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  • 2019.12.17

3×3 U18日本選手権大会 REPORT vol.1

夢や目標に向かう若き力が躍動

年々、レベルが上がるユース年代の3×3。開催時期がいまの12月に移って、今大会で3度目を迎えるが、やっぱり今年もそう感じさせられた。ウインターカップの出場チームや、その都道府県予選で敗れて5人制を引退して間もない選手たちが参加するようになり、指導環境も徐々に整い始めた。過去最高の逸材や、3人制の競技特性を理解したゲーム運びをするチームが登場するなど、若き力が冬のビックトーナメントで躍動した。

予選を勝ち上がった16強が集結

18歳以下の3人制、日本一を決める第6 回3×3 U18日本選手権大会が、11月30日と12月1日の2日間にわたって開催された。場所は3×3.EXE PREMIERでお馴染みの大森ベルポート(東京都品川区)。初日はMC MOJAとDJ KENKENが、準決勝と決勝はDJ MIKOとMC MAMUSHI、3×3日本代表候補の落合知也もゲスト解説で駆けつけて、高校生たちのひたむきなプレーを盛り上げた。今年はこれまでの全チームが集結する一局開催から、大会フォーマットを一新。全国3か所でエリア予選が行われ、東日本と中日本エリアからそれぞれ上位5チーム、西日本エリアから上位6チームの男女各16チームが、一発勝負のトーナメントで優勝を争った。




最後の全国大会で優勝できた想い

女子では前回大会の覇者、三田松聖高校のRAMS(兵庫県)が準決勝で敗退。そのMVPで、3×3 U18日本代表として8月のFIBA 3×3 U18 ASIA CUPで準優勝を経験した岸本明香里ら、昨年と同じメンバーで臨んだが、八戸学院光星高校のIverson(青森県)に終始、ディフェンスで強いプレッシャ-をかけられ、相手の外角からのオフェンスを止めることができず、2連覇の夢は叶わなかった。

そんな中、決勝では勢いに乗るIversonをteam☆アサヒ(神奈川県)が17-10で下して、初優勝を決めた。両チームともに豊富な運動量をベースにディフェンスの強さと、果敢なドライブや2ポイントシュートを武器としていたが、team☆アサヒは唯一のアドバンテージである山瑞美子(173㎝)のインサイドで主導権を握り、頂点へ駆け抜けた。同チームは神奈川県立旭高校の4人で、MVPに選ばれた山端によると、3×3は「5人制のバスケットを引退してから(高校の)コーチの方に勧めてもらって、そこから練習をはじめました」と、競技経験は非常に浅い。しかし、県協会のスタッフから競技のポイントをしっかりとコーチングされて、着実にトーナメントを勝ち上がっていった。過去にはウインターカップにも出場経験のある学校であるが、今年は県ベスト4で敗退。それでも最後の全国大会で優勝できたことで、「高校で全国に通用するプレーヤーになりたいという目標があったのですけど、それが5人制でできなかった分、3人制でできたことはとても良いことだなと思っています」と、山端は笑顔を見せた。スタンドにかけつけた友人や家族の前で、有終の美を飾ったことは今後につながる大きな財産となったに違いない。


3×3で初Vの経験をウインターカップへ

一方で、男子はウインターカップに出場する藤枝明誠高校のSILVER BACKS(静岡県)が初優勝を飾った。1回戦と準々決勝では、留学生・カミソコ オマール(200㎝)の高さに頼ることなく、4人がスクリーンやセットプレーから多彩な攻撃を展開。2戦連続KO勝ちで危なげなく突破すると、続く2日目はオマール抜きの3人で臨み、準決勝でSIMON(東京都)を21-15で撃破する。タイトなディフェンスで大会No.1のオフェンスを魅せた須藤タイレル拓の出鼻をくじき、一時は勝ち越しを許しながらも浜本健の2ポイントシュート、菊地広人や石橋永遠が抜群のコンビネーションで相手を崩して一気に畳み掛ける。決勝では1on1を主体に攻め込むAtom(大阪府)と一進一退の攻防となったが、最後まで足が止まることなく、18-17で逃げ切って日本一をたぐりよせた。MVPに選出された浜本は「昨日は留学生のオマールがいたのですけど、今日は3人ということで厳しい戦いになると分かっていました。その中で自分たちの持ち味を出して、やることを徹底しようとやっていたので、それを出せたと思います」と充実した表情で振り返った。



彼らは開幕が迫る冬の大一番にも、出場を控えている。そんな中、3×3を経験したことで、5人制にいかせることも数多く感じたようだ。浜本が「スリップの部分であったり、ディフェンスでスリー(3×3では2ポイント)を打たせない部分」と言えば、菊地も「スクリーンからスリップは5対5でも使えると思うし、足を使って攻めることも、活用できると思う」と話す。高校バスケで最も大きなトーナメントへ弾みをつけて、目標はもちろん「全国優勝」。今月23日にその初戦を迎える。

3人制を楽しんだNBAを目指す原石

最後に優勝には届かなったが、今大会で大きなインパクトを残した選手がいたことに触れておこう。横浜清風高校の3年生でSIMON所属の須藤タイレル拓(180cm)だ。縦に割るダイナミックなドライブから対空時間の長いジャンプ力と、長い手足を駆使して何度もフィニッシュまで持ち込み、ときにはディフェンスに挟まれながらもダンクまで叩き込む圧巻のプレーを連発。外からのシュート力もあり、1on1を仕掛けるときに彼がまとう空気感は同世代と明らかに違うほどだった。自分を表現できた3×3について、「めちゃめちゃ楽しいです。すっごく楽しかったです」と、満面の笑みで振り返る。もちろんまだまだ成長の余地があり、それを客観的に分析していた姿も印象的で、「やっぱりオフェンスが主なので、そういう面ではオフェンスの課題もありました。視野が狭いという欠点を見つけられたし、ディフェンスも自分は外のディフェンスがあまりつけられないので、そこの弱点をしっかりと見つめ直すことができた」。磨けば大いに光る原石である。

彼は来春から並里成(現・琉球ゴールデンキングス)らを輩出したスラムダンク奨学金のプログラムで渡米する。
バスケットボールの母国へ挑戦することについて、「自分の技術を向上させることもありますし、やっぱりアメリカの本場の雰囲気やフィジカルの違い、スキルの違いを体感して、自分もそのレベルを越せるように努力していきたい」とその想いを語る。そして夢は世界最高峰の舞台だ。「スラムダンク(奨学金)でアメリカに行くからにはNBAを目指して日々努力していきたいと思っています。NBAに向けて、ディフェンスやフィジカルをしっかり鍛え上げて、八村塁さんのようにしっかりNBAで活躍し続けられるような選手になっていきたい」

3×3日本一決定戦から、夢や目標を叶える高校生たちがひとりでも多く生まれることを楽しみにしよう。

TEXT by Hiroyuki Ohashi

3x3 U18日本選手権大会

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