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  • 2023.01.07

育てながら勝つ――TOKYO DIMEが見せる新たな姿

昨春、TOKYO DIMEは大幅な若返りを図った。主力選手の移籍や現役引退に伴い、ポテンシャルはあるが、3x3経験の浅い20代の若手・中堅選手を迎えて始動。「経験」がモノを言う3x3において苦戦を招くようにも思えたが、彼らは国内外で十分に爪痕を残した。もちろん、まだ課題はある。しかし、ベテランと新戦力が融合し“育てながら勝つ”姿は、これまでに無いTOKYO DIMEだ。

大幅な若返りも、世界大会で8強入り
 2014年の立ち上げ以来、3x3の競技シーンで第一線を走り続けてきたTOKYO DIME。しかし、昨春大きな変化が訪れた。

 創設メンバーで、205cmの岩下達郎が現役を引退し、2019年からチームをけん引した落合知也が移籍のため退団。鈴木慶太(#7/41歳)、小松昌弘(#70/38歳)、藤髙宗一郎(#3/31歳)という屋台骨を残しつつ、20代前半から中盤の選手たちを迎えて、新たなスタートを切った。「経験」がモノを言う3x3において、チームの大幅な若返りが苦戦を招くようにも思えたが、彼らは国内外で十分に爪痕を残している。

 プロリーグの「3x3.EXE PREMIER」では、CENTRAL TOKYOカンファレンスでチーム史上歴代最多6度のラウンド優勝を飾り、シーズンチャンピオン決定戦となるPLAYOFFSで3位に(2022年9月)。国内ツアー大会「3x3 JAPAN TOUR」のFINAL(2022年11月)でも4年連続のベスト4入りを遂げた。さらに、世界へ目を向けると、クラブ世界No.1を決めるツアー大会の一角「FIBA 3x3 Sacheon Challenger」(2022年10月)では、ベスト8に食い込んだ。
 鈴木、小松、藤髙がチームをリードし、西畝優(#5/27歳)、伊森響一郎(#44/24歳)、神山瞬汰(#1/24歳)、東野恒紀(#2/23歳)、黒田亘(#13/23歳)ら、若手から中堅がシーズンを追うごとに成長。その様子は“育てながら勝つ”という、新しいTOKYO DIMEを印象づけてくれた。

ベテランが明かす「フォローを惜しまずやろう」
 そんな印象を、ベテランたちもまた感じている。もちろん、結果にもチームの完成度にも満足はしていないものの、手ごたえはポジティブだった。小松は「僕や宗一郎など試合に出られないメンバーがいても、来た選手がそれぞれ持ち味を出してくれました。それが良い結果につながったと思いますし、今までにないDIMEだと思います」とコメント。鈴木も「チームの完成度は全然ですが、それでも結果に結び付けられている部分は、収穫だと思います。若手の頑張り含めて、新しいことをやりながら今みんなで上がっている感覚が少しずつある」と話した。

 とりわけ、「FIBA 3x3 Sacheon Challenger」のベスト8入りは、チームの成長を図る上で価値ある結果になった。TOKYO DIMEはメンバーを入れ替えながら昨年4月から6月にかけて3度の国際大会に出場したが、いずれも苦杯を舐めていた。フィリピンで開催された「Asia Pacific Super Quest 2022」ではアジア勢のチームに3戦全敗し、宇都宮で開催された「FIBA 3x3 Utsunomiya opener」では予備予選を突破するも、本選予選でヨーロッパ勢に大敗。タイで行われた「3x3 Basketball Thai Super League 2022」では準決勝で、落合らを擁するSAITAMA ALPHASに敗れていた。

 それだけに、Sacheon(サチョン)Challengerも「海外のチームと、どれだけ戦えるかは未知数」(小松)だったという。しかし、鈴木、小松、西畝、伊森の4人は、エジプトのCairo(カイロ)を破るなど予備予選を2連勝で突破し、本選予選でもベルギーのBrussels(ブリュッセル)を延長戦の末に下すなど1勝1敗で、2日目の決勝トーナメントに進出。準々決勝ではラトビアのRIGA(リガ)に完敗したが、大会を通して、Challenger初参戦の若手・中堅が持ち味を発揮した。西畝はCario戦で4本の2Pシュートを含む10点をあげるなど、4戦でチーム2位の18得点。伊森はCario戦で決勝点を含む10点を決め、同チーム1位の27得点をマークした。鈴木は「(予備予選から本選予選まで)4試合を戦い抜いて、2日目へ初めて行けました。チームの自信にもなったし、伊森や(西畝)優の若手が一番自信がついたと思う」と、語った。

