続けるからこそ見えた景色…ALLDAY SPRING 2026のMVP・TAKAは若手へ「挑み続けてほしい」

2026年春のALLDAYは、続けるからこそ見えた光景があった。仙台を拠点に活動するS.H.U SENDAIが、12年の挑戦の末に初優勝を飾り、涙するボーラーも。MVPのTAKAも続けてきたからこその勝利を強調する。一方、決勝で敗れはしたが、新星のBoogie’s Basketballも光った。その一人ALLDAY初代MVPを父に持つHIGENは楽しさを感じながらも「このままでは終われない」と明かす。節目の50回目を迎えてもなお、ワクワクした余韻を代々木は残してくれた。

初優勝の原動力…「挑み続けて、やっと見つけた」
仙台を拠点に活動するストリートボールチームS.H.U SENDAIが、5月2日から4日にかけて開催された「ALLDAY SPRING 2026 50th Edition」で初めてチャンピオンになった。2005年からスタートして、今大会で50回目。東北の雄が大会史に名を刻んだのである。

表彰式では涙するボーラーもいたが、無理もない。TAKA(藤村貴敏)が加入して7年。チームとしては12年も代々木に挑んできては、跳ね返されてきた歴史があったからだ。2023年の春には、決勝でUNDERDOGに17-50の大敗も喫していた。代々木公園バスケットボールコートそばのベンチで、TAKAは初優勝をかみしめた――。
「(チームとして)11年、12年とかもっと行くかな、挑み続けてきました。毎回みんなで車に乗り合わせて、朝5時ぐらいに出て、ホテルも予約して交通費もかけて、本当に大会へ気持ちも、お金もかけて挑んできたんです。でも、いつも準決勝だったり、ベスト8で負けたりして。帰りの高速道路で誰かがやっている配信を見ながら、どこが優勝したねとか言いながら、落ち込みながら帰っていたんですけど。(やっと優勝できて)良かったです……」

彼らの勝ち上がりを振り返りたい。3日のブロック予選に登場すると、初戦でLに23-11で快勝し、2回戦でNANDAY YANENを18-12で撃破。続くTokyo Samurai U18を17-11で下しTOP8入りする。4日の準々決勝では青森の1000Kとの東北対決を20-19で制し、準決勝では中国から来日したGD6IX7EVENとマッチアップへ。TAKAがファウルアウトしながらも、チームは延長戦の末に18-16で難敵を振り切り決勝に進出。Bリーガーや海外挑戦中の若手が集うBoogie’s Basketballを23-19で跳ね返して、チャンピオンボードを掲げた。

なぜ彼らは、頂点に駆け上がれたのか。戦前、TAKAは肉離れの影響でプレータイムを抑えて出場する旨をチームメイトに伝え、今野練が準々決勝で負傷。TAKA不在の時間帯もあった。そんな手負いの状況を覆せたのも、S.H.U SENDAIが築き上げたスタイルが真価を発揮したからだ。ボーラーたちの結束力や経験値、やり切る力に裏打ちされたチームディフェンスは、サイズや能力の高い相手を上回った。1-3-1のゾーンディフェンスを武器に、ALLDAYのファウルの基準にアジャストし、バックボードの特性も頭に入れながら粘り強く戦ったチームの姿にTAKAも胸を張る。

「何年も挑み続けて、やっと見つけたあのゾーンの形でした。準々決勝でもフリースローを自分が最後に4本決め切って、1点で勝つみたいな。チームとしては10年以上、自分が入って7年ぐらいやってきて、同じような形で負けることが何回もあって、それがやっと良い方向に転んだだけなので、本当に続けてきた意味で成し遂げた優勝だと思います」

