ジョーダン ブランドが次世代に贈る…バスケとカルチャーが交錯した1on1トーナメント「THE ONE TOKYO」の舞台
オーディエンスがオールスタンディングでコートサイドまでぎっしりと詰めかけ、ジャンプマンロゴがデザインされたコートに立つ。いつもと違う環境は、次世代にとって刺激的だったようだ。
「もう本当に最高でした。めちゃくちゃ楽しかったです!」(佐藤凪)
「昨年のパリ(の世界大会)と全く同じような感じがして、すごく楽しくできました」(満生小珀)
「緊張したんですけど、観客の皆さん熱くて、MCの方たちも盛り上げてくれて、その中で楽しんでやるようにしていました」(栗原咲太郎)
この言葉は、7月5日にSTAR RISE TOWER TOKYO(東京都・港区)で開催された「THE ONE TOKYO」に出場した高校生たちの感想である。なんだか選手たちの声も弾んでいた。5on5のフルコートから飛び出した選手たちにスポットライトが当たり、主役となって会場のボルテージを上げた。
次世代にスポットを当てる
THE ONEは、ジョーダン ブランドが世界15都市(シカゴ、ロサンゼルス、マニラ、ロンドン、パリ、リュブリャナ、⾹港、パリ、東京など)で開催する、15歳から18歳の次世代プレイヤーを対象としたグローバル1on1トーナメントである。昨年、第1回大会がパリで開かれて、今年で2回目。THE ONE TOKYOを制した選手たちは、8月にニューヨークで開催される世界大会への出場権を獲得する。世界チャンピオンになれば、アンバサダーとしてジョーダン ブランドの一員になれるプライズも贈呈されるという。
今大会は、試合時間8分、ショットクロック9秒、23点先取のKOルールありという特別ルールのもと、シュートを決め続ければオフェンスポゼッションが継続するという形式で、男女それぞれ8人が出場。足元を見ると、ジョーダンシリーズの最新モデル「エア ジョーダン 40」が光る。
また、このトーナメントには背景もある。ジョーダン ブランドの起源となるマイケル・ジョーダンはかつて、兄ラリーと裏庭で1on1を繰り広げていたという。負けることが多かったそうだが、あきらめずに勝利を追求した姿勢がのちに、バスケットボール界に語り継がれる伝説を打ち立てることに繋がった。ブランドの原点が反骨精神と自信に根差しているように「THE ONE」では次世代にスポットを当て、その活躍を鼓舞するものになっている。
この日、出場選手の一人、名門・東山高校でキャプテンを務める佐藤凪の応援に駆けつけたアースフレンズ東京Z(東京Z)U15ヘッドコーチの氏家豪一氏は、ジョーダン ブランドの若い世代に向けた取り組みについて歓迎していた。同ブランドがサポートする5on5ストリートボールトーナメント「ALLDAY」に、東京Z U18として出場経験もあるだけに、自身の経験も交えてこう説いた。
「僕も若い頃にストリートの経験があり、ALLDAYとかSOMECITYにも出る機会があって、プロ選手になりました。若い皆さんにも体育館のバスケだけではなく、いろいろなバスケットボールに触れて経験して、成長につなげてほしいですね」
ちなみに、氏家氏によると東京Z U15には凪の弟である久遠(現東山高校)がかつて所属し、伊恭も現在プレーしているという。高校バスケットボール界のトップ選手からALLDAYにも出場経験のある選手まで、男女の多様な選手たちが1on1でしのぎを削ったのだ。
TOKYOのチャンピオンたち
そんな中、手に汗握る攻防を制して、男女のチャンピオンが誕生した。男子は、卓越した1on1のスキルと勝負強さが光った佐藤凪だ。
初戦で新美鯉星を相手に22-13で勝利を収めると、準決勝では、福岡大学附属大濠高校のドス サントス マノエル ハジメと対戦。相手との身長差は20㎝近くあり、高さで押し込まれる場面もあったが、佐藤はドライブやプルアップジャンパーで対抗。バックボードにボールを当てて、跳ね返ってきたボールをタップで押し込むなど、会場を沸かせるプレーも披露した。13-13で延長戦にもつれ込んだものの、サドンデス1発目のオフェンスを成功させて決勝へ進む。
決勝では、準決勝で5-15の劣勢から3ポイントを終盤にヒットさせて勝ち上がってきた福岡大学附属大濠高校の栗原咲太郎に挑んだ。勢いづくサウスポーシューターに手を焼いて、終盤には13-19と厳しい状況に追い込まれたが、佐藤は3連続得点をマークして同点へ。両者譲らずに延長戦へ入ると、佐藤はゴール下でシュートを決め切って21-19で勝負あり。2度のサドンデスを制する見事な勝ちっぷりを見せた。
試合後、佐藤は「やっぱり1対1は負けられないプライドがあります。本当に勝ててほっとしています」とコメント。8月のニューヨークでも世界を沸かすに違いない。
