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  • 2018.02.14

ユナイテッド航空で行く!サンフランシスコツアー Vol.2

12月上旬の某日、FLY Magazine編集長から唐突にLINEメッセージが着信。内容は「ゴールデンステイト・ウォリアーズ(以下GSW)の試合観戦ができるメディア・ツアーに参加しないか?」というもの……。しかも、詳しく話を聞くと、フライトはビジネスクラスで、試合観戦もVIPスイート席……?

筆者は、FLY Magazineとは前身のABOVE時代に何度か原稿を書かせて頂いていますが、普段はヒップホップを専門とした音楽ライターとして活動しています。バスケットボールは音楽と同じぐらい筆者にとっては大きな存在で、NBAマニアだと自負してはいますが、バスケやスポーツを専門としたライターでありません。なので、筆者としてはかなり信じがたい依頼内容だったため一瞬戸惑いましたが、NBA狂にとってはこんなに魅力的なオファーはないということでスケジュールを確保し、思わぬクリスマスプレゼントをありがたく頂戴することにしました……仕事だけど(笑)。

3泊5日というタイト目な日程ではありましたが、試合観戦はもちろんのこと、筆者にとっては初めてのサンフランシスコ訪問を楽しませて頂きました。そのツアーの一部始終を2回に分けてレポートさせて頂きます。

今回の旅のハイライトは、間違いなく前日の試合観戦だったが、実質最終日となる3日目もなかなか濃かった。

昼からは、GSWのランチョン・ミーティングなるイベントが予定されている。午前中に、小一時間ほど今回の旅で唯一の自由時間があったので、ホテル隣のショッピングモールに行ってみた。

ショッピングモールに行くといっても、筆者はショッピングには興味がないので、目的はひとつ、現地のスニーカーショップがどんな品揃えか確認したいだけなので、大手のスニーカー、アパレルショップのフットロッカー(Foot Locker)を覗いてみた。

大手の量販店なので、スニーカーの品揃いに関しては個性があるわけではないのだが、アパレルコーナーを見てみると、明らかにGSW関連のウェアが多い……というより、少なくとも目に見える範囲では7〜8割がGSW関連の商品が並んでいた。ショップのスタッフに「レブロン関連のTシャツは売ってないの?」と尋ねたら「あー、ないね」とアッサリした返事。これは筆者の勘繰りかもしれないが、やはりGSWの地元民にとって、そこまでレブロンは宿敵として見られてるのか……(笑)? たまたまそういう時期だったのかもしれないが、LAのフットロッカーなら普通にレブロンのTシャツぐらい置いている(笑)。ナイキショップなら置いているのかもしれないが、未確認。

フットロッカーのスタッフに、GSWの取材で来た旨を伝えると、「このモールの下のフロアにGSWのグッズ・ショップがあるよ」と、ありがたすぎる情報をゲット。そちらも覗いてみた。オフィシャル・グッズがどんな感じか、オラクル・アリーナ内のショップで確認したかったのだが、時間がなくて見れなかったため、このショップがあったのはありがたかった。

アパレルはもちろんのこと人形やマグカップのような小物まで、「こんなに種類あるの!?」と驚く品揃え。GSWファンで試合観戦旅行に行かれる予定の方は、試合と共にコチラもチェック必須だ(アリーナで探すよりゆっくり見れる)。ショップを2軒見ただけで、あっという間に自由行動時間が終わってしまったので、ホテルに戻り、ビジネススタイルに着替えてイベント会場へ向かった。

宿泊先のホテルから徒歩10分弱ほどの距離のホテル、ウェスティン・セント・フランシスで催されていたのが「Holiday Hoops Luncheon」なるパーティ。どうやらサンフランシスコ商工会議所がメインで仕切っている恒例のパーティのようで、参加者はスポンサー企業や関係者が中心。600名ほどが大きな宴会場に集った。

ランチを食べながらGSWの地元でのチャリティ活動などの成果を報告したり、スポンサー企業からのスタッフが登壇してスピーチするなどの内容。後半にはGSWエグゼクティブ勢と選手たちによるディスカッション・タイムもあったので、そちらの内容を一部ご紹介しよう。

