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  • 2020.05.15

3×3の選手たちがいま思うこと vol.6 山本麻衣

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、東京オリンピックは来夏へ延期された。そして我々が愛するバスケットボールも現在、NBAはシーズン中断を余儀なくされ、Bリーグは2019-2020シーズンが打ち切り。今夏、オリンピックの正式種目としてデビューを迎えるはずだった3x3も、クラブ世界No.1決定戦であるFIBA 3x3 World Tour Masters やChallengerといったプロサーキットを筆頭に、春から予定されていた2020シーズンの大会は、あらゆるカテゴリーで延期や中止となった。

今回、日本の3x3シーンを代表する男女6名にオンラインや電話でインタビューを行った。思わぬ事態に直面したが、彼ら彼女たちがいま何を思い、昨シーズンの経験を糧に、新シーズンへ向けてどのように進もうとしているのか。最終回は3x3女子日本代表の中心メンバーで、初優勝を飾ったFIBA 3x3 U23 World Cup 2019(以下U23 W杯)で大会MVPに選出されるなど、世界的に注目を集める山本麻衣(トヨタ自動車アンテロープス)に話を訊いた(取材日4/15)。

オリンピック延期は「チャンス」

新型コロナウイルスの影響で、3月に開催予定だった3x3の東京オリンピック予選、さらには本大会そのものが2021年へ延期になりました。どのように受け止めましたか。

「オリンピックが延期になったことは仕方のないことです。でも日本は昨年から本格的に強化を始めたばかりで、まだレベルアップの途中です。1年延びたことはチャンスというとらえ方をしています。私も若い(20歳)ですし、実力も全然足りない部分があります。弱みを克服するための時間ができましたので、プラスに考えています」

2019シーズンはU23 W杯やFIBA 3x3 U23 Nations League、FIBA 3x3 Women's Seriesといった国際大会を数多く転戦して、レベルアップされていると思いますが、まだまだ自分の伸びしろに楽しみを感じているのですね。

「そうですね。それぞれの大会を通しても課題は感じていますし、5人制のWリーグでやっていても全然、満足できていません」

自信になったU23 W杯制覇を振り返る

オリンピックは延期になりましたが、山本選手にとって昨シーズンからのハイライトはU23 W杯の優勝だと思います。3x3の経験を積み重ねてきましたが、何が成長したことで、頂点まで届いたと感じていますか。

「U23 W杯のグループ予選でフランスに大敗(●10-21)した経験が大きいです。(3連勝で来た予選の最終戦でしたが)そこで私たちには“気持ち”が足りていないことに気がつくことができました。だから決勝トーナメントでも試合の中盤で悪い雰囲気になったとしても、ゲームの中で修正をすること、我慢を続けることができた。これが一番の成長だと思います」

まさにロシアと戦った決勝がそうだったと思います。ゲームの入りは大きくリードしたけど、だんだんと追い上げられて、終盤は僅差の攻防からフリースローを決めて逃げきりました。

「悪い流れになったときでも、焦らなかったことが勝因だったと思います。他の試合もそうでしたが、中盤で良くない時間帯があって、Nations Leagueではロシアに負けていました。だんだん点差を離されて、グダグダして終わってしまったのですが、あの試合では踏みとどまれたことが大きかったですね」

世界チャンピオンになって、大会MVP、さらにはシュートアウトコンテストでも優勝をしました。山本選手にとって、多くのタイトルを得ましたが、いまの自分にどのようにつながっていますか。

「タイトルを獲れたことは、とても自信になっています。5人制に帰ってきたときも、それがあったからしっかりとプレーできました。だけど、やっぱり満足はしていないです。個人としても、日本代表としても、もっと強くなれると思っています」

3x3を経験してWリーグのプレーに生きているところは、具体的にどのようなことでしょうか。

「3x3は常にタフな戦いです。シュートに持ち込むところの強さや、ディフェンスの強度は今までより良くなったと思います。昨シーズンは体作りのために、練習後の筋力トレーニングも量を増やして取り組みました」

数多くある試合の中で、一番印象に残った試合と、ベストゲームを挙げるとすれば、どれになりますか。

「一番印象に残った試合は、やはりU23 W杯のフランス戦ですね。先ほども言った通り、負けたのですが、あのような試合をしたことが今まで無かったので。ベストゲームは、優勝を決めたロシア戦です」

ちなみに予選のイタリア戦も土壇場で試合をひっくり返しました。あれはプレーされていて、どんな感覚でしたか。山本選手がドライブからパスをさばいて、西岡里紗選手が2ポイントシュートを決めて逆転勝ち(〇21-20)を引き寄せました。

「あれは楽しかったですね。ワクワクしながらプレーしていたことを覚えています。終盤に負けてはいましたが、西岡さんが2ポイントを2本決めて、チームとして試合をひっくり返すというミラクルなことが起こったゲームでした。最初はスローペースでしたが、後半はだんだん良い感じになって盛り返して、逆転まで持ち込めたと、いまは思っています」

オフの過ご方、ダンスチャレンジは「難しかった(笑)」

現在、例年より早くオフシーズンを過ごしていると思います。この状況で活動に制約があると思いますが、今後に向けてトレーニングはできていますか。

「もうチームの練習場に行けませんが、寮の中でのウェイトトレーニングや、自宅でできる範囲でやっています。それでもやっぱりシュートが打てないので、“すごいバスケがしたい“という気持ちです」

FIBA3x3のSNSでドレイクの『Toosie Slide』に合わせたボールを使ったダンスチャレンジをする動画を拝見しました。6人の選手がリレーする形式でしたが、あの音楽に合わせたハンドリングやってみていかがでしたか。

「なかなか難しかったです(笑)何回撮り直しをしたことか!という感じですね。FIBAからオファーをいただいたのですが、ドリブルを突きながら、あのリズムにどうやって乗っていいのか、苦労しましたね」

この動画を含めて、山本選手はFIBAから取り上げられる機会も増えています。注目されている実感はやっぱりあるのでしょうか。

「ありますね。でもハイライト集の中で、このプレーを載せられてしまうのか・・・(笑)というものがあるので、さらに頑張ろうと思うことがあります。スーパープレーをもっとお見せできたらいいですね」

一方で、この状況が収束するまで、バスケットボール以外に割ける時間も多くなりそうな気がします。このような時だからこそ、取り組んでみたいことはありますか。

「2つありまして、ひとつはヨガをやっています。柔軟性を高めたり、コンディションをキープできればと考えていまして、最近は体の調子が良いです。もうひとつは語学の勉強をやりはじめました。自分で海外の選手とコミュニケーションが取れるようになったら、もっと世界が広がるのではないかと思っていまして、まずはNetflixで洋画を英語の字幕で見ることからやっています。まだ本格的にやっているわけでは無いのですが、最終的には英語を話せるようになりたいので、その過程としてやっています。」

今後に向けて「精一杯やりたい」

この先、事態が改善されれば、バスケットボールや3x3ができる日常が戻ってきます。新シーズンへの抱負と、来る3x3の東京オリンピック予選に向けた意気込みをお願いいたします。

「世界的に不安な状況だと思いますが、再開したときには応援をいただいている皆さまへ勇気や感動を与えられるようなプレーをしていきたいです。オリンピック予選については、まだ代表メンバーの選考中ですので、どうなっていくか分からないのですけど、まずは自分のできることを精一杯やりたいです。そして最後の4人に選ばれたら、絶対にオリンピックへの出場権を獲得できるように頑張りたいと思います」

3x3の選手たちがいま思うこと vol.6

山本麻衣
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TEXT by Hiroyuki Ohashi

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