史上最大のALLDAYになった理由…19年目の代々木は「ニュースタンダード」へ
渋谷を代表するストリートスポーツ最大のイベントになりそうだ――国内最大級の5on5ストリートバスケットボールトーナメント「ALLDAY」は19年目を迎える今年、史上最大の規模になって、5月11日(土)に幕を開ける。従来の2days開催から、4days開催へスケールアップ。YOYOGI PARK PLAYGROUNDを中心にイベントとしての広がりも大きい。その開幕に先立ち、ALLDAYの運営本部でプロデューサーを務める秋葉直之氏と、MC MAMUSHIに話を聞いた。
4days開催の背景は「ニュースタンダード」
2005年にスタートしたALLDAYは、YOYOGI PARK PLAYGROUNDこと代々木公園バスケットボールコートの誕生を機に、その象徴としてボーラーのために始まった。以来、50チームトーナメントまで規模を拡大してもなお、2days開催が常。コロナ禍で1度だけイレギュラーな大会もあったが、代々木であり続けてきた。
そんな中、今春より大会は拡張する。男子は78チームによるメガトーナメントへ変貌し、女子は9チームによるウィメンズトーナメントが新設された。イベントのコンテンツも充実するという。2025年の20周年に先んじて、なぜ大きくなるのか。秋葉直之氏からは「ニュースタンダード」という言葉が飛び出した。
近年のALLDAYはエントリーの応募チームが増えていたが、50チームの出場枠があったため、泣く泣く30チームほど断りを入れていた背景があった。それでも、ボーラーたちより出場を渇望する声はあとを絶えず寄せられるとともに、NBAやW杯で日本人選手たちが躍進。秋葉氏の言葉を借りれば、トップ選手たちが日本のバスケシーンの頂点を引き上げ、ボーラーたちがその土台となる公園バスケの文化を豊かに広げてきた。バスケとゴミ拾いを掛け合わせた「PICK UP PLAYGROUND」の普及も、それらの証である。
その大きな変化の上で、ALLDAYはJORDAN BRANDやTOKYO 23といったパートナーにも支えられて、今回のスケールアップに踏み切ったという。4days開催は「今後のALLDAYのスタンダードになる」と、秋葉氏は明言した。
また、公園バスケをルーツに持つ大会だけに、同氏は別の視点も明かす。もともと男子も女子も誰でも参加できるオープントーナメントで始まったが、過去を振り返ると「何人か、何チームか女子選手が出てくれたけど、限定的」だったという。それ故に「これだとスタンダードになり得ないため、女性のトーナメントを作る必要がありました」と、秋葉氏はウィメンズトーナメント新設の経緯も語ってくれた。
19年の積み上げで、公園側の理解あってこその
大会規模の拡大にあたっては、当初3日間の連続開催も考えていたそうだが、雨天対策も考慮して、2週間をまたいでの4days開催になった。前回優勝のUNDERDOGを除く77チームを7ブロックに振り分けた予選トーナメントを5月11、12日に行い、2週間後の25日に各ブロックのベスト8決定戦TOP16を経て、同26日にディフェンディングチャンピオンを迎えて本戦トーナメントで頂点を争う。
当然、この大会方式によって地方から参戦するボーラーの負担が増えるという議論も、運営本部の中ではあった。それでも「ベスト16、ベスト8に入ってくれば、また代々木に来るだけの価値があるだろうと思いました。選手たちの負担を考慮して、予選はブロックに分けて11日か12日のどちらかに出場すれば良いように調整しています。議論の中で一番良い形を選んだのが4daysです」と秋葉氏は話す。MAMUSHも「パワーアップALLDAYをボーラーたちがどう楽しめるかやってみないと分からないけど(笑)、今んところ期待値が高い声を聞いていますね」と教えてくれた。
さらにALLDAYと言えば、代々木公園という公共施設での開催が特徴のひとつ。規模拡大が実現できるのも、公園側の理解あってこそと秋葉氏は強調する。19年間の積み上げや、2022年の「YOYOGI PARK PLAYGROUND Renovation Project」の功績も大きい。
「僕らは公園と共催でやっています。単純に場所を借りるのではなく、一緒に作ったコートで、公園の魅力を世の中に発信したり、公園をどう使っていくのか実証実験をするパートナーです。ひと昔前の管理者と利用者の関係性だったら難しいでしょう。僕らの提案をやれるようにお互いで考えようというスタンスは、ありがたいですね」
78分の1を決める戦い…新設のTOP16に注目も
そんなALLDAY SPRING 2024はルールこそ、これまで同様に1回戦からベスト16決めまでが12分一本勝負で、ベスト8决めから10分前後半になるが、コート内外で見どころが多そうだ。本戦男子で言えば新設された25日のTOP16は注目だ。これまでの2days開催であれば、ベスト8決めは熱戦が繰り広げられながらも、2面同時開催だったためフォーカスが分散しがちだった。
