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  • 2020.05.08

3×3の選手たちがいま思うこと vol.5 齊藤洋介

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、東京オリンピックは来夏へ延期された。そして我々が愛するバスケットボールも現在、NBAはシーズン中断を余儀なくされ、Bリーグは2019-2020シーズンが打ち切り。今夏、オリンピックの正式種目としてデビューを迎えるはずだった3x3も、クラブ世界No.1決定戦であるFIBA 3x3 World Tour Masters やChallengerといったプロサーキットを筆頭に、春から予定されていた2020シーズンの大会は、あらゆるカテゴリーで延期や中止となった。

今回、日本の3x3シーンを代表する男女6名にオンラインや電話でインタビューを行った。思わぬ事態に直面したが、彼ら彼女たちがいま何を思い、昨シーズンの経験を糧に、新シーズンへ向けてどのように進もうとしているのか。第5回目は昨シーズン、日本勢として史上初のMastersベスト4を経験、2021を目指す齊藤洋介(UTSUNOMIYA BREX.EXE)に話を訊いた(取材日4/12)。

五輪延期、そして現役続行へ

新型コロナウイルスの影響で、3x3.EXE WORLD GAMESが延期、3x3.EXE TOURNAMENT FINALが中止となりました。新シーズンのプロサーキットにつながる大会でしたが、どのように受け止めましたか。

「やっぱり想定外ではありました。当然、新シーズンもプロサーキットに出場して、World Tour Finalで優勝することを目標に掲げています。それに向けて自分たちなりに予定を組んで、ある程度は出場する大会に目星を付けていた中で、国内から世界に出るチャンスが消えてしまったことは痛手です。でも受け止め方としては、世界中の全チームが同じことなので、しょうがないと思っています」

それに続いて東京オリンピックも延期になりました。インスタグラムを拝見しましたが、2020シーズン限りでの現役引退を決めていたが、2021年のオリンピックを目指す為に競技生活の続行を表明されています。これを決断するまで、気持ちもしんどかったのではないでしょうか。

「うーん・・・ 延期するかもしれないというニュースが出てから、正式決定するまで、だいぶ時間が長かったじゃないですか。その期間、当事者である僕たち選手も、ファン・ブースターの皆さんと一緒で、日々のニュースから情報を得ていました。1年先送りになることも明らかだと感じていましたし、世界的にコロナウイルスの影響が広がっていますので、延期の判断も十分に理解しています。ただ、なんて言うのだろうな・・・ 小林大祐選手(以下大祐)とやったインスタライブで話したのですが、アスリートの中には、きっと今年開催して欲しいという声があったと思いますので、一概に延期することが、アスリートにとってすべて正しかったとは言いきれないでしょう。正直、僕も当初の予定通りあることを前提として競技活動をしていたので、そう思う一人ですし、オリンピックに人生をかけて一生懸命頑張っている他のスポーツ選手たちも知ってますから。延期が確定するまでの期間も長かったので、複雑な気持ちでした。

でも、僕はポジティブな人間なので、2021になったときの準備もしていました。実際にそれが決まったときには、スポンサーの皆さまに連絡をして、オリンピックへ挑戦していきたい自分の想いを話しました。本当にありがたいことに、皆さんから賛同と応援をいただいて、もう一年頑張ろうと気持ちが固まりました。延期が決まってから現役続行の決断までは早かったですね」

新シーズンで目指す姿とは

いまからもう1年戦い、再び代表争いへ割って入りたいという気持ちもあると思います。個人としてもチームとしても、昨シーズンは世界で戦える手応えを深める結果を得ましたが、新シーズンでこれを超えていくために取り組みたいことは何でしょうか。

「個人としてはディフェンスの強化です。僕は世界レベルだと、本当にサイズ(184㎝)が小さいです。オールスイッチでビックマンを相手にしても守れるように、追及していきたいですね。その為に、体作りも必要ですが、一番は体の使い方がしっかりできるようにしたいです。マッチアップでどういう守り方をするのか、昨シーズンはチームメイトに教えてもらいましたし、身をもって経験もできました。非常にいい環境で過ごすことができたので、その学びをいかしてやっていきたいです

チームとしては、誰が見ても“BREXのチームワークは日本一“というバスケットボールをしたいです。昨シーズンからずっと言っているかもしれませんが、3x3は個人競技ではないのですが、どうしても1on1に頼ってしまう日本のチームが多いと感じています。そのようなチームが世界で勝てると思っていないので、選手ひとり一人が仲間を信頼して、チームとしてさらに機能するようにしたいです。」

