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  • 2020.05.01

3×3の選手たちがいま思うこと vol.3 大友隆太郎

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、東京オリンピックは来夏へ延期された。そして我々が愛するバスケットボールも現在、NBAはシーズン中断を余儀なくされ、Bリーグは2019-2020シーズンが打ち切り。今夏、オリンピックの正式種目としてデビューを迎えるはずだった3x3も、クラブ世界No.1決定戦であるFIBA 3x3 World Tour Masters やChallengerといったプロサーキットを筆頭に、春から予定されていた2020シーズンの大会は、あらゆるカテゴリーで延期や中止となった。

今回、日本の3x3シーンを代表する男女6名にオンラインや電話でインタビューを行った。思わぬ事態に直面したが、彼ら彼女たちがいま何を思い、昨シーズンの経験を糧に、新シーズンへ向けてどのように進もうとしているのか。第3回目は、今年2月の日本選手権でTEAM TSUKUBAとして初優勝、大会MVPに選ばれた大友隆太郎(ALBORADA)に話を訊いた(取材日4/12)。

大会延期でオリンピックへ計画変更

新型コロナウイルスの影響により、日本選手権で出場権を勝ち取った4月のDoha Mastersが延期になりました。いまどんなお気持ちでしょうか。優勝セレモニー後に、世界を相手に戦えることを、とても楽しみにされていたことを覚えています。

「延期は残念ですけど、僕にはコントロールできないので、しょうがないです。受け止めて、次へ準備するしかないと思っています。もちろんショックもありましたが、切り替えは早かったです。そのときはオリンピックの延期はまだ決まってない時期でしたが、それも決まったので、いまは2020シーズンのどこかで開催して欲しいですね。中止ではなく、延期であれば、大会へ向けて準備をしていくぞ、という気持ちです」

日本代表入りをまだまだ諦めていないという話も、日本選手権後にはありました。そんな中、オリンピックが1年先送りになったことは、どう感じていますか。

「当初は4月のDoha Mastersでベスト8に入って、大きなポイントを獲得することで、国内ランキングのトップ10に滑り込むという一発逆転の計画を立てていました。でも来年の夏になって、シーズンを通した1年間の結果が問われてくると思っています。準備がどれだけできるのか、自分自身の戦いになると感じるようになっています」

自信を持って戦えるまでになった

最終的に日本選手権の優勝に至りましたが、2019-2020シーズンは、どのような手応えを感じていますか。TEAM TSUKUBAで世界大会へ挑んだり、NATUREMADEで3x3.EXE PREMIERのラウンド優勝も経験しました。

「この1年間で、選手としての力は(他の選手たちと)全然負けていない、むしろ自信を持ってやれている感覚です。一昨年は、試合で怖さもあったのですけど、いまはもう誰とやっても、負けないと思えるまでになりました。でも、細かい部分はまだまだですね、それが本当の強さだと思うのですが、例えば勝負所で一本、相手のオフェンスを止めることや、ディフェンスのプレッシャーを強めること、審判の駆け引きもそうだと思います。ディテールの精度をもっと伸ばしていかないと、継続的な勝ちには繋がっていかないと感じています」

日本選手権の決勝・DIME BLACK戦は、試合が膠着した後半の時間帯、大友選手がドライブで得点したあたりからゲームが再び動いた印象でした。

「僕たちのチームは、コナー(クリフォード)がいるのでインサイドで主導権を取れます。だから彼をファーストオプションとしているのですけど、あの試合に限らず、日本選手権ではいつでも点を獲れる自信がありました。決勝も途中で膠着していたので、自分で攻めようという考えでやっていたので、そこからリズムをつかめたと思います」

優勝セレモニー後は、まだチャンピオンの実感が湧いてないと言ってましたが、今はいかがですか。

「周囲の方からメッセージをいただいて、ちょっとずつ湧いてきましたけど、あの優勝は自分が目標としているところの途中です。個人的に”日本選手権MVP”というキャリアで初めて箔がついたのかなと感じますが、全然まだまだだと思っています」

オリンピックが延期になって、いまは今後の計画を練り直しの最中ですね。

「だいぶ練り直しました。こういう状況で難しいこともありますが、3x3はずっと続けていくし、オリンピックが最優先です。そこへ向かって、どういう選択をしていくか、模索しています」