エグゼクティブ陣のディスカッションには、GSWのGMボブ・マイヤーズ氏(Bob Myers)と社長のリック・ウェルツ氏(Rick Welts)が登壇。司会を務めたのはGSWのTV中継でアナウンサーを務めるボブ・フィッツジェラルド氏(Bob Fitzgerald)だった。

LtoR:ボブ・フィッツジェラルド/リック・ウェルツ/ボブ・マイヤーズ

—ボブ、まずはチャンピオンを防衛するのはどういう気持ちか?という話題から始めたいです。今季は4年連続のファイナル出場を目指していますが、ディフェンディング・チャンプということで昨年とは違う感触があると思いますが。

ボブ・マイヤーズ(以下BM)

「スティーブ(カー)は『連覇することは難しい』といつも言っているんです。それこそスパーズはあそこまで強いチームなのに、今まで一度も連覇を果たしていないですよね。なので、様々な困難があります。スティーブは選手を楽しませるための環境作りが上手いんです。スティーブがヘッドコーチに就任したとき、彼は練習中に音楽を流すアイディアを提案してきたんです。我々の練習を見ると、一見マジメにやってないように見えると思いますよ。みんな、ハーフコートから平気でシュートを打つし、音楽も流れてるし(笑)。彼の考えを理解するのにはしばらく時間がかかりましたが、楽しみながら仕事をすることや、楽しんで仕事が出来る雰囲気を作ることの重要性を理解することが出来ました。選手やコーチにとっては退屈な日常に陥ってしまう危険性があるし、このようなカルチャーをスティーブがスタッフと共に作り上げたことで、タイトルを防衛するにあたっても、選手たちは『この道のりを楽しもう』という気持ちになっていると思います」

—GSWは、『スポーツ・ビジネス・アワード』の『スポーツ・チーム・オブ・ザ・イヤー』部門で過去3年に渡り2回も受賞しています。全てのスポーツで模範となるチームに選ばれたということです。それは、リック・ウェルツ社長がビジネス面において大きな役割を果たした結果だと思います。リックは、NBAリーグオフィスのスタッフだった時代にオールスターウィークエンドやドリームチームのコンセプトを発案したひとりなんです。リックは、『卓越した存在になるためには、如何に周囲をアジテートすればいいか?』といった部分が優れています。ビジネス部門の立場から、チームに関わる全ての部門にそういった意識を持たせるためにどのようなことをしていますか?

リック・ウェルツ(以下R)

「今の紹介は素晴らしかったですね(笑)。7年前からGSWで働くようになったんですが、当時は選手も運営側も、『負けて当たり前』のような空気だったんです。『負けても給料はもらえるし、休暇も長いし、来年また同じことをやればいい』のような。それは問題ですよね。だから、最初の数週間は、スタッフに彼らがこれまで経験したことがない未来へのヴィジョンについて話しました。そういった話に関して前向きに捉えるスタッフもいれば、否定的な人もいました。後者に関しては、他の職場を紹介するなどして、残った向上心の強い人たちと共に『世界は必ず変わる』と信じてマネージメントチームを作ってきました。前ヘッドコーチのマーク・ジャクソンもそういう人でした。彼は『勝つことが当たり前』という空気をロッカールームにもたらしました。そして、私はビジネス面から『我々にもチャンスがある』ということを示すのが仕事です。我々はオーナーたちのリーダーシップに恵まれていて、彼らは勝ちたいし、正しいやり方にこだわり、リスクを恐れない。私やボブ、他のスタッフはそういったオーナーたちのサポートの受益者です。そういったサポートを得られることで、我々も素晴らしいチームにするために動くことが出来るのです」

—ボブ、私はいつもGSWの選手たちのケミストリーにいつも感銘を受けています。どのチームも才能のある選手をドラフトやフリーエージェントなどで獲得しようとしますが、ボブは才能だけでなく、選手のケミストリーや個性、競争心についても選手を獲得する際にチェックしなければいけない立場ですよね?

