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  • 2021.08.24

3×3の国内代表チーム決定戦「Red Bull Half Court 2021」Japan Finalを振り返る

世界20カ国以上で開かれているRed Bull主催の3x3グローバルトーナメント「Red Bull Half Court 2021」。その国内代表チームを決める一戦が開催された。勝敗もさることながら、敗者も感じた充実感。オリンピック直後であり、Red Bullの大会だからこそ聞かれた声とともに決戦を振り返る。

世界への切符を懸けた戦い
 日本に今年初上陸した「Red Bull Half Court 2021」のJapan Finalが、8月8日に都内で開催された。あいにくコロナ禍による緊急事態宣言のため無観客試合となったが、大会には選手の高揚感を煽るような仕掛けが随所にセットされた。例えば会場は特別にセットアップされ、MC MAMUSHIとDJ MIKOがコートサイドにスタンバイ。出場選手は大会をサポートをするAKTRより支給されたスペシャルユニフォームに身を包み、同じくサポートをするSPALDINGのバックパックを引っさげて、大一番の舞台へ訪れた。

 今大会には、地方予選を勝ち上がったSHINAGAWA CC(東北予選)、MINAKAMI TOWN(関東予選)、HIU ZEROCKETS(関東予選)、ALLBLUE(関西予選)、BRUTE(中部予選)の5チームと、前日7日に敗者復活戦として行われたLast Chance Qualifier(LCQ)を突破した3チーム(HACHINOHE DIME/SHIBUYA FUTURES/Solviento KAMAKURA)の計8チームが集結。4チームずつ2つの予選プールに分かれて総当たり戦を行い、各プール上位2チームが準決勝、決勝で、チャンピオンの座と今年10月に実施予定の世界大会「Red Bull Half Court World Finals」への出場権を懸けて争った。

HIU ZEROCKETSが全勝優勝
 まず予選を振り返ると、各プールの1位は全勝で準決勝へ駒を進めた。Solviento KAMAKURA、ALLBLUE、MINAKAMI TOWN、SHIBUYA FUTURESのプールでは、ALLBLUEが3戦全勝。オープニングゲームでSolviento KAMAKURA を12-7で下し、SHIBUYA FUTURESには21-12で圧勝すると、MINAKAMI TOWNも15-10で下した。芳賀三四朗の1対1や川内滉大の長距離砲に、味方との連携から力強いアタックを連発した仲西佑起が勢いを与え、イトウダイチもゲームをつないで見せた。そして同プール2位にはSHIBUYA FUTURESが滑り込んだ。

 もう一方のHACHINOHE DIME、BRUTE、HIU ZEROCKETS、SHINAGAWA CCのプールでは、HIU ZEROCKETSが3戦負けなし。初戦で、かつての関東大学リーグの得点王でプロキャリアを持つアブ・フィリップを擁するSHINAGAWA CCを15-12で振り切ると、BRUTEには16-15の逆転勝ち。プール2位通過を果たすHACHINOHE DIMEにも19-14で勝利を収めた。とりわけBRUTE戦は土壇場で佐藤マクファーレン優樹が同点弾を決め、ラストプレーでフォファナ ママドゥがゴール下で逆転ショットをメイク。日影カイルやOZZIE LEE HENDERSONも球際で激しさを見せた。

 そして準決勝第1試合ではALLBLUEが18-15でHACHINOHE DIMEの追い上げをかわすと、続く第2試合ではHIU ZEROCKETSが18-7でSHIBUYA FUTURESに完勝する。国内代表チーム決定戦となる決勝では、ALLBLUEが川内や仲西の得点で先行するが、HIU ZEROCKETSが徐々にHENDERSONを軸に主導権を奪って逆転。終盤はママドゥのドライブで突き話すなど、18-13で初優勝をたぐり寄せた。

 大会を通じて活躍を見せたママドゥは決勝後に「今シーズン、このチームは成績が良くなかったので、こうした世界につながる大会で結果が出て、本当に良かった」とコメント。さらに今大会の開催は、東京オリンピックの3x3競技が終わった直後のタイミング。そんな中で世界への切符を勝ち取れたがゆえに「本当にオリンピックのおかげで、いま3x3は話題になっていると思います。世界大会という注目される舞台でプレーできることは本当に嬉しいです」と、喜びを語ってくれた。

五輪直後だからこそ聞かれた声
 一方で優勝を逃した悔しさは残るが、オリンピックで3x3が盛り上がる中、プレーできたことや、Red Bullがオーガナイズした大会でプレーできたことに、充実感を覚える選手たちがいたことも紹介したい。
 まず、チームとして初3x3参戦で準優勝を飾ったALLBLUEの仲西佑起だ。これまで滋賀のNINJA AIRSでお馴染みの選手は、今大会にはいつも5人制で組むECOBLUEのメンツたちと登場し、大会についてこう振り返った。

