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  • 2026.05.20

渋谷に“世界”がやってきた。初開催の「FIBA 3×3 SHIBUYA Challenger 2026」を振り返る

春の日差しが降り注いだ恵比寿ガーデンプレイス。都会のど真ん中で開催された3x3の国際大会は、競技の魅力を発信しただけでなく、地域や人々をつなぎ、スポーツでまちが盛り上がる力になった。ローカルの子どもたちにとっていつもの遊びが、国を超えた交流の場になったのも印象的だ。海外選手も「こんな思いがけない応援団ができるなんて、本当に嬉しかったよ」と言うほどである。初開催の「FIBA 3x3 SHIBUYA Challenger 2026」を振り返る。

ベルギーのアントワープが渋谷で優勝

4月18日、19日の2日間にわたり、恵比寿ガーデンプレイスのセンター広場で「FIBA 3x3 SHIBUYA Challenger 2026」(以下渋谷チャレンジャー)が開催された。今大会は、FIBA(国際バスケットボール連盟)が主催する3x3クラブ世界No.1を決める「FIBA 3x3 ワールドツアー」につながる国際大会で、日本で行われるのは初めて。世界ランキング1位のセルビア・Ub(ウーブ)を筆頭に、国内外から16チームが集結して、熱戦を繰り広げた。

日本からは3x3国内トップリーグ・3XS(トライクロス)に出場する選手たちがTsukuba、Inzai、Fujisawaという都市の名前を背負って、18日に行われた予選へ。どのチームも見せ場を作り、とりわけTsukubaはUbに善戦したり、オランダのUtrecht(ユトレヒト)と延長戦に及ぶ好ゲームを展開するも、残念ながら勝ち星は挙げられない結果に。それでもスタンドから歓声が送られ、会場は大いに沸いた。

一方で、予選を突破して19日の決勝トーナメントを勝ち上がり、優勝を飾ったのはベルギーのAntwerp(アントワープ)だった。世界屈指の強豪は、準々決勝でUbに18-15で競り勝つと、準決勝では昨年の「FIBA 3x3 ワールドカップ 2025」で初優勝したスペイン代表を擁するValencia(バレンシア)を18-16で撃破。決勝では、ラトビア代表として東京オリンピック2020のゴールドメダリストになったKarlis Lasmanisがけん引するShanghai(シャンハイ)を22-15で下し、MVPにはJonas Foerts(#3 / 195cm)が選出。4人が良い笑顔で、チャンピオンボードを掲げてみせたのである。

恵比寿が3x3で盛り上がった光景を目にしたのは、2日間で延べ3,500人。お目当ての選手を応援しようと訪れたファンもいれば、通りかかってゲームを見入った方もいたはずだ。街に出向いてコートをセットし、ローカルの景色に溶け込めるのが3x3の良いところ。大会を終えて、共催した渋谷区の長谷部健区長は「渋谷区は都心なので大きな体育館を増やすことはできないけれども、このような商業施設の一角でこれだけの人を集めてスポーツで盛り上がれる。しかも国際大会ですからね、熱かったです」と、声を弾ませた。

また、渋谷区とともに今大会を共催した一般社団法人渋谷未来デザインの長田新子氏(理事/事務局長)も、大会の様子に感動。「都会のど真ん中でスポーツをやることは、本当に改めてすごい良いなと思いました。子どもたちにとっても、街の人にとっても、これが誇りになれるような感じがしました」と明かす。

大会事務局として、チャレンジャーの誘致から準備、運営までを行った3XSのスポーツディレクター鄭竜基氏も「想定している以上の人、組織、企業様もお客さまも含めて、本当にいろいろな方に来ていただけた」とコメント。たくさんのステークホルダーを巻き込んで、無事にクロージングできたことに感慨深げな様子だった。

恵比寿ガーデンプレイスを起点にまち全体が会場に

では、なぜ大会は初開催にして盛り上がりを見せたのか。日本で初めて、都市の公共空間で開催された渋谷チャレンジャーには、3x3という競技を見せる場だけではなく、ハブとしての役割もあったのだ。

前提として、今大会は渋谷区の基本構想「15㎢の運動場」の実現と「ユニバーサルスポーツの推進」を目指すプロジェクト「Shibuya Playground」の一環として位置づけられていた。スポーツを起点に地域・教育・観光・企業を結ぶ「MACHIGOTO SUSTADIUM」をコンセプトに、恵比寿ガーデンプレイスを起点に周辺の公共空間も競技会場として見立て、大会を設計。地域に住む大人から子ども、企業に勤めるワーカーたちも関われるようにした。

