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  • 2018.02.08

ユナイテッド航空で行く!サンフランシスコツアー Vol.1

12月上旬の某日、FLY Magazine編集長から唐突にLINEメッセージが着信。内容は「ゴールデンステイト・ウォリアーズ(以下GSW)の試合観戦ができるメディア・ツアーに参加しないか?」というもの……。しかも、詳しく話を聞くと、フライトはビジネスクラスで、試合観戦もVIPスイート席……?

筆者は、FLY Magazineとは前身のABOVE時代に何度か原稿を書かせて頂いていますが、普段はヒップホップを専門とした音楽ライターとして活動しています。バスケットボールは音楽と同じぐらい筆者にとっては大きな存在で、NBAマニアだと自負してはいますが、バスケやスポーツを専門としたライターでありません。なので、筆者としてはかなり信じがたい依頼内容だったため一瞬戸惑いましたが、NBA狂にとってはこんなに魅力的なオファーはないということでスケジュールを確保し、思わぬクリスマスプレゼントをありがたく頂戴することにしました……仕事だけど(笑)。

3泊5日というタイト目な日程ではありましたが、試合観戦はもちろんのこと、筆者にとっては初めてのサンフランシスコ訪問を楽しませて頂きました。そのツアーの一部始終を2回に分けてレポートさせて頂きます。

世界最大級の航空会社として知られるユナイテッド航空は、2016年からGSWのオフィシャルエアラインとして提携を結んでおり、現在工事中でGSWの新たな本拠地として予定されているチェイスセンター(Chase Center)の共同設立スポンサーでもあるという。今回のメディアツアーは、そのユナイテッド航空とGSWが共催するものだ。

そういった絡みもあり、成田ーサンフランシスコ路線で2017年から新型機が導入が開始されたユナイテッド航空の長距離国際線向けビジネスクラス「ユナイテッド・ポラリス」にも乗せて頂けるということで、実に快適なフライトを楽しませて頂いた。

「ユナイテッド・ポラリス」のシート

新型機:ボーイング777-300ERに導入された「ユナイテッド・ポラリス」は、機上での最高の睡眠を追求した、まったく新しいコンセプトのビジネスクラスサービスだ。プライバシーが確保された、半個室的な客席に搭載されたシートは180度水平にリクライニングし、最大198cmの長さのベッド・スペースとなる。正直、筆者は通常のシートだとあまり寝ることが出来ないタイプなのだが、このシートは快適すぎる……。これまでのフライトとは別次元の空間だった。

「ユナイテッド・ポラリス」のフラットベッドシート

アメリカの高級デパート「サックス・フィフス・アベニュー」の協力を得て開発されたという寝具類も肌触りがよく、まったくストレスを感じることなくフライトを過ごすことが出来た。12時間以上のフライトではコットン100%仕様で持ち帰り可能なオリジナルパジャマもリクエストできるという。

ロングフライトで一番の楽しみと言えばやはり機内食となるが、こちらも「ユナイテッド・ポラリス」導入に伴い一新されたという。ユナイテッド航空のマスターソムリエが選定したワインを専用グラスセットで3種同時にテイスティングできる「ワイン・フライト」も楽しめる。、筆者は白ワイン3種類をテイスティング。残念ながら、雄弁にワインを評するボキャブラリーを持ち合わせていないが、どれも美味かった……(笑)。

また、シカゴ、ロンドンのシェフと共同開発したメニューで提供される食事も素晴らしく、筆者がオーダーしたメイン・ディッシュ「牛ほほ肉のビール煮」は口の中でホロホロにほぐれるほど柔らかく、これもまた美味。日本人的な喩えで書くと、正直、そこらの結婚式の披露宴で出るフルコース料理より遥かに美味い(笑)。

メイン・ディッシュの時点で相当なヴォリュームだったが、上の写真のようなプチデザートと特製アイスクリームサンデー(カラメル、ストロベリーなど数種類のソースや各種好きなトッピングを選べる)まで全て堪能させて頂き、腹パン……。

アメリカ西海岸に行く際はロサンゼルス国際空港経由が多かった筆者。ロスまでは往路10時間半ほどのフライトだが、成田からサンフランシスコまでは9時間半程度。「ユナイテッド・ポラリス」の快適さも加わり、体感上はあっという間のフライト。仕事、食事、仮眠をしていたら映画を観る間もなく現地に着いてしまった。

