3×3 JAPAN TOUR 2021が開幕。初戦の主役と若きチャレンジ
国内の3×3主要大会のひとつである「3×3 JAPAN TOUR」の2021シーズンがはじまった。初戦となるRound.1が4月17日、18日の2日間にわたって、ドーム立川立飛(東京都)で開催。ここでは最高峰カテゴリーのEXTREMEの結果をピックアップし、大会の主役たちを中心に、次世代のチャレンジを紹介したい。
11月まで続くシーズンのツアー概要
まず日本バスケットボール協会(JBA)が主催する「3×3 JAPAN TOUR」の概要を確認しておきたい。今シーズンは強化や育成を主な目的とする最高峰カテゴリーのEXTREMEに加えて、昨シーズンは新型コロナウイルス感染症の影響で開催されなかった普及や育成を主な目的とするOPENを2シーズンぶりに復活させた。いずれも4月17日、18日のRound.1を皮切りに、今年10月まで8大会が計画され、EXTREMEは大会ごとに獲得したツアーポイントの上位9チームによるFINAL(11月13日、14日予定)で日本一を争う大会フォーマットになっている。
また男子EXTREMEには3×3クラブ世界No.1決定戦「FIBA 3×3 World Tour Masters」の予選会となる「FIBA 3×3 Challenger」という国際大会へ道が開かれている。FINALを含めた全9大会を3大会ずつに区切り、Round.1から3及びRound.4から6のツアーポイント各1位と、FINALの優勝チームにChallengerの出場権が付与される予定だ。
BEEFMANが昨季に続き初戦V
では、17日の女子EXTREMEの模様から振り返りたい。6チームがエントリーした今大会には3月に開かれた「第6回3×3日本選手権大会」の女子優勝チーム・XDのメンバーを中心に構成されたREXAKTや、同大会ベスト4のTOKYO DIME、BEEFMANら3×3の常連チームに混じって、高校生チームのKUKI GYMRATSも参戦。昨冬の「第7回3×3 U18日本選手権大会」の優勝チームが代替わりして、国内トップカテゴリーに挑戦した。
そして3チームずつに分かれて総当たり戦の予選が行われ、首位通過したBEEFMANとTOKYO DIMEが決勝へ進出。18-14でBEEFMANが勝ち切り、昨シーズンに続いてJAPAN TOURのシーズン初戦で優勝を飾った。前田有香(#11)、桂葵(#25)、矢上若菜(#14)の中心選手と、この日が3×3デビュー戦でかつてWリーグのシャンソンに所属した増岡加奈子(#47)の新戦力が融合し、幸先の良いスタートを切ったのだ。
敗戦続き……3×3の向き合い方を改めて
もっともBEEFMANが大会でチャンピオンボードを掲げた姿は久しぶり。昨年11月の「3×3.EXE PREMIER JAPAN 2020 CUP」以来である。競技に打ち込む女子3×3シーンの代表格ではあるが、昨シーズンは日本一の懸かる「3×3 JAPAN TOUR 2020 EXTREME Limited FINAL」(昨年10月)と、3月の日本選手権でいずれもベスト4で敗退した。
特に日本選手権の敗戦はこたえたようだ。チームで練習を重ねているが結果を残せず、桂は「気持ちのやり場がなかった」と明かす。ただ苦い敗戦を冷静になって受け止めて「練習をしている、していないではなく、大事なことは自分たちがどういうバスケットボールをして勝ちたいか。そこを掘り下げていかないといけない」と、3×3への向き合い方を改めた。シーズン初戦の優勝は、その成果をひとつ出すことができた結果なのだ。
桂は現在、取り組みの一端について「(例えば)分解練習をしています。ハンドオフやピック&ロールをひとつ取っても、スクリーンの角度や(ゴール下に)ダイブするか、ポップアウトするかの判断など、細かく突き詰めています」と話している。また、その甲斐もあって今チームには試合に勝つ意識以外に「練習が正しいのか。それとも軌道修正が必要なのか、試そうという感覚」が芽生えたという。もちろんまだ1度勝っただけ。これからライバルたちも調子を上げ、難しい試合も出てくるだろう。現にRound.2(5/1)では決勝でREXAKTに敗れている。Round.1からメンバー2人を入れ替えてはいるが、日本選手権の優勝経験者をそろえた相手の壁は高い。負けからどう立て直してくるのか注目だ。
TOKYO DIMEが初結成の4人で初戦V