例えば、大会に先立ち17日のフライデーナイトには、恵比寿ガーデンプレイスに入居する企業対抗のフリースロー大会を開催。リモートワークが普及する中、従業員同士のコミュニケーションの活性化や、会社の枠を超えて他社の様子を知るきっかけになったはずだ。

また、大会期間中には近隣の5ヵ所の公園でアクティビティが楽しめるスタンプラリーも開催された。これは昨今の「公園離れ」の状況に対して「公園を知ってもらう。行ってもらう。遊んでもらう」という三拍子そろったアクションを促すために考案された。恵比寿駅東口公園を起点に、オリジナルスタンプ制作ができる恵比寿東公園(タコ公園)、水遊びなどができるプレーパーク・恵比寿南一公園、モルックにトライできる景丘(かげおか)公園のほか、アメリカ橋公園ではダブルタッチやギアスポーツで注目されるベイブレード体験ができる試みもあり、訪れたキッズたちを惹きつけたのも印象深い。

さらに、渋谷チャレンジャーを横断的にサポートする取り組みもあった。渋谷未来デザインと共創パートナーシップを結ぶカバヤ食品は、区内を舞台に“汗をかく人”、“汗をかくシーン”を応援する「いい汗、渋谷。アクション」プロジェクトを今春よりスタート。同社は、塩分補給ができるタブレット“塩分チャージ”を展開する食品メーカーである。夏の日差しの下、3x3を観戦したファンならきっとお世話になったことがあるのではないだろうか。

今大会には、選手控室に塩分チャージスポットを設置したり、特設ブースを設けて来場者へのサンプリングなども行われた。同社の新田夏穂氏はプロジェクトの取り組み理由について、汗をかく人を暑い環境にいる人だけはなく「前向きに頑張る人たち」と定義して「渋谷の皆さま、3x3といったスポーツをする皆さまは、とても良い汗をかいている代表格です。そういった人たちを応援していくブランドになっていきたい」と話す。塩分チャージと、スピーディーな展開が醍醐味の3x3との相性も良いと感じているようで、同氏は「(3x3の選手は)短時間で頑張って多量の汗をかいて取り組んでいる姿勢が魅力的だと思います。一瞬も気の抜けないスポーツ性と、塩分チャージの良さである瞬間的にさっと塩分が補給できる製品特徴」とも語った。

学校訪問を超えて。「こんな思いがけない応援団が」

そして、今大会における本プロジェクトのハイライトのひとつが、渋谷チャレンジャー出場選手とともに取り組んだ渋谷区内小学校での探究授業である。

17日にアントワープとバレンシアの選手たちが、恵比寿ガーデンプレイスの近くにある加計塚小学校を訪問。教室へ訪れて交流をしたり、体育館でバスケットボールを楽しんだり、お昼には机を並べて給食をともにした。言葉の壁がある場面もあったが、選手がスマホ片手にコミュニケーションを取ったり、子どもたちも物怖じせずに話そうとするシーンも。身長2mを超える選手ともなれば、子どもたちが飲む牛乳パックは小さく、ストローの挿し口が見つからず困った様子もあったが、すかさず子どもたちが挿し口を教えてあげるやり取りもあった。担任の先生が利を効かせて、選手たちの試合映像をYouTubeで流すクラスもあり、得点が決まるたびにどっと沸いたのも素敵だった。


また、選手と子どもたちによる交流で印象的だったのが、子どもたちから寄せられる質問の多さでもあった。事前に選手たちの国を学び、質問も考えていたそうだが、ひっきりなしに手があがった。その中には「バスケはあなたにとって何ですか?」といった深い質問もあり、選手たちも思わず「Good question!」と話したほど。アントワープもバレンシアの選手たちも子どもの礼儀正しい姿勢や、質問力の高さなど行き届いた学校教育の高さを賞賛していた。

校長室で選手たちと懇談した同校の平野真由美校長は、本物に触れることを渋谷区としても強調している中で、学校訪問による収穫を実感。「国際交流として、外国の方と触れ合う機会に勝るものはない」と振り返り、選手たちの大きさ、雰囲気などを「間近で見て、交流できたことで、子どもたちにとって、学びが多かったと感じています」とコメント。「世界一流の選手ということで一見華やかですが、ここに至るまでの苦労もあったことと思います。諦めずに努力することや、好きなことをとことん突き詰めることなど、今の子どもたちにとって必要な価値観を、子どもたち自身が肌で感じることができたと思います。」とも話した。