リーダーになったTAKA「みんなと優勝したい」
そんなS.H.U SENDAIのリーダーは、今大会でMVPにも選ばれた。チームディフェンスが光るとともに、彼なくして優勝も無かっただろう。Boogie’s Basketballとの一戦でも勝負強さを発揮したプレーが印象深い。TAKAは決勝について「正直、僕ら的にはその方(=Boogie’s Basketball)がやりやすかった」と切り出し、その理由に言及。「勝負どころで、どうやってお客さんたちを巻き込むか。クラッチタイムでどうぶちかませるか。そこは何年もやってきて、自分のほうが絶対上だと思って、あの結果に結びついた」と話す。倒れ込みながら決めた速攻、勝利を決定づけたドライブに痺れたオーディエンスは一人や二人ではない。
本人によるとMVPは、BLACKTOPで9年前と8年前に優勝し、MVPをもらって以来8年ぶりの勲章だという。かつては、Martel(バローン マーテル)やKOSUKE(田中康祐)といったballaholicに携わる若手たちでつかんだタイトルだったが、そこから月日が経ってTAKAも地元・仙台へ戻った。S.H.U SENDAIに入って7年が経ち、後輩も増え、チームをけん引するボーラーとして、優勝できた気持ちは特別なものがあった。

TAKAは「最高のみんなと優勝したいという思いがあって」と話し始め、こう続けた。
「誰もがS.H.Uの優勝はまだまだ高いというか、先というか。そういう立ち位置だと思うんですよ。でも、挑み続けて勝つところを見せたかった。ストリートでいまの若い子を見ていると、結構どんどんチームを変えて、こっちで負けて、こっちで出て、こっちの助っ人で出るとかしている。でも、そうじゃなくて俺たちにしかできない。S.H.Uでやりたいと思う仲間と勝とうと出て、1、2、3、4回とやってるうちに、みんなで優勝したい思いが強くなっていきました。途中で無理かもなと、毎試合思ったのですけど、それでも勝つまでやろうと言ってきて、良かったです」
さらに、TAKAを思えば自身が建てたバスケットボールコート「East Coast Park」の存在も忘れてはならない。震災のあった故郷のため、東北のボーラーのために作った場所である。初優勝を後ろ支えしたのだ。

S.H.U SENDAIのベンチにはチームメイトのみならず、仲間のボーラーが数多く詰めかけていたが、彼らの中にはEast Coast Parkで出会ったボーラーもいたそうだ。1000Kや野良たちのメンバーとは切磋琢磨した間柄。今大会に向けても練習試合もしたそうだ。TAKAは「そいつらがベンチに入ってくれて、ファミリーとして盛り上げてくれたおかげで、代々木をS.H.Uのホームにできたかなと思います。あのコートで出会ったみんなと優勝の喜びを分かち合えて最高です」と、バスケットボールが生んだ縁を喜んだ。


Bリーグを終えて即参戦したHIGEN「楽しみでした」
一方で、敗れはしたがそのMVPとのマッチアップを楽しんだのが、Boogie’s BasketballのHIGEN(長谷川比源)だった。彼は最も印象に残ったボーラーに、TAKAを挙げたのだ。
「TAKAさんを1対1、ヘルプディフェンスで守ることが多くて、試合を通して守れていたんですけど、最後の1on1でタフショットを決められたのは悔しかったです。あの1本だけブロックできなかったんです。TAKAさんはTSC(TOKYO STREETBALL CLASSIC)とかのイベントで対戦していたので知ってはいたんですけど、やっぱり最後に決めきるのは凄い。リスペクトした瞬間でした。お互い試合中もリスペクトし合って、バチバチになっていたんですけど、めちゃめちゃこの大会で一番楽しかった試合です」

4日の最終日、代々木に現れた202㎝の20歳に注がれた視線は少なくない。彼は、所属先のBリーグ・滋賀レイクスで3日に行われたレギュラーシーズン最終戦を終えて、当日の朝に新幹線で帰京。代々木へ直行したという。今シーズン限りでレイクスを退団するが、ALLDAY参戦にあたっては眞庭城聖氏に相談済み。UNDERDOGで代々木制覇の経験もあるゼネラルマネージャーなだけに「マニさんに快く出していただきました。滋賀に感謝です」とHIGENは話す。


また、代々木は彼と縁の深い場所でもある。彼の父、アイザック・ソジャナー氏は、日本でプレーした元プロバスケットボール選手で、ALLDAYの初代MVPである。HIGENは「お父さんが(ALLDAYに)最初から出ていて、僕も会場にはいたんです。でも、物心つく前だったんでは、あまり記憶にない(笑)。でも、写真でここに行っているのは見たことあります」と教えてくれた。


