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  • 2021.12.15

日本郵政 presents 『Real story behind 3×3』 vol.5 小野順一(UTSUNOMIYA BREX.EXE)

これは3人制バスケットボール、3x3(スリーエックススリー)に携わってきた人たちのストーリーである。このバスケは、2021年夏の東京オリンピックで世界的に注目を集めたが、その歴史は浅く、五輪の正式種目決定はわずか4年前の2017年だった。本連載では、日本で3x3を黎明期から支えた9人のこれまでと、これからの歩みや競技シーンに向けた思いを綴っていく。vol.5は、UTSUNOMIYA BREX.EXEで代表を務める小野順一氏にフォーカスした。

Bリーグクラブが3x3チームを持つ
 UTSUNOMIYA BREX.EXEはBリーグ初代王者・宇都宮ブレックスが運営する3x3チームである。2021年は国内主要タイトルである『3x3 JAPAN TOUR』と『3x3.EXE PREMIER』を制して2冠を達成。コロナ禍前の2019年には、国際バスケットボール連盟(FIBA)が主催するクラブ世界No.1決定戦『FIBA 3x3 WORLD TOUR MASTERS』と、その予選会となる『FIBA 3x3 CHALLENGER』という世界規模のツアー大会も転戦した。
 チームの立ち上げは2015年――当時はまだ3x3が東京オリンピックの正式種目になるかもしれないと言われた時期。将来的に競技が盛り上がる可能性を宇都宮ブレックスは感じていた。小野順一氏は、3x3チームを立ち上げた背景をこう振り返る。

「栃木県を活動エリアとした5人制プロバスケットボールチームの運営会社として、3x3に取り組むことで、地元でバスケットボールの普及につながると考えました。5人制に比べてコートが半分なので小スペースで試合を開催できて、3人いれば気軽にできます。ファンの皆さんや子どもたちが、1年を通してバスケに触れられる機会を私たちは作りたいと思っていたんです」

チームを支える代表の役割
 もともと小野氏は運営会社で広報として5人制チームに携わっていた。試合現場でのメディア対応や選手が稼働するイベントの調整や立ち合い、チームに関する情報発信など、多岐にわたる業務を行っていた。
 そして2015年に広報と兼務で、3x3チームの代表へ就任。責任者として業務の幅はさらに広がった。主な仕事は、選手編成と活動の指針を決めるチームのマネジメントである。運営には費用もかかるため、小野氏がスポンサー営業を行うこともあった。選手編成やチーム作りについては、現チームのリーダーを務める齊藤洋介と二人三脚で取り組む。

 基本的に社内でチーム運営を担うのは小野氏に加えて、菊原敬一郎氏の2名。練習会場の手配や大会中のチームサポートなどの実務は菊原氏が担う一方で、小野氏のもとに外国籍選手から「歯が痛い」「背中が痛い」などの連絡もあるため、細かい選手フォローも含めて守備範囲は広い。
 苦労も多そうに見えるが、チームの成長や勝利は小野氏の励みになっていた。立ち上げ初年度に初優勝を飾った3x3.EXE PREMIERのつくば大会は「今でもはっきりと覚えています」と言う。当時リーグ戦で首位のGREEDYDOG(グリーディードッグ)を破るなどしてつかんだ記憶に残る1日だ。

 また、2019年に世界規模のツアー大会に転戦したシーズンも印象深い。9度の海外遠征のうち、小野氏もモンゴル、クロアチア、セルビア、スイス、韓国の5カ国へ帯同。BREXは勝った負けたを繰り返しながら、ツアー最終戦でベスト4進出というチーム最高位を打ち立てた。

「2019年は本格的に初めて世界で戦うことができたシーズンでした。色々と試行錯誤をしながら、3x3の世界を知る楽しさがありつつ、チームがどんどん強くなっていく実感がありました。選手たちがとても頑張ってくれて、私も充実したシーズンになりました」

町に支えられたチームの成長
 一方で、BREXが成長していく過程には地元の支えも力になった。ひとつは、行政である宇都宮市のバックアップ。チーム立ち上げの翌2016年から4年間、同市はWORLD TOURの宇都宮大会をFIBAから誘致し、世界トップレベルの戦いを市民の前で披露する環境を作った。チームにとっても世界最高峰の舞台に地元を代表して出場したいという思いが「競技に取り組むモチベーションになった」と小野氏は明かす。4度のうち3度(2016年、2017年、2018年)の宇都宮大会へ出場を遂げた。
 加えて開催場所は、宇都宮のシンボルである二荒山神社の鳥居の前であった。スペースさえあれば、どこでも試合を開くことができる3x3らしいロケーション。鳥居の前は本殿に続く参道であるため、言わば神様の通り道にコートを敷く前代未聞のプロジェクトだったが、関係各所が一致団結した末に、大会を実現させた。チームと地元を結ぶ上で世界大会は「ターニングポイント」になっている。

