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  • 2020.02.06

3×3 JAPAN TOUR FINALのMVPが象徴したこと

日本バスケットボール協会(JBA)が主催する3×3のツアー大会『JAPAN TOUR』。昨年4月から始まった2年目の2019シーズンは、9月で終了していた前シーズンと比べて規模が拡大され、年間を通した大会フォーマットになって全国各地でゲームが展開された。そして、そのフィナーレを飾る、『3×3 JAPAN TOUR 2019 FINAL』が、1月25日、26日の2日間に渡って、大森ベルポート(東京都品川区)で開催された。

頂点に立った者たち

男子日本代表の選考も兼ねる最高峰のEXTREMEカテゴリーでは、UTSUNOMIYA BREX.EXEとTOKYO DIMEが決勝で激突。昨秋の3×3.EXE PREMIER 2019 PLAYOFF以来のマッチアップとなった日本の3×3をリードする2強対決は、21-11でUTSUNOMIYA BREX.EXEが制して、優勝を飾った。またOPENカテゴリーでは、男子はBEEFMANがBREASTを21-17 で破り、女子はSHONAN SUNSがSIMONを19-16で退けて、頂点に立った。



シーズンを象徴するMVP

今シーズンの3×3は昨春の代表候補合宿を契機として、プレーヤーの顔ぶれに大きな変化が訪れていたことが思い起こされる。BリーグやWリーグで活躍する5人制トップリーガーや、大学や高校の若手有望株が本格的に取り組み、国内外で行われる様々な試合を数多く経験。シーンの主役に躍り出はじめた。そしてFINALのMVPたちを見ると、それを改めて象徴していることを感じさせる。

UTSUNOMIYA BREX.EXEの小林大祐は、26日のみの参戦ながらMVPに選出された。「昨日、僕はいなかったのにもらってもよろしいのでしょうか・・・」とインタビューで話すほどだったが、Bリーグの所属先である茨城ロボッツのレギュラーシーズンの試合(1/24-25)へ出場したことを踏まえれば、これが3連戦目。タフなスケジュールをはね返して優勝に貢献したと言えよう。イージーなミスが目立ち、ボールが手に付かない場面もあったが、最後の10分間は、ゲームにアジャストして、決めるべき2ポイントシュートを沈めるなど、3人制の男子日本代表入りを目指して、ロボッツとの両立を公言するに相応しいパフォーマンスを見せてくれた。

そして女子日本代表候補で、Wリーグ・デンソーアイリスの伊集南も、昨夏の立川大会に続いてSHONAN SUNSの一員となり、タイトル獲得への大きな原動力となった。MVPにまで選出されたことについて、「私が頂いていいものなのかと思いますけど、SUNSさんのお力になれて良かったです」とコメント。謙遜した様子ではあったが、パスの精度や1対1の技術の高さ、さらにリーダーシップをコートで遺憾なく発揮した姿は印象的であり、それに呼応してか、彼女の入ったSUNSはボールがダイナミックに動き、内外角からアグレッシブにアタックできる素晴らしいチームに仕上がっていた。

まだまだ現役のWリーガーが国内の大会に出場するケースは多くないものの、彼女の取り組みは他の選手たちへ刺激となり、競技の違いを超えてファンを惹きつけることを予感させる。「今後、私以外の選手も出場してくれたら、もっと面白くなると思います。W(リーグ)と3×3の共存が近いのではないかと、少しワクワクしました」。彼女の想いがより大きく、さらに広がっていくことを2020年は楽しみにしたい。

学生からプロへ、新たな舞台で両立を目指す

一方で、プロバスケットボール選手になったばかりのBEEFMAN・荒川颯も、大森へやってきた。今大会の3日前にライジングゼファーフクオカとの特別指定選手契約が発表され、24日に福岡県内であったBリーグデビュー戦に出場したばかり。拓殖大学(今春の卒業見込み)時代と変わらない、3×3と5on5をクロスオーバーしてプレーする意思を示してくれた。

もちろん、学生からプロになっても所属チームの名前を背負っており、やるからには本気だ。「大学時代も自覚はしていましたが、それ以上に“プロ”としてやっていかないといけないという自覚があります。今回も必ず優勝して(福岡の)チームに報告ができるように考えていましたし、福岡の試合を見てもらえるようになるために、自分が良いプレーをしてお客さんに楽しんでもらうことも大切だと思っていました」。目標通りの成果を得たことに、ホッとした表情を見せている。

そして今後は、ジョゼップ・クラロス・カナルス ヘッドコーチの信頼を勝ち取り、結果を出すのみだ。世の中には“二兎追う者は一兎も得ず”と言うことわざがあるものの、学生時代に両方へひたむきに向き合ってきた本人の姿勢や強い決意を考えると、待ち構えることも乗り越えていけるだろう。

「両立することは、本当に難しいと思うのですけど、いま(3×3日本)代表に入っているメンバーはBリーグで活躍している選手が多いです。そこでBリーグに挑戦せずに、3×3だけやるというのは、なかなか上(のレベル)には行けないと思うので、僕は一人のバスケットボールプレーヤーしてバスケットボールのレベルを上げることが必要だと考えています」。スケールアップするべく、スタートラインに立った彼の前途に期待しよう。

待ち遠しい2020シーズン

さて3×3はJAPAN TOURのシーズンエンドも束の間、東京オリンピックや新シーズンへ向けて、一気にその歩みを加速させる。ご存知の通り、女子日本代表は3月18日から行われる『FIBAオリンピック選考会(OQT)』へ向けて、国内合宿はいよいよ佳境。今週6日からは伊集も招集されている第7次強化合宿を迎える。

また3×3クラブ世界一を争う、『FIBA 3×3 World Tour Masters』も全日程が公開され、ChallengerやSatellite、Questなど予選大会も順次セットされて行く予定である。Mastersのオープンニングは4月のDoha大会。国内大会がここへ繋がるのか、まだ発表はないが、2020シーズンの幕開けは待ち遠しい限り。

日本ランキング1位(2/2時点)、TOKYO DIMEの落合知也(越谷アルファーズ)も「Dohaの切符を早く獲りたいですし、Challengerも転戦していきたい。早くプロサーキット来い!という気持ちで一杯です」と話す。オリンピックイヤーの大事な1年。世界最高峰の戦いはもう間もなくだ。




TEXT by Hiroyuki Ohashi

3x3 JAPAN TOUR

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