渡邊雄太らアシックスの契約選手と、中高生らがバスケを楽しんだ一日…加藤嵩都が次世代へ伝えたいこと

渡邊雄太や東藤なな子といった日本代表選手をはじめ、中高生らの目の前にはトップリーグで活躍するアシックスの契約選手がズラり。一緒にバスケを楽しんだ夏の一日は、次世代にとって大きな思い出になったはずだ。同社は、初の取り組みにどんなメッセージを込めたのか。そして、契約選手の中で異色のキャリアが光る加藤嵩都に尋ねた。大学時代にストリートボ-ルも経験して、高みに駆け上がった姿は、ジュニアアスリートが成長するヒントになる。

「バスケットを楽しむことが何より大事」(渡邊)
7月25日、都内で「ASICS BASKETBALL DREAM PROJECT 2026 in Waseda University」が開催された。会場には、アシックスの契約選手(=アシックスファミリー)が勢ぞろい。篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)や張本天傑(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)を筆頭に、渡邊雄太(千葉ジェッツ)、増田啓介(ベルテックス静岡)、加藤嵩都(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)、東藤なな子(トヨタ紡織)、黒川虎徹(アルティーリ千葉)、森岡ほのか(日立ハイテクノクーガーズ)が参加した。8人が、一堂に会する機会は初めて。篠山は「みんなで集まって何かイベントをするのはこれまで無かったので、楽しかったです。継続してイベントができて、アシックスファミリーとしてのつながりが深くなっていければ嬉しい」と話す。


この日は、メインイベントに先立ち、学生向けのワークショップを実施。4つエリアに分かれてスキル体験ができるように、黒川、加藤、増田、東藤がコーチを務めた。プレースタイル別にアシックスのシューズを試し履きできる試みもあり、自分に合う一足を感じる機会が設けられたのも、特徴のひとつである。


そしてオープニングのトークセッションを経て、契約選手たちと学生によるスペシャルイベントは盛り上がった。この日は中学生や高校生、大学生ら約80名が参加。5対5のピックアップゲームでは、アシックスファミリーが中学男子、中学女子、高校女子、高校男子の4チームと対戦。好プレーが飛び出し、篠山の右ドライブ、東藤のコーナースリー、渡邊のダンクなどに歓声が沸く。高校男子との試合では、終盤にアシックスファミリーが追う展開だったが、終了間際に渡邊がスリーを射抜いて引き分けに持ち込む結果に。腕を大きく回すセレブレーションも魅せてくれた。

さらに、トップ選手たちが子どもたちに寄り添った場面もあった。ピックアップゲームのあとは当初、アシックスファミリー同士の4対4が予定されていたが、渡邊の提案により、子どもたちとの3on3へ変更。学生たちから手が上がり、対戦できる機会になった。当の言い出した本人は、のちの囲み取材で「中高生の皆さんが見ているだけではなく、5対5でプレーできなかった子どもたちもたくさんいたので、そういう子たちにも入ってもらって、僕たちとバスケットをするという経験を与えるじゃないですけど、一緒にバスケをやってもらえたら良いなという思いでした」と明かしている。

そして、クロージングでは渡邊がマイクを握り、子どもたちへ「バスケットを楽しむことが何より大事で、楽しまないと努力もできないし、続けられないと思う。今日楽しかったという人は、今日の楽しさを忘れずに今後もバスケットボールを楽しみながら頑張ってください」とエールも。他の契約選手たちは子どもたちから刺激を受けたようで、東藤が「普段関わりのない(アシックスファミリーの)皆さんと一緒にプレーして私自身とても楽しかったです。子どもたちの成長を一緒に共有できて刺激になりました」と話せば、森岡も「すごい元気をもらいましたし、たくさんの刺激をもらったので私も頑張らないといけないなと思いました」と、気持ちを新たにしている。