でも、今回は1面でサウンドシステムを入れ、MAMUSHIとDJ MIKOのタッグが全8ゲームを盛り上げる。ベスト16と、ベスト8はあのジャンプマンロゴのユニフォームを着れるか、着れないかのボーダーライン。加えて、そのユニフォームも今秋のAUTUMN 2024でリニューアルを検討しているため、春の8強に返却義務はない。25日と26日は、現行ジャンプマンのユニフォームが見られる最後の2日間にもなりそうだ。
もちろん、優勝の行方も大きな注目だ。なんせ78分の1を決めるんだ。MAMUSHIも「いやいや、そうなんだよ。トーナメント表のベースをExcelで作ったんですけど、このトーナメントで勝つのは大変だなって本当に思ってね。すんごいデカいトーナメント表だったよ」と興奮気味に話した。
そのMAMUSHI曰く、優勝候補の筆頭はUNDERDOGだ。大会最多12度のチャンピオンボードを掲げ、2023春、2023秋と初夏連覇を飾っており、今回3連覇がかかる。その絶対王者の対抗場になるのが、横濱Team-Sや、SIMONの横浜勢。2度目の出場となるYouTubeでお馴染みのSWAG CREWや、神奈川のFAKE street、仙台のPISTOL BROTHERSといった実力派たちもそろう。YOYOGI Park ballersも顔ぶれを新たにファイナルへたどりつけるか。
MAMSUHIも「自分がアクセスできるバスケで一番高まるものがALLDAY。もう5、6年ぐらい目標が定まっているよね」とコメント。この分岐が、代々木でどんな結果を生むのか楽しみだ。
ウィメンズトーナメントが創る女子ALLDAYの第一歩
一方で、男子に匹敵するポテンシャルを持っているのが、ウィメンズトーナメントだ。当初定員より1枠増やして9チームが、10分の前後半で頂点を争う。MAMUSHIは「初めてALLDAYのような環境でプレーする選手が多いんじゃないかと思います。まず楽しんでくれれば、その先へつながる」と話す。選手たちにとっても、運営側にとっても新たな試みとなるだけに「彼女たちが思い描く楽しいバスケは、必ずしもメンズと一緒では無いと思う。代々木公園に対する愛情を持ってるけど、とらえ方はメンズと違うだろうから、今回やってみて彼女たちがどういうALLDAYを望んでいるのか、感想を聞くのが楽しみ」とも語った。
秋葉氏も同様の考えを持ちつつ、すでに代々木を経験している桂葵や岡田麻央といったボーラーたちが果たす役割にも期待していた。男子に比べて女子はトップレベルを経験した選手たちが、カテゴリーを超えてつながっているケースが多いだけに、そのコミュニティが先鋭化している。桂や岡田をはじめ、どんな選手、チームがやってくるのか。「彼女たちがALLDAYを用いながら、どういう選手たちを呼んでストリートボールと出会わせるのか興味があります」と秋葉氏は語った。
ウィメンズトーナメントは25日にベスト4までを決め、26日にセミファイナルとファイナルが行われる。代々木で女子バスケシーンの新たな歴史が作られる2日間が楽しみだ。
コートを起点に街へ広がるALLDAY…代々木は新時代へ
そして、今大会はコートでバチバチのゲームが繰り広げられるだけでなく、さまざま取り組みが行われる。例えば11、12日の前半パートと、25日、26日の後半パートではコートデザインが変わるため、2つの顔の代々木が楽しめる。JORDAN BRANDも最新モデルの試し履きブースを設置するほか、優勝チームにプライズを贈呈するだけでなく、ベスト16まで勝ち残ったチームは、50% OFFでショートパンツを購入できる。受け取った選手たちが大会期間中に同ブランドの直営店「World of Flight Tokyo Shibuya」に行くと、カスタマイズもできるそうだ。
また、25日のTOP16前にはキッズクリニックが行われる。それも、未来のボーラーたちのため、今夏世界の大舞台で活躍が見込まれるトップ選手たちが代々木にやってくる予定だ。お馴染みのキッチンカーなども出店予定なだけに、バスケットボールを中心に、大人から子どもまで公園で楽しい時間が過ごせることは間違いない。
さらに、代々木から街へ広がりがあるのも、今大会の魅力になる。原宿のTOKYO 23では5月11日から6月2日まで、店内でポップアップを展開。ALLDAY SPRING 2024のキーカラーのルーツである「JORDAN SPIZIKE LOW PRM LIGHTNING」発売を通して、19年目のメガトーナメントを強力にプッシュする。期間中には、MAMUSHIがオーガナイズするイベントや、26日の本戦トーナメント終了後にはアフターパーティーも計画されている。
アメリカのストリートボールの聖地・ラッカーパークを目指して始まった代々木のビッグトーナメントは今年、19年間も積み上げた土台の上に、日本バスケシーンの追い風も受けて、新たな歴史を刻む。あり続けてきたALLDAYが「ニュースタンダード」のキーワードのもと、新時代を見せてくれるだろう。秋葉氏は「日本だけでなく、アジアを代表するストリートボールの大会になっていく姿が、次のフェーズになる」と、ビジョンも示す。その序章となる、ALLDAY SPRING 2024のティップオフはもう間もなくだ。
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秋葉直之 氏
MC MAMUSHI
TEXT by Hiroyuki Ohashi
PHOTO by Kasim Ericson