昨シーズン、BREXが見せるチームとしての一体感は印象的でした。「自分たちがとことん3x3を楽しむ姿がお客さんに伝われば良いな」とも、去年5月のALBORADA CUPで言っておりましたが、それは今年も引き続きコンセプトですね。

「それは絶対に変わらないです。重要なことは、ひとつ一つを積み重ねて行くことだと思います。皆さんのおかげで勝つことができましたが、1戦1戦に勝つことは普通ではないです。そこは自覚したいですね。もう追われる立場になることは分かっていますが、目の前の試合、目の前の大会にフォーカスして、勝つことで喜びを嚙みしめていきたいです」

この状況で新シーズンの開幕はだいぶ先になりそうですが、当初、プロサーキットを転戦するうえで、どのような計画を立てられていましたか。

「スタートダッシュを切りたかったです。シーズン序盤はどこのチームもできあがっていないので、チャンスなんですよ。僕たちは去年の6月から世界へ出たのですが、もしかしたらあと1、2カ月早くプロサーキットに行くことができれば、ベスト4に入れた可能性がもう少し広げられたかもしれないという、反省点があります。もちろんこれは、新シーズンも昨シーズンと同じメンバーで出場できればという仮定の話ですけど、メンツが同じであれば、当然それは強みです。良いスタートを切ることができたかもしれません。ただ、ここへ来て、どのチームも同じだと思いますが、練習不足になりつつあるので、結局は誰もが同じスタートラインに立ったと思います(苦笑)」

いまだからこそ考えていること

このような事態ではありますが、現在トレーニングはできているのでしょうか。

「練習できる状況ではありますが、コロナウイルスの影響もありますので、練習頻度は減らしています。移動するときは車、完全に一人でやることで、感染リスクを抑えています」

ひとりぼっちの練習はきつくありませんか。

「本当にきついですね。シューティング、スキルトレーニング、筋力トレーニング、ひたすらこの繰り返しです。試合がいつになるのか分からないので、いまから体の状態を上げるわけにもいかないですし、練習後にトレーナーからケアが受けられないことことはツライですね。もちろんセルフケアはしますが、僕も今年で35歳になりますので(笑)」

バスケットボールに費やす時間が限られる中で、この状況だからこそ、それ以外のことに取り組んでみようと考えていることはありますか。

「実は大祐と連絡を取り合って、考えていることがあります。いまの状況では、医療関係者の皆さんがとても頑張っていらっしゃいます。また僕らは信州ブレイブウォリアーズ、茨城ロボッツ、宇都宮ブレックスに在籍をしていますが、各チームは今シーズンの中止によってホームゲームが無くなったことで収入が無くなり、厳しい現状であることも理解をしています。金額は全然多くないと思いますが、自分たちにできることを何かはじめて、そこで得た収益を医療関係の皆さんや各チームへ寄付をしたいと考えています。ただ色々とコンテンツをさがしているんですが、なかなか難航しています…」

できることを模索して、何か活動を企画されているのですね。

「本当にできるかまだ分からないですけど、具体的に少しずつ話をはじめていることは事実です。また、コロナウイルスの世界的な感染拡大が収束した後、自腹でセルビアに合宿へ行きたいと思ってます。マルコ(ミラコビッチ)はセルビアへ帰国すればNovi Sadの選手たちとよく一緒に練習をしていますし、大祐と向こうに行って、ひたすら彼らとピックアップゲームをしたり、ZemunやLimanともトレーニングができたらいいね、という話もしていますね。もちろん確定的な話ではなく、“できたらいいね“というレベルですけどね」

でも、それを想像するだけも楽しくないですか。BREXだからできることだと思います。

「そうですね、楽しいです(笑)コロナウイルスの状況次第なので、今の段階では全く行けない思っていますので、この事態が早く良くなることを願っています」

昨シーズンの自分たちを超えていく

なかなか先の見通せない中ではありますが、状況が改善されれば、バスケットボールのある生活が戻ってきます。3x3は新シーズンを迎えますので、最後に抱負をお願いいたします。

「一番の目標は昨シーズンを上回りたいですね。誰が見ても強くなっているチームになりたい。昨シーズンは僕のバスケットボール人生に必ず残るような衝撃的なシーズンだったと思っていますが、結果には満足していないです。それを踏み台にして成長を見せないと、自分たちでそれが確認できないと思っていますし、まだまだBREXは何も成し遂げていないです。とにかく2019年の自分たちを超えていきます」

3x3の選手たちがいま思うこと vol.5

齊藤洋介
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TEXT by Hiroyuki Ohashi

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