Alpen × Jordan Brand「TATUM 5」TRIAL SESSION at 報徳学園
新しいシューズを履き、普段とは違うコーチの言葉に耳を傾ける。それだけでも高校生にとってはいつもの練習とは違う経験になるが、その時間を本当の意味で自分のものにできるかどうかは、そこで何を感じ、何を考え、日常へ持ち帰るかにかかっている。
AlpenとJordan Brandによるシューズトライアルが、兵庫県・報徳学園高校男子バスケットボール部を対象に行われた。今回選手たちが試したのは、ジェイソン・テイタムの最新シグネチャーモデル「TATUM 5」。特別コーチとして、選手として長く日本のバスケットボールシーンで活躍し、現在は育成年代の指導にも携わる青木康平コーチが招かれた。
シューズの構造と機能を知り、実際に履いて、シュート、フットワーク、ピック&ロールへ。そこで繰り返されていたのは、「正解」を一方的に教わることよりも、自分自身で考え、気づくためのアプローチだった。



TATUM 5を「知ってから履く」
クリニックに先立って行われたのは、アルペンの矢野氏によるTATUM 5のプロダクトセミナー。選手たちの前には発売前のTATUM 5とともに、普段目にする機会の少ない分解サンプルも用意された。
矢野氏はジェイソン・テイタムについて、3ポイント、1on1、ポストプレーだけでなく、リバウンドから自らボールを運び、フィニッシュまで持ち込めるオールラウンドなプレーヤーだと説明。その多彩なプレースタイルとシューズの機能を重ねながら、前足部のZoom Airや、TATUM 5から新たに採用されたストラップについて紹介した。
「バスケットボールって、まっすぐ走らないですよね。まっすぐドライブしないですよね」
ピック&ロールからのスネークドリブルやチェンジ・オブ・ペースなど、バスケットボールでは方向やスピードを変えながらプレーする場面が繰り返される。TATUM 5のストラップは、そうした曲線的な動きの中で足の甲をロックするために採用されたものだという。完成したシューズを見るだけではなく、その構造と役割を理解した上で実際にコートで試す。選手たちはここから、TATUM 5のフィーリングを自分たちのプレーを通して確かめていった。



「シュートの練習は、自分の内省」
青木康平コーチのクリニックは、シュートからスタートした。「シュートに課題がある人?」と選手たちに問いかけると、ボールの飛ばし方から始まり、キャッチ、フットワーク、シュートへと少しずつ動きをつなげていく。その冒頭で青木コーチが伝えたのが、「シュートの練習は自分の内省だから、自分の感覚と自分自身との会話を多くしてください」という言葉だった。
フォームを一方的に矯正して答えを与えるのではない。自分の身体がどう動き、ボールがどう飛んでいるのか。動きを少し変えたときに、どんな感覚の違いが生まれるのか。選手自身がそれを観察しながら、答えを探していく。
クリニック後、青木コーチは、この日行ったキャッチからシュートへつなげるフットワークについて、「どのクリニックでも一番伝えたい」もののひとつだと振り返った。また、これからの高校生には、ドリブルから3ポイントを打つ技術も特別な武器ではなく、「標準装備」として求められる時代になっていくと考えている。
新しいスキルを増やすためにも、その土台となるフットワークを身につける。青木コーチが最初に時間をかけたのは、そんな基礎の部分だった。



ピック&ロールで学ぶ「駆け引き」
クリニック後半では、報徳学園が現在取り組んでいるピック&ロールへとテーマが移った。ただし、これは青木コーチがあらかじめ用意したメニューをそのまま持ち込んだものではない。
開始前、青木コーチは田中先生とチームの現状について話し、普段取り組んでいるプレーや課題を確認していた。田中先生から挙がったのは、フレアからの展開やピック&ロール、ドロップに対するプルアップなど。青木コーチも「普段されている練習の中でやった方がいい」と考え、報徳学園の日常にあるプレーをベースに内容を組み立てていった。
ピック&ロールでも、決められた動きを再現することが目的ではない。ディフェンスがどこにいて、どう守ろうとしているのか。それを見ながらスクリーンの角度や立ち位置を変えることで、新たなパスコースや次のプレーが生まれる。
「自分の角度が変わることによって、やり方がどんどん増えてくる」
さらに、一度成功したプレーほど相手も次の対応を考えてくる。
「自分らがイケてると思ったことも、相手はやられてるって感じてることも多い」
だから、その次を考える。技術やパターンを覚えるだけではなく、ゲームの中で相手を見て選択肢を変えていく。その「駆け引き」まで含めて、青木コーチは選手たちに伝えていった。