ジュニアアスリートに寄り添い、成長をサポート
一方で、ASICS BASKETBALL DREAM PROJECTとはどんな背景から生まれたのか。黒川が「アシックスのバッシュを全員で履いてバスケをやるというのも今までになかったこと。とても新鮮でした」と話すほど、前例の無い取り組みなのだ。
アシックスジャパン株式会社の狩野和也氏(取締役 マーケティング統括部長)は、従来の製品を開発して販売に注力する手法だけでなく「一緒に体験を共にするということが、ブランドを選んでいただく上で、すごく重要なエッセンスになってくる」と説明。契約選手、学生とともに「バスケットの魅力を一緒に感じ取ろうということで、企画をさせていただきました」と話した。同社で、バスケットボールはサッカーと並んで注力カテゴリーのひとつだ。これから競技シーンのさらなる発展を見据える中、契約選手と一体となり、ジュニアアスリート(中高生・大学生)に寄り添い、挑戦と成長をサポートするのが、取り組みの大きな目的になるのだ。

そして、プロジェクトを通して伝えたいことは3つあるという。ひとつは「成長ストーリーを描く」。これは、勝利や記録更新にとどまらず、自分と向き合いながら成長を積み重ねる過程に価値があるという考え方を浸透させるもので、そのツールとして同社は「DREAM SHEET」と呼ばれる特性のワークシートも制作。「自分を知る」「目指す姿を描く」「行動に落とし込む」の3ステップで構成されており、参加した選手や学生も作成したという。将来的にプロ選手を目指さなくても、社会人としてビジネスに向き合う上で必要なスキルになるとも感じられた。

二つ目は「自分に合う一足の重要性を伝える」である。憧れの選手と同じシューズを履くことはモチベーションになるものの、パフォーマンス向上には自分のプレースタイルに合ったシューズ選びが、何よりも必要不可欠。学生向けのワークショップの内容も、この考えあってこその取り組みである。

三つ目は「一緒にプレーする特別な体験を届ける」である。バスケットボールのスキルを具体的に教える取り組みよりも、トップ選手と同じコートでプレー・交流できる体験を重視して、バスケットボールが楽しいものであるというメッセージを改めて伝えることに比重を置く。ひと昔前は高校バスケを終えるとバスケをやらなくなる人も多かったと聞くが、これからはより一層、バスケットボールが盛り上がる時代になるだろう。多感な学生時代にロールモデルになるアシックスファミリーとの交流が、一生ものの経験になれば子どもたちが生きる上で大きな糧になるはずだ。

異彩を放つロールモデルは、小1からアシックス
そんなロールモデルが、アシックスファミリーには8人もいるが、異彩を放つ選手がいる。加藤嵩都(178cm)だ。東北生活文化大学高校時代は全国大会の出場経験が無く、進学した明星大学でストリートボールと出会って、SOMECITYでもプレー。熊本ヴォルターズに特別指定選手としてプロ入りすると、さいたまブロンコス(B3)、福島ファイヤーボンズ(B2)とステップアップして、2024-25シーズンより名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(B1)へ。いまではチームに欠かせないポイントガードである。紆余曲折の中で成長を遂げている26歳に話しを聞いた。
――アシックスと、2025年10月にアドバイザリースタッフ契約を締結しましたが、出会いは大学時代のSOMECITYだったんでしょうか。
出会いは、小1ですね。ずっとアシックスを履いていて、存在は知っていたんです。高校もアシックスしか履いちゃダメだったので、馴染みのある感じでした。
――小さな頃から知っているブランドだったんですね。アシックスと言えば、いわゆる部活生というイメージがある一方、SOMECITYとブランドパートナーシップ(2018年〜)を結び、ここ何年かはストリートボーラーも履いており、ballaholicとのコラボシューズも出ています。ブランドイメージはどう思っていますか。
「本気ならアシックス」というワードがあったと思いますが、それよりか、ちょっと遊び心のある、自分らしさを表に出すようなコンセプトも浸透してきたと思っていて。これも(自分のシューズ=UNPRE ARS LOW 3 FRENCH BLUE/DARK TEALを指して)、これまでのアシックスでは考えられないような派手で攻撃的(なカラー)で、しっかりと(シューズのコンセプトが)想いとしても乗ってる。すごく良いですよね。今ではballaholicの強み、アシックスの強み、どっちも兼ね備えていると思っています。
――履いているモデルは、カラーリングも気に入っていますか?
大好きです!大好きです!

