• COLUMN
  • 2023.06.22

岡田大河がU19バスケットボールW杯に挑む……スペインでの経験を糧に、元相棒との対戦へ

 6月24日からハンガリーで開催される「FIBA U19バスケットボールワールドカップ2023」(以下U19W杯)へ挑む男子U19日本代表に、岡田大河が選ばれた。この一報に昨夏、「スペインで結果を残した先に日本代表がある」と話していた彼の言葉が蘇る。
 2019年秋に海外挑戦してから4年。世代屈指のポイントガードに成長した19歳は、6月15日に報道陣へ公開された第3次合宿の練習後、「今まで日本代表の機会に恵まれて来なかったので、このチャンスをいかしてワールドカップで自分の力を出し切れるようにやっていきたい」と、意気込みを語った。

 そして、自らの役割を「チームを勝たせることが、仕事だと思っている」とコメント。具体的には、司令塔としてゲームコントロールはもちろん、流れを変える「1本のパス」や、勝負どころで決め切る「1本のシュート」で、チームのために貢献する。その様子からは、異国の地で積んできた自負さえも感じられるほどだった。

スペインでのプロ1年目を振り返ると……
 15歳でスペインへ渡った岡田は、同国3部リーグ「LEB Plata」所属のZentro Basket Madridの下部組織・カンテラの門を叩いた。U16のカデーテからキャリアをスタートさせ、U18のジュニアへ昇格すると、2021-22シーズンにはジュニアへ在籍しながら、同チームのセカンドチームにも選手登録されて、4部リーグの「EBA」で日本人最年少の17歳(当時)でプロデビューを飾った。
 さらに、昨年8月にはNBAとFIBAによる「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ アジア 2022」にも招待されて、実力も認められた。40名の有望選手の中から、オールスターの一人に選ばれると、今年2月には世界27カ国から高校生年代のトップ選手が集まる「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・グローバルキャンプ」にも参加している。

 カンテラを卒業した岡田は去る2022-23シーズン、4部のSun Chlorella Dragonsに所属し、プロとして初めてフルシーズンを経験した。ベテラン選手が多いと言われるディビジョンで、若手選手で構成されたチームをけん引。主力ポイントガードとして26試合に出場し、30分近いプレータイムを確保すると、平均10.8得点をマークし、アシストは同5.0本を数えた。今回の代表入りへ繋がるシーズンについて、岡田は「もう生き残っていかなきゃいけないし、そのためには数字も残さないといけない。そんな中でアシストランキングでは平均で2位。トータル数で1位の結果を出せました。そういう面では(昨夏)自分が言ったことを有言実行できたと思います」と、振り返る。

 ただ、ルーキーシーズンは順風満帆だったわけでない。シーズン序盤から中盤までは負けが多く、苦しんだ。岡田は「勝負どころで自分の判断ひとつで勝ち切れなかったり、5点差で勝ってたのが1分で逆転されたりもしました。シーズン序盤で、責任をすごく感じていました」と、当時の心境を明かす。

 それでも、「若さは言い訳でしかない。コートに入ったら(年齢も)関係ない」と言う意識で、彼は苦しい状況も受け止めて、乗り越えていく。シーズン終盤には連勝を重ねて、最終的にSun Chlorella Dragonsは勝率5割でフィニッシュ。「自分が最後のシュートを1本決め切っていれば(結果が)変わることを学びました。終盤、チームを勝たせることができたのも、少しですが、ひとつ成長したと思っています」と、胸を張った。

カンテラ時代の元相棒と対戦へ……「ありがたい」
 そんな岡田にとって、U19W杯の初戦となるブラジル戦は待ちきれない対戦になる。相手のロスターに名を連ねるGabriel Landeira(カビエル・ランディエラ)とは、カンテラ時代に切磋琢磨し、お互いを高めあった間柄。3年間、寮も同じで、部屋を行ったり来たりして、バスケIQを語り合うほどだったという。岡田はLandeiraを「ガビー」と呼び、「もう本当に彼のおかげで自分はここまで来ました。成長させてもらった1人と言っても過言ではない」と、その存在は大きい。