BM

「今日、選手たちと話す機会がある方は、彼らにバスケットボール以外の質問をしてみて下さい(笑)。私にとっては、そういったことが出来るのがこの仕事で好きな部分なんです。バスケットボールについて考えるだけの仕事だったら、今ほど楽しめていないかもしれない。どんな仕事でも、人間性が全てを表わすことがありますし、特に我々の仕事ではそうです。我々の仕事は、人々が我々の成功するところを見れる反面、失敗も見られてしまう。それだけでなく、選手たちは毎晩のようにその失敗について説明を求められることがあるんです。だからこそ、個々のキャラクターを尊重する必要がある。我々が誇りに思うのは、例えばファイナルで負けたときに選手と話したとき、誰も他の選手を責めなかったことです。『また同じ過ちは犯さない。同じ気持ちにならないためにはもっと良い選手にならなければ』と。そういった選手の人間性は、才能と同じぐらい重要です。才能に恵まれた選手、コーチ、運営スタッフにキャラクターを与えることで、継続した成功を生むことが出来るのです」

LtoR:オムリ・カスピ/ケビン・デュラント

重役たちのトークに続き、今度は選手たちが登場!登壇したのはケビン・デュラント、クレイ・トンプソン、オムリ・カスピ、ケヴォン・ルーニー、パトリック・マッカウ、ザザ・パチュリアの6人。

—ニューヨーク・タイムズに掲載された、GSW選手のコート外についての記事にも書かれていましたが、ザザはNBAの歴史上、試合後に2台のドライヤーを必要とする唯一の選手とのことです。この髪型を作るためにバックアップが必要なのです。GSWに加入するにあたり、ドライヤー2台という条件は契約書に含まれていたのですか?

ザザ・パチュリア(ZP)

「リストの一番上だったね。その前に、俺以外のチームメイトの今日の格好について謝罪します(笑)。まあ、みんな自分の身体のためにストレッチしたり筋トレをするでしょ?ドライヤーは俺にとってそれと同じさ(笑)」

—歳上の選手が歳下の指導者になるというのは、どのチームでも重要なことだと思いますが、私はデイビッド・ウェストが怖いです。37歳なのに体脂肪率は6%だし、今まで見てきた中で最も力強い人間かもしれない。ケヴォン、デイビッドが何かを指導するとき、どれぐらいの頻度で彼の話に反論したり無視したりしますか?

ケヴォン・ルーニー(以下KL)

「デイビッドは無視するべき相手ではないね(笑)。素晴らしいベテランだし、たくさんのことを教えてもらうし、俺からしつこく質問することも多いよ。試合中は、俺がハードにファウルしても彼が代わりにケンカしてくれるから、彼は素晴らしいチームメイトさ」

—クレイは、もしかしたら世界最高のシューターかもしれません。ケビンが加入したとき、ふたりは練習でシュート対決をしてましたし、ステフともシュート対決をしたことがありますよね?一体、誰が世界でベストなシューターなんでしょうか?

クレイ・トンプソン(以下KT)

「最初にザザに言いたいんだけど、今日はオフだから俺はスウェット以外は着ないぞ。まあ、いいんだけどね(笑)。分からないな、誰が試合の前日に一番よく眠れたかによるかもね。ステフは小さい子供がふたりいるから、最近はあまりよく寝れてないかもね。ケビンが一番のときもあれば、オムリ……オムリかもしれないけど、3ポイントはよくてもミッドレンジを決められないから、それはやめてほしいね(笑)」

—ケビン、オムリについてのエピソードを話して下さい。シーズン序盤にロサンゼルス遠征があったんですけど、GSWの遠征先ではビートルズとマイケル・ジャクソンが同時に到着したかのような状況になるんですよ。ホテルの外には何百人もファンが待ち構えていて、サインや写真を求めてくるんですけど、先日のロスは、ケビンやステフがバスから降りても誰も騒がなかったのに、ホテルでユダヤ系の人たちが結婚式をやっていて、そこから物凄い人たちがオムリに突入していったんです(笑)。そのときどう思ったか教えて下さい(カスピは、NBA唯一のイスラエル人選手)。

