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  • 2021.05.28

KYUSYU STREETBALL × MAMUSHI GO -Part 1-

昨年から続くコロナ禍を顧みて「これはいかん!」と一念発起し自発的に立ち上げたキャンペーン、MAMUSHI GO。今回はこのキャンペーンの一環で2021年5月に訪れた大分、そして福岡で感じたストリートボールについてここに書き記す。

まずは前置きとして、2021年1月に勝手に発令したMAMUSHI GOというキャンペーンについて説明しよう。

多分に漏れず、皆と同様にオレ自身も昨年の春から息苦しく暮らしてきた。さまざまな仕事を同時並走させている生き方だから生活苦に陥っていたわけではないけれど、それでも2020年はストリートボールを楽しめる機会が激減。これは、人生の刹那の瞬間を大事に満喫したいと願う自分にとっては翼がもがれたようなもので、大袈裟に言えば生きてるんだか死んでるんだか良く分からない時間だった。しかもそれが自分だけでなく、日本中、世界中が陥ってる。

そして、年末年始に時間を作って2020年を振り返った際にいよいよ思ったわけです。「このままではいかん!日本のストリートボールが先細ってしまう!なんとかゲームをしないと!」と。状況的に、幸か不幸か今の自分には時間がある。感染防止対策のガイドラインに則った上で自分が日本各地に行くことで、その街のストリートボールが盛り上がったり楽しめたり、何か気づきや刺激が生まれれば意義があるんじゃないかと思いついた。ゲームの規模は大きくなくていい、莫大な予算もいらない、ストリートボールで遊ぼうぜ、オレも行くからさ!要はそういうことをやってみようかというキャンペーン。政府によるGo Toキャンペーンとかいう賛否両論の話題に悪ノリであやかって、タイトルをMAMUSHI GOと定めた。

ストリートボールにまつわること、それが1on1でも3on3でも5on5でも21でも何でもいいけどゲームのMC(大会でもピックアップゲームでも問わない)だったり、かつて東京原宿のバスケットボールカフェのcoast 2 coastで主催してきたStreetball Flava(数々の名作ストリートボールビデオの中からセレクターによって厳選された良作を上映するストリートボール観賞コミュニティ)のようなものでもいいし、ポッドキャストで展開しているMC MAMUSHI’s radio show BIG BAD SPEAKERSのように公開収録やトークショーをやってもいい。オレが尽くせることで盛り上がれるなら何でもやるし、そこに出演料のようなギャランティは一切いらない。これが今イメージにあるMAMUSHI GOの概要だ。

そういったことを、まずはポッドキャストで喋っていたら真っ先にオファーをくれたのが、今回大分や福岡に訪れるきっかけとなったKYUSYU STREETBALLというゲームのオーガナイザーのMatsukenだった。Matsukenのことは以前からもちろん知っていて、今西日本でバスケのゲームを組む際に一番実現力が高いパフォーマンスを誇る代表格で、九州内で複数のSOMECITYを、また広く西日本での3×3やその他オリジナルゲームをオーガナイズするイベンターのプロだ。ちなみに東日本では、東京新木場にF1 STUDIOをオープンさせたちゃん岡がその代表格を務める。

MatsukenはMC MAMUSHI’s radio show BIG BAD SPEAKERSのヘビーリスナーで、番組でMAMUSHI GOの概要を喋るや否や即座にオファーをくれた。もちろん二つ返事で快諾し、ひとつだけリクエストを伝えた。「DJ MIKOも一緒に連れて行ってもいい?」。DJ MIKOとMC MAMUSHIのセットは16年目の熟年夫婦タッグで、せっかく行くなら九州のみんなにベストなものを感じて欲しかったからだ。Matsukenもこれを快く受け入れてくれて、5月15日(土)に3on3、翌16日(日)に5on5のコンペティションを開催ということで日程も決定。前入り後泊を信条にしている我々なので、旅程は5月14日(金)から17日(月)までと決まった。

5月14日(金)に福岡入りした自分とDJ MIKOはそれぞれ、旧友でありストリートボール界にとって数々の功績を残してきた面々(古後登志夫 / U-LAW / M21 / YOHEI / Lil’G / SHUJ1 / 青木康平)らと再会し互いの近況を共有。気持ちの良い晩を過ごした我々2人は翌朝大分入り。

