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  • 2021.03.19

コロナ禍の中止から1年。帰ってきたSOMECITYと、ストリートボールへの思い

2020年3月、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によってSOMECITYの集大成である『SOMECITY 2019-2020 THE FINAL』が中止。

それから1年――

SOMECITYはボーラーとオーガナイザーによって、再び動き出した。

イエローコートに帰ってきた熱狂
去る3月6日、7日の2日間にわたって『SOMECITY FXXXX 2020』が聖地・CLUB CITTAで開催された。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、SOMECITYで欠くことのできないオーディエンスこそ迎えることはできなかったが、参加23チームのボーラーとオーガナイザーをはじめ関係者は感染対策を講じたうえで、バチバチのストリートボールをイエローコートで披露。その模様はオンライン配信で多くのファンへ届けられた。もちろん、この一戦に至るまで1on1トーナメントの『SOMECITY KETTOU』、レギュラーチーム対ゲストチームのトーナメントや6人のフォーカスボーラーがリーダーとなったスペシャルトーナメントの『SOMECITY X』などをトライしてきたが、やはりFXXXXは格別の楽しさだったと言っていいだろう。

SAFARIが初優勝、MVPはREN!
ではこのトーナメントを振り返ると、チャンピオンを決めるFINALにはそろってOSAKA勢が駒を進めてきた。まずその一角のTABASCOはベスト8でTOKYO BEASTを32-31で振り切り、SEMI FINALでエース・FUNAO(#11)や元Bリーガーのボンバー(#20)を擁するNAGOYAのEGOLAに30-14でKO勝ち。もう一方はSAFARIがベスト8で関東大学バスケの強豪校出身者をそろえて勢いに乗るCHIBAのCROWSに28-13でKO勝利を収め、SEME FINALで TOKYOの看板ボーラー・OTO(#0)やMartel(#11)がけん引するBLACKTOPを最終3ラウンドで引き離し34-24で頂点へ王手をかけた。




そして迎えたFINALでも両チームは序盤から好ゲームを繰り広げた。1ラウンドにいきなりSAFARIがREN(#34)のパワフルなドライブなどで8-0とスタートダッシュを切るが、TABASCOもカッシー(#3)が3連続スリーで一気に逆転。このまま2ラウンドでリードを広げるかと思われたが、SAFARIは大黒柱のCHIRORIN(#15)とシューターのJOY(#70)がつなぎ、RENのオフェンスで再び20-15とリードを奪い返す。

アドバンテージルール(2ラウンドが終わって負けているチームに1対1の機会が与えられる)による1on1でもRENがTABASCOのユウ(#5)をストップして流れを完全に作ると、3ラウンドでも攻撃の手を緩めことなく、30-18で初優勝を決めた。OSAKA勢のタイトル獲得は2017-2018シーズンのFRONTOOTH以来、2度目。MVPにはRENが選ばれ、長年SOMECITYで戦ってきたCHIRORINも初めてチャンピオンボードを掲げた。

RENが語るSOMECITYの醍醐味
試合後、初優勝の原動力になったRENに話を聞いた。身長185cm、鍛え上げられたフィジカルを武器にパワフルなドライブがなんとも印象的であり、ゲームがよっぽど楽しかったのかコート上で笑っていた姿も忘れられない。

まずFXXXX制覇については「コロナ禍の影響でここに来れない(SAFARIの)選手たちもいましたので、自分たちが(その選手たちの分も含めて)全力を出して戦いました。全員で良いプレーが出来たと思います」とコメント。チーム一丸となってつかんだ勝利をかみしめた。そして笑いが止まらなかった理由については、自身のバスケキャリアを引き合いに出しながらイエローコートだからこそ出たものであると明かした。

「僕は大学時代、関西リーグでも3部で名の知れないプレイヤーでした。SOMECITYでもOSAKA選抜ぐらいで、TOKYOのKETTOUに呼ばれたことも無かったです。でも今日(DAY2)の1試合目CROWS戦で拓殖大学のMAKOTO君とか有名な選手ばかりいてたんですよね。自分でモチベーションを上げて楽しみながらやれたことで、試合中に自然と笑っちゃっていたんです。もうあれは本当に自然と出ました(笑)SOMECITYだからこそ、僕のようなプレイヤーでも下克上できる。それがめちゃめちゃ楽しくて、気持ちも上がりましたね」