一日で選手を変えることはできない
青木コーチはクリニック前、今回のような一度きりのセッションについて「僕が来て実際、すげえ何か変わるとかってないと思ってて」と話していた。90分の指導だけで選手が突然うまくなるわけではない。だからこそ、その場で何を教えるかと同じくらい、終わった後に何を残せるかを大切にしている。
今回も、選手自身が振り返り、継続して取り組むためのプリントを田中先生へ渡した。
「あいつ来たな、なんか変なやつで終わってほしくない。ちゃんと形として残したい」
そしてクリニックの最後には、スキルとは少し違う話を選手たちに投げかけた。
「決して上手い選手だけが生き残る世界じゃない」
ミスをしたチームメイトに「なんで取れないんだ」と言うのではなく、「次はもっといいパスを出す」と言える選手であってほしい。自分がうまくなるだけではなく、チームメイトをより良くできることも、選手に必要な力だと青木コーチは伝えた。

「派手さではなく、核心を突いていた」
田中先生が青木コーチに期待していたのも、シュートの技術だけではなかった。現役時代から「シュートが上手なポイントガード」という印象に加えて、「今でいうIQというか、そういうのがすごい高い感じ」を持っていたという。だからこそ、プレーだけでなく、バスケットボールへの取り組み方も選手たちに感じてもらいたいと考えていた。
クリニックを終えた田中先生の感想は、「派手さっていうよりかは、本当に核心を突いた」というものだった。
目新しいことを見せるのではなく、シュートや一つひとつのプレーの根底にある大切な部分へ立ち返る。「選手たちも気づいたと思いますし、僕自身もすごく見直す機会になった」と、選手だけでなく自身にとっても新しい刺激になったと振り返った。
報徳学園では今回に限らず、OBをはじめ外部の指導者から刺激を受ける機会を大切にしているという。その判断基準は「選手たちがプラスになってくれる」こと。普段とは違う視点を取り入れることが成長につながるのであれば、積極的に受け入れていく。

個性を、チームの力に変える
2026年の報徳学園は3年生を中心としたチームで、一人ひとりの個性が強く、それぞれに高い能力を持っている。一方で田中先生は、その個性の強さゆえに「噛み合った時と噛み合わない時」があるチームだとも話す。
そのためチーム作りのベースに置いてきたのが、安定したディフェンスとムラのないゲーム運びだ。そこに個々の強みを重ね、勝負どころでそれぞれの力を発揮できるチームを目指している。
「インターハイをはじめ、ここまで思い描いた結果につながらなかった試合もあるが、それらの敗戦もウインターカップで目標を達成するための過程として捉えている」
現在はリーグ戦を通じて、積み重ねてきたものがゲームの中でも少しずつ形になり、チームの雰囲気も上向いているという。
さらに報徳学園には約90人の部員がいる。試合に出る選手もいれば、出られない選手もいる。だからこそ田中先生は、高校3年間の競技生活を通じて、競争する厳しさと同時に「お互いの立場をちゃんと尊重し合う」ことも学んでほしいと考えている。
異なる立場を理解し、協調性を身につける。人数が多い環境さえ、自分にとってプラスに変えていける人間になる。その考えは、青木コーチがこの日伝えた「チームメイトを良くできる選手」という言葉とも重なっていた。


自分に合う一足を、自分で選ぶ
シューズについても、田中先生は選手自身の感覚を尊重している。チームとして特定のモデルやカラーを指定することはなく、「自分の足に合うもの、自分の気持ちが一番乗るもの」を自分自身で選んでほしいという。
今回のトライアルでは、TATUM 5をはじめ複数のJordan Brandのシューズを履き比べ、実際にプレーする機会が用意された。店頭での試着だけではわからないフィーリングを、シュートやフットワーク、ピック&ロールといった動きの中で確かめられることも、このセッションの意味のひとつだろう。
構造を知り、履いて動き、自分の感覚で確かめる。それもまた、自分に合った一足を選ぶための経験になった。


日常へ持ち帰る
クリニックを終えた青木コーチは、手応えを感じる一方で「もっとちゃんとしたかった」とも振り返った。事前に田中先生とより深くコミュニケーションを取り、普段の練習や実際の試合まで見た上で関わることができれば、外から見るからこそ気づけることをもっと伝えられたかもしれないという。
一度のクリニックでチームを変えるのではなく、そのチームがすでに積み重ねているものを理解し、そこへ新しい視点を加える。そして選手自身が、それを日常の練習へ持ち帰る。今回の90分に一貫していたのは、そんな姿勢だった。
報徳学園がチームとして大切にしている言葉に、「百折不撓(ひゃくせつふとう)」がある。何度挫折しても、志を曲げずに進み続けるという意味だ。田中先生も「強いチーム、綺麗なバスケットするチームというよりかは、泥臭いところも最後までファイトしたい」と語る。
TATUM 5の構造を知り、自分の身体と対話し、ディフェンスとの駆け引きを考え、チームメイトを生かす。そこで得たものを日常へ持ち帰り、自分自身で積み重ねていくことができれば、この日の経験は単なる“特別なクリニック”ではなくなる。
「教わる」だけではなく、自分で気づき、考え、続けていく。その積み重ねが、報徳学園の選手たちを次のステージへと導いていく。

- Alpen × Jordan Brand「TATUM 5」TRIAL SESSION at 報徳学園
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■特設ページ:テイタム 5 PF
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青木康平
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TEXT & PHOTO by Rintaro Akimoto

