 伊森と西畝はBリーグなどのプロキャリアも無ければ、鈴木や小松のように3x3日本代表に選ばれた実績も無い。それでも、チームとして戦う中で、2人は自らの強みをコートで存分に発揮した。“空中音痴”の異名を持つ西畝で言えば、滞空時間の長いジャンプ力で仕掛けるドライブが代名詞であり、長距離砲も炸裂。伊森は、これまでスコアリング能力に波がある印象だったが、ビックショットを決められる勝負強さが備わっていた。鈴木は「みんなから“全然そんなことないだろう”と言われるかもしれない(笑)」と前置きして、新たな選手たちへ、どう接しているのか明かした。

「彼らに思い切ってプレーをしてもらわない限り、絶対にチームとして上手くいかないので、そのポテンシャルをどう生かしてあげるか。そのためのフォローを惜しまずやろうとしています。スペースを作ったり、ボールを預けたり、スクリーンをかけたり、リバウンドに徹したり。チームのバランスをとることも、今シーズンは増えたと思います」

「すごいありがたい」……西畝、黒田の実感
 一方で、当の選手たちは成長をどう感じているのだろうか。2人に話を聞いた。ひとりは、かつて兄弟チームのOSAKA DIMEに所属し、2021年秋よりTOKYO DIMEの4人目として合流した西畝だ。正式加入は今シーズンが初めて。その言葉には充実感が詰まっていた。

「今までは正直言って、自分の能力任せでした。1on1主体でやってきましたけど、TOKYO DIMEに来てチームプレーを意識して多くのセットプレーを覚える中で、しっかりと周りを見て、頭を使ったプレーで点を取ることができるようになりました。TOKYO DIMEのおかげで、この1年間の成長を感じていますし、小松さん、K-TAさんのアドバイスは僕にとってはすごいありがたい。この2人なくして、僕の成長は無かったと思います」

 さらに西畝曰く、昔から大阪で一緒にバスケをする柏尾耕資(3x3ではNINJA AIRS所属)からも、自身の成長を褒められたという。2人はSOMECITY OSAKAのTABASCOでチームメイトであり、かつては3x3の大会に何度も出場。「ディフェンスやルーズボール、リバウンドを頑張るキャラでもなかった」自分が、球際で頑張るキャラになったと柏尾の目に写っているそうだ。「それをやったら、お前は強いんやし、お前の良さはそこからオフェンスにも良さが出てくるから、その成長もDIMEのおかげやな」と、彼から言われたという。西畝はこれまで、そのオフェンスに注目が集まりがちだったが、DIMEで新たな一面を開花させたと言えるだろう。

 もうひとりは、昨春大学を卒業したルーキーの黒田である。彼は、「本当に(オーナーの)岡田さんはじめ、TOKYO DIMEの皆さんには感謝しています」と語った。一時は「もうバスケをやめる選択」もあった中、もう一度バスケをやりはじめるきっかけになったチームへ、成長以上に、プレーできるありがたみを感じている。

 黒田は、日本大学時代にバスケ部でスタメンを務めるほどの実力があり、5人制のプロを目指していた。しかし、3年生の終わりに足の手術をした影響により、最終学年では試合でプレーすることなく卒業。当然、プロからの誘いも無く、バスケキャリアを終えることも考えていた。

 ところが、オーナーである岡田優介氏と出会い、誘われたトライアウトを突破してチームへ。競技経験ゼロでDIMEに入ったが、身長187cmでアウトサイドもインサイドも器用にプレーし、コートの立ち姿も落ち着いた印象がただよう。相手からすれば、嫌な相手だろう。U-23特別選手枠として初出場した3x3.EXE PREMIERのラウンド5ではチームの優勝に貢献し、JAPAN TOUR FINALでも4強進出へ奮闘するなど、ルーキーながら存在感が大きくなっている。

