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  • 2022.03.16

UTSUNOMIYA BREXとBEEFMANが3×3日本選手権で初V。王者から感じる競技の本質

男子はUTSUNOMIYA BREXの、女子はBEEFMANの初優勝で幕を閉じた『第7回3×3日本選手権大会』。ともに競技シーンでお馴染みのチームであるが、昨年の日本選手権では決勝の舞台へ立てずに終了。それでも、この1年で戦い方を磨いたり、新たな仲間を迎えたりして、今大会でチャンピオンボードを掲げるに至った。彼ら彼女らの3×3に対する向き合い方、言葉からは競技の本質が感じられる。

JBAの3×3日本一決定トーナメント
 日本バスケットボール協会(JBA)が主催する3×3の日本一決定戦『第7回3×3日本選手権大会』のファイナルが2月26日、27日の2日間にわたって開催された。今大会はJBAが主催する国内ツアー大会の『3×3 JAPAN TOUR』、クロススポーツマーケティングが主催するプロリーグの『3×3.EXE PREMIER』と並ぶ、国内主要大会のひとつ。その特徴としては一発勝負の都道府県予選、西・中・東日本のエリア予選、ファイナルで構成された全国規模のトーナメントであることだ。

 今年も予選を突破した男女各16チームが、昨年に続き新宿住友ビル三角広場に集結した(一部チームは新型コロナウイルス感染症の影響で出場を辞退)。コロナ禍のため感染拡大防止の観点から2年連続で無観客開催になったものの、幾多の熱戦が繰り広げられ、男女ともに新たなチャンピオンが誕生。男子はUTSUNOMIYA BREX(栃木県)が、女子はBEEFMAN(岐阜県)が初優勝を飾った。

BEEFMANのMVPが語る競技の面白さ
 昨年、第6回大会の準決勝・XD戦で大敗してから約1年。女子のBEEFMANが3×3を突き詰め、直前のエントリー変更を乗り越えて頂点に駆け上がった。1回戦が不戦勝となったため準々決勝から登場すると、AOBA(神奈川県)との初戦を22-10で快勝し、大会2日目の準決勝では、日本選手権で2度の優勝経験を持つ浅羽麻子と、昨秋の『3×3 JAPAN TOUR 2021 EXTREME FINAL』を制したPERITEC Inter Oizumiの安江舞ら3人を擁するQUEEN BEEに21-16で逆転勝ち。決勝では『3×3 JAPAN TOUR 2021 EXTREME FINAL』の準決勝で敗れたTOKYO DIMEに18-14でリベンジし、大会を締めくくった。

 BEEFMANは準決勝、決勝ともに試合序盤は苦しい時間帯もあったが、個々の強みと、チームの連係を遺憾なく発揮して勝利を引き寄せた姿が印象深い。花田遥歌(#2)と、桂葵に代わってメンバー入りした中村和泉(#7)は162センチというサイズの小ささを感じさせないアグレッシブなドライブを仕掛け、矢上若菜(#14)と前田有香(#11)は2ポイントシュートを要所で決め切った。そしてダイブやスリップといったゴール下に走り込むプレーにパスを何度も通して、1点を積み上げるコンビネーションは試合を制する決め手になった。


 大会を終えて、前田は昨年の大敗から約1年間を経て優勝をつかめた要因について「連係(プレー)はとても練習をしてきました」と明かす。「自分が3×3という競技を(改めて)しっかりと学んで、どういう練習をやっていけばいいのか考えましたし、それをチームに浸透させるまでやり続けました」という言葉からは、チームとしてとことん競技に向き合った姿も感じられた。3×3は“ストリート生まれの競技”と形容されるだけに1対1に目が向きがちだが、それだけでは勝てない。前田はダイブやスリップという機動力をいかした連係プレーに、競技の魅力を感じていた。

「私の中で3×3には連係の面白さがあって、そこが楽しいですね。1対1も大切ですが、そういう地味ではありますけど、得点につながるために動いてくれるメンバーや、献身さがチームには必要です。4人全員でそれをできる点が、今回はとても私たちにとって大きなことでした」

 また、2017年から3×3に取り組む前田は、今大会の結果によって日本選手権で初めてMVPに選ばれた。第5回大会(2020年)にREXAKTの一員で優勝を経験しているが、当時のメンバーは3×3の勝手知ったる矢野良子氏など歴戦の仲間たちと獲ったもの。自身2度目の優勝はやはり受け止めも違っていた。

「大会前はめちゃめちゃ不安でした(苦笑)。自分が(3×3を)積み上げてきて、練習もみんなでやってきたのですけど、やっぱりそれが試合で通用するのか……でも、大会が始まってみれば、やってきたことが間違っていなかったと思えました。他のメンバーも頼もしくてハッスルすることが大事だとみんなに教えてもらいましたね。みんなで頑張れたと思います」

