• FEATURE
  • 2022.02.09

『3×3 Super Circuit 2022』から続く先……3×3の世界大会とは?

世界大会につながる国内予選として開催中の『3x3 Super Circuit 2022』(以下SC)。3x3のオフシーズンである冬場に、聞き慣れない大会が開かれていると思う方もいるだろう。だが、主催者たちとって、国内予選の実施は通算3度目。“ちゃん岡”の愛称でお馴染みの岡田慧氏と、“マツケン”こと松岡健太郎氏が手掛ける大会から続く先とは……

門戸の広い3x3の国内予選
 さかのぼること3年前の2019年――ちゃん岡とマツケンの2人は、SCの前身となる『O&M Satellite Games』(以下O&M)を開いた。全国9都市で予選Roundを行い、トレッサ横浜で計12チームによるFINALまで無事に成功させた。ハイライトと言えば、UTSUNOMIYA BREX.EXEが優勝を飾って、世界大会への切符を獲得した姿が思い起こされる。また、プロ選手や外国籍選手に混じって、当時高校生だった江原信太朗(現東海大学)がTACHIKAWA DICEの一員で出場し、シュートアウトコンテスト優勝や、DICEの決勝進出に貢献した光景も懐かしい。

 続く2020年には『F1 TOURNAMENT』を開いた。当時は春先から新型コロナウイルス感染症の影響で試合中止が相次いだものの、秋に国内シーンの再開を告げるように大会を開始。約2ヶ月のツアーは、SIMONの大会制覇で幕を閉じた。当初は優勝チームを世界大会に送り出す計画もあったが、コロナ禍のため世界大会の見通しが立たずに断念。それでもSIMONには3x3の母国・セルビア出身のNikola Pavlovicがいただけに、日本にいながら世界レベルの選手と試合ができる機会が生まれた。

 SCも含めて、ちゃん岡とマツケンによる3大会の共通点は、エントリーにあたり目立った制限がないことだ。3x3.EXE PREMIERのように事前の選手登録を必要とせず、JAPAN TOURのEXTREMEカテゴリーのようにポイントによる出場規定もない。3x3で世界を目指す大会として、最も門戸が広いと言っていいだろう。

Challengerはどんな大会なのか?
 では、SCから続く“世界大会”はどんな大会なのか。そもそも3x3の世界大会は2つに大別される。ひとつは、World CupやAsia Cupといった国別対抗戦。もうひとつは、World Tourと呼ばれるクラブ世界一を決めるツアー戦である。国別対抗戦が、ナショナルチームの選手に選ばれなければ手の届かない大会であることに対して、World Tourは実力と意欲さえあれば、誰でも道が切り開ける大会である。当然、SCは後者の大会に続く位置付けだ。

 このクラブNo.1決定戦は「Masters」と呼ばれる世界最高峰の大会と、その下部大会である「Challenger」で構成されている。この2つの大会は、総称して「Pro Circuit」とも言う。ちなみに、昨夏の東京オリンピックで金メダルを獲得したラトビア代表の主戦場は、ここだ。RIGAというチーム名で2017年頃から本格的に参戦。オリンピック前年の2020年には年間優勝決定戦・FINALも制していた。4年かけて世界で揉まれた末の、ゴールドメダルなのだ。

 話を元に戻したい。そしてPro Circuitに通じる予選会は「Quest」と名付けられている。ちゃん岡とマツケンのSCは、この一種として実施されており、Challengerに直結した大会となっている(厳密に言えばQuestにもMastersに続く大会があるものの、本稿では割愛する)。

 また、いずれの大会も、国際バスケットボール連盟(FIBA)によって、11段階のレベル分けがなされている。当然、出場する大会のレベルが高ければ高いほど、選手が獲得できるポイントは大きく、Mastersは11段階の中で最も高い。Challengerはそれに次ぐ2番目であり、World CupやAsia Cup、東京オリンピックといった国別対抗戦と同格だ。FIBAに重要視される大会への出場権が、SCのFINAL優勝チームへ付与される予定(※)であることを感じていただけるのではないだろうか。

「ワールドツアーで戦いたい」……
 一方で、選手たちにとって世界で戦うことは、競技に取り組むうえでモチベーションだ。一度でもWorld Tourを経験すれば、多くの選手たちは“またあの舞台で戦いたい”と、口にすることがほとんど。3x3をやる以上、World Tourを基準にプレーを考えたり、FIBAがアップデートするルールブックをチェックしたりして、シーズンに挑む。

