• COLUMN
  • 2020.11.19

GODDESS BASKETBALL CLUB meets “Tokyo Sport Playground”

秋晴れが心地よいある11月の土曜日の昼下がり、東京新豊洲にあるTokyo Sport Playground Sport x Artの一角、青空の中で一層映えるカラフルなAIR RAID COURTは、少し新しい表情を纏っていたの。そんなAIR RAID COURTで見えた新たなシーンについて、わたくしバスケットボーラー桂葵よりレポートをお届けするね。

今回豊洲に集まったのは、ライフスタイルとしてのバスケットボールを楽しむ女の子たち、”Goddess Basketball Club”。

ワントーン高い声色たちと、それ可愛いー!から始まる挨拶、バッシュとは呼べないぺたんこなスニーカーに、ニットキャップから覗く解かれたままの黒髪ロングヘア。体育館でよく見るバスパンTシャツ!みたいな統一感はそこにはなくて、ブランドもスタイルもそれぞれが好きなものを着ているの。(私は母のお下がりのビンテージスカーフを頭に巻いて参戦したよ!)
ぱらぱらと集まりながら、コートサイドではお互いのヘアアレンジをしていたり、センターサークルにはフォトジェニックなんて言いながら寝そべる姿も。

この人たちのバスケの経験値は様々で、中学の3年間だけバスケ部で過ごした人や、大学はサークルでバスケを楽しんでいた人、男バスのマネージャーだった人などなど。中には、15年振りにボール触るひともいるくらい本当にバラバラ。そんな人たちが集まって、勝ち負けではない生活の中にあるスポーツとして穏やかにバスケットボールを楽しむの。
昼夜白熱した戦いを繰り広げたALLDAYの予選と同じ空間とは思えないのは本当にそう。あるいは、女子ボーラーが平日仕事終わりに集ってバチバチやり合っているTWBL、オープンコートで見られる親子連れの姿などとも少しちがう、そんな光景。

このAIR RAID COURTのオープンが決まってから、”葵ちゃん、女子のピックアップゲームでもやってよ!”なんてお話をナイキクルーからいただいて。例えばやすえっち(安江舞)やなっちゃん(小濱菜摘)、麻子さん(浅羽麻子)のような、向上心を持ってバスケに取り組んでいる女の子たちに声を掛けて、真剣勝負のピックアップゲームを展開することも一案だったのだけど、そういう層は私が声を掛けるまでもなくどこかの体育館か、公園かでゴリゴリの戦いを重ねていると考えていて。そこで今回迷わず提案したのが、”Goddess Basketball Clubの豊洲遠征”。
競技軸のピラミッドがあるとしたら最下層かな、陸上で言うとピラミッドにも属さず皇居ランを楽しむ層かな。上手いか下手かはどうでもよくて、ただバスケットが好きで、それを理由に仲間に会えることもうれしくて、月に一度の非日常をみんなでシェアするそんな仲間たちを豊洲にお誘いしたよ。


社会人になって、例えば仕事を通してバスケットボール経験者に出会った時に、今もバスケをするか訊ねると、「いえいえ、わたしなんかはそんな!」と謙遜交じりにバスケはしないことを告げられることが多い。
あくまでも主観で、傾向であることは前置きするけど、どこかで”ガチ勢”しかバスケを楽しめない雰囲気があるのかもしれない。それは、日本のバスケ界においてなのか、女子バスケ界においてなのか、大人になるとそうなのか、どう括っていいのかはよく分からないけれど。
プロの選手になることがなんとなく成功例、または終着点の様に感じて、そこに辿り着かなかったひとはドロップアウト組みたいな世界の中で私自身は生きていた気がするの。それだから、学生時代トップレベルでプレーしながらもあえてビジネスの道を選んだ、プロでもドロップアウト組でもない自分自身を特別な選択ができる人に感じることもあったし、ネガティブな側面を正直に打ち明けると、バスケから離れてサラリーマン業に打ち込んでいた3年間は、”走ることを辞めたひと”という劣等感に苛まれることもあった。その時の私は、モノサシを一つしか持っていなかった様に思う。それを競技軸と呼ぶね。

そんな私は、2つのコミュニティとの出会いでほかのモノサシも見つけたの!これは、私からしたらコロンブスがアメリカ大陸を見つけたとき並みの大発見だったから、当時を思い出して心躍らせながらここに記すけど、そんなモノサシも知らなかったの?って思う人もいるかな。(アメリカ大陸をはじめにみつけたのはコロンブスじゃないよ、なんて議論はまた今度。笑)