成瀬と飯島から思う3冠BREXの強さ
 7度目の開催を迎えた日本選手権であるが、UTSUNOMIYA BREXの出場は今回が2度目。昨年は準々決勝のBEEFMAN戦で敗れただけに、彼らにとって今大会の初制覇は念願叶ってのタイトル獲得になった。これで昨夏の『3×3.EXE PREMIER JAPAN 2021 PLAYOFFS』、昨秋の『3×3 JAPAN TOUR 2021 EXTREME FINAL』に続き、国内主要大会で3冠を達成して、その強さを改めて印象づけた。特に今年1月より新たに迎えた成瀬新司(#55)が、チームにフィット。ディフェンスやルーズボールなど球際でハッスルできる彼の良さと、BREXの相性は抜群だった。相手に激しくプレッシャーをかけてボールを止め、奪い、攻撃に転じる強さに磨きがかかったと言っていい。

 2日間を振り返っても劣勢の場面は無かった。初戦でSANJO BEATERSに21-11で快勝すると、準々決勝でEPICを21-15で下し、翌日の準決勝ではDominateを21-6でシャットアウト。決勝でもSolvientoを21-9と寄せ付けなかった。全試合KO勝ちで、EPIC戦を除いた3戦は2分以上を残してゲームを終わらせた。結果的に最も点差の詰まった試合は、Dušan Popović(#5)合流前に齊藤洋介(#11/以下YOSK)、飯島康夫(#7)、成瀬の3人で出場した東日本予選(1月29日)のSENDAI AIR JOKER戦にさかのぼる。最終スコアは21-20と薄氷を踏む内容だったが、決勝の2ポイントを決めたのはBREXデビュー戦となった成瀬でもあり、そんな加入して間もない彼のためにも「日本選手権で勝ちたかった」と、YOSKと飯島は言っていた。見事にそれを実現したことは、結果以上に意味を持つに違いない。


 もっとも、当の成瀬からは大会後「もし万が一、僕が入って負けようものなら……という気持ちが正直言って自分の中にはありました。だから優勝できて、ホっとした気持ちが一番あります」という声が寄せられた。ただ、これは自然なことなのかもしれない。成瀬の本音は「僕が入ったから負けるわけにはいかないと感じていました」という昨年、BREXでプレーした小澤崚(現TSUKUBA ALBORADA)のコメントと重なった。それでも、新加入の選手たちはプレッシャーをはね返して勝利に貢献しようとするため、まずディフェンスに全力を注ぐ。成瀬はそれが最大の武器であるため、チームの強さに直結していると感じられた。本人も「僕ができることはハッスルして、エナジーを注入すると言うか、そういうきっかけになりたいと思ってやっています」と、話している。

 そして、「自分のやるべきことは今の成瀬の立ち位置。ディフェンスとリバウンドを頑張ることをひたすらやっていました」と、BREXに入って間もない時期を振り返ったのは、大会MVPを獲得した飯島だ。かつてはYOSKやDusan、Marko Milaković(現Novi Sad)に続くサブとしてのイメージがあったものの、いまやメインプレーヤーとして成長を遂げた。ディフェンスはもちろんドライブや2ポイントなど攻撃の柱となって、コンビネーションもよどみない。「今まで3×3をはじめてから日本一になってMVPを取ることがなかったので、本当に嬉しいです」とマイクを握る姿も、堂々としていた。彼の3×3キャリアは、3×3.EXE PREMIERの初年度となる2014年から。その後5人制のプロキャリアも切り拓き、3×3でも数チームを経てBREXで優勝と、今大会の勲章を手にするまでになった。飯島からはチームの強さが「よく分からないんです……(笑)」と言われたが、常勝チームでプレーする上で意識していることを聞けば、その強さに納得できるだろう。

「まずはディフェンスですね。僕はBREXに入った時と、今とやっていることは変わっているようで、変わっていないと思います。ディフェンスを頑張って相手より多くのオフェンスをする。僕らは1回のオフェンスの得点確率が70%から80%と高いんです。だから、ディフェンスをしっかりやってオフェンスの回数を増やして、80%近い確率でシュートを決められたら勝つ、と言う考えを実践しています」

3×3の本質とは何か……
 このように3×3シーンを引っ張ってきたチームが日本選手権を初めて制し、お馴染みの選手たちがMVPを獲得した今大会。個人ではなくチーム力、1点を取り切る力、共通理解の高さ、強度の高いディフェンス……など、3×3の特徴を表す言葉は様々あるが、両チームのプレーや選手たちの言葉からは例年以上に、それらが詰まっていたように感じられた。強烈な個がゲームの流れを左右することもあるが、勝負所で勝ちをたぐり寄せる力は、チームとして連係の深みがあるか、ディフェンスやルーズボールなど球際で踏ん張れるか、そういった派手さよりも粘り強さや泥臭さから生まれてくる。これが競技の本質ではないだろうか。


 先駆者たちの3×3に取り組む姿勢はやはり大きく、競技シーンをけん引する力になる。改めて、そう感じさせてくれた日本選手権だった。

UTSUNOMIYA BREXとBEEFMANが3x3日本選手権で初V。王者からから感じる競技の本質

TEXT by Hiroyuki Ohashi

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