• COLUMN
  • 2019.12.19

3×3 U18日本選手権大会 REPORT vol.2

ストリートボーラーが3×3の次世代を育てる姿

今年の3×3 U18日本選手権大会は、男子が藤枝明誠高校のSILVER BACKS(静岡県)、女子が神奈川県立旭高校のteam☆アサヒの優勝で幕を閉じた。“年々レベルが上がっている”と感じさせられたユース年代であるが、なぜそのような印象を与えているのか。その理由の一端を紐解いてみた。

3×3を体現するチームが台頭

思い返すこと約1年前。2018年大会では、法政大学第二高校のTeam withBが準決勝で、200m超えの留学生を擁し、日本人選手の技術レベルも高い開志国際高校を撃破。4 人が180㎝に満たないスモールチームであったが、ファウルを最小限に留めて、ビックマンにインサイドで1点を取られることは許容し、2点はきっちりと抑える。守備から攻撃に転じる際には素早いパス出しと動き出しで外角から精度の高い2点を決めて主導権を握るなど、3×3の特性をつかんだ試合運びが印象的だった。

そして2019年。出場選手が持つ個々の技量が高かったことはもちろんのこと、3人制の戦い方を体現するチームが昨年以上に台頭してきた。優勝チームだけでなく、8強へ進出した選手たちからは程度の差こそあれ、それが見て取れる。5人制が主戦場で3人制の経験が浅い高校生が多い中、どこで3×3を覚えてくるのかと思うほど。その背景はさまざまあるが、ひとつには競技をリアルにプレーした者や、深く携わった者がコーチに回っているケースがあった。


ストリートボーラ-がコーチを務める

TEAM-Sのメンバーとしてストリートシーンの一時代を築き、SOMECITYやALLDAY、LEGENDら幾多のプレイグラウンドで活躍したJUNこと、鈴木淳氏。3x3においてもの日本選手権大会や3x3.EXE TOURNAMENTに出場するなど、いまなおオープンカテゴリーでプレーを続けているが、彼は神奈川県代表チームのコーチも務めている。

同県は予選会で優勝したチームを強化する方針を取っており、鈴木氏は昨年Team withBを、今年も男子のORANGER、女子のteam☆アサヒをコーチングした。結果についても、昨年は男子が準優勝。今年は女子が青森県代表のIversonを下して、初優勝を飾った。セレモニー後には、「ちょっと予想と違うチームが決勝に来たのでどうなるかなと思っていて、さらに似ているチーム同士。うち以外で一番ディフェンスをハードにやってくるチームだから、不安はあったんですけど、やはり普段からの練習で大人のチームとやって、その辺も慣れさせていたこともあって、期待に応えてくれましたね」と、選手たちの頑張りを喜んだ。さらに、決して楽な試合展開ではなかったが、最後まで足が止まらず、3×3をやり切ったチームを見て、「やっていて申し訳ないですけど、負ける気はしなかったです。本当に良かった」と、そのプロセスには確かな手応えもあった。

“続けていきたい”と頷ける理由

対照的に法政大学第二高校を主体としたORANGERは、東京都代表のSIMONに準々決勝で敗れて涙を飲んだ。試合後には「昨年度は県内で細々と練習をしただけで良い結果を残してくれました。結果を出してくれたおかげで(大阪のNKS-405へ)県外遠征などを今年はやらせてもらいました。それでさらにレベルアップを図っていたのですけど、悔しい結果になってしまいました」と明かした。11月から週2回のペースで練習を行って、前年を超えるべく臨んだ大会で負ける気持ちは味わいたくないもの。それでも敗れた選手たちの言葉が収穫にもなった。「今後、彼らは5対5でバスケをやらないみたいなのですが、どうにか3×3の良さを分かってもらったので、“続けていきたい“ということを言ってくれています。それだけでも僕は嬉しいですね」。

2年連続でU18カテゴリーでファイナリストを送り出した鈴木氏。プレイヤーとして競技を経験してきたことをチームに落と込み、コートで表現できるようアドバイスを送った。予選会を勝ち上がった彼らに3x3をコーチングするうえで大事にしていることは「シュート力」だと言う。「シュート力があるからこそ、ディフェンスがタイトに出てきて、ドライブなり、そこからパスをさばくことに繋がると思っています。とにかくシュート、徹底してシュート練習をさせていました」。3x3は5人制に比べて、スペースがあり、1対1を仕掛ける回数が増えてくる。誰もが試合を決定づけるチャンスがあるだけに、そこを磨くことは勝つための最善の方法であり、選手たちからすればシュートが上達すればプレーをする面白さや楽しみもより一層、増していく。高校生たちが「続けていきたい」というのも、頷けるところだ。

次世代を育てる者たち

3×3はまだまだ発展途上の過程にある。競技のいろはを教えられる存在は、数少ない状況であり、そもそもを言えば、コート内に監督やコーチを置くことはできない。戦い方については、プレイヤーが一番熟知している。そんな中、ストリートボーラーとして、3×3プレイヤーとして、コートに立った知見を持つ者たちが、チーム強化に携わり、結果を出しはじめた姿は、新たな流れである。

今大会は、神奈川県代表チームに加えて、3×3.EXE PREMIERやJAPAN TOURに参戦するSIMONがチームを編成してORANGERを撃破。三浦隆義氏が率いる同チームは、大会前に川崎ローレンスらの大人たちが練習相手を務め、女子のSIMONらもteam☆アサヒを鍛えるのに一役買ったという。さらには男子の優勝チームであるSILVER BACKSの指導にあたったのは、静岡ジムラッツの岡田卓也氏。藤枝明誠高校の選手たちがスクリーンからのスリップをはじめとした多彩なプレーを展開していたが、それを授けたのは3×3日本代表が初めて結成された2013年から2016年までコーチを務めた経験を持つ彼である。鈴木氏によれば、「SIMONのトップにいる三浦、ジムラッツの岡田、3人とも同級生」だと言う。「そういった意味でも同級生の見ているチームに負けたくない、というもあったので、指導者としてもいろんな戦いが裏でありました(笑)」と、旧知の間柄における場外戦があったことも語った。立場は変われど、ボーラーとして、やっぱり負けず嫌いの血は騒いでいる。

3×3の目下の関心事は、もちろん2020 年の東京オリンピックであるが、その先も競技は続いていく。TOKYOの成功がその普及に直結する大きな意味合いを持つが、その本質を伝えられる彼らのような存在も無くてはならないところ。次世代を担う選手たちを、黎明期から3×3を支えた者たちが育てていく。そんな光景がさらに広がっていくことを楽しみにしたい。

TEXT by Hiroyuki Ohashi

3x3 U18日本選手権大会

RELATED COLUMN

MOST POPULAR