1つ目は、ストリートボーラーたち。社会人4年目を迎える頃、3×3で競技復帰することを決めてリハビリの場所として選んだある体育館が地獄の住民でお馴染み秦兄弟の縄張りだったの。ストリートボーラーと言ったり呼ばれたりする彼らは、バチバチに身体をぶつけ合いながら間違いなくバスケットボールをしているのだけど、なんだか「俺が一番バスケが好きだ!!!!」って主張し合っているように見えて。語弊を恐れずにいうと、当時の私が持っていたモノサシで測ったらドロップアウト組となるはずなのに、彼らはなんだかとても豊かだったの。
思えば、バスケが好きっていうのを言葉にするのは、私にとってはそれまではなんだか勇気がいることだった。自分よりも上手なひとの顔が思い浮かんだり、自分よりも練習をたくさんしている選手を見ると、自分の”好き”を表現することに躊躇があった気がするのね。それも否定はしない。ただ、好きっていう感情はわたしだけのもので誰に侵されるものでもないと知ったの。自分が好きなら好きでいいじゃん!っていう新しいモノサシを教えてくれた、プロ選手ではないけれどドロップアウトもしていない人たちと出会ったお話がひとつ。(おそらく彼らはシュートがうまいと褒められるよりも、バスケに狂ってるって言われた方がよろこびそう。そんなイメージ。)

2つ目は、Hoop York Cityというニューヨークのバスケコミュニティ。そのメンバーの1人が日本に旅行に来ていた時に出会って聞いたコミュニティのお話に惹かれて、2週間後にはわたしがニューヨークにおじゃましたの。バスケがそう上手くない女の子たちは試合に出るためにクラブチームに属するのは違うし、だからといってフラっとストリートコートに行って屈強な男性に混じってプレーするのも難しい。ストリートコートが溢れるバスケの街ニューヨークにおいても、バスケを楽しむのはハードルがある様で、そのひとつの解として発足したのがHoop York City。金曜日の夜、ブルックリン郊外の学校の体育館には、体格、ファッション、バックグラウンド、バスケの経験値、なにをとっても多様性に溢れた女の子たちが集まって、ただただたのしくバスケをしていたの。とても自由でインディペンデントで優しいひとたちだった。勝ち負けなんてさらさら気にしないので得点も付けない大胆さには驚いたな。きっとニューヨークのストリートコートで勝つことが彼女たちの勝利ではないのよね。これもまた新しいモノサシとの出会い。(”We don’t keep score, but we are undefeated.”なんてコピーを掲げているの。カッコいい。)

こんな、一見理解していそうでしていなかった、腹落ちすると地球がひっくり返るような新しい価値観たちに出会ったことで、(競技としての3×3にはガシガシ取り組みつつ)Goddess Basketball Clubみたいなコミュニティを走らせていく価値に大きな魅力を感じたんだ。


なーんて真面目モードで書いてみたけど、要は、好きだからやってる!ってことよ。好きな服を着て、好きな人たちと、好きなように、大好きなバスケをたのしむの。
あ、これはあくまでもわたしの物語で、わたしとコミュニティの関係性ね。このコミュニティから感じていること、あるいは求めていることはそれぞれ共通する部分もあれば、もちろん人によってまた違う視点もあると思うの。ただ、フィロソフィーとして、”みんなのありのままを受け入れて愛情を注いでいきたい”みたいなところはブレないかな。そこから派生していくと、ファッションやスキンケアはお手のもの、ボディポジティブとかフェミニズム、環境問題なんかまで話題が拡がるから面白いわよね。
コミュニティをリードするひとりでもあるUMEさんとは深夜のコーヒー屋さんでこんな話をよくするの。詳しくは割愛するけれど、女子バスケの可能性を信じてブランドの立場から試行錯誤を重ねながら向き合ってきた彼女には大きな敬意を込めて感謝を伝えたい。

さあ、そんな思いで迎えた土曜日の豊洲遠征。参加者の一人がピックアップの途中にコートの真ん中でおもむろに立ち止まり地面から何かを拾い上げて、頭の上に高々と掲げるもんだから何の騒ぎかと思ったら、「このファンケルのリップだれのー?!(笑)」なんて呼びかけが始まって。お腹を抱えて笑って、顔面しわくちゃにしながら「あー、バスケって最高だなあ」と改めて新しいモノサシでの好きを深めました。
久しぶりに中学バスケ部のグループラインに連絡してみたらどうかしら。

GODDESS BASKETBALL CLUB meets "Tokyo Sport Playground"

TEXT by 桂 葵

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