ただ、初出場のALLDAYで優勝に届かず不完全燃焼な気持ちも残った。地元・神奈川の逗子の方で公園バスケの経験もあったが、プロとは違う屋外でのバスケットボールに戸惑った。HIGENは「特にフリースローでずっとアジャストができなくて。今日3回試合をやりましたが、なかなか安定しなかった」と明かす。決勝の最終スコアは4点差。「たらればですけど、全部入っていれば、あと2、3本でも入っていれば違った展開だったので、申し訳ない」と振り返る。
それでも、彼はどんな経験も前向きに受け止め、成長の糧にするメンタリティーを持っていた。HIGENは「相手のエナジーも違うし、本当にもう削られました(苦笑)。でも、そういう場面でも笛が鳴らないとかあるんで、そこでも決め切る力は普段の5対5でも必要なことだと思う。そこを学べたのは良かった」と話す。

さらにBリーグのレギュラーシーズンが終わって、すぐの参戦。旧友たちとバスケットボールができる楽しみがあったのはもちろん、自分のためにここへ来る決意もあったのだ。代々木に現れた新星は、今大会の経験を糧にさらに成長していくだろう。
「今年(滋賀で)プレータイムが去年と比べて激減して、すごいタフなシーズンだったんですけど、そこでキャリアが終わるわけじゃないし、そういうときもある。だからこそ、オフになったときから反骨心というか、いろんな場所でいろんな人と競えるのは自分にとって良いことだし、そういうオフシーズンを過ごしたい派です。自分はだからこの大会がすごい楽しみでした」


未来への余韻。「このままでは終われない」
そんな挑み続けたTAKAと、初出場のHIGENが共演した50回目のALLDAY。大会が20年以上もあり続け、挑戦し続けてきたボーラーがいたからこそ生まれた光景であった。公園バスケの一大トーナメントを見ようと、客席からコートサイドまでパンパンに観衆が集うのも、ボーラーたちが代々木を魅了してきた歴史があるからだ。

TAKAはALLDAYを「もう本当に日本のストリートにおいて頂点の大会だと思います。この場でどれだけお客さんをぶち上げられるか。KKさんも言っていると思いますが、ここでどう勝つのか。全国の若いボーラーには感じて絶対に挑み続けてほしい」と、次世代にエールを送った。

そして、次世代の一人であるHIGENからは奇しくも「このままでは終われないですね」と、リベンジを誓う言葉も寄せられた。
「やっぱりお父さんはMVPを取っているし、正直(今回)勝ってMVPを取りたかったですし、全然できなかったことじゃないと思う。チャンスがあるなら、どんどん(ALLDAYに)参加していきたい。これが続く限り参加して、優勝してMVPを取りたいという思いが、自分の中であるんです」

ボーラーのための、ボーラーによるトーナメントは50回目の節目に留まらず、まだまだその長い歴史が続いていく。そんなワクワクした未来への余韻を5月の代々木は残してくれた。

【プロフィール】TAKA|藤村貴敏
1995年1月生まれ。宮城県七ヶ浜町出身。明星大学在学中にストリートボールと出会い、44STREETでSOMECITYに出場。BLACKTOPでALLDAY優勝も経験した。その後、仙台へ戻り、PISTOL BROTHERSへ加入。S.H.U SENDAIに移り、現在はリーダーとしてチームをまとめる。ジョーダンブランドのサポートを受けるストリートボーラーでもある。身長178cm。

【プロフィール】HIGEN|長谷川比源
2005年5月生まれ。神奈川県出身。横浜清風高校を経て神奈川大学に進学。関東大学リーグで平均ダブルダブルを記録するなど活躍を見せていたが、1年生で中退してプロの道へ。2024年12月、滋賀レイクスと契約した。身長202cm。ポジションはSF/PF。元プロバスケットボール選手で、ALLDAY初代MVPのアイザック・ソジャナー氏を父に持つ。



- 続けるからこそ見えた景色…ALLDAY SPRING 2026のMVP・TAKAは若手へ「挑み続けてほしい」
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TEXT by Hiroyuki Ohashi