年間5,300万人もの旅行者が利用する大型空港であるサンフランシスコ国際空港は、アメリカ西海岸の主要空港のひとつだ。ユナイテッド航空は、他のどの航空会社よりも多くのフライトをサンフランシスコ国際空港から運航しているため、アジア各国と北米、南米を繋ぐ重要なゲートウェイとなっているので、乗り継ぎで米国、カナダ、中南米の各都市へ渡航する観光客にとっても便利な空港だ。

また、同空港には国際線ビジネスクラスの搭乗客向けに無料のアライバルラウンジも完備。正午までに到着した乗客はラウンジでシャワーを浴びたり、朝食を楽しむことも出来る。また、「ユナイテッド・ポラリス」の専用ラウンジも2018年中にはオープン予定だという。

12月中旬のホリデー・シーズンだったため、相当な混雑を覚悟していたのだが、入国手続きは驚くほどスムーズで、10分少々で完了。気のせいか、空港の職員もロサンゼルスと比べるとフレンドリーな印象……。土地柄なのだろうか(笑)。アライバルラウンジで休憩している間に迎えの車が到着し、ホテルのあるサンフランシスコに向かった。

今回の宿泊先はサンフランシスコ市内の中心部にあるマリオット・マーキス。ホテルに案内され、夕方からはユナイテッド航空現地スタッフや、筆者と同じく世界各国からやって来たジャーナリストたちとの会食。日本から来た筆者以外のジャーナリストは、グアム、北京、香港、オーストラリア、ドイツ、イスラエルから来た幅広い顔ぶれ。TV局の取材で来た記者や新聞記者、スポーツ全般を扱うジャーナリストまで、それぞれの職種や世代も幅広かった。バスケ雑誌から派遣されたライターは筆者だけだったようで、FLY Magazineの名前を伝えたら旅行雑誌と勘違いする人も(笑)。そういった顔ぶれだったため、バスケの話だけでなく、アメリカの政治状況や国際問題にまで話題が及ぶ、知的な会食となった。

2日目はいよいよ本番。ついにGSWの試合が観れる!……が、試合は夜からなので、それまでは観光タイム。現地スタッフの案内でサンフランシスコの主要観光スポットを朝から巡った。

サンフランシスコ市内の名物である路面電車に乗り、市内中心部から北部の海沿いに移動。こちらにはフィッシャーマンズ・ワーフ(Fisherman’s Wharf)という観光地エリアがある。 “ワーフ”は“波止場”という意味。かつてはエビやカニなどを水揚げする漁港だった場所だが、現在は観光地としてショッピング・センターやレストラン、博物館などの観光スポットが密集している。

ひと通りエリアを巡り、昼食を摂った後は、ワーフ内の港から出るフェリーに乗り、悪名高きアルカトラズ島へ。脱獄不可能と言われ、数多くのハリウッド映画の舞台にもなってきた刑務所の跡地は、現在は観光地となっている。

専用の端末とヘッドホンから流れる音声ガイド(日本語ガイドも有り)に導かれるまま巡るアルカトラズ刑務所内のツアーは、予想よりも面白かった(笑)。スゲェ歩くから疲れるけど……。

アルカトラズ観光後はホテルに戻り、いよいよGSWの試合を観にGSWのホームコート、オラクル・アリーナ(Oracle Arena)へ! オラクル・アリーナは、サンフランシスコ市内からは「サンフランシスコ・オークランド・ベイ・ブリッジ」を渡った先のオークランドにある。通常は30分ほどで着きそうな距離だが、試合開始直前の渋滞がエグすぎて1時間以上かかって到着……。試合開始直前の到着になってしまったため、アリーナ内を散策する余裕がなかったのが残念。

オラクル・アリーナの入場口

オラクル・アリーナは、通称“ロアクル”アリーナとも呼ばれている。ロアー(roar)とは「吠える/轟音を発する」という意味だが、NBA全30チームの中でも特に熱狂的と呼ばれるGSWファンたちの歓声の大きさから、この別称が定着した(故に、アウェイ・チームにとっては非常にやりにくいアリーナとしても有名)。観客が熱狂的なアリーナと言えばマディソン・スクエア・ガーデン(ニューヨーク・ニックス)やTDガーデン(ボストン・セルティックス)などが有名だが、オラクル・アリーナはここ数年で超強豪にまで成長したGSWのホーム・コートなため、新たなバスケのメッカのひとつにその名前を加えてもいいぐらいの名物アリーナと言えるだろう。

