• COLUMN
  • 2019.09.25

代々木コートの未来を考えるイベント「FUTURE OF YOYOGI BASKETBALL COURT」が開催

NIKE JAPANが2004年に寄贈して以来、ストリートバスケの聖地として知られる代々木公園バスケットボールコート。昨年、代々木公園にサッカースタジアムを建設するという「渋谷スクランブルスタジアム構想」が渋谷区の外郭団体である渋谷未来デザインから発表され、代々木コートでプレイするユーザー達からは「コートがどうなってしまうのか?」と不安がる声が聞こえてきた。そんななか、代々木コートの未来についてディスカッションするイベント「FUTURE OF YOYOGI BASKETBALL COURT」が開催された。

2019年9月17日、渋谷駅から代々木公園に向かって歩く途中の公園通りに位置するコワーキングスペース「la billage」には年齢・国籍さまざまなボーラーたちが集まっていた。集まった55名の中には、15歳1名をふくむ10代が7名、40オーバーが4名と年齢層は幅広く、国籍も中国、フランス、アメリカ、ペルーなど多国籍だ。

《世界TOP5に入るアイコニックなコート》

最初に話したのは、パリのストリートファッションブランド「PIGALLE」デザイナーのステファン・アシュプール。レブロン・ジェームズが訪れるなど世界的に有名な美しい「PIGALLE BASKETBALL COURT」をつくったことでも知られる彼は、10年以上前から代々木コートでプレイしてきた「代々木ボーラー」のひとりでもある。

アシュプールにとって代々木コートは世界でTOP5に入る素晴らしいコートだ。「NYの2つのコート、ベニス・ビーチ、パリのPIGALLEコート、そして代々木。この5つがアイコニックな世界で最もアイコニックなコートだと思っている。ここは世界のバスケットボールカルチャーにとってとても大切な場所なんだ。」彼は、PIGALLEコートも同じような経験をしていると励ます。「2年前にパリ市がコートのある場所にビルを建設しようと計画したんだ。そのとき、君たちと同じようにボーラーたちが集まって話し合ったんだ。そして10日間で2000名の署名を集めたんだ。」多忙な来日スケジュールの合間を縫って来場してフライト時間ギリギリまで話してくれたステファン・アシュプールの言葉はボーラーたちには心強く響いたことだろう。

《代々木コートの価値とは》

そして今回のイベント発起人のひとりである池田二郎(JIRO)がスライドで経緯と主旨を説明。渋谷未来デザインのスタッフから直接ヒアリングしてきたという彼は、スクランブルスタジアム構想では実際はバスケットボールコートの存在を大事に考えられている、と話す。スタジアムができるできないに関わらず、バスケットボールに興味がない地域住民や他の公園ユーザーにたいして代々木コートの価値というものを理解してもらう必要がある、と力説する。そのためにはまずみんなに意見を聞きたい、と促す。「みんなにとってのこのコートの価値って何ですか?どうして大事なの?どうしてこのコートをなくしたくないの? これはすごく個人的なことで大丈夫。それをまず聞きたい。そして、もうひとつ。このコートは地域のため、他人のためにどのように役に立っているんだろう? これは今日じゃなくてもいいけどそれぞれ考えてほしい。」

また、渋谷未来デザインのチームは、ユーザーが求めるコートというのはどのような形なのか、を積極的にヒアリングしていきたいと話しているという。それぞれのユーザーにとって、コート施設の重要度は違うので、もっとユーザーから意見を集めて伝えていきたい、とのこと。例えば、ロッカールームやシャワーなどの施設はどのくらい需要があるのか。それとも、そのような施設をつくることでコートが減ってしまうのであれば、ぞれよりもより多くのコートがあったほうが良いのか。良かれと思って作ったものがユーザーの求めるものと違うことにならないように、きちんと伝えていくことが大事という。コートの価値が何なのか。いつでも誰でも使えるオープンな空間である、ということに価値があるのであれば、自ずからどのようなコートをつくれば良いのかもわかってくる、と考えている。

発起人のひとりである元3×3日本代表の海老原奨にとって代々木コートの価値はライフスタイルだ。「朝ひとりでもコートにいけば誰かがいる。そこで仲間ができたり。そしてそれがコミュニティになっていく。その価値が全然伝わっていないのが現実なので、それを外に伝えていかなくてはいけない。」と語る。さらに今回は発起人となっているがあくまで火付け役にすぎず、ユーザー自身が責任感を持って引っ張っていってほしいと訴えた。

もうひとりの発起人、小田切靖一は毎週末通うヘビーユーザー。「そもそもこのコートができたときに動いてくれた人たちというのがいる。そしてこのコートを次の世代に残していくっていうのが僕たちの使命なんじゃないかって思ってる。社会人もいれば高校生もいる。そういう特殊なコミュニティなので、簡単ではないけどベクトルを合わせていく必要がある。」社会人として常日頃経験するベクトルを合わせることの大事さがこのコミュニティに必要だという。

通信制に通う高校生の参加者は、「部活がないのでバスケできる場所は限られてる。でも、なんで代々木にいきたいかというと、魅力と刺激があるから。部活だったら一番離れていても2コ上。代々木は世代関係ないし、外国人とバスケできる。そこでバスケだけじゃなくて自分のためになった。いろんな文化の人たちがいて、いろんな考えの人たちがいる。日本人だけじゃなくて。自分の考えも広がった。そういうことが学べたのはこの環境だからこそ。そして自分のコミュニティも広がった。」と代々木コートの魅力を力強く語った。

3×3日本代表の経験もあり、現在もSOMECITYなど日本のストリートバスケットボール界で活躍するCHIHIROも、代々木に育てられたと思っていて特別な場所だと語る。ここを聖地と思っていて、地方から道場破りのように来るボーラーもいるので、もっとそういう部分を知ってもらう必要性を感じている。

このほかにもさまざまな意見やアイディアが出ていたが、このイベントは最初から最後まで日英バイリンガルで行われていたのが、多国籍な代々木コートを象徴していて印象的だった。

このイベント後にはハッシュタグ #FUTUREOFYOYOGI が作られ、今後公園の清掃活動などさまざまな活動をしていくという。

代々木コートを次世代に残していくためのムーブメントに期待したい。

 

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