 岡田はスペインで「バスケIQ」を磨いてきたが、そのきっかけのひとつがガビーだった。昨夏、そんな親友であり、元相棒とのエピソードを、こうも語っていた。

「ガビーはガードでは無いけど、頭がとても良くて、状況判断もできて、ゲームコントロールができる。一緒にやると心強いし、相手チームになると、されて嫌なこともしてくるんです。試合を見ていても、僕と見ているところが違いました。(カンテラの)ジュニア1年目のとき、寮から僕とガビーの2人だけAチームに入って、周りの人たちについていくのは大変だったけど、一緒に試合へ出たときは僕のプレーを引き出してくれたり、お互い良い関係でした。最後の方はもう自分らがチームの中心みたいな感じになれて、ガビーに助けられました。だから、トップチームの練習に行くと、僕らは別々のチームにされていたんです」

 岡田によると、お互い代表入りできるかどうか、かねてより連絡を取っていたとのこと。ともにロスター入りを正式に決めたことで、「彼とワールドカップでやり合えるのは、すごくありがたいことだと思っています」と、胸の内を明かした。そして日本代表としても大事なブラジル戦へ向けて「能力的にはブラジルが勝っていると思いますが、その中で自分たち日本は一試合、一試合が大事です。どこまで通用するか、楽しみだと思います」と、落ち着いて初戦を見すえていた。

 海外挑戦を経て、初めて代表ユニフォームに袖を通す岡田大河。シビアなプロ1年目を乗り切った経験は、必ずやチームの力になるはずだ。主将の小澤飛悠をはじめ、ジェイコブス晶や川島悠翔ら頼もしいチームメイトがいる中で、時には大河がその中心となって存在感を発揮する場面もあるだろう。U19日本代表の一員として、ワールドカップで躍動する姿を期待する。

 【大会概要】
スケジュール(予定)
 ・ 6月24日(土) 日本 vs ブラジル (日本時間22:00 Tip Off)
 ・ 6月25日(日) エジプト vs 日本 (日本時間19:00 Tip Off)
 ・ 6月27日(火) セルビア vs 日本 (日本時間27:00 Tip Off)
 ・ 6月28日(水) ラウンドオブ16
 ・ 6月30日(金) クォーターファイナル・順位決定戦
 ・7月1日(土) セミファイナル・順位決定戦
 ・7月2日(土) ファイナル・順位決定戦

組み合わせ
 ・グループA:カナダ、フランス、中国、スペイン
 ・グループB:レバノン、アメリカ合衆国、マダガスカル、スロベニア
 ・グループC:セルビア、<<日本>>、ブラジル、エジプト
 ・グループD:アルゼンチン、韓国、ハンガリー、トルコ

【選手】※12名
 ジェイコブス 晶 (SG / 203cm / NBAグローバルアカデミー)
 湧川 颯斗 (PG / 194cm / 滋賀レイクス)
 岡田 大河 (PG / 174cm / Zentro Basket Madrid)
 小澤 飛悠 (SF / 188cm / 日本体育大学 1年)
 八重樫 ショーン龍 (SG / 185cm / 白鷗大学 1年)
 坂本 康成 (SG / 194cm / 筑波大学 1年)
 武藤 俊太朗 (SF / 190cm / 明治大学 1年)
 川島 悠翔 (PF / 200cm / NBAグローバルアカデミー)
 小川 瑛次郎 (SG / 187cm / 羽黒高等学校 3年)
 ロロ・ルドルフ (PG・SG / 188cm / St.Augustine High School / Dream Vision)
 内藤 耀悠 (SF / 190cm / レバンガ北海道U18)
 渡辺 伶音 (PF / 204cm / 福岡大学附属大濠高等学校 2年)
 ※平均191.4cm、18.0歳/所属は2023年6月5日現在

公式サイト(外部リンク/FIBA)

岡田大河がU19バスケットボールW杯に挑む……スペインでの経験を糧に、元相棒との対戦へ

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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