前述の通り、近々本拠地をチェイス・センターに移転予定ということもあり、オラクル・アリーナで試合を観ることは一生ないかも……と、思っていただけに、テンションは否応なしに上がる。筆者は生涯「レイカー・ネイション」の一員だが(レイカーズの熱狂的なファンのことをこう呼ぶ)、そんなことは取り敢えずどうでもいい……と、頭の中で言い聞かせながら入場(笑)。

今回、観戦したのは12月14日に開催された対ダラス・マーヴェリックス(以下DAL)戦。昨年NBAチャンプに輝いたGSWは今年も優勝候補。一方のDALは間もなく引退を迎えそうなダーク・ノビツキー時代からの転換を迫られているため再建中で、最下位周辺をウロウロしているチーム。「マーキー・マッチアップ(注目の組み合わせ)」とは言えないが、本試合の時点でGSWはウェスタン・カンファレンス2位(首位のヒューストン・ロケッツと1ゲーム差)。GSWにとってはこういう試合こそ落としたくないところだろう。一方のDALも格下とは言え、誇り高き名将リック・カーライルが率いるチームだ。強豪同士の組み合わせより、意外とこういうマッチアップで波乱が起きやすいというのは、NBAファンの方ならご存知だろう。

更に、この日のGSWはスーパースターのステフィン・カリー、ドレイモンド・グリーンに加え、ロールプレーヤーのザザ・パチュリア、ニック・ヤングもケガのため欠場という不安定要素だらけ……DALもレブロン・ジェームズが推す注目ルーキー、デニス・スミスJr.が欠場……よりによって観に行った試合で(笑)! 「まあ、せっかく観に来たんだから圧勝されるよりは接戦を観たいよね」というグアムの記者の一言で「そういう考え方もアリか」と気を持ち直したが、フル・ラインナップのGSWを観られなかったのは残念……。

入場後に通されたのは、「メザニーン・スイート(Mezzanine Suite)」と呼ばれる部屋(“メザニーン”は中二階という意味)。20人弱収容可能な個室で、シートに加えて部屋専用のトイレも完備されていて、軽食や飲み物も供される。ちなみに、公式サイトによると、このスイートの値段は1万ドル〜3万ドル代のようなので、日本円にすると100万円〜300万円ぐらい、か……(試合や時期によって価格は変動する)。価格からも明らかな通り、一般の観客が滅多に使える部屋ではないが、企業や団体客が接待目的などで押さえるケースが多そうだ。日本からの観光客も、例えば社員旅行などの団体なら敢えてこのスイートを押さえるのもアリかと。

Copyright 2017 NBAE (Photo by Noah Graham/NBAE via Getty Images)

本ゲームの一試合前のゲームで強豪:サンアントニオ・スパーズにも勝利していたDALは、現状はプレーオフ・チームとは言い難いが、GSWにとっては決して侮れない相手だ。

実際、この試合でも前半の大部分はDALがリードしていた。元GSWで2015年の優勝チームの一員であり、現在はDALのスモール・フォワードであるハリソン・バーンズが11得点でDALを牽引。ノビツキーも難しいシュートを度々決めて、前半の調子は良かった。一方のGSWは、やはり要のプレーメーカーであるカリーとグリーンの不在が影響してか、序盤はいつもよりもシンプルなピック・プレーが多く、いつものようなテンポ感のあるボール・ムーヴメントが見られない。しかし、ケビン・デュラントとクレイ・トンプソンの効率性高いショット・メイキング能力は健在。結局、同点でハーフタイムを迎える。

だが、近年のGSWの試合をよくチェックしている方々はご存知だろう。GSWは、とにかく3Qの巻き返しが凄い(笑)。今季も、前半の時点で10点以上ビハインドの状態から捲くるのを何回観たことか……。3Q序盤から徐々にGSWのペースが早くなり、元来の強みであるトランジション・オフェンスの数々でDALを引き離していく。このリズムが戻ってきてしまうと、GSWより遥かにペースが遅いDALにとっては致命的だ。↑のグラフを見て頂ければ一目瞭然。3Q中盤以降で一気に試合展開が変わった。