――きょうは学生向けにクリニックをされました。自分が教える側になって、彼ら彼女たちのスキルやマインドはどう感じましたか。
真っすぐに吸収しようという姿勢は、すごく良かったです。でも、きょうだけしか見ていないので、日頃の子どもたちがどういう心構えで生活しているかは見えていない。そこが(僕にとって)少し残念なんですよ。指導者としては、その先が見たい。きょうは本当に“点”なので、これから自分たちで線を引いて、いつか形になっていく。そんなきっかけになれば良いと感じました。
――自分が学生の頃に、トップ選手から教わった出来事がきっかけになって、今の自分がある。そんな経験はありますか。
高校時代に青木康平さんのWATCH&C(福岡にあるバスケットボールスクール)のクリニックを受けたことがあって、すごく印象的でした。僕が指導者として、子どもたちに伝えるときの根底にあるのは、康平さんのクリニックです。「Sound Mind, Sound Body」(=健全な身体に健全な精神があれかし)じゃないですけど、アシックスのスローガンも胸に刻みながらやっています。

ストリートボーラーと二足の草鞋を履く男の教訓
――加藤選手の中で、ストリートボールの経験はキャリアを形作る上で大きなものだと思います。競技バスケットと相反するところもありながら、ストリートボールの魅力をどう感じて、それが今の5人制にどう発揮されているんでしょうか。
あ、それはもう僕は、Bリーガーというよりはストリートボーラー。5対5と二足の草鞋を履いて戦っているのが強みです。ストリートボールにしかない、自分を前面に出してお客さんを魅了する。お客さんを第一に考える。そういうのを大学時代に学びました。ただ、やってもダメ。楽しませないとダメなんだって。
いまも、試合に出るときはファンの顔を浮かべていますし、支えになっています。僕の原点です。
――5対5の競技バスケだと、チームの中での役割を遂行しないといけない。それは時に個性を消すイメージもあるのですが、そのバランスを考えることはあるのでしょうか。それとも特に考えず、ワンポゼッションごとに目の前のプレーにフォーカスしているんでしょうか。
僕もやっと分かってきたんです。自分らしさを出すのか、チームが求めている優先事項をやるのか。やっていく中で自分の中ですり合わせて「これだ」というものを作っていくんだと思います。
でも、僕はストリートボール出身なので、自分らしさを常に考えています。だって、登りつめる上で自分らしさが一番の武器じゃないですか。それでしか生き残れないと、最近は思っています。いかに強みを出すかですね。
――B3からB1まで、キャリアをステップアップしてきましたが、一貫して自分らしさを失わなかったからこそ、成し遂げられたという想いが大きいですか。
いや、右往左往しました。「こっちかな…」「あっちかな…」と。試行錯誤した上で今があるので、本当に難しい。それは自分で見つけていくしかないと思います。今でも現在進行形ですね。

――今バスケットボールが注目されている中で、加藤選手もトップステージまで上がってくる中で様々な経験をされたと思うんです。若い世代に伝えたい「これを知っておけばもっとうまくいったのにな」という教訓はありますか。ストリートボーラーからの叩き上げというキャリアは、他のアシックスファミリーにはないユニークなところだと思っています。
本気になることの意味を理解することじゃないですかね。僕も大学2年生の時に「人生どうしよう」と考えたときに、プロで勝負していく。俺の人生を捧げようと思って。そこで初めて(バスケットボールに向き合う)スイッチが入りました。その決意から変わった1年間で、ここまで来たと思っています。
それは何も、夢中になるということでは無く、本気になると24時間それしか考えなくなるんです。1年間、本気でやれば突き抜けることができますし、そこまでやる人は正直いないと思いますよ。努力量の最大値を上げる作業、1分1秒無駄にしないんだっていうのを一日ずつ過ごせば、あとはどんなに辛くても「あの時よりは、まだ努力してないから努力しよう」ってなるんですよ。
だから、一つのことに集中して本気になる経験を、ぜひ何でもいいのでしてほしい。バスケでも勉強でもいいですよ。そういう経験が、すごい支えになってくると思います。








- 渡邊雄太らアシックスの契約選手と、中高生らがバスケを楽しんだ一日…加藤嵩都が次世代へ伝えたいこと
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TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by ASICS