「僕は3x3をNINJA(AIRS)でやっていて、あとの2人(芳賀/川上)もGYMRATS(YAIZU GR UNITED)でやっているので、それぞれの良いプレーをある程度ミックスさせてやろうと話をしていました。(敗れはしましたが)しっかりとできたので、とても楽しかったです」

 そして東京オリンピックをテレビで観戦し「やっぱり感動しました。いま(日本代表が)やっているレベルは(世界で)この辺なやと感じて、興奮しましたね」と明かし、盛り上がりを日常生活で感じていると、次のように教えてくれた。

「(平日勤務する)会社でも、3x3の知名度が上がりました。昼飯やお客さんとの会話で“バスケ”や“3x3”が出てくるんです。(周囲は)僕が3x3をやっていることは知っていますが、以前は競技の説明から話に入っても(相手に)そのイメージがなかなか沸いていなかったのですけど、今では会話が弾むようになりましたね。60歳を超える社長さんも知ってはるので、この1カ月で、とても変ったと思います」

 さらに、こういった変化を感じ、彼は改めて「僕らができる環境はすごいありがたいし、できるところまでやってきたい」と、競技シーンを作る一人として意気込みも語ってくれた。

Red Bull主催に「好きな雰囲気でした」
 もう一人は、前日のLCQから勝ち上がって本戦でも躍動したHACHINOHE DIMEの寺嶋恭之介(KYONOSUKE)である。2日間を終えて「単刀直入に言うとベスト4で悔しい思いがある」としながらも、こう続けた。

「僕はいろいろな大会で人と同じことをするのか好きではないので、Red Bullが持つ華やかな中にも、熱い戦いや派手な感じがある、いろいろな見え方がすごい良いな感じました。僕のスタイルにピッタシだし、好きな雰囲気でしたね。ユニフォームも含めてスタイルがイケてるというか、カッコイイものを着てプレーすることは気持ちいいですよね。もちろん優勝して世界大会に行きたかったのですけど、とても素敵な場所でバスケをやることができたと思います」

 またHACHINOHE DIMEはLCQを含めれば、2日間で8試合というタフなスケジュールだったが、KYONOSUKEが見せた最後まで足が止まらない、疲れ知らずの姿に驚かされた。本人にそれを聞くと「たぶん肩で息をしてなかったかもですね」と事もなげに話し、3x3を「体力ゲームでもあるバスケットで、一番キツイ持久走」と表現。それでも「ここは負けたくないですし、自信があります。あとは練習じゃないですか。いきなり試合に行っても力を発揮できるわけではないですから」と話した。コメントの最後には一瞬「きついですよ」と本音を口にしつつも、「でも、楽しい方が勝ちますね」とさらっと言葉を紡ぐあたりに、ストリートや3x3、Bリーグと、様々なコートでバスケをやり続ける彼らしさも垣間見た。

 そして、オリンピックで3x3に盛り上がりが訪れる中、彼は「流行りで終わって欲しくないですよね。バスケットボールだったら5人制も、3人制も、もっと盛り上がって欲しいし、もっとトレンドになるべきだと思っています。僕は盛り上げたいというより気持ちより、ずっと僕は発信し続けているので、これからも変わらないですね」と、バスケに対する思いの丈を改めて語ってくれた。

Red Bull Half Courtの今後
 勝者だけではなく、敗者からも大会に出場できたポジティブな声が聞かれた「Red Bull Half Court 2021」Japan Final。もちろん、全選手に話を聞いたことわけではないので、中には悔しさしか残っていない選手もいるかもしれない。ただ3x3は毎月どこかの週末で大会が開かれているほど、競技シーンは広がっているだけに、再挑戦の機会は多い。さらに大会主催者によると「Red Bull Half Court」そのものも、今年限りの開催ではなく、来年度以降もツアーを開き、スケールアップさせたい構想を持つ。実現すれば日本で競技シーンがより広がっていく可能性を秘めているだろう。

 だからこそ、日本を代表して世界に挑むHIU ZEROCKETSには注目したいところ。オリンピックや、FIBA(国際バスケットボール連盟)主催のクラブ世界No.1決定戦「FIBA 3x3 World Tour」とはまた違った舞台になるが、日本のチームが海外でどこまでやれるのか。活躍すれば、現場に与えるインパクトも少なくない。ママドゥが「Red Bullの世界大会は初めてですが、そこで結果を出したら、今後の3x3がもっと盛り上がると思いますので、頑張ります」といった言葉に期待し、World Finalsを楽しみに待ちたい。

3x3の国内代表チームを決める「Red Bull Half Court 2021」Japan Finalを振り返る

TEXT by Hiroyuki Ohashi

Red Bull Half Court 2021

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