オラクル・アリーナが最も“ロアクル”化したプレーがコチラ↑。この試合ではノーミスで5本の3Pシュートを決めてノッていたトンプソンを警戒したDALのディフェンス陣のスキを突いた、完璧なエクセキューション……。スタメンを3名欠いても、ウォリアーズのシステムは崩れない。

結局、4クォーターを終えてKDは36点、11リバウンド、7アシスト、2ブロックでFG%は65.2%という超人的なスタッツをサラリと記録し、トンプソンも55.6%という高いFG%で25得点。112対97でGSWが勝利した。

4Q中盤になると、GSWの試合ではあまりにもお約束な圧勝ムードが漂い始め、筆者も半分“無”の状態で試合を観ていたのだが、そんなタイミングで部屋の後部からどよめきが。振り向いてみると……。

……え?マジ?……ラリー・オブライアント・トロフィーがこんな近くに……!正直、今回のツアーで最も興奮したのはこの瞬間だった(笑)。まさか、生きている間にこのトロフィーを生で見られる日が来るなんて……(涙)。他のジャーナリストたちとキャッキャしながらトロフィーとの写真撮影を楽しんだ(笑)。GSWの粋な計らいに感謝!

試合のレポはこんな感じだが、試合中にGSWのマーケティング部門チーフであるチップ・バウアーズ氏がスイートに来てくれ、いくつかコメントをもらうことが出来たので、最後にそちらを紹介したい。

チップ・バウアーズと楽天の三木谷会長

—GSWは楽天とパートナーシップを結んだことにより、今季から楽天のロゴがジャージーにプリントされていますよね。日本では2020年にオリンピック開催を控え、B.LEAGUEもスタートしたことを契機に、今後、日本のバスケットボール・カルチャーが大きく変わる可能性があります。そういった日本の事情も楽天のような日本企業とパートナーシップを築く上で大きかった要因でしょうか?

「今回のパートナーシップに関しては、楽天のチェアマンである三木谷氏の貢献が大きいですね。彼の方から我々に積極的に働きかけてくれたことで実現したんです。彼が北米における楽天ブランド構築に関する戦略も説明してくれました。Eコマースはもちろんのこと、Viberや電子書籍、楽天Koboのようなデジタル・メディアに関する話まで、楽天のことについて詳しく知ったのは彼が説明してくれたからなんです。もちろん、楽天とFCバルセロナとのパートナーシップや、その強固な関係性については知っていました。三木谷氏と楽天のことを知るにつれて、日本におけるバスケットボールに関する成長機会についても知ることが出来ましたね。三木谷氏と対話を重ねることによって、彼からは日本においてバスケットボールを更にメジャーな存在にさせようという情熱を感じました。かつては毎年のようにNBAの試合を日本で開催していましたけど、最後に行なわれたのは10数年前……、私がシアトル・スーパーソニックスのスタッフ時代にソニックスとロサンゼルス・クリッパーズが対戦したのが最後だったと記憶しています。今回の提携によって、東南アジアにおけるバスケットボールの成長と共に、東南アジアにおけるGSWのブランド力を高める大きなチャンスになると思っています。GSWは既に中国やフィリピンでは大きなファン・ベースがありますが、そこに加えて日本でもファン・ベースを拡大する上で、楽天は理想的なパートナー・ブランドだと思っています」

—日本における今後のGSWのマーケティング戦略についてはどう考えていますか?

「インターナショナルなブランド・マーケティングに関しては、NBAが定めたルールや規則があるため、出来ることもあれば出来ないこともあるんです。幸いなことに、楽天は既にNBAともパートナーシップを結んでいるわけですから、そういったパートナーシップを通して共同で出来ることを模索しています。楽天は『楽天TV』を通して試合をストリーミングする権利を持っていますし、当然それは大きな力になるでしょうね。日本の人口は1.2億人ほどいますが、その内の1億人近い人たちが楽天ユーザーだと言われています。彼らが既に持っている日本のカルチャーへの強い『足掛かり』は、我々にとっても大きなベネフィットになると考えています」

伊藤雄介

音楽ライター/ヒップホップ・ウェブサイト:Amebreak 編集長。2001年からライター活動を開始し、後に日本初のヒップホップ専門誌:BLASTにて編集長を務める。幼少期(1989年~1994年)をアメリカ・ロサンゼルスで過ごし、ほぼ同時期にヒップホップとNBAのファンとなる。現在の推しプレイヤーはクリス・ポールで、90年代はハキーム・オラジュワン。

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