大分駅でKYUSYU STREETBALLのスタッフでもあり、現役ボーラーのTAKUMIとAOTOが車で迎えに来てくれていたので、いそいそと乗り込み会場の大洲総合運動公園へ。のちにTAKUMIとAOTOとは打ち解けるのだが、このときの初対面では車内は無言&無音でこちらにも妙な緊張が走った(笑)。平年よりもずっと早い梅雨入りをしていた大分は雨模様な上に異常なほどの高温多湿状態。「変なことが起こりそうな天気だな」、そう思いながら会場入り。

オーガナイザーのMatsukenが全てのセッティングを済ませ、参戦ボーラーたちが各々ウォーミングアップを淡々と行っていた。Matsukenや先に紹介したちゃん岡がイベンターとして優秀で実現力が高いと評されるのは、個人の力量はもちろんのこと、制作チームを担える人材と、バスケのイベントを実施する上で必要な機材や設備のほぼ全てを保有していることにある。大洲総合運動公園の小体育室というロケーションでも、Matsukenが保有する機材の数々で必要な機能はもちろん、雰囲気まで演出しようという気概を感じた。

Matsukenを筆頭として制作チーム、レフェリーにオフィシャルカメラマン、そしてこの日の出場の5チームと我々だけが存在するコートで、KYUSYU STREETBALLのDAY1、3on3ゲームがスタートとなった。新型コロナウィルス感染防止対策のガイドラインに則って無観客での開催、生配信があるわけでもない。ビデオ収録はしていたけど、DJ MIKOのDJプレイも、自分のMCも全てこの日プレイしているボーラー30名ほどだけに向けたものとなり、これはこれで新鮮な気持ちで臨む機会だった。

現場にも画面越しにも聴かせる観客がいない中、ということはプレイしているボーラーにだけ伝わるMCをすればいいのだという割り切りになる。なかなかない機会につい口数も増え、予選にエキシビションに決勝と全7ゲームでうっかり声を枯らしそうだった。また、大声出しすぎてスピーカーがぶっ飛ぶハプニングもあったくらい、こちらはマンキンだったのだ。

一方ボーラーはと言うと、レベルも年代もさまざま。若手は10代後半がいて、ベテランは自分と同年代くらいのアラフォー世代も居たと思う。「3on3まだやりなれてなくて」という子も多かったけど、MCで求めれば何か反応をしてくれるピュアなボーラーたちは確かに居た。「今日はがっつりお前のプレイを魅せてくれよ!目立っちゃっていいんだぜ!お前の名前をプレイを全国に知ってもらうぜ!オレが語り回るぜ!」とか、そんなことを頻繁に言っていたと思う。




YouTubeやSNSでいきなりバズるようなスーパープレイがバシバシ生まれたわけではないけど、ゲームの流れを感じてここはオレが頑張るべきところだと精一杯アタックして決めたり外したりで一喜一憂してるみんなを見て安心した。九州のSOMECITYでプレイしている面々がその空気をリードしていたけど、この日をきっかけに何か気づいたボーラーたちも居たはずだ。

その一人が先に紹介したAOTO、19歳のボーラーだ。彼はDEVILS OITAという5on5ではB.LEAGUE、3×3では.EXE PREMIERを目指して活動するチームの契約選手で現役の大学生で、この日のKYUSYU STREETBALLでは献身的なスタッフでありながら、プレイすればエースを張れる逸材。

ただ、この日のゲーム中に幾度となく自分が仕掛けるべきところを見逃していたように感じていた。この日の全てのゲームが終わり、制作チームと数名の参戦ボーラーとDJ MIKOと自分でのささやかな中打ち上げの際に「なぜ自分が仕掛けるべきチャンスで仕掛けないの?オレもゲーム観てるみんなも感じていたよ。ああいうところではキミが攻めないとダメなんだよ。遠慮はいらないんだよ。でも、ああいうときにキミが攻めたら、観てるみんなは喜んじゃうし盛り上がっちゃうんだよ!」みたいなことをこんこんと伝えた。

19歳のいたいけな青年が、いきなり東京から来たアフロの横柄なMCにガミガミ言われていた様は客観的に見れば気の毒だけど(笑)、まぁオレはそういうことを言いに来たわけだから勘弁して欲しい。