いま、この状況ですが、コンディションが落ちないようトレーニングはできていますか。

「自分のできる範囲でやっています。いまの期間は、体の苦手な部分を見つめ直す良い機会だと思って、取り組んでますね。恐らく、他の選手たちもコロナウイルスの影響で状況は一緒だと思います。ここでいかに適応できるかで、新シーズンの結果が決まると考えてますので、ポジティブにやってますよ」

この状況だからこそ意識したこと

本来であればバスケ中心の生活でしょうが、この状況でなかなかその取り組みもやりづらいと思います。自由にできる時間が多くなりそうな気もしますが、こんなときだからこそ、取り組んでみたいことあるんですか。

「最近はnoteで発信することをはじめました。以前より力を入れてやっているのかな、常にベクトルは自分に向いてますが、いままでは自分だけにフォーカスしていたことを、学生などのそれ以外の方々へ僕が得てきた情報や経験を伝えていければと考えています。この状況で、もしかしたらスポーツ選手はスポーツをやっている場合ではないと思われているかもしれないし、経済的にスポーツに投資する金額が減ってくるかもしれない。そんな中、僕たちスポーツ選手が生きていくためには、プレーする以外の社会的な価値をひとり一人が上げていく必要があると思います。意識をしながらできることをやっていきたいですね」

noteは僕も拝見してますが、3月から近況報告だけでなく、シュートや体作り、食事など多岐に渡ってます。中身もそれぞれ嚙み砕いてイメージしやすい印象です。

「皆さん、どんな情報が必要なんでしょう?僕はトレーニングをしっかりと考えてやっている自負はあるので、そこは発信していければと思っています。なぜそれをやるのか、取り組んだ結果はどうなるのか、はっきりさせてやるタイプなので、自分で考えたり、知識を得たりすることが好きです。いまの時期は、バスケのトレーニングやスキル、戦術などを頭に入れる作業をやっていて、そこにかける時間は多いです」

どのように取り入れているのですか。注目している3x3や5o5のチームは?

「日頃からやっているのですけど、映像を見て、良いなと思ったプレーを練習で試してみるのが好きです。注目しているチームはミーハーに思われるかもしれませんが、やっぱり3x3だとNovi Sadで、5on5だとNBAのダラス・マーベリックスです。特に(ルカ)ドンチッチの周りの選手たちが、彼の良さを最大限発揮できるように動くプレーには目がいきます。その動きにヒントに得て、3x3で試してみることもあるんですよ。個人戦術は、山本柊輔さん(前アルバルク東京)から聞いてます。スキルオタクで詳しいんです」

大友選手は3x3がメインですけど、5人制で海外挑戦やアルバルク東京でプレーされた山本選手とトレーニングをやることは刺激になるんじゃないですか。

「山本さんとはよく連絡を取り合ってます。僕は性格上、自分に意識が入り込みすぎてしまって、周りが見えづらくなることがあります。周囲の人の意見を聞くことで視野が広がるので、大切にしていますし、こういう時期だからこそ尚更そう感じています」

いろいろなものに触れて、吸収して、準備する期間なんですね。

「そうですね。他の選手も同じ状況だと思います。去年だとTOKYO DIMEやUTSUNOMIYA BREXにリードされた状況で、僕たちがスタートして追いつくぞという気持ちだったんですけど、いまは同じスタートラインに戻された感覚です。でも新シーズンはコロナでどうなるかわからないし、少なくともマスターズの切符を手にしているのでこれがチャンスだと思って、準備をコツコツやっていくしかないですね」

新シーズンは勝ちにこだわる

この先、事態が改善されれば、バスケットボールや3x3ができる生活が戻ってきます。新シーズンへの抱負をお願いいたします。

「オリンピックが延期になったので、新シーズンは1年間継続して結果が求められると思っています。勝ちにこだわっていくことはもちろんですけど、それに加えて個人的には目立つプレーも少しずつおり交ぜて、どのように勝つかいうところまで意識していきたいです。応援よろしくお願いします。試合中、ダンクも狙います!」

それ、noteに書いていたような。100kgダンカー、楽しみにしています。

「いまは体重を少しずつ戻して、97、8kgぐらいです。新シーズンで100kgダンカー、目指しますよ」

3x3の選手たちがいま思うこと vol.3

大友隆太郎
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TEXT by Hiroyuki Ohashi

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