ケビン・デュラント(以下KD)

「ああ、11年リーグにいるし、俺、まあまあ良い感じでプレーしてきたと思うんだよね。いつもは、バスに降りるときは『俺が輝く時間が来た』ってつもりで降りるんだけど、あのときは俺のエゴが傷ついて不愉快だったね。あの時点ではまだ君のことが嫌いだったな。君は愛するチームメイトで兄弟なんだから、受け入れないといけないんだけど、慣れるまでに時間がかかったね。でも、兄弟よ、大丈夫さ(笑)」

—オムリは今季、フリーエージェントとしてGSWに加入することを選択しましたね。このチームを選んだ理由と、このチームの一員になることの意味について教えて下さい。

オムリ・カスピ(OC)

「GSWは、いろんな面において最先端なんだ。このチームメイトがいることも、俺が加入した一番の理由だよね。彼らと一緒にプレーできる立場になりたかったし、俺の将来を決める上でも彼らが助けになってくれる。ひとつ理解できないのは、このチームは史上最も競争心の強いグループな筈なのに、スティーブが練習に来て『今日は休みだ』って言った瞬間、みんなフロア上にダイブしだすんだ(笑)。どんな瞬間も楽しめているし、彼らがいることで俺の仕事もかなり楽にさせてくれる」

ランチョンミーティングからホテルに戻り、今回のツアー最後の観光先であるチャイナタウンへ。サンフランシスコは中国系移民が多く、源流を遡ると19世紀のゴールド・ラッシュ時代にアメリカン・ドリームを夢見て渡ってきた人たちだ。チャイナタウンは観光地として有名だが、今でも多くの中国系移民が決して広くはないエリアに密集して暮らしている、生活感漂う地域でもある。

ツアー・ガイドに案内されながら、チャイナタウンの歴史やお寺などを巡る。中華料理でお馴染みのフォーチュンクッキー工場も行ったが、元々フォーチュンクッキーは日本人が作ったもの、というトリビアを学んだ(笑)。

興味深かったのは、そのフォーチュンクッキー工場に描かれていたこの壁画。道を歩いていても、GSWのキャップやシャツを着ている人が本当に多いし、この壁画も象徴しているように、GSWはサンフランシスコの街に本当に根付いている。サンフランシスコやベイエリアと呼ばれる周辺地域は、GSW以外にも様々なメジャースポーツチームが存在するが、明らかにGSWの存在感が突出している。もちろん、強いチームだからというのもあるだろうが、これはGSWが日頃から如何にチャリティなどの活動を通してコミュニティに貢献しているかの証だろう。

日本でもB.LEAGUEが誕生し、今後、各地のチームが文字通り「地元密着型」なチーム・カルチャーを築き上げる上で、GSWのようなチームが地元とどのように関わっているか、というのは大いに参考になる先例だと思う。GSWに限らずどのチームのファンに言えることだが、こういった「カルチャー」はTVで試合を観ているだけでは理解しきれないものがあるので、是非とも現地で試合観戦をしてみて頂きたい。試合を生で観る以上の感慨を得ることが出来るはずだ。

ツアー全日程はこれで終了!翌日の朝に再び「ユナイテッド・ポラリス」で日本に帰国しました。改めて、貴重な機会を頂いたFLY Magazineと関係者各位に感謝!快適なフライトと現NBA王者の「今」を肌で感じることが出来た、忘れられない体験となりました。

伊藤雄介

音楽ライター/ヒップホップ・ウェブサイト:Amebreak 編集長。2001年からライター活動を開始し、後に日本初のヒップホップ専門誌:BLASTにて編集長を務める。幼少期(1989年~1994年)をアメリカ・ロサンゼルスで過ごし、ほぼ同時期にヒップホップとNBAのファンとなる。現在の推しプレイヤーはクリス・ポールで、90年代はハキーム・オラジュワン。

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