翌16日(日)は、コンパルホールという大分市民のための複合施設内のフルコートでの5on5コンペティション。前日の3on3にも出場していたチームに加えて、福岡からM21(UNDERDOG)、YOHEI(CRATE)、U-LAW選手(SAMURAI BALLERS)らもFK crewというスペシャルチームを結成して参戦ということで、これまた賑やかなゲームになるだろうと思っていたら、まさかのデッドシリアスっぷり(笑)。

シリアスなゲームは臨むところだけど、予選の最終ゲームでFK crewのYOHEIとKOKI’sのリーダーKOKIがトーキンシットからのお互いブチ切れモードで、それまでえいやえいやと盛り上げてきたイベントの空気が完全に悪くなったには困ったし笑ったね。まぁ、ストリートボーラーなんていう癖の強い連中が真剣にプレイしたら、そらトーキンシットも乱闘もたまには起こるんだけどさ。

とはいえ超空気悪くなったままイベントを進行したくなかったから勝手な一存でブレイクタイムを取り、喫煙者はオレと共に喫煙所集合。「ファイトするのは全然構わないけど、ポジティブなゲームを最後まできっちりやり切ろうぜ」と気持ちを整えて、急遽ピックアップゲームを挟むことにした。

前日の3on3でプレイしていて存在感が出まくってたHeROとT-MACCO(SOMECITY FUKUOKAではMCもしてる)を、本当は日曜日は来る予定がなかったところを前の晩に口説いて「お前ら明日も来いよ!んで、どっかチャンスあったらMCやってくれ!」って招集してたから、このピックアップゲームでは自分もプレイすることに。何の準備もなく思いつきで急遽差し込んだピックアップゲームだったし、ノーアップのオレが大したプレイもできるはずないんだけど、ピックアップゲームじゃないと試せないプレイとか所属チームを超えた連携とか、なんだかんだで空気が和む1ゲームになったね。


このゆるふわゲームを1戦挟んで、予選ラストゲームで完全に空気が悪くなったFK crewとKOKI’sが決勝戦で再戦するってことになるんだけど、この決勝戦が見事なクロスゲームになってさ。

バッドバイブスが出ることもなく、互いに集中して気持ちの良いファイトが前後半終始続いて、残り1分切ってKOKI’sのリーダーKOKIがアイソレーションから1on1でメイクしてKOKI’s逆転!その後、残り10秒でFK crewはRIKUの3Pのタフショットをねじ込んで再逆転!残り3秒でKOKIもDFかいくぐってウィニングショット狙ったんだけど、これが惜しくも外れてタイムアップ。

勝った負けたで嬉しい悔しいがあるんだけど、それでもバイブスナイスでゲームを終えれて、オレたちもボーラーたちも何だか朗らかな顔つきだった。ファイトしてたYOHEIとKOKIもゲーム後はシェイクハンドしてて安心した。


全てのゲームを終えて、土日全ての活動を共にしたTAKUMIと話していて「MAMUSHIさん、昨日の話があってAOTO超変わりましたよ。あんなに積極的に攻めるアイツ初めて見ました。それにオレも超楽しかった」というので、「そりゃ何よりだぜ。次はオレがキミらに伝えたようなことを街の後輩たちに伝えて行ってあげてや」と伝えた。

また、旧友であるM21と話していたときは「マム、九州のストリートボールは東京に比べて10年遅れてるよ」と聞き、確かに現状はそうかもしれないけど同じように10年かかる道のりってわけでもないよなと思った。M21やYOHEIやU-LAW選手といった日本全国区で活躍した経験を持つみんなと、これから何かを成し遂げたい若人たち、そしてMatsukenのような心強い存在がいる九州なら、日進月歩飛び級飛び級であっという間にその差なんて埋まるもんだと思う。

DJ MIKOが積年のアーカイブから繰り出してきたDJプレイで作った空気感、口うるさいMCとしてのオレが煽ったメッセージを、次は九州の人間が九州に人間に伝えて欲しい。またの機会には、九州のストリートボールMCやストリートボールDJとも会ってみたい。DJ MIKOとMC MAMUSHIが本当に伝えられることなんて限られていて、ネクスト自分たちを見出したい我々にとっては次はそこも刺激したい。オレたちがボーラーに具体的にプレイの何かを伝えられることは少ないからさ。そういった意味だと、九州のボーラーでもっともっと上手くなりたい若人を育ててくれる機能がもっとあってもいいなと感じた。

