタ自動車アンテロープスとの公開練習をこのように振り返った。Wリーグ所属チームと合同で行うイベントは初めてだったが、見ている側をわくわくさせてくれたことは間違いない。TOKYO DIMEからは坪内瑠愛、加藤臨、荒木涼か、本田奈緒子、藤岡麻菜美らが参加し、アンテロープスからはヘッドコーチ(HC)の大神雄子氏(以下、大神HC)をはじめ、宮下希保、梅木千夏、横山智那美、パレイ ルセアネヘイララ紀子が参加した。

 公開練習は、岡田氏と大神HCが話し合いながら選手のコンディションも考慮して、10-10から始まる5分ゲームなどが複数回行われた。10分のフルゲームでは違った展開になるだろうが、DIMEが逆転勝ちを収めたり、アンテロープスがやり返したりするなど、両者は熱のこもったゲームを披露。DIMEの個人サポーター限定でその模様は公開されたが、アンテロープスのユニフォームを着た多数のファンも駆けつけており、訪れた全ての人にとって良い光景になったはずだ。

 岡田氏によると、今回の開催にはトヨタ自動車の理解も大きかったという。「本当に感謝しています」と語った。非公開ではなくファンを迎えた形式にできたほか、両チームによるInstagram Liveも先方からの提案だったそうだ。お互いに、3×3や選手たちを知って欲しいという思いがにじむ。

公開練習のきっかけは大神HCの相談
 一方で、公開練習のきっかけをひも解くと、それは大神HCから岡田氏への相談がはじまりだった。アンテロープスは、6月24日から韓国で開催中の「2023 SHINHAN BANK SOL 3×3 Triple Jam」(※)という3人制の国際大会へ出場するにあたって、大神HCが「岡田くんに一緒に練習ができないかとお願い」をしたという。

 かねてより2人は親交があったため、その申し出を岡田氏は快諾。「なんか一緒にできたらいいですね」というコミュニケーションを昔から大神HCと取っていたそうで「今回、たまたま向こうが(韓国で)試合があるということで、思い出してくれた」そうだ。ちなみに、岡田氏はDIMEの女子チームを結成するタイミングで、大神HCを選手として誘ったこともあったという。

 そんな背景もあってか、公開練習中の大神HCはなんだか楽しそうだった。帰りがけには「岡田くんが色々と準備を進めてくれて、今回実現できました。本当に本当に感謝しています。ありがとうございます」と話し、こう続けた。アンテロープスにとっても、充実した時間になったようだ。

「まだ3×3をやって間もないチームですが、選手はすごい頑張りました。あとは、今週末の試合に向けて、しっかりとコンディショニングをする。(プレーを)詰めていく必要もたくさんあると思います。でも、なにより選手が楽しんでいるのが一番です。この時期は特に、1対1のスキルを発揮するとか、思い切ってプレーすることが大事。韓国でもそういうプレーを、たくさん出して欲しいですね」

3×3に魅力や可能性が満ちている証
 TOKYO DIMEとトヨタ自動車アンテロープスによる公開練習は、これまでのバスケ界に無かったコラボレーションである。本当に新鮮だった。両者をつなぐ役割を「3×3」が果たしたのも、この競技が魅力や可能性に満ちている証ではないだろうか。

 ファンの視点に立てば、今回は藤岡麻菜美を見られる機会だったことも、そのひとつ。Wリーグの2022-23シーズン途中にシャンソン化粧品 シャンソンVマジックを退団した藤岡が今年5月にTOKYO DIME入りし、元気よくプレーする姿を見せていた。シャンソン化粧品時代のチームメイトであるパレイ ルセアネヘイララ紀子と再会する場面も、この公開練習があったからこそ生れたと言える。

 そしてプレイヤーの視点に立てば、3×3を通して様々なキャリアの選手たちが交流できる意義は大きい。DIMEで言えば、Wリーグでのプレー経験の無い坪内や荒木、本田らにとって、アンテロープスの選手たちとマッチアップできた経験は代えがたいものになる。岡田氏は「Wリーグの選手とバスケをやれるとは思ってなかっただろうけど、それができるのが3×3の魅力だと思います。うちの選手の中には、無名と言われるような選手もいますが、そんな選手にとっても、良い場を提供できたと思います」と話した。

 3×3は選手の成長を手助けし、キャリアを広げる可能性があると改めて感じられた、約1時間半の公開練習。過去に3×3女子日本代表のアソシエイトコーチも務めるなど、3人制に深く携わってきた大神HCも、こう語っている。

「いまのコーチという立場から、2つあります。ひとつは、3x3から身近な選手が成長できる良い機会をもらっています。これに挑戦しない選択肢は無いですね。3×3から学ぶことがたくさんあるので、チームでも挑戦したいと思っています。もうひとつは、選手にバスケットボールができる機会をどうやって作ってあげられるかと考える中で、3×3はとても良い機会です。引退後もそうだし、デュアルキャリアの一つとしてもそう。トヨタは5人制のチームですが、競技の違いは関係なく、バスケットボールっていうところで、ワンチームでいきたいと思っています」

 日本を代表する3×3チームと5人制チームの共演が、今後競技シーンにどんな影響を与えるのか。すぐには現れないかもしれないが、このコラボレーションが確かな一歩になったことは間違いない。近い将来、今日の光景が当たり前になっていけば、女子バスケや3×3がより一層、面白くなっているはずだ。

※大会情報
 ・名称:2023 SHINHAN BANK SOL 3X3 Triple Jam
 ・日程:6月24日(土)~25日(日)
 ・主催:WKBL Triple Jam
 ・概要:日本からはアンテロープスのほか、ZOOSが参戦するなど4カ国から13チームが出場する。

公式ページ(リンクは外部サイト/韓国語)

TOKYO DIMEとトヨタ自動車の公開練習から思う、3x3の魅力と可能性

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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