 そんな黒田について、先輩・小松は成長を感じている。当初、岡田氏と「(ケガ明けだから)すぐには活躍できないかもしれないけど、半年たったら(戦力になる)。大学でスタートまでやっていたし、ポテンシャルはあるよね」と話していたそうだ。とりわけ、黒田のプラスになったのが、HACHINOHE DIMEとTOKYO DIMEによる合同練習であると、小松は指摘。「Bリーグのオフ期間には、練習でベンズ(レジナルド・ディクソン)や宗一郎など、良い選手がそろっている中で、揉まれながらバスケをやれた経験が非常によかった」と語った。

 ただ、本人曰く、プレーの感覚としては「割と戻っては来ている」ものの、学生時代の手術前を100とすると、「まだ、そこまでは行けていない」そうだ。チームでもメインで出ている立場ではない状況を踏まえて、目標は「自分が出てる時間に長所を表現し、DIMEの勝利に貢献する」ことだと言う。小松や鈴木をはじめ、チームメイトのアドバイスを力に、DIMEで欠かせない選手をより一層、黒田は目指す。

DIMEの強さは“作り上げる強み”
 ベテランと若手・中堅が融合して、新たな土台を築きつつあるTOKYO DIME。しかし、国内で主要タイトルの優勝は今年度まだ無し。2023シーズンの「FIBA 3x3 Challenger」につながる「3x3 SuperCircuit 2023」では千葉ラウンド、埼玉ラウンドでいずれも2位。決勝で敗れている。

 鈴木が「もっともっと(チームで3x3を)やり込まないといけない」と言えば、小松もSacheon Challengerでの経験を踏まえて「世界トップレベルにまだまだ勝てない状況があるので、課題は多いです」と話す。「今いる選手たちが、どれだけ底上げできるか」。小松は自戒を込めて、これがチームに求められていると語った。そして、TOKYO DIMEのこれからを、こう結んだ。

「選手たちが、それぞれの強み弱みをしっかり補完していくのが大事です。例えば、宗一郎がいれば良いかもしれないですけど、相手が強くなれば強くなるほど、個で戦えないときにどうするのか。Sacheonが良い例で、全員で戦って9本の2Pを決めて勝つCairoとの試合など、チームで勝ち切る経験もできました。RIGAには、ディフェンスが崩壊してほとんど何もできなかったんですけど、そういう経験も積み上げていかないと強みも発揮できません。だから、TOKYO DIMEの強さは“作り上げる強み”でもあると思います。まだまだですけどね」

 「作り上げる強み」は辛抱強さや痛みが伴うが、彼らが第一線で結果を残してきた秘訣でもある。小松と鈴木が直近で最後にタイトルを獲得した、2020シーズンの3x3 JAPAN TOUR FINALの制覇は、岩下の長所である高さを最大限に活かす戦いを模索しながら試合を重ね、3人で戦い抜く経験も糧に、最後に花を咲かせた姿が思い出される。新たなTOKYO DIMEがどんなチームに仕上がっていくのか。きっとコートの上で分かるはずだ。

【大会公式SNS】
・Instagram  

@3x3_super_circuit



【今後の大会スケジュール】
●予選ラウンド
・1月8日(日) 宮崎ラウンド@綾町体育館 ★
・1月8日(日) 東京ラウンド@渋谷区ひがし健康プラザ ★
・1月15日(日) 京都ラウンド@BACKDOOR BASE(京都市)
・1月15日(日) 神奈川ラウンド@高津スポーツセンター(川崎市)
・1月21日(土) 茨城ラウンド@つくばカピオ ★

●ワイルドカード(※)
・2月4日(土) 男子ワイルドカード@つくばカピオ
・2月4日(土) 女子ワイルドカード@千葉市内

●FINAL
・2月5日(日) @TIPSTAR DOME CHIBA(千葉市)

 ★は女子カテゴリーも同時開催
 ※ワイルドカードのエントリー条件は、予選ラウンドのいずれかに出場していること。

TEXT by Hiroyuki Ohashi



PHOTO by Kasim Ericson

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