大人になってもバスケを習いに行ける環境が必要。気持ちはあるんだけどそれをどう表現していいかまだ分からない迷い子たちを導いてくれるマスターの存在よ。WATCH&CやKAGO BASKETBALL SCHOOLの門を叩くのも良いと思うし、東京からSpaceBallのBANG LEEさんを連れて行きたいとも思った。TOKYO BEASTのSOGENや平塚ConnectionsCHIHIROに同行してもらってあのアティチュードを伝えて欲しいとも思うし、UNDERDOGのDAISUKEを連れてポストムーブ研究会を同時開催しても良い。上手くなりたい個人の気持ちを受け止めてくれる機能が九州に増えれば、あっという間に激戦区に様変わりするだろう。

今回の旅程内では会うタイミングを作れなかったけど、SOMECITY FUKUOKAをオーガナイズしているリアルボーラーONOJAPANに話を聞いてみるのも良いと思う。心底信頼できるガチンコボーラーだから。

2日間のゲームで、オレが個人的に気になったボーラーたちについても触れておこう。先に触れたAOTOの得点感覚、そしてTAKUMIの縦横無尽の運動量はゲームに影響できる逸材だった。HeROやT-MACCOはONOJAPANと過ごしているだけあって、見事にストリートボールに染まっている。プレイも個性的で良いし、ゆくゆくはこの街のバスケお喋りおじさんにもなれる才能があった。

KOKI’sでプレイしたKOSUKEは20倍界王拳からの超サイヤ人になれるアジリティの持ち主で、ファーストブレイクを駆け抜ける速さとプルアップの高さは目を見張るものがあったし、同チームのARMYは大人になってからバスケを始めたというリアル桜木花道で、でたらめなフォームなんだけどゴール下を制圧する原始の恐竜みたいな破壊力だった。

FK crewのYOHEIとファイトして空気を悪くしたKOKIも「こいつは本当にバスケが好きなんだな」と分かる研鑽されたスキル、負けん気も強くてオレは好印象。アナキン・スカイウォーカーみたいにダークサイドに負けないで九州のジェダイマスターを目指して欲しい。

DAY1の3on3を制したFOXやSOらも「このゲームはオレたちのゲームだ!」を気持ちを感じるドミネイトっぷりも見れた。

FK crewを5on5優勝に導いたRIKUは、今福岡で最注目のボーラーと皆がレコメンしてくれたニューエース。デカい、ゴツい、クラッチシュートに強い、そして男前と才能が固まってる。

八村塁世代のU16日本代表として活躍したキャリアを持つGUNJIという逸材も気になったけど、プレイしてないブランクがあり過ぎてまだまだ褒められる仕上がりじゃなかったけどこれからには期待できる。

また、ローカルではリスペクトを集めるオレと同年代のストリートボール大好きガードのTJがオンファイヤーした瞬間や、U-LAW選手のストリートムーヴ、コンディションが好調そうなM21、今更気づいたけど実は怒らせることで全ての能力がMAX値になるエンペラータイムを発動できるYOHEIの激ギレ3P&リバウンドなど、印象的なプレイや存在は数々あったし居たよ。

というのが今回書き記す気になったKYUSYU STREETBALLで感じたことでございます。ここに書き切れてないエピソードは、ポッドキャストで喋っているMC MAMUSHI’s radio show BIG BAD SPEAKERSで語る機会を作るつもりなので、合わせてそちらも聴いてみて欲しい。

MAMUSHI GOの第一弾としては、今回の旅はイメージ通りの全てのミッションを遂行することができて満足だし、でも物語はもう始まっちゃったから今後の九州ストリートボールの進化も気になるところ。そして、まだまだ日本中を駆けずり回るつもりです。みんなの街のストリートボール、そのカンフル剤になるならいくらでもオレを使い倒して欲しい。MAMUSHI GO、絶賛受け入れ先募集中。問い合わせ先はMAMUSHIのSNSにDMでもメッセージでも何でもいいのでシグナル下さい。神出鬼没に現れて煽ります。

Matsuken、そして今回出会えたみんな!ありがとうなー!また激しくやろうぜ!

KYUSYU STREETBALL × MAMUSHI GO -Part 1-

TEXT by MC MAMUSHI
PHOTO by yuka
ORGANIZED by 松岡 健太郎 a.k.a Matsuken



KYUSYU STREETBALL × MAMUSHI GO -Part 2-

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