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  • 2020.09.28

JBAが取り組む2020シーズンの3×3、Withコロナと将来を見据えて

3×3 JAPAN TOURの開幕によって、日本バスケットボール協会(JBA)が取り組む2020シーズンの3×3事業が本格的に動きだした。Withコロナの対応で悩みもあったが、彼らは選手たちにとって待望の試合環境を整備。女子選手のExtremeカテゴリー新設の背景や、今後の展望について、同協会の石井昭大氏に話を訊いた。

2020シーズンの主要大会がはじまった
JBAが主催する3×3の年間主要大会は3つある。全国ツアー形式の『3×3 JAPAN TOUR』、誰もに開かれ予選を勝ち上がれば日本一を狙える『3×3日本選手権』、その18歳以下を対象とした『3×3 U18日本選手権』である。今年度は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、例年4月開幕のJAPAN TOURが延期になっていたが、9月19日にExtreme Limitedカテゴリーの開幕にこぎつけることができた。JBA競技運営3×3担当の石井昭大氏も「ようやく今日(9/19)、2020シーズンを開くことができました。ホッとしています」と、マスク越しに安堵の表情を浮かべた。

Withコロナで環境を整備する
やっとの思いではじまったシーズンであるが、コロナ禍の影響はいまなお続く。安心かつ安全な競技環境を整備するため、そのリスクをどう抑えていくのか。石井氏も頭を悩ませた。「一番の選択肢としてPCR検査を考えました。ですがツアー形式であり、選手はバスケ以外に本業を持っている方もいます。なかなか大会前に集合していただいて、検査を受診いただくことが難しかった。ご自宅に検査キットを送ることも検討しましたが、物理的な問題によってできませんでした」。たしかに3×3は選手の所属や背景が様々であり、ツアーの参加チームも大会ごとに入れ替わることがある。Bリーグが実施するような一括したPCR検査を実施することは、現実的でないことも頷けた。
そのため、同氏によるとJBAが設定するコロナ対策のガイドラインに基づいて、次のような策を講じているという。「エントリーした大会の開催2週間前から検温をしていただいてます。これは選手だけでなく、運営スタッフやレフリーも対象です。発熱の有無や日頃の健康チェックをして、我々にメールで報告する。こういった共通のレギュレーションで取り組んだことが、今日に至っています」。加えて会場全体を見渡すと、選手控えスペースは蜜にならないように十分な間隔が前後に設けられ、移動する際の導線はすべて一方通行だ。要所には手をかざせば自動で射出されるアルコールハンドスプレーが設置され、これはコート上で控え選手が座るイスの横にも置かれている。換気のため大型の扇風機も、ゲームに支障がないように稼働もしていた。Withコロナにおける大会運営のあり方を実践しているものだった。

女子のExtremeカテゴリーを作ったワケ
このようなにイレギュラーな運営を行っている一方で、主要大会はそれぞれ例年通り実施する。先を見据えて決めたこともあった。とりわけ進行中のJAPAN TOURでは今シーズンより女子のExtremeカテゴリーを新設している。石井氏はその背景を「今年はコロナ禍で開催は中止になっていますが」と前置きした上で、「女子のプロサーキットをFIBA(国際バスケットボール連盟)が実施する予定になっていたと聞いています」と明かした。

プロサーキットは男子選手が出場できるクラブ世界No.1決定戦のFIBA 3×3 World TourおよびFIBA 3×3 Challengerの総称である。女子選手のプロサーキットはこれまで無く、国際大会はW杯や国別対抗のツアー大会・FIBA 3×3 Women’s Seriesなどに限られていた。そのため代表選手に選ばれない限り、世界と戦える機会はほぼゼロと言っても過言ではない。だからこそ、これは日本代表には届かないが、より高いレベルの3×3に挑戦したいという女子選手にとっては朗報である。「JBAとしてFIBAの計画を見越して、日本の女子選手たちのレベルを上げていく必要があると考えています。最終的には男子と同じようにプロサーキットにチームを送り出すシステムをExtremeカテゴリーで持ちたいです。まだまだ世界的に競技人数が少ないので、男子プロサーキットをコンパクトにしたような大会をやると聞いています。我々もその出場権を取って、将来的に優勝チームを送り出していきたいですね」。いまグラスツールでモチベーション高くプレーする選手は数多くいるだけに、これが実現に至れば、国内3×3シーンはさらに活性化するだろう。

そしてJAPAN TOUR以降は、11月に『3×3 U18日本選手権』、来年2月に『3×3日本選手権』を予定している。大会フォーマットは前年度と同じく、都道府県予選とエリア予選を経て、勝ち上がったチームが東京で日本一の座を本戦で争う。


特に直近の『3×3 U18日本選手権』はこれまで高校3年生が出場するケースが多く、ウインターカップの出場を逃した選手たちを含めて、集大成の場としての意味合いが年々強くなっているように感じられる。コロナ禍の影響で今夏のインターハイがなくなったことを考えると、その意味合いはより濃くなるのではないだろうか。石井氏も「JBAの使命は、競技環境を用意することです」と話して、こう続けた。「ウインターカップ出場が叶わなかった選手に、U18日本選手権へ出場してもらえると、僕らも非常にありがたいです。これをきっかけに子どもたちが3×3に興味を持ち、その後に続くオープンカテゴリーの大会出場へつながると良いですね。ストリートや3人制の選手と5人制からやってきた選手が切磋琢磨すれば、競技レベルも上がって、国内がより盛り上がると思います」。現在、アメリカ留学中の須藤タイレル拓(当時SIMON/横浜清風高)や、FUTURE BOUND CLASSIC 2020でMVPを獲得した菊地広人(当時SILVER BACKS/藤枝明誠高)らも2019年大会には出場しているだけに、2020年大会の顔ぶれも期待が膨らむばかりだ。

JBAが見据える来夏、その先の3×3
現在、東京オリンピックは来夏へ延期になっている。しかしWithコロナではじまった今季は、それに向かって進んでいく大事なシーズンである。3×3にとってTOKYOは初の正式種目となる大会。競技団体として国内シーンの機運を高め、将来に向かってその発展をリードをしていく大きな役割を担う。石井氏は2021年に向けて、次のように意気込みを語ってくれた。

「競技環境の整備だけでなく、競技レベルを上げていくことも我々の仕事です。選手の皆さんにJAPAN TOURや日本選手権に出場していただいて、オリンピックにつながるような大会にしていきたいです。またここからオリピアンが生まれれば、非常に僕らもやりがいある仕事だと思っています。裏方という立場なので、オリンピック選手が出ることを願いつつ、これからも3×3に対しての様々なサポートと応援をさせていただきたいと思います」

そして最後に、未来の3×3シーンについてその思いのほどをうかがった。日本の3人制バスケに黎明期より携わる同氏。次世代に向けた種まきをしながら、競技環境を整備するJBAの取り組みを引き続き楽しみにしたい。

「オリンピックがゴールではありません。競技はずっと続いていきます。特にこれからは選手の育成ですね。いま世界に挑戦するトップレベルの選手たちがいますが、次の世代も早い段階で育てないといけません。JBAの強化担当者と協力をしながら、我々の大会と連携することも視野に入れて、取り組んでいきたいと考えています。理想を言えば、U18日本選手権で優勝したチームが、オープンカテゴリーに上がって、最終的に日本代表になる。そういったカタチになればいいですね。そのためにもベースとなる、JAPAN TOURを根付かせていきたいです」

JBAが取り組む2020シーズンの3x3、Withコロナと将来を見据えて

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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