そして女子のチャンピオンに輝いたのが、昨年パリで開催された世界大会で2位になった経験を持つ満生小珀である。京都精華学園高校で活躍する2年生ガードは、初戦で西本未来に21-11で快勝すると、準決勝でも森島沙矢に23-6でKO勝ち。大阪薫英女学院高校の杉山ももとの決勝戦へ駒を進めた。
だが、大一番はこれまでの2試合とは一転、序盤から劣勢に立たされた。抜群のスピードでドライブを武器に勝ち上がってきた杉山に、3ポイントを2連続で決められ、ドライブでも失点して追う展開に。15-18の3点ビハインドで終盤を迎えた。
それでも残り1分30秒を切ってクロック調整が入り、試合が一時中断。その後に迎えたオフェンスを2本連続で成功させて19-18で逆転に成功すると、ファウルゲームを仕掛けられながらフリースローを決めて21-18で逃げ切った。2年連続の世界大会出場が懸かっていただけに、試合後メディアからの質問で「すごいプレッシャーがあって、2試合目から緊張していましたが(勝てて)ホっとしています」とコメント。ニューヨークに向けても力強く意気込んだ。
「前回パリに出場した選手たちも結構、集まってくるかもしれないので、リベンジできると思うと、すごく楽しみです」
バスケとカルチャーを融合させるジョーダン ブランド
一方で、THE ONE TOKYOは1on1トーナメントというバスケイベントだけでなく、音楽やダンスなど様々なカルチャーの要素も取り入れた空間になったことも見逃せない。ジョーダン ブランドが長い年月をかけてバスケットボールだけでなく、広くスポーツシーンやカルチャーシーンからも支持されるブランドになったように、次世代に語り継げるもの、示せるものがたくさんあるのだ。
特に印象的だったのが、記念すべき1985年に発売されたエアジョーダン「1」から、最新モデル「40」まで全モデルが展示されたショーケースである。エアジョーダンコレクターのおっくんや、スニーカーコレクターのWinの協力によって、名作の数々が一堂に会した。かつて履いたあの一足、憧れの一足など歴史を振り返り、後世に語り継ぐ上でも貴重な展示になったことは間違いない。
また、DANCE SHOWCASEも披露された。プロダンスリーグ・D リーグで活躍するKADOKAWA DREAMSがコート上でパフォーマンスしたほか、1-ON-1 DJ BATTLEが繰り広げられたり、MUSIC LIVE PERFORMANCEではジョーダンファミリーとなったラッパーの千葉雄喜がシークレットゲストとして登場。集まったオーディエンスを沸かせた。
加えて、来場者にはケータリングのサービスも提供された。HipHopカルチャーを通して出会った3人が創業した「The Daps」がチキンオーバーライスやフィリーチーズステーキサンド、ナチョスを提供し、渋谷・富ヶ谷にあるコーヒーショップ「HOTEL DRUGS」も出店。バスケを観戦し、音楽やダンスを楽しみ、お腹も満たせる空間づくりに一役買った。
バスケットボールとカルチャーが交錯した「THE ONE TOKYO」。ジョーダン ブランドによる次世代が輝く最高の舞台は、いよいよ8月にニューヨークで開催される。プレーで自分を表現して、異国の地のオーディエンスをロックできるか。佐藤凪と満生小珀には東京代表として、そんな大きなチャレンジになることを期待したい。
【出場選手|THE ONE TOKYO】
●男子
佐藤 凪 / NAGI SATO(優勝 / 東京代表)
妹尾 凌介 / RYOSUKE SENO
ドス サントス マノエル ハジメ / DOS SANTOS MANOEL HAJIME
新美 鯉星 / RYU MIIMI
ハウエット 凪音 / NAOTO HAUET
村上 敬之丞 / YOSHINOSUKE MURAKAMI
栗原 咲太郎 / SAKUTARO KURIHARA
渡邊 聖 / SENA WATANABE
●女子
杉山 もも / MOMO SUGIYAMA
谷 彩南 / AYANA TANI
坪根 百梨 / YURI TSUBONE
西本 未来 / MIRAI NISHIMOTO
堀 心優 / MIHIRO HORI
満生 小珀 / KOHAKU MANSHO(優勝 / 東京代表)
美除 柚希 / YUZUKI MIYOKE
森島 沙矢 / SAYA MORISHIMA
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TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by Michy