続いて、18日の男子EXTREMEをピックアップしたい。8チームがエントリーした今大会にはTOKYO DIMEを筆頭にSolviento Kamakura やZETHREE、KOTO PHOENIXといったお馴染みのチームに、先の日本選手権で初出場で4強入りを遂げた若手有望株のWILLらも参戦。4チームずつに分かれて総当たり戦の予選が行われ、首位通過したTOKYO DIMEとKOTO PHOENIX が決勝へ進出。TOKYO DIMEが21-17で制して、国内主要大会では昨秋の「3×3 JAPAN TOUR 2020 EXTREME Limited FINAL」以来となる大会制覇を飾った。落合知也、鈴木慶太の中心メンバーは不在であったものの、小松昌弘(#70)を中心に岩下達郎(#20)、益子輝楓(#98)、宮越康槙(#99)による4人が公式戦で初めてチームを組み、優勝をもぎ取るフレッシュな姿を見せてくれた。
ただ、4人で公式戦に出ることが初めてなだけであって、彼らは常にDIMEグループとして練習に励む間柄だ。大会は終わってみれば4戦全勝の負けなし。危ない場面もあったが、オフェンスで決めるべき局面で得点を決め、ディフェンスで流れを引き寄せるなど、勝負所でチームが崩れることはなかった。小松は次のように大会を振り返っている。
「いつも練習をやっているメンバーです。その中でこの試合に向けて、どういうことに重点を置いてやらないといけないのかも(みんなに)言ってきました。それが試合終盤の戦いにもつながりましたし、相手にとっても嫌だったと思います」
とりわけ初戦のWILL戦は終盤にリードを許したが、ディフェンスで仕掛けて一気に同点へ追いつき、最後は益子の2ポイントで逆転勝ち。小松は「(WILLには)過去2回負けていたので、『絶対に勝とう』とチームで話をしていました。最後まで諦めずに戦えたことが勝利につながりました」と語った。
DIMEで成長した23歳が存在感を発揮
さらに今大会は益子の活躍が光っていた。2018年に3×3.EXE PREMIERのシーズン中にTRプレーヤー(Temporary Registered Player/チームのシーズンロスターに入っていないが一時的に出場できる特例選手)としてDIMEデビューを果たし、着実に成長した23歳がこの日の主役と言っていいだろう。身長170cmとバスケットボール選手としては小柄だが、スピードをいかしたドライブや思い切りの良い2ポイントを連発し、存在感を放った。当の本人は「大会の序盤、シュートタッチが悪かった」としながらも「大きい2人(=小松、岩下)がいますし、『撃ち続けろ』と練習から言われているのでシュートは積極的に狙いました」と、アグレッシブな姿勢を貫いたことを明かした。
DIMEの選手として今年で4シーズン目。加入当時はまだ学生だった。大学バスケを辞めてクラブチームでプレーをしているときに、TOKYO DIMEのオーナー・岡田優介氏との出会いが今に至るきっかけだったという。そして3×3日本代表候補や5人制のプロ選手たちもやってくる練習環境が、彼の成長を後押しした。益子は「良い先輩たちがいて、 Bリーガーも来ます。その中で(DIMEへ)誘っていただいたからには、練習からしっかりやらないといけないです。レベルの高い環境で今までやってこれなかったので、ここでプレーできることは楽しい気持ちで一杯です」とも教えてくれた。
良い滑り出しを見せた今シーズンの益子輝楓。昨シーズンは途中で怪我を負っただけに、フルシーズンでの活躍を楽しみにしたい。Round.2では準決勝で19-19から2ポイントを決め切れない場面もあったが、これも次への糧としたいところだ。彼は現在「B.LEAGUE」挑戦に意欲も示しており、DIMEで描いてきた成長曲線をさらに伸ばしていくに違いない。
見どころになりそうな次世代の挑戦
JAPAN TOURのシーズン初戦は、男女ともに日々、競技に取り組んできたチームが主役になった。ただ最後に、若きチャレンジがあったことも紹介しておきたい。女子のKUKI GYMRATSである。全員が埼玉県立久喜高校バスケットボール部の選手たちで、先にも述べた昨冬のU18日本選手権で初優勝を飾った先輩たちの背中を見ている。新チームとして今大会に参戦した選手たちは5人制でもベンチ入りする主力メンバーで、インターハイやウインターカップといった全国大会の初出場も大きな目標だ。同校バスケットボール部顧問の早川拓氏は「色々なバスケットボールを経験させて、その中で子どもたちを成長させてあげたい」と、出場に至った理由を取材で明かしている。
もちろん、Wリーグ経験者や3×3で練習を積んできたチームから1勝を挙げることは簡単ではない。今大会は2戦2敗で終えている。しかし1試合を通して高校生とは言え、競技特有の切り替えしの速さや、コンタクトに慣れてくると随所で好プレーも見せた。ドライブやパスで相手を切り崩し、ブロックショットも飛び出したほど。次世代が3×3を通して成長をする過程を見ることも、今シーズンのJAPAN TOURにおけるの見どころになりそうだ。
※写真提供 JBA
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TEXT by Hiroyuki Ohashi