ただ、オーディエンスがいない中でのゲームとあって、戦前は「お客さんと一緒に楽しむことがSOMECITYの醍醐味なので“ほんまに大丈夫かな”と思いました」と不安もあったという。それでもオンライン配信があったことで「昨日(DAY1)を終えた後に色々な方からコメントや LINEなど連絡がありました」とエールが届き、DAY2は会場にいたボーラーたちのおかげで最高の瞬間を味わうことができた。彼は充実感で一杯だったことを示すように「みんなでストリートボールをできたと思っています。めちゃくちゃ楽しかったです」という言葉を残してくれた。

TANAがSOMECITYにこだわる理由
一方で充実感を感じたのはボーラーだけではなく、オーガナイザーも同じだった。SOMECITYを2007年に立ち上げ、リーグ運営のキーパーソン・TANAも2日間を終えて「疲れました(笑)」と言いながらも、胸の内をこう明かしている。

「ゲームをいつも近くで撮っているのですけど、やっぱりすごいゲームってゾクゾクする瞬間があるんですよね。自然と僕以外の人もみんな感じて、勝手に発狂しちゃうような。シリアスでもあり、緊張感もあり、面白いゲームがあるんですけど、それが昨日も今日も何試合かありました。久々にそれを目の前で感じたときにはやっぱり、ストリートボールは良いものだなと改めて思いましたね」

この感情を取り戻すまで実に1年。コロナ禍で止まったSOMECITYを今回のイベントで再び動かす戻す背景にはリーグ本部の強い覚悟があったという。FINALの前にある恒例のスピーチでTANAは「リーグ本部で何回も話して(FXXXXを)絶対やると(決めました)。もし出場チームがいなくても、2チームでもあればやろうと。もしチームから“いや誰も行けません”となっても、じゃあ1対1でもやろうというつもりで今回イベントを開催しました」と話している。

では、なぜこれほどまでに開催にこだわったのか。TANAはその真意にも言及している。SOMECITYと言えば、ボーラーたちがストリートボールをやりたくて立ち上げたことがルーツである。海外のように公園でバスケをすることが日常に溶け込み、「バスケで遊んで、競って、つながっていく文化」を日本にも作っていきたい一心で、ここまでやってきた。「トータルで言えば、バスケットボールを通して人生を豊かにしたい」という大きな願いを込めいているのだ。

それゆえに「僕らがストリートボールと叫び続けて、何かよく分からないものがようやく少しずつ皆さん(ボーラーやオーディエンス)のおかげで、ちょっとずつですけど何か(ストリートボールが)出てきたと思います。だから僕らがSOMECITYを辞めちゃうと、もう何も無いんです」と訴えた。

もちろんコロナ禍である。感染拡大防止のため、ストップをかけないといけないこともあるだろう。それでも「文化」という大きなものを作るには時に難しい状況を乗り越えなければならない場面も訪れる。できないままで足踏みするのではなく、どうやったらできるのかを思考することできっと打開できることもあるのだ。リーグ本部が今回の開催に向けて準備をしてきたオンライン配信をひとつ取っても『KETTOU』や『SOMECITY X』の経験値をいかして「何を映せば(お客さんへ)伝わるのか。また伝えたところで何を伝えたいのか」ということを考え、試行錯誤を重ねて映像制作に取り組んできたと明かす。TANAはイベント実施までの取り組みによって「もう一度、原点を再認識させられた機会になりました」とも感じており「SOMECITYをもっともっと面白くしていかないといけない」と、再始動をきっかけに改めてストリートボールの魅力を発信できるよう力を尽くすことを誓った。

再び動き出した歩みを止めないために
今回『SOMECITY FXXXX 2020』はボーラーやオーガナイザーに改めてストリートボールの醍醐味を感じさせる場になった。恐らく、それはオンライン配信を通じてファンにもきっと届いたことだろう。コートサイドに駆けつけることができなかったため、100%では無かったかもしれないが、響くものはあったはずだ。

もちろん、この先もコロナ禍のため、かつてのような光景がすぐには戻らないことも予想される。しかし再び動き出した歩みを止めたくない。そのためにも今、できるをやっていきたいところだ。TANAが強調していた、次の一節が大事になってくるだろう。SOMECITYの主役であるボーラーたちが地元できっかけとなって「バスケで遊んで、競って、つながっていく」積み重ねが、ストリートボールの文化を作る大きな土台となっていくから。

「ここに集まってきてくれたボーラーには自分の町に戻った時に、ピックアップゲームをやって欲しいです。今(バスケができるところを探して)公園に必ず誰かいるから。(コロナ禍の影響で)リングは無い(=撤去されている)かもしれんけど。みんなで一緒にストリートボールの文化を作っていきましょう」

コロナ禍の中止から1年。帰ってきたSOMECITYと、ストリートボールへの思い

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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