さらに、学校訪問の効果は大会にも波及した。子どもたちの中には、18日と19日にアントワープやバレンシアの選手たちを応援するため、会場に駆けつけていたのだ。平野校長によると、同校の子どもたちにとって恵比寿ガーデンプレイスは遊び場のひとつ。「ガープレ」の愛称もあるそうだ。得点が決まればウォーーー!と叫び、選手の入場や試合を後にする際にはどこか自慢げにハイタッチをする様子も。一連の学校訪問を主導した渋谷未来デザインの小林希光氏(プロデューサー)は「どこかのチームを推し活のように応援する体験機会が得られたのではないかと思っています。スポーツ振興の中で、スポーツをやるだけではなく、見る・学ぶ・応援するとても良い機会でした。しかも、言語の壁も超えていますからね。なかなか無い体験だったのではないかと思います」と喜んだ。

当然、両チームの選手たちにとっても、小さなサポーターたちの存在が励みになったことは言うまでもない。子どもたちは刺激を与えられた側だけでなく、与えた側でもあるのだ。

「僕らは学校を訪ねて、子どもたちと本当に楽しく過ごしたんだ。彼らと打ち解けて、応援に来てくれって頼んだら、本当に来てくれた。昨日も来たし、今日も来てくれて、最高だったよ。僕らは日本が大好きだし、日本の人々も大好き。本当にたくさんの人が来てくれたね」(バレンシア・#3 Iván Aurrecoechea)

「母国から遠く離れた地で、こんな思いがけない応援団ができるなんて、本当に嬉しかったよ。学校を訪問して、子どもたちとすごくいい交流ができた。彼らは私たちにたくさんの質問をしてくれたし、とても深い質問もあったね。だから、絆が生まれたような気がする。一緒に食事もしたね。だから私たちにとっても、彼らにとっても、会えて良かったと思う」(アントワープ・#1 Dennis Donkor)

「これは第一歩ですね」…次の開催へ期待高まる

恵比寿ガーデンプレイスを起点に渋谷のまちへ、多くのつながりを生み出して幕を閉じた「FIBA 3x3 渋谷チャレンジャー 2026」。鄭氏の耳には、すでにFIBAや恵比寿ガーデンプレイスを管理するサッポロ不動産開発より次の開催に向けた期待の声も寄せられているそうだ。かねてより、2028年のロサンゼルスオリンピックに向けた3年間の大会誘致を描いているそうで、今回の経験をいかして取り組みをアップデートしていく。鄭氏は「3x3が日本で盛り上がることを僕らだけが考えたら、本当に小さなことしかできないと思っています。地域や行政、企業など皆さんにとって3x3が関わりやすいものにできるように、僕らがリードしていきたい」と話す。

世の中を見渡しても、いまの時代は「共創」がキーワードだ。目指す世界、実現したい目標を共有し、違う価値観、異なるリソースを持った者同士がタッグを組んで、やるほうが新しいことを生み出しやすい。さまざまな背景・文化を持った人たちが集まる渋谷なら、きっとまだまだ新しい取り組みができるんじゃないだろうか。

そして、まちに出向いてローカルの景色に溶け込み、地域を盛り上げ、つながりを育めるのも3x3やアーバンスポーツならではの良さだ。区内には渋谷ストリームや岸記念体育会館跡地に整備された代々木公園BE STAGEなど、まち中でスポーツイベントが開かれる場所が多数ある。長谷部区長も「アーバンスポーツは今やオリンピック種目です。整備された場所でやっていただけるよう、できる限り応援していきたい」とも話す。

渋谷未来デザインの長田氏も、長年スポーツに携わり、今大会を通して改めて「アーバンスポーツを通じたまちづくりの可能性」を実感。今後の発展に言葉を弾ませている。
「渋谷でスポーツはまだまだ距離があるし、公園で当たり前にやれていたものが徐々にやれなくなることもあるのですが、今回まち中で、スポーツを通じてつながりが生まれました。もっとやりたいと思います。これは第一歩ですね」

渋谷に“世界”がやってきた。初開催の「FIBA 3x3 SHIBUYA Challenger 2026」を振り返る

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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