 もうひとつの支えは、ファンの存在だ。2007年から5人制チームが活動してきたことで「ブレックス」は地元から愛される存在になっていた。バスケに対する熱量も高く、5人制とルールの異なる3x3に対しても馴染みが薄いとは言え、いざ大会がはじまれば黎明期からコートサイドの歓声は非常に大きかった。小野氏もコロナ禍以前の様子を思い出しながら「3x3観戦が初めての方でもバスケの盛り上がり方をご存知で、楽しみ方が上手な皆さんが多い印象でした」と話す。5人制チームを応援する文化が、3x3の発展を後押しする力になった。

 また、6年の活動期間の中で3x3が町に根付いてきた場面を、3x3以外の現場でも感じている。齊藤洋介ら選手たちがシーズン終了後に5人制の試合が行われるブレックスアリーナ宇都宮へ訪れると、ファンから大きな拍手で包まれた光景だ。これまで県内で3x3の主要大会が開催される回数は、Bリーグがオフになる夏場に1、2回だけ。それにも関わらず、活動の様子はしっかりと届いていた。

「選手たちにはシーズンの優勝報告など、ブレックスのホームゲームに来てもらうこともあるのですが、毎回会場から選手たちへとても暖かい拍手をいただいています。頻繁にファンの皆さんの前で試合をしてきたわけではないのですが、その光景を見ると宇都宮で3x3を見ていただく方が増えている。そう実感します」

競技の今後へ向けて……
 ここ2年はコロナ禍のため会場に満員のファンを迎えての試合開催に残念ながら至っていない。それでも小野氏は2021年夏の東京オリンピックで3x3の男子と女子の日本代表の活躍によって、多くの人々が競技に触れたことで、今後に期待を寄せている。
 小野氏が思う3x3の見どころは二つ。ひとつは、1試合10分という短い競技時間の中で、21点先取のルールがあることによって生まれる相手を仕留めるシュートに至るスリリングな攻防。もうひとつは、基本的に1DAYトーナメント(大会によっては2DAYS)で優勝チームが決まる大会構成ゆえに、一話完結の物語が楽しめるようなエンタテインメント性だ。まだ3x3を現場で見たことがない人々が、これらを現場で体験することで、より3x3の魅力が広がる青写真を描く。

BREXのこだわり
 そして小野氏には「広報」と「代表」で力を入れたいことがある。まず広報としては、3x3の魅力をさらに発信していくこと。特にコロナ禍が落ちつき、選手たちが国際大会に挑戦できたあかつきには、その模様を2019年以上に伝えていきたい思いがある。世界最高峰の舞台に挑む様子をファンやメディアに「僕らがもっと知ってもらう努力をしていかないといけない」と話す。
 また代表としては、5人制チームに通じる「ブレックスメンタリティ」を体現できるチーム作りだ。これは、どんな状況でも諦めずに戦うチームの姿を示した言葉。3人制チームは5人制のチームと選手も練習環境も違うわけだが、国内外でし烈な戦いをくぐり抜ける過程で同じ言葉を感じられるようになった。常に声援を送るファンがあってこそのBREX。勝つ先にあるものを見せる決意だ。

「ブレックスメンタリティを体現するチームに、こだわりたいです。応援してくださるファンの皆さんに喜んでもらい、楽しんで家に帰っていただきたいと思っています。3x3は5人制よりもコートと客席の距離が近い競技環境も魅力のひとつ。UTSUNOMIYA BREX.EXEとして皆さんに何か伝えられるよう、選手たちとこれからも活動していきます」

 競技の醍醐味を伝え、プレーで見る者の心を揺さぶるには、選手たちの力がひとつになってこそ。小野さんは「ブレックスメンタリティ」を発揮できるチームを選手と二人三脚で作り、これからも町に愛され、日本の3x3シーンをリードするBREXに思いを注ぐ。

日本郵政 presents 『Real story behind 3x3』 vol.5 小野順一(UTSUNOMIYA BREX.EXE)

TEXT by Hiroyuki Ohashi



UTSUNOMIYA BREX.EXE+


https://www.japanpost.jp/3x3/

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