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  • 2023.06.16

不撓不屈の精神でチームを優勝に導いた、今村佳太

琉球ゴールデンキングスといえば、ルーキーイヤーから11シーズンにわたって一筋にプレーしてきた岸本隆一がチームの顔。ホーム・沖縄アリーナで飛び出すココナッツスリーに象徴されるように、今なおその長距離砲の威力は健在だが、いわゆる日本人エースという立ち位置からは離れつつある印象を受ける。それは、今村佳太の成長によるところが大きい。

2020-21シーズンから琉球でプレーしている今村は、移籍1シーズン目から1試合平均9.8得点と琉球のオフェンスの一翼を担ってきた。翌2021-22シーズンはスターター出場が前シーズンの21試合から53試合に増え、1試合平均10.5得点でチーム初のチャンピオンシップファイナル進出にも大きく貢献した。そのファイナルで宇都宮ブレックスに優勝をさらわれてしまったが、「目の前で見せつけられたあの光景はもう見たくない」と一念発起した今村は、今シーズン1試合平均得点を11.3点まで伸ばし、CSではクォーターファイナルとセミファイナルの4試合で平均15.8得点を叩き出してファイナルの舞台に戻ってきた。

ファイナルGAME1では対戦相手の千葉ジェッツにマークされてボールを持つこともままならず、「フラストレーションがたまる状況だった」と今村自身も振り返るが、ダブルオーバータイムでは3ポイントで先手を取り、残り1分34秒には1on1からアタックを仕掛けてフローターをヒット。勝利を決定的にした残り28秒のジョシュ・ダンカンのプットバックも、今村のアタックから生まれたものだった。

押しも押されもせぬ日本人エースとなり、「他の選手やスタッフに中心選手として期待してもらって、それを受け止めてプレーしてこられた」とその自覚も持つ今村だが、一方で「エースというのは言葉だけだと思っている」とも言う。

「自分がエースというよりは、勝ちたい気持ちが誰よりも強いのが自分だと思ってます。チームメイトが任せてくれたり、スタッフが最後の場面で僕にボールを渡すような指示をしてくれたり、その積み重ねが今の僕につながってると思います」

ただ、自身をエースとは呼ばなかったとしても、チームを引っ張り、勝たせるという意識はエースのマインドそのもの。「やっぱり昨シーズン負けたことが僕の中では大きかった。今シーズンは自分が優勝に導くと最初から決めていたので、その覚悟かなと思います」と言うように、そのマインドが備わったことが今回の結果に結びついたということもよく理解している。そして、「自分に対して自信を失ったことは1回もないですし、自分は絶対にできると思っていた。自分を信じてきて良かった」という言葉は、エースとしての資質を持ち合わせていたことを物語る。

覚悟といえば、3年前にこの琉球を新天地に選んだことも、今村にとっては簡単な決断ではなかった。新潟アルビレックスBBは生まれ育った地にある憧れのチームであり、そこで地区優勝という貴重な経験もできた。そこを離れることには様々な理由があったにせよ、1人の選手として成長を期し、その姿を見せるということが地元への恩返しでもあった。

「新潟は地元でもあったので、移籍することは並大抵の覚悟ではなかったんですが、優勝をつかみ取るためにこの琉球ゴールデンキングスに来ましたし、それで新潟のブースターさん、新潟で頑張ってる子どもたちに希望を与えられたらと思っていたので、この優勝は本当に嬉しいです。成長という部分は皆さんに判断していただけたらいいかなと思うんですが、そう感じてもらえたならそれも嬉しいです」

リーグ屈指の強豪で主軸に成長しただけでなく、頂点にまで導いた今村。これからもまた、覚悟と責任を忘れることなく成長を続けていくことだろう。

不撓不屈の精神でチームを優勝に導いた、今村佳太

TEXT by 吉川 哲彦

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