 TOKYO DIMEの鈴木慶太に、昨年12月のRound.1終了後、2022シーズンの意気込みを聞いたところ、その返事は「もう一度、ワールドツアーで戦いたい」。DIMEは2019シーズンに、30試合以上の海外転戦を敢行し、Challengerでチーム初の3位に食い込んだこともあった。2020年のコロナ禍以降、海外が遠ざかっているだけに、チームも鈴木も再挑戦に意欲的だ。

「この2年間(2020-21)は停滞している気持ちが強いです。(個人として)東京オリンピックの日本代表入りは目標ではありましたが、やっぱり世界レベルで自分たちが戦って、結果を残したい。その気持ちが一番にありました。2022年は(コロナ禍前の2019年のようにワールドツアーが)動いてくれることを信じて、そこに向けて今の段階からやって行こうと、小松(昌弘)とも話をしています」

 また、1月のRound.3を突破したSolviento Kamakuraの梅林聡貴も、海外挑戦を目標に掲げる。自身初のWorld Tourとなった2020年秋の『FIBA 3x3 Doha Masters』を振り返って「正直もどかしいという気持ちに尽きる大会でした」と明かす。

 彼はSolviento Kamakuraの前身となるTeam Tsukubaで2020年2月の『3x3日本選手権』を制して世界行きを決めたが、本番ではチーム事情によってインサイドでプレーする役割を担う必要があった。そのため、198cmのサイズでアウトサイドから仕掛けられる本来の強みを出せず、チームとしても未勝利で終戦していた苦い経験があった。だからこそ、世界への思いを次のように語った。

「僕はワールドツアーで、同じぐらいの身長だったLiman(セルビアの強豪チーム)のStefan Kojicに感銘を受けました。彼は中も外もプレーができて、世界で通用する攻め方をしていると感じたんです。世界レベルの選手が来る試合で、僕も2ポイントやピック&ロールを使うプレーをやりたかった。それにチームとしても勝てずに終わったので、不完全燃焼でしたね。いまKamakuraでやっているスタイルで世界にもう一度挑戦したい。そんな気持ちが強いです」

結果を残した先に得られるもの
 選手の数だけ、チームの数だけ、競技に取り組むモチベーションがあるだけに、3x3をやる全員が世界を目指しているわけではない。また、SCも国内予選の位置付けではあるものの、エントリーの手軽さを考えれば、まず3x3をやってみようと思う選手やチームにとって参戦しやすい大会かもしれない。

 ただ、世界へ直結する大会であるだけに、上を目指すTOKYO DIMEやSolviento Kamakuraのような意欲的なチームの登場も期待したい。先輩たちを脅かす、新たな主役候補がいまの競技シーンに出てくると、現場はさらに活気づく。Challengerやその先のMastersに出場できれば、ラトビアを筆頭に東京オリンピックで銀メダルのロシアや、銅メダルのセルビアといった強豪国のプレーヤーたちと対戦できる機会が訪れるだろう。5人制と違った醍醐味が、3x3にはあるのだ。

 また、3x3は上位大会で結果を残せば、個人ランキングが上昇するかたちで、自分の成果をダイレクトに感じられる。そして各国で、個人ランキング上位25選手の保有するポイントを合計した値が、国別ランキングになることを踏まえれば、その醍醐味もより一層、大きくなるだろう。

 現在、日本男子の世界ランキングは20位(2月6日時点)と低迷。3年前は一ケタ順位であったものの、コロナ禍の影響で日本人選手がほとんど海外へ出られなかったため、高いポイントを取れずに世界ランキングのダウンを招いた。その一方で、ドイツ(8位)やオーストリア(12位)などヨーロッパをはじめたとした各国は、選手たちがWorld Tourでポイントを稼いだことで、順位を上げた。もちろん、日本人選手が世界戦に返り咲き、結果を残せば、ランキングが回復する可能性もある。

 コロナ禍のため、海外挑戦はイメージしにくいかもしれないが、『3x3 Super Circuit 2022』で準備だけでもやっておくのがいいのではないだろうか。

<今後の大会スケジュール(予定)>
Round.5 2022年2月11日(金・祝)茨城
Round.6 2022年2月19日(土)京都
Round.7 2022年3月6日(日)徳島
ワイルドカード 2022年3月12日(土)東京予定
FINAL 2022年3月13日 (日) 東京
https://handoff-all.jp/2021/11/25/3x3sc22/

※国際バスケットボール連盟(FIBA)の判断により『3x3 Super Circuit2022』の主催者が確保予定の『FIBA 3x3 Challenger』が中止になった場合は、出場権も無くなる見込み。

『3x3 Super Circuit 2022』から続く先……3x3の世界大会とは?

TEXT by Hiroyuki Ohashi

https://handoff-all.jp/2021/11/25/3x3sc22/

RELATED FEATURE

MOST POPULAR